俺のウォーキング:理学療法士らしく(最終回)

目安時間:約 5分

俺のウォーキング:理学療法士らしく(最終回)


 前回デュエルは偶然を待つしかないと書いたが、実は翌日、俺は公園の裏の脇道でひっそりと白い狩人が現れるのを待ったのである。勝負が待ちきれなかったので仕方ない。そしていよいよいつもの時間帯にやはり白い狩人は現れて歩き始めた。俺は一つ深呼吸をしてからその後を追った。灰色のオオカミ、出陣!である。


 追いつき、追い越すのは思ったより苦労した。急に体が重くなったように感じた。「挑戦するのはまだ早かったか?」と一瞬後悔したが、もうやるしかなかった。デュエルロードに入って700メートル辺りでやっと追い越した。すぐ後ろに白い狩人の力強い足音が聞こえる。すぐに追い越されると思ったが、ずっとすぐ後ろをついてくる。これはこれでとても大きなプレッシャーだ。「俺が疲れるのを待っているのか・・」と思った。「ふふふ、いつでも追い越してやるぜ!」という白い狩人の心の声が聞こえる・・・


 「あと2キロ以上歩かなくてはならぬ・・・」と思う。脚が地に着かぬ。手と脚の動きがバラバラになるように感じる。このままバランスを崩してこけるのではないか、と思った。


 一度もあとを振り返ることなく折り返し地点手前まで来た。ここは少しきつめの上り坂になっている。息が切れてきた。が、そこで変化が起きた。白い狩人の足音が急に遠のき始めたのだ。折り返し点で向きを変えると、すでに白い狩人との間には差がつき始めていた・・・折り返して、お互いに見ないフリですれ違った・・・・


 意外にもあっさりと勝ってしまったし、その後ももう負けることはなかった。 今では挨拶や話をする仲になった。よく白い狩人から話かけてくる。「初めて会ったときは両手をポケットに突っ込んで、猫背で歩いとったが、すぐにしゃんと速う歩くようになったのう。やっぱり若いのう」


 そうなのだ。俺自身も気づいていた。前シリーズで散々、若者の形で颯爽と歩くことにケチをつけた俺だが、いつの間にか俺なりに「胸を張って両手を大きく振り、弾むように颯爽と歩く若者の歩き方」で歩くようになっている。イヤ、あんなことを書いてごめんなさい。俺が悪かった。


 最初、歩幅が広がらずに悩んだが、色々試すと両手に軽く力を帯びて、大きく振ると歩幅も速度も自然に上がった。体幹の振動に合わせて、四肢の振動が協調されると歩幅は広く、歩きは速くなるらしい。


 「速く歩くという課題」が俺の運動システムに自然にその形を生んだのだ。アメリカでの主流のアプローチの一つ、「課題主導型アプローチ」である。課題を中心に運動が自己組織化される、ということを自ら実感することができた。


 今では股関節の痛みはほとんど消えている。2ー3時間座りっぱなしでも痛むことはない。驚いたのは膝関節のむくみが減ったことだ。以前は見えなかった膝蓋骨の形がはっきり見えるようになっている。血圧は上が130位になってきた。たまに140になるが以前のようにいつも150ということはなくなった。そしてなんと腹回りは目に見えて減少してきた。ただ残念ながら体重はほとんど変化していない。(どゆこと?)これからも持続可能なウォーキングを目指すつもりである。 そして、俺、灰色のオオカミはいつ、誰の挑戦でも受ける!(^^;(終わり)♯持続可能な社会のために今、この場でできる事を考えてみよう!


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俺のウォーキング:理学療法士らしく(その3)

目安時間:約 3分

俺のウォーキング:理学療法士らしく(その3)


 俺のもう一つの運動問題は、左股関節の荷重時痛である。元々若いときからパソコンが好きで、人より長い座位時間を過ごすのが習慣だったのだが、50代の最後の2年間は特に執筆活動などで毎日10時間も座り続けることがあった。その頃から座っている間はなんともないが、歩き始めると左股関節に荷重時痛を感じ、痛みがひどいときは跛行が出て歩くのにも苦しむという状態であった。


 なぜ左の股関節かと考えると、僕は立っても座っても左重心である。荷重側の筋肉は自然に体重を支えるために長時間の収縮状態を強いられることになる。すると自然に筋の短縮が起こるのだろう。しかも座位姿勢の中で作られる短縮である。これが立位での歩行になると、無理に伸ばされストレスがかけられ、関節の動きにも悪い影響を与えるために痛みになっていると考えられる。


 これまではストレッチと階段昇降などいくつかの運動課題設定によって一時的な改善をしてきたのである。しかしこれで痛みは軽快しても一時的なもので、一時間車の運転をした後、車を降りて歩けば痛みは再発している。もちろんテレビや映画鑑賞など1時間もじっと座っているとすぐに痛みは再発する。結局一時的な痛み改善だけをここ数年繰り返してきたのである。


 仕方なく1年前からスタンディングデスクを買って、そちらの方で仕事をするようにしていたが、やはりなんとなく落ち着かない。本屋での立ち読みに慣れているおかげか読書は良いのだが、文章を書くときは居心地が悪くてついつい座りデスクに向かってしまう。


 このような慢性痛は身体の構造面の変化だけでなく、座位時間が長いなどの生活習慣、特に運動習慣の不足が大きな原因であることが多い。


 つまりウォーキングのようなアクティブな全身運動を継続的に行うことで改善に向かう可能性が高い。


 結局俺は理学療法士らしく、様々な健康問題・運動問題をウォーキングによって解決しようと思ったのである。まあウォーキング一つで、高血圧、肥満、様々な慢性痛などの改善の一石3鳥を狙ったわけだ。


 やることは明確である。つまり痛みの出現を予防することだ。無理をしないで様子を見ながらゆっくりと運動量を上げ、更に徐々に坂道や階段、あぜ道、山道などの多様な環境内での歩行へ移って、柔軟性、筋力、体力などの運動リソースを豊富にし、歩行スキルを多彩にするのである。


 さていよいよ次回から実践報告である。(その4に続く)♯持続可能な社会のために今、この場でできる事を考えてみよう!

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