スポーツから学ぶ運動システム(その11)

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スポーツから学ぶ運動システム(その11)


 「課題特定的」というのは、たとえば新奇の課題に対しても、達成のための新しい機能を自ら生み出していくということを意味している。


 何がそれを可能にしているのだろうか? 一つは柔軟で豊富な運動リソースである。運動リソースは身体リソース(身体そのものや身体の持っている筋力、柔軟性、持久力などの性質)と環境リソース(環境内の物理的存在、その性質、動物や他の人など)からなっている。


 人類は生まれて以来、ずっとこの環境の中で生きてきた。環境と人の体は一体になって様々な課題をこなし、生き抜いてきたのである。


 学校では人の運動システムは皮膚に囲まれた体だけに限定されるが、システム論では人の体は真空中で運動しているのではなく、この環境内で運動していて、環境と一体であると考える。つまり人の運動システムはその時、その場の環境と体が課題を達成するために一体化したものと捉える訳だ。


 そして人の身体は元々柔軟で様々な動きを行うことが可能である。更にこの地上を移動するための十分な筋力や体力を持っている。この豊富な身体リソースに加えて、環境内の様々なリソースを運動システムの一部として課題達成のための機能を生み出すためにつかうことができるのである。


 さらに人は自ら道具というそれまで存在しなかった環境リソースを創り出すことができる。石を割って刃物を作ったし、現在では皮膚の微弱電流で移動する装置もできてきている。つまり環境リソースを無限に増やし続けることができる。新奇な課題に対しても、必要な環境リソースを準備して達成するための新しい機能を備えることができる訳だ。


 もう一つは課題を達成するための運動リソースの利用方法である運動スキルを生み出す能力である。たとえば僕達はロープに様々な意味や価値を見いだすことができる。縛ったり、ぶら下げたり、固定したり、燃やしたり、染みさせたり、叩いたり、擦ったり、結んだりと様々な使い方を思いつける。


 生態心理学者のギブソンはこれをアフォーダンスと呼んだ。この環境内のものや自分の身体、身体の性質の意味や価値を見いだす能力が、それを利用し、自分に必要な課題を達成に導く能力にもなるわけだ。


 CAMRでは、運動リソースは「運動システムが課題達成のために利用できる資源」であり、運動スキルとは「必要な課題のために利用可能なリソースを見つけ、工夫し、達成する能力」と定義している。


 つまり人は豊富な運動リソースを持ち、この豊富な運動リソースを利用して、多彩な課題達成方法を生み出す運動スキルの能力を持っているために、新奇な課題でも新たな道具を作ったり、新しい機能を生み出して課題を達成することができるのである。


 だからCAMRでの基本となる訓練方針は「運動リソースを少しでも豊富にし、運動スキルを今より多彩にする」なのである。(その12に続く)


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西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


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