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「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して その3」です。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆
CAMRの実例紹介-症例を通して その3
※個人の感想です(^^;)
秋山です。右片麻痺の方の患側支持練習の結果編です。
立位課題に対しては回数を増やす等、適宜ご本人と相談しながら進めました。歩行訓練は、距離やコースは本人にお任せ、私は何も指示することも介助することもなく、いざという時の見守りでした。
立位課題の左右重心移動で右への動きが拡大してきたり、健側の前方踏み出しが広がったりと、患側下肢での支持がちょっと長くなりました。そのように患側下肢をより使うようになられたなと思う頃に、「今日は右足がよく出るから、もう少し歩く」と自分から言われることが増え、全体に距離が伸びてきました。
「足がまっすぐ出た」とは本人は感じないけど、「足がみやすく(簡単に)出て楽だった」という本人にとってプラスの変化を実感されていました。その方は、「ちゃんと歩くためには、足がまっすぐ出ていないといけない」から「歩きやすいと感じる時は足もよく出てる。いろいろ運動しておくと歩きやすい」と思われるようになっています。
しかしセラピストの視点からは、右半身が後ろに引けていたのが目立たなくなり、右足も側方からではなくより前方に振出す、つまりよりまっすぐに振り出すようになられました。形も変化しているのです。おそらく健側下肢が前方により大きく出るので推進力が増し、患側下肢は筋などの粘性で、前方により強く引っ張られ、ぶん回しスキルへの依存が少なくなったのでしょう。結果、図らずも脚は以前よりはまっすぐに振り出される形になったわけです。
CAMRの視点からみてみましょう。CAMRでは正しい運動、間違った運動という見方はしません。中枢神経障害により異常運動=正常から逸脱した運動が出現しているとみるのではなく、障害に加えてそれに対する運動システムの問題解決などの相互作用からその状態になっていると考えます。
今回のクライアントの患側下肢がまっすぐ出ないという現象は、麻痺して今までのやり方では振り出せなくなった下肢を何とか振り出そうとした結果とも言えます。麻痺した下肢を振り出すためには健側下肢と体幹で振り出すしかなかったのです。異常な運動が出たのではなく、使える機能で何とか「歩く」という運動問題を解決しようとした。目にしている運動の形はそのようにして選択されたものです。
だからアプローチとしてはこの方が脚をまっすぐに振り出すことを目標にしても失敗経験を繰り返すだけです。むしろ柔軟性を改善し、荷重経験を繰り返し、患者さん自身がより歩きやすいスキルを探索された結果、つまり運動システムの作動が変化した結果として形も変わってきたのです。
ただ、運動システムが選択した問題解決は、常に最適とは限りません。本当は他の解決方法があるかも知れない。そこは何とかしたい。この方の場合は、麻痺側下肢の支持機能があるのに動作では十分に使っていないことがわかり、本人も納得されて麻痺側での支持を行う課題を実施、システムの作動が変化して歩きやすくなりました。
健常者の運動の形を真似するという目標はあまり意味がありません。できれば自然にしていることですから。むしろ運動システムの問題解決を理解し、適切な要素を変化させたり、支持や振出し、重心移動という機能(働き)から運動を見て、変化できることから取り組む例として、みなさんに伝われば幸いです。(終わり)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆
【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版
【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①
【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤
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意欲のない人(その1)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿
「ともかく母は、意欲がないんです!」とその女性は力強く締めくくった。
彼女の長い話は以下の様にまとめられる。
彼女の母親は4年前に脳卒中を発症。現在80代前半で肥満。若いときから主婦として二人の子供を育てた。また宗教団体の地域の世話役などをやっていたというが、「元々はそれ程社交的な性格ではなかった」そうだ。6年前に夫に先立たれ元気がなくなっていたが、病気になってから更に引っ込み思案になったらしい。見かけによらず頑固で、「母親の言うことを聞かないといつまでも大変・・・」とのこと。
発症直後、マヒは軽く少し不自由そうくらい。認知症は全くなく、薬やお金の管理は一人でされる。リハビリをして杖で外も歩けるし、部屋の中は杖なしでトイレなどに行く様になった。料理も洗濯もなんとかできるし、風呂も一人で入れるので、それまでの一人暮らしを続けることになった。
しかしどうも自分から動こうとしない。決して一人で外には出ない。要支援2で、ケアマネに相談して訪問介護で、買いものや掃除のサービスを利用し、他に週一回は外歩きに付き添いをして貰うことにした。また他に週2回は半日のデイサービスを利用して貰った。
しばらくはそれで問題なかったのだが、相変わらず自分から積極的に動こうとされず、一人の時は椅子に座ってただテレビを見続けているとのこと。
さらに娘さんが1年前に退職して、週に何度か訪れる様になってより依存的になってますます動かなくなったらしく、体重も増えた。最近は「脚がしびれる、脚が不自由、何もできない」と料理などもしなくなっているとのこと。娘さんが来ないときは宅配の弁当を頼むようになった。
そして今は何よりもトイレの失敗が目立つ様になった。
まず紙パンツを着けているが尿を漏らしてもそのまま座っている。椅子のクッションや床のカーペットも尿臭がある。「トイレに行け」と言っても「今はないから行かない」とか言って動こうとしない。「おしっこはわかる?」と聞くと「わかる」という。紙パンツでは吸いきれないのでパッドを入れることにしたが、パンパンになって漏れているのに動かない。娘さんが失敗を指摘しても「ええ、そうなの?」ととぼけるか誤魔化すかしている印象とのこと。
本人も失敗は気にしていたらしい。最初の頃は濡れた服は自分で洗濯していた。しかし最近は慣れてしまったのか、娘さんに全部平気で出すようになった。 どうも動くのが面倒らしく、濡れた紙パンツの中にさらにティッシュを入れて少しでも吸い取らせようとするらしく、トイレに行ってそのぬれたティッシュの塊が便器に落ちて水洗トイレが詰まったここともある。
トイレの失敗について本人に相談したり、説得したり、怒ったりしたが、本人は「わかっている、でも脚がしびれるの。体もしんどいの。脚もこんなに腫れて・・・入院して全部治して貰いたい」などと言う。時には「もう私なんか死んだ方が良いのよ!」と逆ギレする。
「結局、意欲がないから動こうとしないし、それでだんだん筋力が衰えてきて動けなくなって、手足も腫れてくるし、弱って動けなくなっちゃったのよ。なんとか意欲が高まらないかと買いものや外食、小旅行に連れてったり、昔趣味だった手芸なども勧めると、その時は元気になるけど、その後は一人になると相変わらず家の中では動かない」
「こんなに臭くなってデイサービスで嫌がられるでしょう」と言うと「デイサービスに行く前の日は風呂に入ってきれいにしている」と答える。「しびれる、痛い」とは言っても、どうもやろうと思えばできそうなのである。
「私も今のところ週2回来るのが精一杯。ともかく問題はあまりに自分で何とかしようという意欲がないこと。なんとか母親の意欲を高めてほしいんです」というのが彼女の依頼内容だ。(その2に続く)
【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版
【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①
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みなさん、ハローです!
「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して その2」です。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆
CAMRの実践紹介-症例を通して その2
※個人の感想です(^^;)
歩行時に麻痺側をまっすぐ振り出せと言われ続けた右片麻痺の患者さん。運動システムの立場に立ってもう一度患者さんの歩行を観察してみます。そうすると・・・
患側下肢を振り出そうとしても麻痺のために振り出すことができません。「どうしよう?何とかしないと・・・」そこで健側へ大きく重心移動し、体幹を側後方へ反らせて患側下肢を持ちあげ振り出してみると何とか振り出せます。運動システムは、健側を使った分回しというやり方で問題解決をして何とか課題達成をしていることがわかります。
これを修正するためには「患側下肢の麻痺が治る、改善する」という条件が考えられますが、「麻痺を治すのは無理。運動システムがとった問題解決は現時点では最良なのだろう」と考え、ここにはアプローチしません。
一方健側下肢の振り出しは、ほんの少しです。患側下肢の支持の時間がとても短いので、少ししか出せないのです。発症直後のリハビリでは、患側支持の練習もしたそうですが、「難しかった」そうです。
長い在宅生活の中で、難しいからやらなくなったり、転倒の不安から麻痺側での体重支持を避けるようになってきたのかもしれません。つまり患側下肢をできるだけ使わないようにする「不使用」という問題解決を運動システムが選択したと考えられます。
しかしセラピストの目から見ると、患側下肢の支持性はかなりしっかりしているように思います。実は10年間も歩き続けているので、患側下肢の支持性は急性期に比べてかなり良くなっているのです。
運動システムの不使用の問題解決は無意識に起きているので、ご本人はまったく気づいていません。だから「良い足の方が出ない!!なんで?」と不思議がられているのです。運動システムはできるだけ患肢を使わないようにしているのでまったく気がついていない。もったいない話です。だから「患者さんと運動システムに患側下肢の支持性に気づいてもらって、それを積極的に使用する」方向へ持って行く必要があります。
具体的なプログラムは、柔軟性を高めて運動範囲を広げるために上田法体幹法、患側下肢の荷重経験を積むために装具なしの立位左右重心移動・ハーフスクワット・装具つけて下肢横上げ・踏み出し練習、本人希望の屋外歩行(雨の日は廊下の往復)を行いました。患側支持は「病気になってすぐの頃のリハビリ以来だから、ちょっと怖い」と言われましたが、自分なりに動きの幅の目標を立てるなど、意欲的に取り組まれました。
さてさて、その結果は・・・。(続く)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆
【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版
【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①
【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤
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みなさん、ハローです!
CAMR入門シリーズの第五弾が出版されました!
出版を記念して以下の詳細にて無料キャンペーンを実施します。ぜひこの機会にCAMRのアイデアに触れてみください。
☆★☆★☆★★☆出版記念 無料キャンペーン★☆★☆★☆★☆
著者 : 西尾 幸敏
書名 : リハビリの限界?セラピストは何をする人?
無料キャンペーン期間: 7月21日(水)16:00~7月26日(月)15:59
☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆
【はじめに】
この本はCAMRのFacebook pageに掲載された「リハビリの限界?どうしても良くならない」(2020年1月7日~2020年2月4日の計5回)を大幅に加筆・修正したものと「セラピストは何をする人?」(2021年3月16日~2021年4月13日の計5回)を合わせたものです。
この二本を組み合わせた意図は、本書の編集責任者でありCAMR研究会副代表の田上氏が編集後記に述べています。
僕は若い頃から、リハビリの場面ではいろんな考えに惑わされてきました。
代表的な考え方は「セラピストが諦めたらダメだ!諦めずに頑張ったらいつか目標が達成できる。それが私たちの仕事で大事!」という信念めいた考え方でしょうか。いや、確かにその通りなので反論のしようがありません。でもこれが達成不可能な目標、たとえば「リハビリで麻痺を治す」とか「この患者さんが家で絶対に倒れないようにする」などに向けられると大変です。
患者さんとセラピストが一緒になって「麻痺を治す」という目標を持ってしまうと、延々と停滞の状態、つまり変化のない状態でのリハビリとなってしまいます。現状、麻痺はリハビリでは治らないからです。そして人生の目標はリハビリをやり続けることというリハビリ漬けみたいな人生になるかもしれません。
また、もしまったく転倒させないことを目標にするなら、筋力強化よりは立ったり歩いたりしないことかもしれません。歩く限り転倒の可能性はついてまわるからです。
この「何があっても理想を実現するまでは諦めない」という姿勢はユートピアン・シンドロームと呼ばれます。達成不可能な夢を追い続けるという行為で、むしろ「理想を諦めないで努力し続ける」ということ自体が目的となっています。そのために患者さんの運動問題を解決するのではなく、むしろ運動問題をずっと維持し続けるという結果を引き起こします。
もう一つの代表的な考え方は、「リハビリの業務は、運動能力を改善すること」というものです。「リハビリで扱う運動問題は、運動能力の低下による問題であり、これに対処するにはリハビリで運動能力を改善することである」とも言えます。もっと明確に表すと「リハビリの主目的は運動能力の改善」と信じることです。もちろんこの考えはここまで明確な形をとらないことが多いのです。「身体ばかりでなく、全人間的に見るのがリハビリ」と言われたりするからです。でもこれは私たちの考えの背景にずっしりと居座っています。
これは私たちが学校で習う、要素還元論を基にした「原因解決の方法論」に起源があるように思います。私たちは問題が起きると、その原因を探りその原因にアプローチして問題解決を図るように習ってきました。多くの場合身体に原因があるので、どうしても身体をどうにかしようとするのですね。
これは脳性運動障害では、「麻痺は脳細胞が壊れたことが原因であるから、壊れた脳細胞を再生させる、あるいは機能的に再生させる」として「麻痺を治そう」、あるいは「障害を治そう」というユートピアン・ドリームにも繋がっています。
また転倒しやすいのは、「筋力低下やバランス能力の低下にある」としてやはり身体能力の改善に徹底的にこだわったりする傾向を生み出します。転倒の原因は単純に筋力低下やバランス能力低下などの単純・素朴な因果関係で説明できるものばかりではありません。環境や性格や認知など様々な要素の相互作用と考えるべきでしょう。しかし運動能力だけに焦点を当ててそればかりをやってしまいがちな傾向を生み出すのです。
これらの「ユートピアン・シンドローム」や「運動問題の改善には運動能力の改善をすること」は私たちの思考の背景に居座っていて、表面的に正論ぽくて、すぐに否定が難しいのでやっかいです。ここではこれらの代わりの考え方を提案しています。ユートピアン・ドリームの代わりに「比較的短期間で達成可能な目標」です。私たちが対象とする問題は「運動問題」ではなく「生活問題」です。「障害を治して運動問題を解決する」のではなく「状況を変化させて生活問題の改善を目標とする」です。「原因を追及して原因にアプローチする」代わりに「状況を変化させるアプローチ」を提案してします。
実は僕自身がユートピアン・ドリームに囚われたり、身体能力の改善だけに焦点を当てたりしていた時期もあります。これらの考え方に囚われると、目の前の患者さんの全体像が把握できなくなって問題解決が遅れたり、できなくなったりすることがありました。
たとえば目の前の患者さんの抱える問題より、将来の麻痺の治った状態を夢見たりするわけです。結果、環境を少し調整すれば消えてしまうような生活問題も、ずっと身体能力の改善(麻痺を治す)を通して解決しようとして停滞の状態に陥ってしまうのです。「今、我慢して頑張れば将来はきっと素敵な人生が待っている」と患者さんや家族に過剰な努力を強いたりしてしまうのです。現実的に、そして持続的にも達成可能な目標ではないのですね。
まあ、これらの反省を基にこのCAMRというアプローチは発展してきたのです。
内容的にはまだ不十分ですが、現状に満足していないセラピストには一つの大きなヒントになるのではないだろうかと考えています。
2021年7月初旬 年々強くなる雨に恐れを抱きながら
西尾幸敏
【編集後記】
本書はCAMR入門シリーズの第五弾となります。いかがだったでしょうか?
今回はセラピストとしての在り方をテーマとした二部構成になっています。第一部は、困難事例だからといってすぐに諦めたりせず、なおかつ夢見るユートピアンにもならずにすむ現実的な方法論、状況変化アプローチが紹介されています。
通常養成校で習うのは、要素還元論に基づく原因解決アプローチです。これも優れた方法論の一つではありますが、原因を特定できない場合や、原因はわかっても対処不能な場合などには無力になってしまいます。そんな時に他の方法論を知らなければ、行き詰まって問題解決を諦めてしまうか、ユートピアンとなって効果のほどもわからないまま漫然と同じプログラムを繰り返すことにもなりかねません。
たった一つの方法論しか知らないセラピストと、二つの方法論を状況に応じて使い分けることが出来るセラピストがいるとしたら、あなたはプロのセラピストとしてどちらが好ましいと思いますか?あるいは、もしあなたがクライエントだったとしたら、どちらのセラピストに担当してもらいたいと思いますか?ぜひ考えてみてください。
そして、ここでは運動システムによる問題解決の一つである「安心確保方略」をとる症例が取り上げられ、臨床像やアプローチの例が紹介されています。訓練場面でのパフォーマンスが生活場面でのパフォーマンスに反映されにくいケースというのは、みなさんも経験されたことがあると思います。昔から「“できるADL”と“しているADL”の違い」といったテーマでも取り上げられています。“できるADL”と“しているADL”ではそもそも課題が異なっているので違っていて当然という面もあるのですが、それとは別に、こういったケースの中には「安心確保方略」をとっているものもいくつか含まれているのかもしれません。今ならそれを見抜き、ケースごとにもっと適切な対応が出来ると思うのですが・・・、自身の過去を振り返ると反省しきりです(;^_^A
第二部では、著者の経験を振り返りながらセラピストとしての在り方を考察しています。時代背景的にもちょっとしたリハビリの歴史を概観しているかのようです。ここではセラピストの役割に焦点を当てつつ、著者の現時点での結論が述べられています。クライエントへのリスペクトやプロのセラピストとしての矜持が感じられ、個人的にはとても共感できるものでした。みなさんはどう思われたでしょうか?
CAMR入門シリーズにしては少し重めの内容だったかもしれませんが、その分読み応えがあったのではないかと思います。本書をCAMR入門シリーズのラインナップに加えることができて嬉しく思います。本書が少しでもみなさんのお役に立てることを願っています。最後まで目を通していただき、ありがとうございます。
2021年7月 ビールが美味しくなってきた今日この頃
CAMR研究会副代表 田上 幸生
【目次】
CAMR入門シリーズ⑤ リハビリの限界? セラピストは何をする人?
はじめに
目次
第一部 リハビリの限界?どうしても良くならない!
第1章 安心確保方略をとる片麻痺患者
1.症例紹介
2.順調な改善、かと思いきや・・・
3.「安心確保方略」の正体
4.通常のアプローチは・・・
第2章 リハビリの限界?
1.リハビリの限界と個人の限界
2.リハビリの限界とは?
3.生活課題達成上の運動問題に着目する
第3章 状況変化アプローチ
1.問題解決を見てみよう
2.「安心確保方略」が見られる場合はどうするか?
3.結果は・・・
4.考察
第4章 失禁のある症例への状況変化アプローチ
1.症例紹介
2.現実的な問題解決のための目標と治療方略を考える
3.できることは何でもやる
4.結果
5.状況変化アプローチの手法とは
第二部 セラピストは何をする人?
第5章 従来的なパラダイムへの疑問
1.セラピストは運動のやり方を教える人?
2.おじいちゃんの一喝
3.ボバース全盛時代
4.湧き上がる疑問
5.人間機械論
第6章 システム論との出会い
1.上田先生との出会い
2.アメリカ留学中に見た課題主導型アプローチ
3.課題主導型アプローチへの疑問
4.自分の経験や考えをまとめてみる
5.現場復帰 ~CAMRの胎動
第7章 脇役としてのセラピスト像
1.セラピストは何をする人?
2.集え!Young CAMRer!
編集後記
CAMR研究会について
著者紹介
著書
【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版
【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①
【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤
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知覚システムについて考える(最終回)
結局僕はその後、その職場を離れたのですが、今思うと、文字盤のコミュニケーションが可能だったのは、上田法をいくつも組み合わせて全身に行った後ではなかったかと思います。
つまり上田法によって体が緩み、ボーンスペースが動くか動かないかの問題ではないか?ベルンシュタインの例で示した様に、眼球が動かないときには、対象物の形や大きさが判別できないという知覚システムの性質にあるのではないか?自ら能動的に動いて初めて形が判別できるので、実は見ていても眼球は動かず文字を認知できなかったのではないか?
Carr & Shephardが、脳卒中後に弛緩状態になると感覚脱失が起こるが、自ら動き始めると感覚は回復すると言っていましたが、逆に硬くなりすぎてボーンスペースが動かないときも同じように視覚の低下のようなものが起こるのではないか。
実は上田法を全身的に行うとそれなりの時間がかかり訓練時間を超過することも多いのです。だから上田法後に文字盤の訓練をする時間がなくなってしまうのです。たまに時間の余裕のあるときに、上田法後に文字盤を使ったのです。読めたのはその時ではないか?
逆に文字盤を使ったコミュニケーション練習をメインに行うときは、上田法を行うと時間がなくなるので、上田法なしでいきなりそれをやっていたのです。ご家族も普段の生活の中で常に文字盤の練習をやろうとされていましたので、ほとんどの場合、眼球の動きが悪くて読めなかったのではないか?
セラピストの習性で、身体を動き、課題を達成するシステムとしては捉えるけれど、動く知覚システムとしてその性質から考えてみる視点が欠けていたのではないか?
あるいは他の気がつかない可能性もあるのか?どうも自信がありません。
とりあえずこのアイデアを元の職場の同僚に送ってみました。結果はどうなるでしょうか? 僕自身、より多くの人の意見を聞いてみたいと投稿することにしました。どうか多くの方からご意見いただける様お願いします。職場を離れた今でも大きな心残りの一つなのです(終わり)
【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版
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