俺のウォーキング:理学療法士らしく(その2)

目安時間:約 5分

俺のウォーキング:理学療法士らしく(その2)


 前回は俺の健康問題と膝痛問題の紹介で今回もその続きである。


 膝痛時の探索歩行は、歩行時の膝痛をなんとかしたいと始めたものだ。一応要素課題として、足・膝・股関節周辺のリリースとストレッチを行う。そして痛みを軽くする。時間があるときは、板跨ぎ(板の上に置いた患側下肢で支えながら、反対側で様々に跨いで戻る運動)やつま先立ちなどの等尺性の収縮運動課題も行う。その後、歩行速度や荷重の仕方、足を置く位置を少しずつ工夫しながら、痛みの減る、あるいは痛みの消える歩き方を探していくのである。


 通常膝の痛みがあると、痛みに対して保護的に脚を硬くして、かたくなに大地との接触を恐れ、避けようとして、接触時間を短くしようとするものだ。


 しかし人は元々無限に変化する大地を適応的に歩いてきたのである。それは無限の変化に対して、実に多様な体重支持や重心移動のスキルによって荷重・重心移動・振り出しを行ってきたからである。人の運動システムは無限の変化を起こして、適応してきたのである。だから本来同じように見えても膝を支えながら重心移動するスキルは無限に存在すると考えて良い。だからそれらの中には痛みを軽くするスキルが必ず存在すると信じて探すのである。


 つまり俺の場合は大地を避けるのではなく、逆に膝と大地が痛くないように一体化するような試みをするのである。絶え間なく大地との会話を行うようにしたのである・・・こういう表現をすると自然派宗教の教祖みたいでイヤだが、これが俺のリアルに一番近い表現なので仕方ない。


 実際比較的軽度のデイケア利用者でも、足・膝・股関節回りの柔軟性を改善した後に、色々試して歩いてみるとかなり痛みが軽くなったり、消えたりする歩き方を発見することができる。そしてそれを繰り返すのである。ポイントは最初に徒手療法で痛みの感じを変えることと、「痛くない歩き方が必ずあります」と囁くことである(^^; さらにこのとき大事なのは、たった一つの良い歩き方を見つけることが目標ではなく、その時、その場で楽になる歩き方を見つけることである。


「前回はこうやったら良かった」と考えることは参考にはなるが、それで必ず良くなる訳ではない。前回と今回では状況が異なるからである。だから良い歩き方を見つけてそれを覚えるのではなく、その時、その場で楽な歩き方を探索するやり方を発見、身に付けることである。


 これは認知症の比較的軽い高齢の利用者さんでもやり方を教えると同じような経験を報告してくれる。もちろん前提としてはある程度運動リソースに余力のある方である。(詳しくはCAMRの講義や動画などで)


 またこれは今回の「俺のウォーキング」でも大変役に立った。寒くなったりすると不意に膝痛が出てくることがある。また歳をとると、不意に思わぬところが痛んだりもする。そんな場合にも僕はすぐに探索歩行を始めるのである。探索歩行を始めてもう20年になる大ベテランである。だからほとんど無意識に探索歩行を始める。最近は「あれ、痛いな」と思うだけで、どうやっているのか知らないが運動システムが勝手に痛みのない歩き方をすぐに見つけてくれるようになっている。


 そしてこの「要素課題によって運動リソースを豊富にし、板跨ぎや探索歩行などの課題スキル学習で運動スキルを多彩にする」というこの二本立てのアプローチの内容が後にCAMRの骨格となったのである。(その3に続く)♯持続可能な社会のために!今、この場でできる事を考えてみよう!


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俺のウォーキング-理学療法士らしく(その1)

目安時間:約 4分

俺のウォーキング-理学療法士らしく(その1)


 俺がウォーキングを始めようと思ったのは、長らく務めた老健施設を退職する2週間前だった。居間に置いてあった女房の中年女性向け雑誌のウォーキングの記事が目にとまったからだ。退職後は新たな事業に取り組むつもりであったが、やはり気になるのは健康のことだ。やりたいことを続けるためにも健康問題は、とにかくとり組むべき重要課題である。


 何しろずっと高血圧の状態である。いつ測っても上は少なくとも150くらいである。「うーむ、これは大変である。なんとかせねば・・・」と思いつつ、ずっとほったらかしてきた(^^; それにやや肥満気味(^^; また30代に起こしたバイク事故の怪我後、右膝の変形性膝関節症にも悩んできた。44歳の時、階段を降りていたら右膝が膝折れを起こしそうになった。「こけるかと思ったぜ!」と、見てみると右膝は浮腫の状態でぷっくらと膨れ上がっていた。力が入らなかったのである。時々痛みも起こし、MRIでみると半月板などはぐちゃぐちゃになって消失し、軟骨もすり減っている状態であった。


 「まだ若いのに・・・」と不安に駆られた俺は、早速サプリメントを買って飲んだのだ。結局わかったのはサプリメントを飲んでいても痛いときもあれば、痛くないときもあるのである。もともと飲んでいなくても痛いときもあり、痛くないときもありの状態であった。結局、「ややや!同じではないか!」つまり効果はないというのが俺の結論である。


 もともと初期の変形性膝関節症は痛い時と痛くない時をくり返すものである。もし痛いときに飲んだらそのうち痛みは軽くなるが、別に飲まなくたって軽くなるのである。ただ心理的には、解決手段があると言うのは心強いものである。「痛くなれば飲めば良い」という問題解決の選択肢は大きな安心感になるだろう。


 だが解決の選択肢がサプリメントだけだと、徐々に悪くなることが予想される。膝関節は有り余る筋力と多様な筋活動のスキルでもって安定性と運動性を保証されている関節である。


 変形性膝関節症の多くは、運動不足や活動性低下などによって貧弱になった筋力やスキルのために関節の機能低下が起きたためと考えられる。俺もちょうど44歳の頃は、肥満と運動不足の絶頂期であった。


 もしサプリメントを飲んだだけで、適切な運動をしなければ、そして更に肥満などが加わると余計にストレスがかかり、膝関節の機能は更に低下して、変形性膝関節症は重度化していくのである。


 僕の場合、サプリメントの失敗の後は理学療法士らしく、「探索歩行」と「いくつかの運動課題設定プログラム」を工夫して痛みを改善してきた。今は通常痛みを感じることはないが、普段しない活動(斜面での草刈り、バトミントンなどで頭に血が上って無理な動きをする(^^;など)で痛みが出るときもある。しかし上記のプログラムをくり返しながら、なんとか痛みは改善した状態を維持している。このプログラムは実際、デイケアなどで痛みを訴えて訪れる利用者の痛み改善にも大いに役立ったものだ。(その2に続く)

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