スポーツから学ぶ運動システム(その7)

目安時間:約 5分

スポーツから学ぶ運動システム(その7)


 さて、今度はこれまでのことを僕達の臨床に当てはめて考えてみよう。


 脳卒中片麻痺後の体は、麻痺が広範囲に起きて大きな変化が起きてしまう。まるで自分の体ではないように感じてしまう。麻痺した手を動かそうとしても動かない。患側下肢に支持性が出てきて立てるようになった後、歩く課題を出すと麻痺した脚を振り出すことはできない。


 患者さんの希望は歩けるようになって家に帰りたい、だ。


 そこであなたは平行棒を持って立っている患者さんに「何とか悪い方の脚を振り出して」という課題を出してみる。患者さんは、いろいろ体を動かしてみる。身体の中にある使えそうな運動リソースを探索し、試行錯誤して何とか麻痺脚を振り出すための体の使い方を見つけようとされる。


 だが上手く行かない。あなたは徒手で患者さんの体幹や股関節の柔軟性を改善する。それから立位時で脚を振り出す練習の時に、麻痺側の靴先に靴下の先っぽを切った袋をかぶせてあげよう。これによって爪先の摩擦を軽くしてあげるのだ。セラピストが身体リソースを改善し、新たな環境リソースの使用を提案する訳だ。


 また「健側へ重心移動して体幹を反らせる」という課題を出してみる。リソースや課題を工夫して何とか脚が振り出せるようにするのだ。これらによって患者さんは下肢が滑り出すことに気がつかれる。


 こうやって「麻痺脚を振り出す」という課題がなんとかできるのでこのスキルは繰り返され、やがて洗練されていく。最初は体幹の伸展側屈による振出がメインだったが、繰り返すうちに、麻痺側下肢を振り出す時に、麻痺筋の弱い収縮でもタイミング良く使えることがわかってくる。次第に使える身体リソースが増えてきて、全体の運動スキルはより効率的になってくる。そして「分回し歩行」の協応構造ができてくるのである。訓練室の平行棒を使った「分回し歩行」はやがて安定してくる。


 すると今度は「パイプ椅子の背もたれや杖を持って分回し歩行」という課題に移行する。杖のような不安定なものでも上手く分回し歩行ができるようになると、今度は杖で屋外歩行などを行う。アスファルト面では、これまでのように患側下肢を滑らすような振出ではつまずいて危険であることに気がつくので、より患脚を持ち上げて振り出されるようになる。最初は意識していても、そのうちになにも考えずに滑りにくい床面では自然に脚を高く振り上げられるようになる。急ぐときにはより遠くへ脚を振り出されるようになるし、濡れて滑りやすい床面では、振出を小さくしてよちよちと歩かれるようになる。


 ボーンスペースを用いて回りの物理的構造、特に床面の状態、回りの人達、杖と床の固定力、また靴や服の感じ、麻痺肢の支持性や動く程度、置かれた状況など心身の状態などを把握しながら、環境や状況に相応しい「分回し歩行」の調整ができてくるのである。これが「課題達成時の知覚情報の予期的利用」のスキルとなる。


 臨床で新しい運動課題を達成するためには、この二つの段階があることになる。「協応構造の探索、試行錯誤、洗練」と「知覚情報の予期的利用によって協応構造を調整する方法を学ぶこと」である。


 協応構造は「繰り返し課題」で、知覚情報の予期的利用により協応構造の調整は、「課題を様々な状況で行う試行錯誤課題」によって達成される。臨床ではこの二つが必要なだけ行われるよう配慮する必要がある。(その8に続く)


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スポーツから学ぶ運動システム(その6)

目安時間:約 7分

スポーツから学ぶ運動システム(その6)


 昔リハビリの養成校の教官をしていた時、三つ玉のジャグリングを運動学習の課題として使うために自分でも練習していた。最初は課題達成のために視覚情報が重要な役割を果たしているのは間違いない。見ないととてもできないからだ。しかし慣れてくると短い間なら見なくてもできるようになるのである。つまり視覚に頼らなくてもいつのまにか身体感覚だけでジャグリングができるようになる。


 どんな運動でも全身を使うものだ。従ってどんな運動学習においても常に全身のボーンスペースを通して運動課題を達成するための知覚情報の利用方法を学習していることになる。つまりスキルが熟練するとは、多種類の知覚情報を基に課題達成のための運動スキルの実施が可能になるということだろう。つまり視覚情報でもできるが、視覚情報がなくても一時的には固有各情報などでもコントロールできるようになるということだ。


 さて、これまでをまとめると、運動学習とは次のように理解することができる。


 新しい運動、新しい課題達成方法を学習するためには、まずその課題達成方法がある程度安定してできるような協応構造を探索し、試行錯誤し、安定させる必要がある。これが第一段階。(協応構造探索の段階。ある程度安定した運動を生み出せる段階)


 そしてその安定した協応構造を基に、課題達成時の知覚情報を利用して、課題達成を状況に応じて柔軟に変化させて課題達成の方法をその時、その場で生み出すための知覚情報の予期的利用に関するスキルを磨き上げて行くのである。これが第二段階。状況は常に変化するため、運動スキルの維持にも継続した練習が必要。


 たとえばバスケットボールのフリースローを例にとって考えてみよう。あなたは初めてバスケットボールを持ち、ゴールに向かって投げることになる。経験者のフォームを真似て、右手でボールを下から持ち、左手で側面を支えて、頭の前でボールを構えてみる。そして投げてみる・・・ボールはまっすぐには飛ばないし、全然ゴールにも届かない。手脚の動きもぎこちなく、バラバラに動いている感じである。


 経験者が「手だけでなく、膝を使って全身で伸び上がるように」と手本を見せてくれる。そこで真似をしてみると飛距離は伸びて、ゴール近くまで届くようになる・・・・しばらくすると手首を使うように言われてこれまた真似をして始めてみる・・・・最初は腕をメインに使って、体の動きや手首の動きもバラバラだったが、次第に下半身のバネと手首が連動して、一つの動きとして安定してくる。つまり協応構造が芽生えてくる。


 こうしてこのフォームでボールを投げ続けると、次第に体が自然に動くようになりゴールにボールが当たることも増えてきた。一人一人の運動システムの物理的性質は異なっているので、人とは違ったあなたらしいフォームができてくる。これが協応構造のできあがってくる過程だ。


 しかしボールはなかなかゴールに入らない。ボールがただゴールに届くだけではダメなのだ。あなたは全神経を集中してゴールに向かうようになる。それまでは自分の体の動かし方が気になっていたのだが、やがて体にはそれほど注意が向かなくなる。これまでの運動学習理論では「自動化の過程」と言われたものだ。 体の動きが気にならなくなると、自然と注意はゴールとゴールに向かうボールに向くようになる。上手くゴールできたときの体の感覚にも気がつくようになる。ひたすらこれを繰り返す。


 フリースロー練習だけでは物足りなくなってくるので、コート上の様々な角度、距離からもシュート練習を行う。最初は上手く行かないが、やがて距離や角度が異なってもそれなりにゴールに近いところにボールをコントロールできるようになる。これをひたすら繰り返す。


 こうして1球目には失敗しても、2球目、3球目にはゴールする確率が高くなってくる。結果を見て修正することができるようになったのである。これが「課題時の知覚情報の予期的利用」のスキルである・・・・ さて、これらの中で経験者のアドバイスと呼ばれるものが、CAMRではセラピストが現場で使う「運動課題」となる。CAMRではセラピストは課題の提案が、一つの重要な役割である。課題は言語、身体模倣、徒手を含む介助、環境設定を通して伝えられる。


 そして一人一人の運動システムの物理的性質は異なっているため、セラピストは対象者の物理的性質を探索し、試行錯誤しその個人に合った運動課題を修正する必要がある。


 以前は運動学習では「一つの正しい運動を繰り返す」ということも言われていたが、実際には「繰り返し」と「試行錯誤」がその本質である。(その7に続く)


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スポーツから学ぶ運動システム(その5)

目安時間:約 5分

スポーツから学ぶ運動システム(その5)


 ベルンシュタインがもう一つ提案しているのは、「課題達成時の知覚情報の予期的利用」である。ここでは射撃あるいはアーチェリーを例に説明してみよう。 選手は環境の状態を全身で感じながら、的に向かって銃をズドンと撃つ、あるいは弓で矢をビシュッと放つ。弾や矢は空中を、重力や温度、湿度、風などの影響を受けながら的に向かい当たったり外れたりする。


 選手はその結果を全身の知覚によって知り、修正を加えるわけだ。たとえばその時、その場の環境の状態を全身の知覚を用いて感じる。着弾点が思ったより低かったり、右にずれたりすると環境の中から拾い出した「湿気が高いな。今は空気抵抗が思ったより大きい」とか「今の右向きの風の影響でこの程度のズレが出た」などと考え、修正を予期的に行い、次を放つ。そしてまたその結果をフィードバックしては、次に予期的修正を加える。・・・これが「課題達成時の知覚情報の予期的利用」と言うことである。


 たとえば前に出た職人の腕の動きは一回一回微妙にずれるけれど、釘とハンマーの接触を視覚や全身の筋感覚によって毎回予期的に修正しながら課題達成しているから、異なった運動で同じ結果を生み出すことができるとしているわけだ。初心者の間は、失敗が多いが、その結果はフィードバックされ、全身の知覚情報と照らし合わせて予期的な修正の仕方を学んでいくのである。結果が上手く行けば「その調子で」繰り返すことになる。


 つまり協応構造で運動を毎回作りだし、ある程度安定して似た運動を繰り返せるようになる。繰り返し練習はこのために必要である。しかしその中でも微妙にずれてしまう毎回の運動の軌道をその課題達成時の知覚情報を予期的に用いることで毎回課題達成をやり遂げているのである。そしてこのためにも莫大な時間が必要となるわけだ。間違いをどのように修正するか、回りの環境や状況の影響を受けながら、予期的に修正するためには莫大で異なった状況を繰り返す経験が必要である。


 生態心理学のギブソンは、骨格とそれをつなぐ軟部組織や筋群、視覚、聴覚、嗅覚、味覚などが一体になって構成される人の身体をボーンスペースと呼んでいる。彼の言う触覚系(筋の固有覚を含む)は、全身常に一体となって対象物を動きながら知覚し、同時に自分の体の状態も知覚しているとしている。


 つまり学校で習ったように知覚とはそれぞれ視覚、聴覚、嗅覚などと独立したモデュールとして働いているのではなく、全ての知覚は同時に働いて課題達成に関わっているとしている。


 ジャグラーは初期には視覚を中心にコントロールを学ぶが、熟練してくると閉眼しても失敗なくできるようになる。視覚情報だけでなく、全身の緊張状態や体の安定、腕の動き、皮膚の感覚などの知覚情報を総動員してジャグリングができるようになるからだ。バスケやサッカーのノールックパスなどもそれと似た例だろう。


 知覚学習とは、単独の感覚モデュールではなく、ボーンスペースによって全身的・全ての感覚間で行われるのである。(その6に続く)

#運動システム#ベルンシュタイン#協応構造#知覚情報の予期的利用


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スポーツから学ぶ運動システム(その4)

目安時間:約 5分

スポーツから学ぶ運動システム(その4)


 従来、運動学習は人の運動システムを機械にたとえて説明されてきた。機械のように頭の中にプログラムがあり、同じ動きを繰り返し生み出していると考えられてきた。運動学習は、頭の中にプログラムを作るために同じ運動を繰り返すのである。その結果、一つのプログラムによって同じ運動が生まれ、同じ結果が生み出されると考えられた。


 しかしこれは間違っているのではないか。人の運動システムは機械とはまったく異なる作動原理で動いているのではないか。まあこれがベルンシュタインの出した結論である。人の運動システムは機械とは丸っきり異なった性質を持っているし、頭の中にあるプログラムで同じ運動を生み出しているわけでもないだろう。(実際スキーマ説のように修正されたプログラム説も後に出てきた。このスキーマ説に影響を与えたのもベルンシュタインと言われている)


 ではどのようにして人の運動システムは毎回異なった動きで同じ結果を生み出しているのだろうか?この説明のためにベルンシュタインは2つのアイデアを提案している。


 1つは協応構造だ。筋・骨格的なレベルあるいは神経的ないくつかのレベルで、動きを制限するような協応的な構造が作られるのだ。構造的に動きはグループとして限定されるので一つ一つの細かな筋をコントロールする必要がなくなる。


 たとえばスポーツでみると、初心者は体幹や四肢の動きがバラバラで協調性が見られないのに対して、上級者はその人らしい体の構え、フォームを持っている。プロ野球の打者やプロバスケットポールの選手は、自分らしく安定したフォームができるまで数え切れないほどの練習を繰り返す。


 ピッチャーの投げたボールは様々な速度、コース、球種で打席に届くが、そのボールがある範囲内におさまっていれば打者はその人らしいフォームでバットスィングをするものだ。それは繰り返しの結果のフィードバックによって課題を達成するために便利なベースとして作られた協応構造があるからだ。


 繰り返しの練習は、頭の中に固定的なプログラムを作るためではなく、より良い結果を生み出すための構え、ベースとしての協応構造を生み出すための過程である。職人やアスリートの一人一人はたくさんの試行錯誤の中から、自分に合った課題達成のための協応構造を発見し、作り上げるために繰り返し練習を必要とするのだ。


 そして一旦できてしまった協応構造も、しばらくその課題をしなかったり、身体的・状況的な変化(体型や筋力変化、環境変化など)が生まれると良い結果は生まれにくくなる。だからイチローのように一流選手になってからも、その時、その状況に相応しいように協応構造を修正するために基礎となる素振り練習をやめないのである。やめるとその協応構造を基にした課題達成方法と実際の状況変化の間にズレが生じて良い結果を生み出せなくなるからだ。


 そして実際の状況変化に応じるために必要なのが、ベルンシュタインが提案したもう一つのアイデア、「課題達成時の知覚情報の予期的利用」のスキルである。(その5に続く)


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「リハビリの夜」を読む!(その6;最終回)

目安時間:約 3分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「「リハビリの夜」を読む!(その6;最終回)です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「リハビリの夜」を読む!(その6;最終回)2013/3/23
 第二章のコラム「脳性まひリハビリテーションの戦後史」の冒頭で、著者は「健常な動き」を目標としたようなリハビリについて、「少数派に過剰適応を強いる同化的な発想」と指摘しています。



 「障害」という体験は、「ある社会の中で多数派とは異なる身体的条件を持った少数派が、多数派向けに作られた社会のしくみになじめないことで生じる生活上の困難のことである」とし、その責任を一方的に少数派に押しつけることはできないと述べています。しかし過去の歴史を見ると、社会を変えていくのではなく少数派に過剰適応を強いてきた、といいます。



 リハビリ現場においても、著者が自分の体にとって負担の少ないやり方で動こうとするたびに、「その動き方は正しくありません!」と介入されたと言います。これも多数派にみられる「健常な動き」を、一方的に「規範的な体の動かし方」と決めつけて、少数派に無理強いするような同化的な発想だと述べています。



 そういえば、セラピストの間ではよく「正常運動」という言葉が聞かれます。そこに同化的な発想は潜んでいないでしょうか? クライエントに理不尽な過剰適応を強いていないでしょうか?



 今回で、「リハビリの夜」を読む!シリーズは最終回となります。これまで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。



 初回にも書きましたが、この本はセラピスト必読の書だと思います。一人でも多くの方に、熊谷先生の声に耳を傾けていただきたいと思います。また、今回は取り上げませんでしたが、ベルンシュタインの身体内協応構造から一歩進めて、身体外協応構造という興味深いアイデアも提案されています。興味を持たれた方がおられましたら、是非本書を手に取ってみてください。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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