毎回5分で理解する「要素還元論」と「システム論」(その17)
前回までで、「基礎定位障害」という症候群が、原因や振る舞いそのものだけでは定まらず、その患者さん達が選択している問題解決によってまとめられる形で理解できると述べてきました。
では実際にどんな問題解決をとっているかを説明します。
原因はどうであれ、基本は重力と床の間で体の安定・安心を保つことが難しい障害です。それで以下のような問題解決が選択されます。
①不安な姿勢・動作を避ける、重心を低くする傾向
・座位から起立、立位になるときの動作開始に時間がかかる、躊躇が見られる
・座位から起立時の前方への重心移動の介助を嫌がる
・座位から起立への介助自体に抵抗される様子がある
・立位になってもすぐに座ろうとされる
・何度立位練習を経験しても、いつまでも立位に慣れない、ずっと怖がられる
・重度の場合は臥位から座位になることを嫌がられる、すぐに臥位に戻りたがる
②基底面を広げてバランスを保持しやすくする傾向
・立つ場合は、歩隔を広くする
・杖歩行は3動作歩行で常に2点が接地するようにする
・杖を遠くに突き、基底面を広げる
・坂道などにさしかかるとつま先と歩隔を広げ、基底面をさらに広くする
・T-caneより4点杖やT-cane2本使った方が安心される。また杖よりもピックアップや歩行器を好まれる
・手すりより壁の上部にすがる
・横手すりよりは縦手すりを好み、時に縦手すりにすがるように立つ
・介助者の手を持つより肩に手を置く(なるべく上の方を持って基底面を広く。体幹の揺れも小さい?)
③特定の状況に固執する傾向
・慣れた介助者なら立つが、初めての介護者だと警戒して尻込む、抵抗する
・トイレなどは慣れた場所を好む。新しい場所は拒否されたり躊躇されたりする
・慣れたセラピストと一緒なら、歩行練習もされるし、見た目安定して歩かれるようになるが、1人では決して歩こうとされない
④視覚情報に頼られる
・歩く時は下(床)を見ながら歩く。頭を挙げると不安?
・手すりを持って立っていても後ろ向きに下がるのは苦手。後ろに座るときわざわざ向きを変えて椅子を見て確かめることもある
⑤重心移動を小さくする傾向・体幹を棒のように硬くする
・小刻みに歩行する(通常脚の振り出しの周波数を上げてジャイロ効果を利用して安定させる)
「⑤重心移動を小さくする傾向」はパーキンソン症候群に特有・顕著で、問題解決が他の原因・疾患とは共通していないようにも見えますが、歩行補助具などで基底面を広げたり、より高い位置を持ったりの問題解決はやはり共通に見られると思います。
また時には片麻痺の方にも体を硬くして重心移動を小さくする傾向は見られます・・・実は筆者はまだ迷っているところもあります(^^;)
障害が新しく、まだ慣れていないなどで運動経験が不足して一時的に基礎定位障害が見られる場合は訓練を繰り返すことでこの症状は消えてしまいます。情報リソースのアップデートが必要というわけですね。
一方、小脳失調やパーキンソン、片麻痺の一部の患者さんにはこの改善しにくい基礎定位障害が見られ、筋トレやバランス練習などの身体機能の改善の方針では改善が見られないようです。
軽度の方では、訓練を続けると少しずつ慣れて、活動範囲を広げられる方もいますが、基本的には慣れた環境内で改善が起こることが多いようです。(前回挙げた極まれな積極的自立例はありますが)
根本的に治る様子は見られないので、CAMRでいう環境利用学習(手すりやトイレなどの環境調整とそれを使った繰り返しの成功経験)が適切だと思われます。次回は今回のシリーズのまとめ(最終回に続く)




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