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運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その6)-生活課題達成力の改善について

目安時間:約 5分

運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その6)

-生活課題達成力の改善について

 今回は動作課題についてです。

 動作課題は「寝返る、起き上がる、座る、立ち上がる、歩くなど」の基本動作運動を中心とした運動課題です。動作課題は繰り返したり、負荷をかけたりすることで身体リソースを改善するし、動作課題を少しずつ変化させることで運動認知を改善したり、達成方法を試行錯誤することで基本的な運動スキル学習にもなります。

 具体的な例を挙げて考えてみましょう。

 立位で健側下肢中心に立つ片麻痺患者さんがいます。実際には患側下肢にも支持性が出ているので患側下肢をもっと自由に使えれば、歩行のパフォーマンスはもっと改善するはずです。

 そうすると患側下肢の使用量と使い方の多様さを増すような動作課題を考えることになります。

 たとえば平行棒のそばに幅30センチ、長さ60センチ、厚さ4センチの板を置き、その上に立ってもらいます。健側上肢で平行棒を掴みます。(イラスト1を参照してください)

 そして健側下肢を前に振り出して荷重し、今度は後ろに振り出して荷重します。(イラスト2)これを繰り返すと患側下肢は、「前後に重心移動しながら体を支える」という運動スキルを発達させることになります。

 次に健側下肢側方へ振り出して荷重しては元に戻します。(イラスト3)今度は患側下肢に重心移動し、その後健側へ重心移動しながら支える練習を繰り返すことになります。

 それぞれに安定してくると、健側下肢を前に振り出して戻したら、今度は側方へ振り出して戻し、更に後方へ振り出して戻すなどと3方向へ重心移動しながらの支持を自在に行うスキルを発達させます。

 これらは全身を使った運動スキルの一例で、特に健側上肢が支持とバランスに大きな役割を果たしています。もっと下肢中心の運動スキルを発達させたいですね。

 そうするとこれらの運動が安定したところで、健側上肢は平行棒の代わりにパイプ椅子の背もたれを持つように課題実施の条件を変化させます。それができるようならT字杖で同じ課題を行うようにします。上肢の役割を減らすわけです。もし可能なら杖なしまで進みます。

 これらができるようなら今度は背中に重りを背負います。また水を半分入れた2ℓのペットボトルを背負ったりします。背中で水が移動するので外乱要素になります。

 このように課題の質を変化させたり、重りを増やしたりすることで負荷が増えて、身体リソースが改善するし、それらの難しい多様な課題を達成することで運動認知が適切化します。更に患側下肢は体重支持しながら様々な方向に安定して重心移動ができるようになるという運動スキルを発達させることになります。

 患者さんとしては、運動認知が適切になり(「この脚は案外使えるよ」)、麻痺側下肢に体重を乗せることに恐怖や不安を感じなくなって自然に患側下肢を使うようになるわけです。

 動作課題は、基本動作を中心に行いますが、日常生活で達成するべき様々な生活課題の基本となる協応構造を多数生み出して様々な運動・行為の基礎となるものです。

 考え方としては一つの運動課題を変化させながら繰り返します。CAMRでは「実りある繰り返し課題」と呼びます。単に同じ課題を同じ実施条件で繰り返すのではなく、少しずつ課題も実施条件も難しく変化させます。できれば少しずつ達成可能な範囲で難しくしていきますし、できなければ何とかできるように課題や実施条件を少しずつ工夫して行きます。

 こうして、身体リソースを改善し、運動認知を適切化します。また利用可能な基本的な協応構造をできるだけたくさん獲得し、運動スキルをより柔軟に適応的に生み出せるようにして、次の段階である日常生活課題などの達成力改善の基礎となるわけです。

 そういった意味で、動作課題は訓練室レベルで、身体リソースと基本的な運動スキルの両方を改善するための中心的な課題となります。セラピストにとっても変化を見極め、適切に課題を工夫・提案することが求められます。 次回は「行為課題」について説明します。(その7に続く)

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運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その5)-生活課題達成力の改善について

目安時間:約 6分

運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その5)

-生活課題達成力の改善について

 ここまで述べたように、障害を持つとは第一に身体リソースが失われることです。そうすると環境リソースが使えなくなり、運動認知が不適切になり、運動スキルが上手く創出できなくなり、必要な生活課題の達成力が低下あるいは消失することです。

 それでCAMRでセラピストがやるべきことは以下の通りになります。

①まず改善可能な身体リソースをできるだけ改善すること

②利用可能な環境リソースをできるだけ増やすこと

③改善した身体リソースや増えた環境リソースをできるだけ使って達成可能な課題をできるだけたくさんやってみること(運動認知のアップデート、あるいは適切化)

④患者にとって必要で達成可能な課題を通しての運動スキル学習を行うこと

 以上のようになります。これらによってリハビリの目的でもある「必要な生活課題達成力を改善する」ことができる訳です。

 今回は上記の過程を実現するための方法について説明します。

 人の運動システムの作動の特徴の一つに「課題特定性」というものがあります。これは人の運動システムは課題達成に向けて、自律的に活動し、課題達成のために必要な探索や試行錯誤を行い、課題達成方法を生み出すという性質です。 これはアメリカの課題主導型アプローチでは、「運動は課題によって組織化される(生み出される)」とシンプルに表現されたりします。

(課題主導型アプローチとCAMRは多くの共通点もありますが、基本的に異なった部分があります)

 まあ、簡単に言うと「運動リソースの豊富化も運動スキル学習も『課題』という手段を通して行われる」わけです。

 従ってCAMRのアプローチでは、この作動の特徴を利用して上記の①~④の四つの過程を「課題に沿って実施する」ことになります。

 さてCAMRでリハビリのセラピストが用いる課題は「要素課題」、「動作課題」、「行為課題」の3種類に分類されます。

 「要素課題」は、主に運動リソースを増やすために用いる課題です。代表的な技術は学校で習うストレッチや筋トレ、マニュアル・セラピーや上田法などの徒手的療法で、柔軟性や痛み等の身体リソースを改善したりするためにセラピスト自身に課す課題となります。

 これらの徒手的療法は現在の日本の養成校ではあまり積極的に取り入れられていないため、就職後に講習会などを受講する必要があります。有名なところでは痛みや関節の可動性・柔軟性を改善するマニュアル・セラピーや脳性運動障害後の体の柔軟性を比較的持続的に改善する上田法などがあります。

 痛みや脳性運動障害後の体の硬さは患者さん自身では改善が難しいので、セラピストの徒手的療法は非常に有効になります。また痛みや硬さは筋活動を低下させ、運動範囲や重心の移動範囲を狭くし、身体の活動性も低下させます。放っておくと拘縮や変形の原因ともなるため特にセラピストの徒手による関与が重要です。

 また身体リソースの中でも痛みや柔軟性は、上記の技術を使ってその場で改善することが多いのです。

 逆に言えばこの技術がないと、患者さんが痛いと訴えても痛みを放置したまま、力や動きが制限されたまま運動療法を実施することになり、非効率です。また脳性運動障害後の過緊張状態も放ったままでは、運動範囲や重心の移動範囲が限られてしまいます。それで、十分なパフォーマンスを発揮できないために経験する運動スキル学習も限られてしまいます。

 先にも述べた通り豊富な運動リソースを基に柔軟で多様な運動スキルが作られますので、運動スキル学習に入る前には改善できる身体リソースはできるだけ豊富にしておくことが良いのです。

 また先々利用可能な環境リソースを工夫して豊富にする目安をつけておくこともセラピストに課せられた課題です。生活課題達成のための環境調整や自助具などの工夫と提案も早くから準備しながら進めていくようにします。

 セラピストはホームワークとして、適切な自己ストレッチや筋トレを考えて指導することもあります。これらは患者さんに課せられる要素課題です。

 上記のように患者さん自身が行うものもありますが、「要素課題」は基本、セラピストが専門的な技術を持って身体リソースを改善したり利用可能な環境リソースを提案・工夫・作成したり、セラピストが自らに課す「運動リソース改善のための課題」がメインとなります。

 患者さんとの訓練を開始するときから、運動リソースを豊富にするためにまず自分に何ができるかを考える必要があります。そのために専門的な知識や技術を身につける必要があるのです。

 次回は動作課題の説明です。(その6に続く)

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運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その4)-生活課題達成力の改善について

目安時間:約 5分

運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その4)

-生活課題達成力の改善について

 ここでは人の運動システムが持つ素晴らしい能力が「運動スキル」であると述べてきました。運動スキルとは運動のやり方、筋群の収縮のタイミングや力の強さを憶えて運動の形を正確に再現する運動プログラムのようなものではないということを前回説明しました。

 CAMRでは運動学習は、課題達成に向けて生み出される協応構造とそれを調整するための運動認知からなります。運動学習とは「運動リソースを利用し、課題達成の方法を生み出し、修正・熟練する」ことなのです。

 そうすると運動学習は二段階に分かれていることがわかります。わかりやすいように具体的に片麻痺患者さんの分回し歩行について説明します。

 片麻痺患者さんがT-caneを突いて立位保持ができるようになるといよいよ歩行練習が始まります。患者さんは思いきって足を振り出そうとします。通常立位での重心移動練習をやった後、患側下肢に支持性があると健側下肢は振り出せます。しかし麻痺の程度によって患側下肢の振り出しは難しいことも多いです。

 そこで患者さん自身による患側下肢振り出しのための探索活動あるいは試行錯誤が始まります。利用可能な運動リソースを探して試すということが少しの間続きます。その結果、健側下肢に大きく重心移動して患側下肢を浮かせながら、体幹の側屈や回旋によって軸足を中心に健側下肢を前方に振り出すやり方を発見します。つまり分回しです。

 これが患側下肢を振り出すための協応構造の発見ですね。しばらく色々と患者さんはこれを使って歩かれるようになります。そうなると協応構造はある程度安定しながら次の段階に入ります。

 それはこの分回し歩行のための協応構造を色々な状況の中で試して見ます。様々な状況変化に対応するための運動認知の修正と熟練のための段階に入るわけです。これまで述べたように身体の状態は毎回変化します。分回し開始時の重心移動の程度や体の硬さも変化します。患側下肢振り出しの開始位置や全身の構えなども毎回変化します。時には患側下肢の着地点は健側下肢に近すぎて基底面を狭くしてバランスを難しくするかも知れません。時には離れすぎて大きく重心移動する必要が生まれるかも知れません。

 それでも様々な状況で患側下肢の振り出しを調整しては、安定して歩けるような運動結果に落ち着くように運動認知学習をする訳です。

 つまり運動スキル学習は基本的に患者さんがこのように主体で行うものです。だってセラピストには何がどう起きてどう調整するかの過程は全くわからないからです。セラピストは課題を出してその目に見える結果を判断するのです。

 従来の運動学習のアイデアのように「脳内に運動プログラムを学習させる」と考えていると、運動学習はセラピストが「正しい運動を指導して憶えさせること」と考えがちです。そして彼らが「正解の運動」と考えるもの、つまり健常者の歩行の形をまねるように課題として出します。もちろん麻痺があるのでできないわけで、そうすると感覚入力学習と言って「他動的に手脚を動かす」とかタッピングなどをします。

 脳をコンピュータの様に考えるので、他人がプログラムを入力するように、他動的に正しい運動を繰り返して感覚入力すれば「正しい運動を学習する」と考えているようです。

 でも他動的に動かした運動が憶えられるなんて事実はこれまでも発見されていません。あくまでも幻想に過ぎません。

 誰でもわかることですが、子ども時代から人は自ら動くことによって様々な課題達成方法や問題解決方法を生み出し、熟練させているのです。自律的に動く以外に運動スキル学習は起きないのです。

 運動スキル学習の取りかかりは課題達成のための協応構造の発見に。発見後は様々な状況に対応して協応構造を上手く調整するための運動認知学習に充てることです。

 次回は「運動リソースを豊富にし、運動スキルを多彩に柔軟に生み出す運動スキル学習」の方法について述べます。(その4に続く)

※毎週木曜日にはNo+eに別のエッセイを投稿しています。最新のものは「自律的問題解決とは?(その3)」です。こちらもよろしく!以下のURLから。https://note.com/

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運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その3)-生活課題達成力の改善について

目安時間:約 5分

運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その3)

-生活課題達成力の改善について

 CAMRで言う「運動スキル学習」とは、ベルンシュタインやギブソン、リード、テーレンらの生態心理学やシステム論の視点とアイデアを基に組み立てられています。

 これまでの伝統的な運動学習では次のようなことが考えられていました。

 「運動を正確に安定するように熟練するには、莫大な繰り返しの運動が必要である。これは休んでいる神経回路は土の詰まった溝のようなもの。これに水が通るようにするには何度も何度も水を流す必要があるからだ。そうすると水が勢いよく流れるように神経はよりスムースに命令を届けることができるのだ。

 そうすると何が起こるか?より素早く正確に運動を繰り返すことができるようになるのだ!」

 まあ、大雑把過ぎですがこういうことです。

 簡単に言うと従来の運動スキルとは運動のやり方、筋群の収縮のタイミングや力の強さを憶えて運動の形を正確に再現するための運動プログラムのようなものであるという風に考えられています。

 これに最初、異を唱えたのがロシアの運動生理学者、ベルンシュタインです。彼は職人の熟練した技、たとえば釘の頭をトンカチで叩く動作の軌跡を記録したのですが、毎回微妙にずれるのです。

 それで以下のように結論します。運動学習とは毎回正確に同じ動作を繰り返せるようにすることではない。毎回少しずつ異なった運動で同じ結果を生み出すための微調整のやり方を学ぶことなのだ、と。

 機械は同じ動作を正確に繰り返します、というより一つの動作しかできないのです。同じ動作しかできないように各部品の動きや全体の動作を厳密に制限しているのです。

 ところが人の体はゴムの様な粘性や弾性の性質を持っています。温度が変われば筋の伸びも変わります。人の体は環境や状況によって緊張具合も力の入れ方、運動の開始の状態も微妙に変わります。心理状態によっても相当影響を受けます。関節も緩い。人の心身の状態は常に微妙に変化しているわけで、そもそも同じ運動を正確には繰り返せない構造なのです。

 そんな体で毎回同じ結果を出すには、釘の頭を叩く直前の予期的知覚情報によって運動結果の微調整をするしかないのです。毎回異なる運動で同じ結果を生み出すための予期的知覚情報こそ重要であり、その利用方法こそたくさんの経験を積む必要のある難しい技術であると考えた訳です。

 また課題をどんなやり方で達成するかという基本的なやり方、たとえば「飛んできたボールをバットで打つ」やり方の基本となる形はすぐに生まれるものです。小さな子どもにバットを持たせてボールを投げてやるとあてられないものの「ボールを打つ」ための運動の形はすぐにそれらしいものが生まれます。このような課題達成のための基本的な運動のやり方はベルンシュタインによって「協応構造」と呼ばれています。

 ベルンシュタインにとっては、運動学習とは「課題を達成できそうな協応構造を生み出し、それによって安定的に課題達成するための予期的知覚情報の使い方を修正・熟練させて適正な結果を導ける能力を学習するということになります。

 CAMRでもそれを基に、運動スキルとは、運動の形を正確に憶えて再現するための運動プログラムのようなものではなく、課題達成に向けて構成される協応構造とそれを調整するための予期的知覚情報(CAMRでは「運動認知」と呼びます)からなります。運動学習とは単純に「やり方を憶えて再現する」することではなく、「課題達成の方法を生み出し、修正・熟練する」ことなのです。

 まだまだ運動スキルについての説明は続きます。(その3に続く)

※私見ですが、ベルンシュタインの予期的知覚情報はギブソンのアフォーダンスとも共通すると思っています。

※運動学習についてのベルンシュタインやギブソンらのアイデアは、拙書「リハビリのシステム論-生活課題達成力の改善について(前・後編)に詳しい説明を載せています。以下のURLから。https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNFQ95Q5

※毎週木曜日にはNo+eに別のエッセイを投稿しています。最新のものは「自律的問題解決とは?(その2)」です。こちらもよろしく!https://note.com/

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運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その2)-生活課題達成力の改善について

目安時間:約 5分

運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その2)

-生活課題達成力の改善について

 学校で習う運動システムの構成要素は筋肉が出す筋力、骨・関節・軟部組織などから生まれる柔軟性、エネルギーを供給されながら動き続ける持久力、感覚器と神経系で感じられる感覚など、目に見える構成物から生まれるものとして考えられます。そして運動システムの構成要素である筋力、柔軟性、持久力、感覚などのうち、悪くなった構成要素を改善することで運動能力が改善すると考えます。

 それで歩行不安定において下肢の筋力低下が見つかると、下肢の筋力強化をするわけですが、それを「座位姿勢」で行うことは普通に見られます。

 というのも学校で習う要素還元論の視点は、機械を修理するときの考え方でもあるからです。機械は壊れた部品を治すか交換して元の状態に戻せば、その本来の力を発揮します。どんな風に直すかは問題ではありません。

 機械と同様に、人でも筋力低下が起きていれば座位でも臥位でも、ともかく筋肉を太らせれば筋力は元通り改善し、歩行も改善すると考えます。それで座位でも臥位でも構わずに筋力強化すれば、元通り安定して歩けるようになると考えるわけです。

 でも人の運動システムには「運動スキル」という機械にはない能力が備わっています。

 筋力、柔軟性、持久力、感覚などの構成要素は、CAMRでは「運動リソース(運動の資源)」と呼びます。運動スキルとは、課題達成のための運動リソースの使い方です。

 筋力などの運動リソースが改善するだけで運動能力や必要な課題達成力が改善する訳ではありません。むしろ運動リソースが改善しなくても、運動スキルが変化することで運動能力はアップするのです。

 たとえば筋ジスの子どもたちでは大関節の筋力という運動リソースが低下しても、運動スキルが工夫されることで歩行能力を維持していることがわかると思います。

 機械ではその構成要素の役割や作動、そして全体としてどう作動するかはきっちり決められています。決められた作動しかできないのです。状況が変化してもやり方を変えることはありません。機械では運動スキルがなく、人の運動システムで言う運動リソースだけがきっちりと一つのやり方が決められて組み立てられているわけです。印刷機のような巨大で複雑な機械でも、各部品にしても全体にしてもその作動は一つなのです。

 つまり人の運動システムにおいては、その作動は運動リソースと運動スキルの二本柱で作られているのです。人の運動システムを機械と同じように理解していてはダメなのです。

 前回、「筋の特異性」と呼ばれた性質について触れました。背臥位で上腕二頭筋の筋力強化を行うと背臥位での筋力は増加するのですが、座位になると改善が見られないことが知られています。単純に筋を太らせることが重要なのではありません。力の出し方やその大きさ、つまり運動スキルがどう作られるかが重要なのです。

 背臥位での筋力改善は背臥位での運動スキルとして学習されているので座位ではその効果はすぐには反映されないのです。運動リソースを改善すればそれでオッケーと言うわけにはいかないのです。

 座位で大腿四頭筋の筋繊維を太らせても、立位や歩行では前進の筋肉との協調や基底面・重力の関係は変わってきますので、すぐに歩行などの体の使い方には反映されないため、改めて歩行の運動スキルを学習し直す必要があります。

 時間を節約することを考えると、立って歩くためには立って歩く中で筋力強化をしながら運動スキル学習を行ったほうが効率的なのです。

 CAMRでは必要な課題達成のための運動スキルを学習しながら、その中で運動強度を上げて筋力強化を行うように工夫します。また運動スキル学習は、課題の達成の過程で「状況や条件の変化を多様に起こして課題達成を促す」ように工夫します。これがとても重要です。

 と言うのも「運動スキル学習」というと、「同じ運動を同じ条件下で繰り返すことが必要」とよく誤解されています。以前の運動学習のアイデアでは、「働いていない神経は土の詰まった溝のようなもの。これに水を何度も通して溝の通りをよくする」という喩えで考えられていましたが、これがそもそもの大きな誤解の元です。

 次回はCAMRで言う「運動スキル」と従来の「運動学習」のアイデアの違いについて詳しく説明できればと思います。(その3に続く)

※毎週木曜日にはNo+eに別のエッセイを投稿しています。最新作は「自律的問題解決とは?(その1)」です。以下のURLから。https://note.com/camr_reha

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