運動リソースとリハビリ(その3)第191週目

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運動リソースとリハビリ(その3)第191週目


 今回も「身体リソース」の続きで「柔軟性」から。柔軟性のリソースは、患者自らが運動課題を通じてアクティブに動けば、それに伴って改善することもできる。しかし、可動域低下があれば自分で動ける運動範囲は自然に小さくなるし、筋力が弱くても十分に運動範囲を広げることはできない。


 そのため多くの場合、徒手的療法または自己あるいはセラピストによるストレッチが手っ取り早く、効率的に改善できることが多い。


 また柔軟性改善で常に気をつけるべきは、全身は筋膜で繋がっているということだ。たとえば足関節の可動域低下があると、膝痛・腰痛・肩凝りや股関節・体幹など遠く離れた部位の可動域が小さくなるなどの問題は同時に存在しやすい。足関節に可動域低下が見つかったから、足関節の可動域改善だけを行うよりは、できればもっと広範囲に全身性に改善する方がより良い効果が出る場合が多い。 上田法の体幹法のような徒手的療法は、体幹を含め四肢の関節を一度に柔らかくするのでお勧めである。


 この柔軟性と前回取り上げた筋力は運動における中心的な身体リソースと言ってよい。


 豊富な筋力と柔軟性は、広範囲で多彩で無限の軌道を生み出し、よりしなやかで力強い運動を生み出す。つまり筋力と柔軟性は豊富であれば豊富であるほど、生活課題達成力をより改善する可能性がある。


 しかし脊髄損傷のように広範囲にマヒがある場合、筋力改善は望めなくても、柔軟性を高めることでできることが増えることはよく知られている。たとえば床上座位からプッシュアップで車椅子への移乗や靴下履きなどである。


 同様に脳性運動障害でも筋力改善はあまり期待できないこともあるが、体幹の可動域が改善すると寝返りができるようになって床上移動が実用的になることもある。体幹の柔軟性が増すと、小さな力で体幹部の重心移動が行えるようになるからだ。


 つまり柔軟性の改善だけによっても運動スキルは多彩になるわけだ。


 柔軟性は大抵の場合、我々セラピストが改善できる運動リソースなので大いに試してみる価値はある。


 もう一つ。痛みもまた身体リソースであると言うと意外な顔をされる。普通「資源として役に立つもの」と思われがちだが、「運動を形作るもの」が運動リソースであり、痛みは 運動にかなりの影響を与える。


 ただし痛みは運動を形作るリソースではあるが、運動パフォーマンスの改善を妨げることから「負の身体リソース」と言える。痛みがあれば筋活動が低下、つまり筋力低下を引き起こすし、運動や重心の移動範囲を小さくしてしまう。つまり柔軟で適応的な運動が制限される。


 疾患・障がい・性別・年齢に限らず、痛みは多くの人達について回る問題だ。運動パフォーマンスを改善する意味でも、その時その場で痛みをできるだけ改善する技術である徒手的療法などはセラピストにとっては必須の技術だろう。(その4に続く)


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