「運動学習」は「運動の形ややり方を憶えて再現すること」?(その1) 

目安時間:約 5分

「運動学習」は「運動の形ややり方を憶えて再現すること」?(その1) 

 セラピストが患者さんの体を触り、動きを導いています。 「良いですね!もう一度動かしてみましょう・・・良いですね!」などとセラピストが言います。そうやって患者さんは何度もその動きを繰り返します。

 運動の内容は患側下肢の振り出しだったり、立ち直り反応だったりと色々です。手のリーチのやり方なんてのもあります。いずれにしても見た目の形ややり方を触ったり言葉で導いてそれを繰り返します。

 よく見る光景ですよね。

 いかにもセラピストが「運動のやり方」を教えている感じです。きっと周りの人も、「セラピストが患者さんにやり方を教えているのだろう」と思うのでしょう。

 ここでは患側下肢の振り出し方を教えているとしましょう。そしてセラピストの指導する振り出し方で歩かれます。その後、訓練室を出て患者さんが独りで歩き始めると、また結局元の歩き方に戻ってしまいます。セラピストが手を添えて指導し、見つめてフィードバックしているときの教えた動きは消えてしまいます。

 人の運動システムにとっては、安全で効率的な動きが選択されることが自然です。セラピストの指導する動きは、できたとしても効率的ではないので選ばれないのでしょう。自然のことです。

 どうしてセラピストは、患者さん一人では再現されないそのやり方を指導するのでしょうか?しかも時として、変化なしに何年にも渡ってそれを指導しているセラピストもいます。

 セラピスト、あるいは患者さんの思う理想の歩き方を目指しているのでしょうか? たとえ患者さんの運動システムにとって効率的ではなくても、何度も同じ運動を繰り返せば、やがて脳内にその運動を実施するプログラムが作られて自然に「できるようになる」と信じているのでしょうか。

 ただ疑問なのは、「人の脳はそんな単純なことをやっているのか?」ということです。つまり「一つの運動の形ややり方を繰り返して憶えて、それを再現する」という単純なことをやっているのか、ということです。

 たとえばこれは小学校の運動会で行進の練習をするようなものです。実際に行進の場面になると皆胸を張って腕や脚を大きく振って歩きます。運動会の行進ではこれが正解の歩き方だからです。繰り返し練習して、子どもたちは適応的に歩きますので練習の効果があったと言えます。

 でも普段子どもたちはそれぞれに個性的な歩容で歩いています。誰も胸を張って手脚を大きく振って歩いたりしていません。状況に合わせて適応的に歩き方や歩容を変化させて歩いています。自然のことです。

 実際に患者さんもそうで、リハビリ場面ではセラピストの要求する歩き方で歩くことが適応的なのです。でも訓練室を出て、独りで歩くときには自分らしい歩き方で歩くことが自然なのです。患者さんの運動システムは、常に患者さんにとって一番安全で効率的な歩き方を選択するからです。

 世の中の環境や状況は変化に富んでいます。人の運動システムはその状況の変化に応じて歩行を適応的に維持するために、もっとも相応しい歩行スキルを生み出して、調整し、適応しているのです。

 だからたった一つの歩き方を正解として繰り返し、再現する練習をしてもあまり意味がないのです。(全く意味がないわけでもないのですが・・) 運動学習で必要なのは、世の中で出会う様々な状況変化に対応して適応的な運動スキルを生み出して必要な課題を達成する術(すべ)を学ぶことにあります。

 CAMRでは、実際の生活で必要な生活課題を達成するのは、柔軟で実用的な「運動スキル」と考えます。それで従来考えられていたような運動の形ややり方を繰り返す「運動学習」とは区別するためにわざわざ「運動スキル学習」と呼んでいます。

 今回のシリーズでは、CAMRの考える「運動スキル学習」についての説明や検討をしたいと思います。(その2に続く)

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運動理解のための新しい視点:CAMR(その2)

目安時間:約 5分

 人が必要な課題を達成する場面を具体的に考えてみよう。たとえば以下はスパイの逃走場面のストーリーである。

 武器を持った敵に追われて、俺は8階建てのビルの屋上に追い詰められる。今、敵は1階辺りで俺を探しているはずだ。後戻りはできない。問答無用で銃で撃たれてしまう。グズグズもできない・・・

 隣のビルの屋上までは約3メートルか。ここは下の道路から20メートル以上の高さがある。落ちたらイチコロだ。なんとか飛び移るしかない。もし平地であれば、3メートルの間隔なら軽く助走すれば俺は十分に跳び渡ることが可能である。

 しかし飛び移るためには、高さ1.5メートル、幅20センチの塀の上に立たなければならない。「やややっ、助走ができないではないか!」

 しかも俺は高所恐怖症である。全身がすくんで、実力を発揮できないに違いない。「いつもそうだ!俺は緊張すると、できてることができなくなってしまう。やれやれ・・・」

 俺は辺りを見回す。「何とかしなくては・・・」

物干し台があり、長さ3メートル以上はある物干し竿が5本かかかっている・・・

 急に閃いた!

 一本の物干しは俺の体重を支えることはできないが、五本まとめると支えることができるのではないか?毛利元就の言うとおりではないか!一本の物干しは折れても、五本が束になると折れないに違いない!

 俺は五本の物干し竿をかき集めた。そしてそれをあちらのビルの屋上の塀にかけようと急いだが、ここで躓いてしまった。俺は前方の床に倒れ込み、はずみで持っていた物干し竿が前方に飛び出し、壁を飛び越えて下に落ちてしまった。

 「ぎゃっー!」と叫ぶ声がはるか下から聞こえる。通行人の誰かに当たったのかもしれないが、今はそれどころではない。俺の命が危ういのである。「知ったこっちゃない!」と思わず声に出る。

 再び辺りを見回すと、ビルの反対側の壁に、さびた鉄ばしごと思われる物体が立てかけてあった。近づくと長さが3メートル以上はありそうだ。「やったー!」俺は小躍りしながら鉄ばしごに駆け寄る。「渡りに舟ではないか!なんという幸運だ!いや、もっと早く気づくべきだった。俺のばかばか!おまぬけちゃん!」意味の分からない言葉が自然に口をついて出てくる。

 俺は鉄ばしごをむんずとつかむと、両手で持ち上げて反対の壁に走る。重くてよろめくが必死で走る。壁につくと鉄ばしごを立てて持ち上げ、あちらのビルのコンクリートの塀に渡すと大きな音をたてて震えながら乗っかった。こちらもしっかり壁に乗っかっている。俺は壁によじ登り、四つ這いになって鉄ばしごの橋の上をおっかなびっくり渡り始める。

 しかし半分来たところで後から複数の駆ける足音が聞こえてきた・・・・・「あそこだっ!撃てっ!」と叫ぶ声が聞こえる。俺の体が不意に思いもかけず鉄ばしごの細い鉄の棒の上に立ち上がり、ビルの壁の向こうにダイブした!銃弾が耳元をかすめる・・・・後から思うと命の危機に、高所の恐怖が吹き飛んでしまったようだ。

 長い例になってしまった(^^;)この課題達成のポイントをまとめると以下のようになる。

 「人の運動システムは必要な課題を自律的に達成しようとする。もし課題達成に問題が生じると、自律的に問題を解決しようとする。そのために身体の内外に利用可能な運動リソースを探索する。そして課題達成や問題解決のための実現可能な運動スキルを生み出して実行する。失敗すれば、さらに別の運動リソースや運動スキルを探して、課題達成・問題解決しようとする」のである。

 そしてこのことは、お腹が空いていても、背中が痒くて手が届かないときも、カップ麺の箸がないときも、おしっこが漏れそうなときも同じである。
 人の運動システムには、その時その場でなんとか問題を解決して課題を達成するために、自律的に身体の内外に利用可能な運動リソースを探し、課題達成のための運動スキルを生み出して実施するのである。(その3に続く)

この記事はNo+eに掲載されたものです。以下のURLから。

https://note.com/camr_reha/n/n5305e6ff98c8

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第4回 CAMR無料勉強会のおしらせ(訂正版です(^^;))

目安時間:約 2分

前回のおしらせで、メールアドレスが間違っておりました。ご迷惑をおかけしました(^^;)

第4回 CAMR無料勉強会のおしらせ

学校では「構造と各器官の働き」から運動システムを習います。これはこれで有効な見方ですが、人の体を機械のように理解します。だからそれだけではちょっと物足りない!
 CAMRはシステム論を基に、人の振る舞いを観察して人の運動システムの作動の特徴を理解します。これによって機械ではなく、生物としての人の運動システムの特徴がより活き活きと理解できます。
 そうするとこれまでとは異なった新しいアプローチが生まれるようになります。
 学校で習う理解を基にしたアプローチとCAMRのアプローチの二刀流で仕事をすると、問題解決能力がアップして日々の仕事が楽しくなりますよ!

日時:2025年9月14日(日曜日)
   9時半~13時まで
場所:広島アステールプラザ 第2小会議室
勉強会申込みは、氏名・職種・経験年数を記入。以下の◎をアットマークに変えてメールしてください。
camrworkshop◎mbr.nifty.com

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CAMR YouTubeチャンネルに新しい動画を公開しました!

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CAMR入門その6 学校で習う脳卒中片麻痺の理解を見直す の動画公開しました!

目安時間:約 1分

見ていただくとありがたいです(^^)

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CAMRは状況変化の技法?(その2)

目安時間:約 3分

CAMRは状況変化の技法?(その2)

 前回の最後は少し話が逸れてしまいました(^^;)まあ、手短に言うと地域のケアマネさんが抱えている「難しい利用者さん」の問題解決をリハビリ・ドックで引き受けようという話です。

 具体的に最初の頃に関わった状況変化が上手くいった例を挙げます。 Aさんは、退職後しばらくは色々な活動をしていましたが、何年か経つうちに徐々に家でテレビや本を見て過ごす時間が増え、足腰が弱って一人で歩くのが難しくなっています。膝や腰は時々軽く痛みます。家では伝い歩きか介助歩き。それでトイレが間に合わずに失禁も多いです。でも、尿パッドや失禁用紙パンツを嫌がるので困っているそうです。

 担当のケアマネさんが、あるデイサービスにAさんを紹介しましたが、「本人の意欲が低くて動こうとされなかった。最後はデイサービスを嫌がられた」と通所を拒否し、利用終了となりました。しかし家族とケアマネさんは、「今のままでは困る、最後のお試しで良いから。これでダメならもう無理はいわない」となんとか説得して当施設のリハビリ・ドックに渋々入所されたそうです。

 私達セラピストは、「原因を探して、その原因を解決する」というやり方を学校で教わっています。

 前の施設の報告書を見ると、セラピストは歩行不安定でこけやすい原因は「足腰・全身の筋力低下」であると考えて、最初は筋トレをあの手この手で勧めましたが、本人がなかなか動かなかったとのこと。

 それで「足腰が弱ったのはもともと動く意欲が低いのが原因」と考えなおして、まずは「意欲を促して動くこと」を目標に変えました。たとえば元気な頃は家庭農園をやっていたので畑の作業やマシントレーニングなどの具体的課題を提案したりしますが、どれにも意欲を示されませんでした。思いつく限りのことはやってみたが、この利用者さんは「根本的に動く意欲を無くしている」と諦めの結論で結論づけています。

 失禁については、介護の方で紙パンツを勧めましたが家庭と同様に拒否されます。理由は分からないので対処のしようがないとのことでした。

 前の施設の訓練の様子などもケアマネさんから聞いています。前の施設では元気なセラピストが何度も繰り返し力強く筋トレや運動に誘っては断られています。ケアマネさんが見たところ、そのうちセラピストも次第に不機嫌になり、お互いに不機嫌さがエスカレートしたのではないか、と言われます。なるほど・・・なんとなくイメージは湧きます。

 それで「前の施設とは異なったアプローチをとる」ことにしました。 次回はいよいよAさんと対面です。(その3に続く)

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CAMRのYouTubeチャンネル始めました!

目安時間:約 1分

CAMRのYouTubeチャンネル、Camrers' Roomで動画を3本公開しています。

https://www.youtube.com/channel/UCgQlHPzOdu2SXLPTnZ2tLOQ

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リハビリは1世紀前の理論?CAMR無料勉強会のお知らせ

目安時間:約 3分

リハビリは1世紀前の理論?CAMR無料勉強会のお知らせ

 学校で習う脳性運動障害の理解は、約1世紀前のジャクソンの階層型理論です。

 これは様々な研究や実験を通して矛盾や間違いが指摘されています!

 それでも未だにリハビリや医療の分野では、この理論の周りを回っています。 新しい理論が必要では?

 その新しい理論の一つがCAMR(カムル)です!

 CAMRは、システム論に臨床経験を加えて生まれた日本生まれのリハビリテーションの理論とアプローチです。

 ・脳性運動障害後に現れる筋の硬さは、陽性徴候?

  →いいえ、弛緩状態から動き出すための運動システムの問題解決です!

 ・片麻痺者の歩行練習では、立ち直り反応の促通が必要?

  →いいえ、立ち直り反応はある条件下での一指標に過ぎません!

 ・分回し歩行は異常歩行だから、修正しないといけない?

  →いいえ、分回し歩行は麻痺のある体で患者さんが苦労して生み出され   た立派な歩行スキルです!もちろんセラピストと協力してパフォーマンスを改善する余地は沢山あります!

 ・運動学習は「運動の形ややり方を憶えて,再現すること?」  

→いいえ、「状況変化に応じて最適な運動を創造する」練習です!

 ・セラピストは正しい運動を教えなくてはならない?

  →いいえ、「誰にも当てはまる正しい運動がある」は幻想です!

 エトセトラ、エトセトラ・・・・

 脳性運動障害の新しい理論と理解を学んでみませんか?新しい発見があり、日々のリハビリの仕事が楽しくなりますよ!

《CAMR勉強会詳細》

テーマ:「脳卒中後遺症のリハビリ-もう一つの選択肢を!」

日 時: 2025年2月16日(日曜日) 9時30分~13時30分(休憩は1時間に10分程度)

場 所: アステールプラザ 小会議室2(受付近くのエレペーターに乗って4階へ。出てすぐ右手のドアです)アステールプラザ(広島市コミュニティセンター)〒730-0812 広島県広島市中区加古町4−17受講料: 無料参加資格:PT、OT、ST、医師その他医療・介護職募集人員:8名申込み

・問い合わせ: camrworkshop◎mbr.nifty.com(面倒ですが上の◎を@の半角に置き換えてお申し込みください。氏名、職種、経験年数をお書きください。お申し込み後には、資料や講習会の詳細をメールで送付します)

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《CAMR無料勉強会のお知らせ》

目安時間:約 2分

《CAMR無料勉強会のお知らせ》

 私たちが学校で習う脳性運動障害の見方は、1932年、今から90数年前の英国の神経生理学者、ジャクソンが提案した「階層型理論」を基にしています。

 しかし階層型理論の矛盾や間違いが、新しい発見や実験を通して指摘されています。当然ですよね。約1世紀前に作られた理論なので、そんなことは当たり前、普通のことです。

 しかしながら、日本のリハビリは未だにこの階層型理論を中心に回っています。

 この現状をどう思いますか?私たちには「新しい理論」が必要です。

 CAMR(カムルと言います)はその新しい理論のひとつです。

 CAMR(カムル)はシステム論を基にした日本生まれのリハビリテーションの理論とアプローチです。

《CAMR勉強会詳細》

テーマ:「脳卒中後遺症のリハビリ-もう一つの選択肢を!」

日 時: 2025年2月16日(日曜日) 9時30分~13時30分(休憩は1時間に10分程度)

場 所: アステールプラザ 小会議室2(受付近くのエレペーターに乗って4階へ。出てすぐ右手のドアです)

アステールプラザ(広島市コミュニティセンター)

〒730-0812 広島県広島市中区加古町4−17

受講料: 無料

参加資格: PT・OT募集人員:8名

申込み・問い合わせ:

camrworkshop◎mbr.nifty.com(面倒ですが上の◎を@の半角に置き換えてお申し込みください。氏名、職種、経験年数をお書きください。お申し込み後には、資料や講習会の詳細をメールで送付します)

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脳性運動障害の理解を見直す(その1)

目安時間:約 6分

脳性運動障害の理解を見直す(その1)

 神経生理学者のジャクソンは、1932年に「階層型理論」を発表しました。脳性運動障害では、下位レベルの反射に対する高位レベルのコントロールが失われ、そのために下位レベルの反射が過活動になり運動を支配するようになると説明されます。

 そして陽性徴候と陰性徴候の二つが出現するとしています。陰性徴候とは正常で見られるはずの姿勢反応や随意運動、筋力などが低下や消失する現象です。陽性徴候は正常では見られない原始反射の優位な出現や痙性,筋の硬さの出現を言います。陰性徴候は障害によって正常な機能が喪失した状態ですが、陽性徴候は障害によって破壊をまぬがれた下位中枢の解放症状であるとしています。

 ややこしいですよね。僕も学生時代からずっと悩まされてきました(^^;)「じゃあ、どうするんだ?」って感じになります。

 30年前くらいまでは下位レベルの原始反射や伸張反射の亢進、過緊張によって正常運動の出現が邪魔されるので、陽性徴候を抑えながら,陰性徴候の姿勢反射などを促通しましょう、なんて言っていました。

 今は壊れた脳細胞が持っていた機能が失われているので,壊れていない他の脳細胞に失われた機能を学習してもらいましょう、正しい運動のやり方を憶えてもらいましょう、なんてことになってるらしいです。

 どうも人の脳をコンピュータのように考えて、運動感覚を脳に学習してもらい、脳の中に運動プログラムを入力しようとしているわけです。脳をまさしくコンピュータと見做しているわけです。

 これまた変な話です。人が作った機械に過ぎないものをモデルに人の脳を理解してると言うことですよね。コンピュータは今のところプログラムを入力しないとなんの役にも立ちませんが、人の脳も誰かが運動感覚という入力をして脳内に運動プログラムを作らないと役に立たないのでしょうか?どうにも納得のいかない話です。

 実際、どうやってそれをするの?と思います。実際に見ていると健常者に近い姿勢をセラピストの手の介助で保持して荷重経験などをします。他人が動かすことで何か1人でできるようになるのでしょうか?これまた疑問だらけですよね。

 ともかく不思議なのは90年以上前に提案されたこのアイデアを中心に未だにリハビリが回っているということです。90年前,約1世紀前ですよ!

 脳性運動障害を説明するためのもっと新しい理論がないものでしょうか?で、実はそれがあるんですよ、お客さん!・・・・ごめんなさい、安っぽいですね(^^;)

 それの一つがCAMRです。CAMRはシステム論を基にした日本生まれの医療的リハビリテーションの知識・治療体系です。

 学校では人体の構造や各器官・組織などの働きから人の運動システムを理解しますよね。脳が命令して、神経が伝えて、筋肉が収縮し、関節が動く,といった具合です。もし関節が動かなければ、関節か筋肉か,神経か脳かと悪いところを探して治します。まあ、機械の修理と同じやり方です。

 一方でCAMRでは運動システムの作動の特徴から運動システムを理解します。その運動の作動の特徴とは以下のようなものです。

①人の運動システムは,常にその人にとって必要な運動課題を達成しようとする→人の運動システムは生まれながらに自律的な課題達成者である

②必要な課題の達成に問題が発生すると、なんとか問題を解決して課題を達成しようとする→人の運動システムは生まれながらに自律的な問題解決者である

③人の運動システムは達成するべき課題や解決するべき問題があると、身体の内外に利用可能な運動リソース(運動の資源。筋力・柔軟性や大地・道具など)を探し、適切な運動認知によってその課題達成や問題解決を行うための運動スキルを生み出す

④健常な人の運動システムは身体リソースである筋力や柔軟性、持久力、感覚・知覚が豊富で、適切な運動認知によって無限に運動を生み出し、変化させることができる

⑤健常者の運動システムは課題や問題などの状況変化に応じて多様な課題達成や問題解決のための運動スキルを生み出し、修正することができる⑥障がい者では傷病によって,筋力・柔軟性・持久力・感覚などの身体リソースが貧弱になる。そうなると運動認知も不適切になり、柔軟で適応的な運動スキルを生み出すことができない,あるいは難しくなって生活課題達成力が低下する

 これだけでは分かりにくいですが、以上のような①~⑥の作動の特徴を基にリハビリのアプローチを組み立てるのがCAMRのアプローチとなるのです。

 このシリーズでは、システム論を基にしたCAMRを基にすると、脳性運動障害の理解がどうなるか、そしてアプローチがどうなるかを見ていきます。(その2に続く)

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