脳性運動障害の理解を見直す(その5)

目安時間:約 3分

脳性運動障害の理解を見直す(その5)

 さて、ここまでのまとめです。

 ジャクソンは脳の障害後に現れる現象を全て症状としました。まさか人の運動システムが課題達成に生じた問題を自律的に解決しているなどとは夢にも思わなかったのでしょう。

 またジャクソンは脳性運動障害後に見られる現象を全て神経要素だけで説明しようとしました。そうするとどうしても無理が出てきます。筋の硬さは筋の固有の性状変化の視点を入れないと神経要素だけでは説明できません。

 さて前回までは「外骨格系問題解決」という弛緩状態の体を硬くする自律的問題解決の一つを紹介しました。実は自律的問題解決には全体で6種類あるとCAMRでは考えています。以下の通り。

 ①探索利用スキル

 ②外骨格系問題解決

 ③不使用の問題解決

 ④骨靱帯性問題解決

 ⑤健康時の問題解決

 ⑥安心確保の問題解決探索利用スキル

 今回からそれぞれの問題解決について説明します。

①探索利用スキル

 探索利用スキルは人の運動システムに普通に見られる課題達成のやり方であり、問題解決のやり方です。

 この代表的な例は、片麻痺患者さんに見られる分回し歩行です。患者さんが立たれるようになると歩行練習になるのですが、最初患側下肢を振り出そうとすると脚が全く出ないことがあります。

 しかし歩行という運動課題を達成するためにはなんとしても患側下肢の振り出しをしないといけません。そこで患者さんは自分の身体に患側下肢を動かすための運動リソースを探索します。たとえば健側下肢へ重心移動すると、患側下肢が浮いてきます。この状態から体幹と健側下肢を中心に体を振るやり方を見つけると患側下肢を振り出すことが可能になります。つまり分回し歩行スキルの発見です。

 その他にも背中が痒いのですが、手が届きません。何とかかゆみをとろうと身の回りを探索します。そうすると新聞紙を見つけました。新聞紙を手に取りくるくると細く丸めて細い棒を作ります。それを半分に折って強度を上げてから背中をかくという運動スキルで課題を達成しました。

 こんなふうに探索利用スキルの特徴は、身体の内外に利用可能な運動リソースを探索し、それらの利用方法である運動スキルを生み出しては、必要な課題を達成するわけです。問題解決も同じです。

 この「身体の内外に利用可能な運動リソースを見つけて利用する」というやり方が人間や動物の課題達成と問題解決の基本になります。(その6に続く)

※毎週木曜日にはNo+e仁別のエッセイを投稿しています。最新作は、「君たちははどう生きるか-リハビリのセラピスト達へ(その4)」https://note.com/camr_reha/

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