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広島市第2回 CAMRベーシック 無料勉強会
《勉強会詳細》
日 時: 2024年11月24日(日曜日) 9時30分~13時30分(休憩は1時間に10分程度)
場 所: アステールプラザ 小会議室2〒730-0812 広島県広島市中区加古町4−17TEL(082)244-8000
受講料: 無料
参加資格: PT・OT
申込み・問い合わせ: camrworkshop◎mbr.nifty.com(面倒ですが上の◎を@の半角に置き換えてお申し込みください。氏名、職種、経験年数をお書きください。お申し込み後には、資料や講習会の詳細をメールなどで送付します)
自分の問題解決能力をアップしましょう!
テーマ:「脳卒中後遺症のリハビリ-もう一つの選択肢を!」
「人の運動システムをどう理解するか?」 この理解の仕方によって、その後のリハビリは随分と変わってきます。 医療的リハビリの学校では、人の運動システムを構造と器官・組織の働きから理解します。たとえば「骨・関節は力に支持と方向を与えます。筋肉は力を生み出し、末梢神経は身体や外部の状態を脳に伝え、脳などの中枢神経系がその感覚から情報を生み出し、状況を判断し、神経を通して運動をコントロールするのだ」などと習います。
この「構造と働きで理解する」のは機械の理解と同じ視点ですね。機械の作動を理解するためには、機械の構造と各部品の働きを理解します。そしてこの機械に不具合が起きると「悪い部品を探し、それを直すか,交換する」ということになります。
機械では悪いところを修理、交換して元通りの構造に戻さないと設計者の意図したように「正しく」働かないので、「直す」ことにこだわるのです。
学校で習う治療方略も、同様に人でも関節が動かないなどの問題が起きると「悪いところを探して治す」という治療方略になります。だから脳が壊れると脳を構造的(あるいは機能的)に治そうというアプローチに自然になりますね。
日本でもこの考え方が入ってきてもう半世紀以上が経ちますが、それでリハビリで脳が治せるようになったかというと、とても実現できそうにありません。もちろん今のところ電子工学を利用したアプローチやIPS細胞での置き換えの治療ではまだ可能性がありますが、まだはるか先の話のようです。
一方でシステム論を基にしたCAMRでは、人の運動システムはその作動の特徴から理解されます。
人の運動システムにどんな特徴があるかというと、人の運動システムはその人にとって必要な運動課題を常に自律的に達成しようとします。もし身体の一部分が悪くなったり、失われたりしても、活動すること、必要な運動課題を達成することをやめようとは思いません。残った身体と機能でなんとか問題解決を図り、できるだけ必要な課題を達成しようとします。
ここが機械の作動と違うところです。機械では一部品が壊れただけで作動が止まったり異常な作動をしたりします。他の部品が頑張って機械の正しい作動を維持しようなんてしません。
このような運動システムの作動の特徴は、CAMRでは「自立的課題達成」と「自律的問題解決」と呼ばれます。麻痺があってもなんとか動こうとし、必要な課題を達成しようとします。人は生まれながらに「自律的な課題達成者であり、問題解決者」です。
だからCAMRのリハビリ・アプローチも「治して元通りにする」よりは「今ある機能を最大限活用して柔軟に適応する」という方向を目指します。
つまり人の運動システムの「なんとか問題解決を図り、必要な課題を達成しよう」とする作動が上手くいくように手伝うのです。
他にも人は必要な課題を達成し、問題を解決しようとして「隠れた運動リソース(運動の資源)を探索し、できるだけ改善し、その活用方法である運動スキルを創造して問題を解決しようと」としています。
だからセラピストは患者さんが利用可能な運動リソースをできるだけ増やし、運動スキルが柔軟に適応的に発達する過程を理解して、運動スキル学習を手伝うのです。脳性運動障害では、「治そう」とするのではなく、「支え、手伝う」ことが人の運動システムにはより適切だからです。
CAMRの勉強会は、このことを伝えるために開かれます。どうぞこの機会にこの無料勉強会にご参加下さい。決してこれを機に怪しい医療機器を販売するなどは一切ありません(^^;)
「先輩PTの説明が納得できない!」(後編)
前回は先輩の因果関係の説明が間違っていること、相関関係の説明と混乱していることなどを説明しました。
ただそれでも運動変化が起きている可能性について説明しました。先輩は立ち直り反応を促通しているつもりなのでしょうが、結果として柔軟性が改善していてそれが歩行変化として先輩には見えているということです。
僕自身は、リハビリで意図していることとは別に、まず患者さんに動いていただくことで色々な可能性を生み出しているんだろうと思っています。
今回は、新人PTさんが密かに思っている「歩行不安定には下肢筋力の改善をした方が良いのではないか」について答えます。(以下、→以降が受講生の会話内容です)
→今日の講義の中で、「人は自律的な問題解決者である」と話してきました。もし歩行が不安定なら、患者さんはどのような問題解決を図ると講師が言いましたか?→えーと・・・・まず歩隔を広げる、家具や壁に手をつくなどして基底面を広げて重心が基底面から出にくくするでしたっけ?他に手を広げてバランスをとるとか。
そうですね。この患者さんは体が硬くて動きもぎこちなく、運動範囲も小さいのでしたね。そうなら可動域の低下があって歩隔を広くとって基底面を広げられないとか、体幹が棒の様になって重心移動が困難なのかも知れませんね。
そうすると先輩のやっている立位から臥位へ、臥位から立位へと大きく姿勢変換すると全身の大関節に動きが入るので、少し柔軟性が改善し、歩隔が広がって基底面が広くなり、体幹の柔軟性が改善して重心を基底面に保持しやすくなったから先輩の目からは少し安定して歩いていると見えたのかも知れません。
柔軟性という身体リソースが改善しただけで運動は変化します。当然筋力という身体リソースが変化しても運動は変化します。そうするとより大きな運動変化を起こそうと思うなら?
→えーと、柔軟性も筋力もできるだけ改善してあげる・・・・つまり身体リソースを全体的に豊富にすることがまず変化の条件ですよね?
その通り!その上で運動スキル学習を進めるのでした。たとえば上田法で体幹の柔軟性を改善すると、いきなり運動範囲や重心の移動範囲が大きく広がってしまい、患者さんは却ってコントロールできなくなくて戸惑ってしまいます。
だから患者さんに広がった柔軟性を色々に使ってもらい、こんなことができる、こんなことはできないという運動認知を適切化することで、その柔軟性や筋力をどう使うかという運動スキルを適切に発達させることができます。
セラピストができることは、まず身体リソースや環境リソースを豊富化すること。それらを使うための運動認知の適切化と運動スキルの創造を促すために、患者さんにとって意味や価値があり、適切なレベルの運動課題を設定して実施します。そして患者さんとセラピストが協力して工夫しながら運動課題を進めるのでしたね。
→でも心配があります。先輩にはなんて説明しましょう?僕がこんなこと先輩に言っちゃあいけないと思うし・・・・・・なんだか怒ったり、拒否されたりすると思うんですよね。
あ、そこは難しい問題です。先輩はこれまで「立ち直り反応の促通が歩行安定性に繋がる」という因果関係を信じてこられて、さらにそれを後輩にも誇りを持って教えていますよね。だから間違っても正直には言えません。これまでの先輩の人生を否定することになってしまいます。そうなると人間関係はおしまいです。僕は若い頃、それで良く失敗しました(^^;)
実際に職場の人間関係は大事ですから。大変なストレスになるかも知れませんが、今まで通り接しながら少しずつ小出しに説明するか、可能ならCAMRの資料が自然に目に触れるようにしたらどうでしょうか?
あるいは立ち直りの促通をする振りをして柔軟性の改善をする、筋力強化は板跨ぎなどの課題を通して色々工夫してできるので、先輩の指導に上手く合わせてそれらをやっていかれると良いと思います。観察力のある方であれば変化に敏感でしょうし、興味を持ってもらえるかも知れません。後は言い方に気をつけてください。とは言え、まあ、その辺り先輩の性格とか職場の人間関係とか色々とあると思うので、何とも言えません。ただ職場内で強い対立関係とか敵対関係はできるだけ作らない方が良いです。
それとあくまでも人の意見を丸呑みにしないで。もちろんCAMRのアイデアも含めてね、自分でやって納得できるかどうかをまず試して見てください。
→はい、頑張ってみます!とりあえず言われたことは試して納得できれば続けてみるし、そうでなければまた自分でも色々考えてみます。
CAMRの学習会はこんな感じです。次回からもCAMRの学習会で出た色々な質問についての説明を紹介していきます(終わり)※No+eに毎週木曜日は、別のエッセイを投稿中!最新の投稿「CAMRの流儀 その6」https://note.com/camr_reha
先輩PTの説明が納得できない!」(前編)
今回は過去のCAMR講習会や勉強会を通して寄せられる様々な質問・疑問についてCAMRの立場から答えたものを紹介します。読みやすいように会話形式で整理しています。多少なりとも参考になればと思います。
さて、最初に取り上げる質問は理学療法士になって10ヶ月の新人さんです。
僕の職場の指導担当の先輩は、片麻痺患者さんの歩行がやや不安定なのを見て、「歩行不安定なのは立ち直り反応の低下が原因である。だから臥位になって立ち直り反応の促通をしっかりするべきだ」と言ってやって見せてくれます。
そして歩いてもらって、「ほら、立ち直りをやった方が安定しているだろう」と言ってきます。一応「そうですね」と答えるのですが、どうも僕にはあまり変化していないように思えます。
僕はどちらかというと下肢筋力を鍛えた方がより歩行が安定するようにも思うのですが・・・どう思いますか?
これはよく聞く話です(^^)
まずは患者さんの大まかな状態を以下の質問で明確にしましょう。
①T字杖で歩いておられるのですね。発症後、どのくらいの方ですか?
→6ヶ月を過ぎたところです。
②その患者さんは体が硬くなってます?動きがぎこちないとか、動きが小さいと?
→はい、やや硬く、ぎこちない感じです。脚の振り出しも小刻みほどではないですがやや小さいです。
これで少し患者さんの様子が想像できます。
さて、では一緒に考えてみましょう。
まず、僕が考えるに先輩の「歩行不安定なのは立ち直り反応の低下が原因である」は間違った因果関係です。
原因は明らかです。つまり血管の詰まりや出血によって脳細胞が壊れたことです。その結果、立ち直り反応をはじめとする姿勢反応の低下や弛緩性麻痺、そして低緊張・過緊張の歪んだ分布、麻痺肢の随意性の低下、そして歩行不安定が見られるのです。つまりこれらは全て結果なのです。そして先輩はその結果同士に因果の関係を想定しています。だから間違った因果の関係を想定しているということです。
ここまでよろしいですか?
→少しわからないところが・・・・脳細胞が壊れて立ち直りが悪くて、その結果として歩行不安定になるのでは?それに先輩の説明で「立ち直りが悪いと、歩行不安定も大きい、立ち直りが良くなれば、歩行も良くなる」というのはなんとなく納得できます。
そうですね、ではこう考えてみましょう。コロナウィルスに感染して発熱や頭痛、関節痛、鼻水などの上気道炎症状、倦怠感がみられます。この場合、結果同士「発熱が原因で倦怠感が見られる」というのは正しい因果関係でしょうか?
→ああ、正しい因果関係とは言えませんね。原因は明らかにコロナウィルスの感染です。
でも解熱剤を飲めば倦怠感は多少楽になるかもしれませんね。この場合、解熱剤は原因を改善しているのではなく、現在の状態である高熱を改善しますので、全体として状態は少し良くなるかもしれません。もちろん原因は解決していませんけど。
一方リハビリで臥位になって立ち直り反応を促通する行為は、多少現状を変化させるかも知れません。たとえば立位から臥位へ大きく姿勢を変えますので色々な動きが各関節に大きく起きて、柔軟性を少し変化させます。その結果、先輩の目には、動きに変化があるように見えるのでしょう。でも変化の度合いはそれほど大きくないので、あなたの目には余り大きな変化には見えないのかも知れませんね。
→ああ、なるほど・・・・僕にはまだ観察力がないのかもしれません・・・・そうか、因果関係は間違っていても違う動きをすることによって状態が少し変化したということですね!
そうかもしれません。もう少し説明します。「立ち直りが良いと歩行バランスも良い、悪いと歩行バランスも悪い」というのは因果関係ではなく相関関係ですね。「麻痺が軽いと動きが良く、重いと動きが悪い」という当たり前のことです。つまり相関関係によって因果関係を説明するという混乱が見られます。
基本的には先輩の言っていることは、「立ち直り反応の低下という結果に感覚入力という手段ぽいものでそれを促通すると、脳の機能が改善して歩行バランスが良くなる」と言っているわけです。つまり「結果にアプローチして原因を改善する」という矛盾を主張していることになります。
まあ因果関係を間違え、相関関係と混同して変な説明をしていることになります。因果関係って、意外に難しくて誰もがよく間違うんですよ。
→すいません、一度にたくさんの話で頭が少し混乱します・・・ともかく先輩がやっているのは、違う姿勢になることで多少柔軟性が変化して、歩行の安定性も変化したように先輩には見えるということで・・・・・元々因果関係とは全く関係ないところで現状を変化させているということですね。僕も指摘されるまで全然間違いに気づきませんでした。因果関係って難しいですね!
→では僕が思っている、下肢筋力の改善はどうなんでしょうか?
残念ながら文字数が多くなってきました。続きは後編に。
生活課題を達成するのは、筋力ではない!
-運動スキルの重要性(その8 最終回)
必要な生活課題達成力の回復のリハビリは、麻痺の程度やその他の要因の影響で必ず頭打ちになります。
実際にご本人やご家族の要望通りに回復しないこともしばしばです。言われてみれば当然なのですが、リハビリは限界だらけにも見えますよね。
でも恥じることはありません。限界だらけなのはリハビリだけではありません。世の中の難しい仕事というのはどれも限界だらけです。もしいつでも色々な要望通りに応えることができるとしたら、誰でもできる簡単な仕事に違いありません。
難しい仕事は、たとえば僕たちの身の回りで見ると弁護士があります。こちらの希望が通らないことは多いものです。それでもその人達に頼るのは、専門家として代替案を提案してもらえるからです。
僕の経験ですが、ある弁護士さんにこちらの希望を伝えると「それは無理です。○○ですし、□□の法律もあってご希望通りにはなりません。でも実現可能な中では△△は可能です。これならこれこれというメリットがあります。あるいは××なら、先ほどのメリットに代わってこのようなメリットもあって部分的にはご希望に添えると思います。どうされますか?」という対応をされたことがあります。
最初できないと言われてガッカリしましたが、それはそれで仕方のないことです。世の中はそんなものです。それでも全く打つ手がないわけではなく、多少こちらで判断してできることもあったので、自分で考えて決定することができました。まあ、それなりに自分にできることはやったという達成感はありました。
「今、自分にできることは全部やった!」と思えることはやはり良いことです。リハビリでも同じだと思います。リハビリも限界は多いのでそれははっきりと患者さんやそのご家族には伝えるべきだと思います。特に脳性運動障害などでは。
しかしその上で代わりの提案をするべきです。わかりやすい例で言うと、「トイレでの排尿」は無理でも、ポータブル・トイレや尿器、オムツなどの環境リソースを少しでも満足のできる形で利用できるように工夫してみましょう。訪問介護などの社会的資源とその利用方法についてもできるだけ知恵を絞ってみましょう。
今できることを明確にして、それをきっちりやることが大事です。専門家だからこそ限界をはっきり認め、その代わりに代替案を提案できるのです。そうすればリハビリが限界だらけだと恥じることもないです。
というのも、これまでもできないことを簡単に引き受けて、代替案も提案できないで放り投げてしまっているセラピストを見ることがよくありました。
またできないことでも「諦めない姿勢」をただ闇雲に貫いてみせるセラピストも見てきました。逆にそんな姿勢が良いこともあるのでしょうが、それで患者さんを長く巻き込んでしまうのはどうだろうと思います。
これまでの日本のリハビリの歴史ではセラピストの人数が少なく、縦や横の繋がりも薄く、内容や環境もどんどん変化していて、プロの職業として成熟する暇がなかったのかも知れません。
限界が多いからこそ、上手くいったときの喜びも大きいのです。限界を認めることは決して悪いことでも恥ずかしいことでもないはずです。プロならむしろ客観的に判断するべきところだと思います。
まあ、難しくて実現できないことが多くても、それゆえにやりがいがある仕事です。むしろできないことが多いからこそ、できることはきっちりとやっていきたいものです。
それで患者さんやご家族にとっても「自分にできることは全部やった」という満足感が得られるようにお手伝いができると思います。
ごめんなさい、最後何を言いたいのか混乱してきましたが(^^;)、今できることには精一杯知恵と体を使っていきましょう!ってことで・・・・(^^;) ともかく長い間読んでくださってありがとうございました(終わり)
※No+eに毎週木曜日は、別のエッセイを投稿中!最新の投稿「CAMRの流儀(その4)」https://note.com/camr_reha