毎回5分で理解する「要素還元論」と「システム論」(その6)
システム論を基にしたCAMRは、人の運動システムの作動の特徴を基に運動システムと障害の理解とそのアプローチを導きます。
ここまでで「状況性」という作動上の特徴を基に「リハビリの内容」が決まり、と「同一課題での運動リソース交換可能性」という特徴を基に留意するべき点が分かりました。また「課題特定性」という特徴で、「リハビリの手段」が明確になりました。
今回テーマにする人の運動システムの作動上の特徴は、「自律的問題解決」です。
人の運動システムの基本的な作動の目的は、人にとって必要な課題を達成することです。つまり安全を確保したり、食事をしたりの必要なものを手に入れたりすることです。そのために人は探し、移動し、ものを操作します。
このやり方は、身体の内外に利用可能な運動リソースを探し、課題達成のためのそれらの運動リソースの利用方法である運動スキルをその場で生み出しては、何とか課題を達成していくわけです。
しかし課題達成になにか問題が起こると、その問題を解決して必要な課題を達成しようとします。
たとえば腰椎ヘルニアで疼痛が生じて動けなくなると、圧迫部分を逃すように逃避的な側彎が生じ体幹部を硬くして動きによる痛みを減らそうとする問題解決が行われます。
「おーい」と呼ばれると、人形のように体幹はそのままの姿勢で脚で踏み換えてふり向いたりしますよね。
また腓骨神経麻痺になると下垂足が起こります。このままでは歩行時につま先が床に引っかかって転倒の危険という問題があるので、膝を高く挙げる鶏歩という問題解決が行われます。片麻痺になると患側下肢の振り出しが困難という問題が生じます。そうすると体幹部の伸展や健側下肢への重心移動による「分回し歩行」という運動スキルによって問題解決を図って歩けるようになります。
これらの問題解決は、特に人が意識していなくても運動システムによって自動的・自律的に行われて、人はそのことを意識することはありません。問題が起こると本人が知らない間に運動システムが自律的に問題解決を図るわけです。
すると私たちは、元々の運動障害の現象に加えて、運動システムの自律的問題解決によって引き起こされる現象の混合状態を目にすることになります。
もし運動システムが自律的問題解決を図っていることを知らなければ、目にする現象は全て障害による現象、つまり全部を症状として見てしまうことになります。
特に脳性運動障害のように麻痺が広範囲・長期に渡って存在することになると、元の症状に加えてたくさんの問題解決による現象が同時に起きているわけで、これがしばしば脳性運動障害を誤解する原因になっているのです。次回からこの点を詳しく説明します。
また自律的問題解決のやり方はCAMRでは6種類に分類されます。以下の通り。
①探索利用スキル
②外骨格系問題解決
③不使用の問題解決
④骨靱帯性問題解決
⑤健康時の問題解決
⑥安心確保の問題解決
これらも次回から詳しく説明して行きます(その7に続く)
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