俺のウォーキング:理学療法士らしく(その4)

目安時間:約 5分

俺のウォーキング:理学療法士らしく(その4)


 俺のウォーキングの目的は、痛みを予防・改善しながら、身体リソースを豊富にし、痛みが起きない歩行で健康をアップさせることであった。しかし、現実の世界ではしばしば目的の達成を邪魔してくるものがあるのである。


 「俺のウォーキング」においてそれは「デュエル」であった。俺がそれに最初気がついたのは歩き始めて3日目だった。毎日同じ時間に歩いているのだが、いつも決まった5-6組の人たちが歩いている。その中に白髪の70代前半と思われる男性がいる。3日目のこと、その男性が前をゆっくりと歩いているので追い越したのだが、その後すぐに抜き返されたのである。俺は少し脚を速めて抜き返そうと思ったが、むしろ距離はどんどん離されていく・・・結局「デュエル・ロード」とその後に呼ぶことになった道路の端にたどり着いてしまった。彼はそこにある公園に小休止という風に立ち止まる。素知らぬ顔で僕の方を見ようともしない。しかし、明らかに勝ち誇っているのである。


 俺は汗をかき、息を乱していた。結構真剣に歩いたのだ。だが早く歩けないし、体力もない。白髪の年上の男性は明らかに息も乱していない。涼しい顔である。


 もちろんなんと言うことはない。少し悔しかったので早足で追い抜き返そうと思ったのだ。ただそれだけである。が、これがなぜか抜けない・・


 そもそもが俺のウォーキングの目的は「痛みが出ないように」であるから、デュエルなどはもってのほかである。無理をすれば痛みが出るものだ。だから「俺は抑えながら歩いているから、遅いのが当たり前である」と努めて冷静に考える・・・


 しかし、その後、なんと一週間の間に、3回も追い越され、突き放されてしまった。そして公園で立ち止まり、素知らぬ顔で「ふふん!」とやっているのである。まるで俺が歩き始めるのを隠れて待っていて、後から追い抜くことを計画しているのではないか?と思わせる。


 もちろんなんと言うことはない。歩行時にはナイキの提供しているランニング・ソフトを利用しているのだが、開始時の俺の1キロ当たりの時間は12分40秒以上もかかっている。元々速く歩くつもりはなかったのでのんびりと景色を楽しみながら歩くつもりだった。だから遅いのだ!と思うのだが、やはり悔しい。「今に見ておれ!」などという言葉が自然に湧き上がってくるのだから仕方ない(^^; 俺は彼に尊敬の念を込めて「白い狩人」という通り名を捧げた。白髪でいつも俺を後から追ってくるからだ。


 早速家に帰ってプログラムを考え直した。開始前の体幹のストレッチと下肢のリリースを念入りにすることにした。また歩行時に「歩幅を少しずつ広くする」という課題を取り入れることにした。元々痛みを避けるために人より歩幅が小さいのだ。俺は家の近くのガードレールで色々試す。このガードレールの三本の柱の間を普通に歩くと9歩強で歩くのだが、まずこれを8歩で歩くという課題とした。ただいきなり速度を上げた歩行でこれを試してみると、膝に軽い痛みのような微妙な違和感が生じる。先々では痛みになりそうだ・・・ゆっくりと慣らさなくてはならぬ。


 そこでしばらくデュエル・ロードを歩くのを止めた。他の道路で自分のペースで牙を磨くことにしたのである。そして俺の通り名は「白い狩人」に対抗して「灰色のオオカミ」とした(^^;(灰色は頭の色からとった)


 そして「白い狩人」との決戦は3週間後と定めた!3週間あれば筋力・体力などの身体リソースも改善し、安定しているだろう。さて、勝敗はいかに!?(その5へ続く)♯持続可能な社会のために今、この場でできる事を考えてみよう!

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俺のウォーキング:理学療法士らしく(その2)

目安時間:約 5分

俺のウォーキング:理学療法士らしく(その2)


 前回は俺の健康問題と膝痛問題の紹介で今回もその続きである。


 膝痛時の探索歩行は、歩行時の膝痛をなんとかしたいと始めたものだ。一応要素課題として、足・膝・股関節周辺のリリースとストレッチを行う。そして痛みを軽くする。時間があるときは、板跨ぎ(板の上に置いた患側下肢で支えながら、反対側で様々に跨いで戻る運動)やつま先立ちなどの等尺性の収縮運動課題も行う。その後、歩行速度や荷重の仕方、足を置く位置を少しずつ工夫しながら、痛みの減る、あるいは痛みの消える歩き方を探していくのである。


 通常膝の痛みがあると、痛みに対して保護的に脚を硬くして、かたくなに大地との接触を恐れ、避けようとして、接触時間を短くしようとするものだ。


 しかし人は元々無限に変化する大地を適応的に歩いてきたのである。それは無限の変化に対して、実に多様な体重支持や重心移動のスキルによって荷重・重心移動・振り出しを行ってきたからである。人の運動システムは無限の変化を起こして、適応してきたのである。だから本来同じように見えても膝を支えながら重心移動するスキルは無限に存在すると考えて良い。だからそれらの中には痛みを軽くするスキルが必ず存在すると信じて探すのである。


 つまり俺の場合は大地を避けるのではなく、逆に膝と大地が痛くないように一体化するような試みをするのである。絶え間なく大地との会話を行うようにしたのである・・・こういう表現をすると自然派宗教の教祖みたいでイヤだが、これが俺のリアルに一番近い表現なので仕方ない。


 実際比較的軽度のデイケア利用者でも、足・膝・股関節回りの柔軟性を改善した後に、色々試して歩いてみるとかなり痛みが軽くなったり、消えたりする歩き方を発見することができる。そしてそれを繰り返すのである。ポイントは最初に徒手療法で痛みの感じを変えることと、「痛くない歩き方が必ずあります」と囁くことである(^^; さらにこのとき大事なのは、たった一つの良い歩き方を見つけることが目標ではなく、その時、その場で楽になる歩き方を見つけることである。


「前回はこうやったら良かった」と考えることは参考にはなるが、それで必ず良くなる訳ではない。前回と今回では状況が異なるからである。だから良い歩き方を見つけてそれを覚えるのではなく、その時、その場で楽な歩き方を探索するやり方を発見、身に付けることである。


 これは認知症の比較的軽い高齢の利用者さんでもやり方を教えると同じような経験を報告してくれる。もちろん前提としてはある程度運動リソースに余力のある方である。(詳しくはCAMRの講義や動画などで)


 またこれは今回の「俺のウォーキング」でも大変役に立った。寒くなったりすると不意に膝痛が出てくることがある。また歳をとると、不意に思わぬところが痛んだりもする。そんな場合にも僕はすぐに探索歩行を始めるのである。探索歩行を始めてもう20年になる大ベテランである。だからほとんど無意識に探索歩行を始める。最近は「あれ、痛いな」と思うだけで、どうやっているのか知らないが運動システムが勝手に痛みのない歩き方をすぐに見つけてくれるようになっている。


 そしてこの「要素課題によって運動リソースを豊富にし、板跨ぎや探索歩行などの課題スキル学習で運動スキルを多彩にする」というこの二本立てのアプローチの内容が後にCAMRの骨格となったのである。(その3に続く)♯持続可能な社会のために!今、この場でできる事を考えてみよう!


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