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今回は「大森荘蔵を読む!(その6;最終回)」です。
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大森荘蔵を読む!(その6;最終回)
前回の続きです。因果連関成立まであと少し…かな?
さて、事態を複雑にする2つの事情とは…
i)先行現象による後行現象の必然的決定は、時間的連続の上でのすべての時点で成り立たなければなりません。必然性の休憩時間があってはいけないのです。
ii)現象の範囲が決まっていないのですが、厳密にはある時点での全世界の状態を範囲にとらなければなりません。
これらの事情から、因果連関に言及する際には、現実問題としては省略と近似を用いるしかありません。
このような過重な条件をみたす因果連関は実際に存在するのでしょうか?存在する、と大森は言います。それは古典物理学における、原子論の上に立つ力学と電磁気学だそうです。
とはいっても、そこでも当然省略と近似が用いられています。いわば世界の一小部を引きちぎってその略図を描いているようなものです。僕たちには狭い視野しか持たぬ分解能の悪い眼で、世界の一小部分の近似的な省略図を見ることしかできないのです。そのため、そこで見てとる因果連関は、往々にして誤り、破たんをきたし、訂正を受ける可能性のある因果連関なのです。
結局何が言いたいのかといいますと、ほとんど「法則」のように信頼されている古典物理学においてさえも、略画的な因果連関にしか言及できないのです。最初の頃に書きましたが、要素還元論はとても有効で強力な方法論であることは間違いありません。しかし、単純に原因結果の概念で現象を捉えようとすると、間違えてしまう可能性もあるということを、頭の片隅にでも置いておいて欲しいな、と思うのです。
今回で、大森荘蔵を読む!シリーズは最終回となります。長々と小難しい話をしてすみませんでした。これまで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆
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今回は「大森荘蔵を読む!(その5)」です。
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大森荘蔵を読む!(その5)
因果連関が成り立つための3条件のうち、時空連続、恒常関係に続き今回は(3)それによる現象移行の必然性、について取り上げます。
時空連続と恒常関係があっても、先行現象によって後行現象が一意的に決定されるという必然性を確保できる保証はありません。前回の光の屈折で言うならば、入射角が決まればスネルの法則によって屈折角は一意的に決定されますが、光の状態には色(即ち波長)、偏光状態、強度等その他幾つかの性質があります。先行状態、即ち入射光線の色その他の状態を与えても、後行状態、屈折光線の色その他の状態はスネルの恒常関係だけでは決まらないということになります。
光の場合であれば色(波長)の分布・その各波長の強度・振動方向(偏光)・伝播方向等、物体の運動であればその重心の位置と速度・重心に対する3方向の回転速度等の規定が得られた上で(この規定をどうとるかによってまた意味が変わってくるのですが、ややこしくなるのでとりあえず流しておきましょう…)、先行現象の規定によって後行現象の規定が一意的に定まるに足るだけの恒常関係がある場合に限り、必然性が得られると言えます。
さあ、これでようやく因果連関が成立するかと思いきや…、この事態を更に複雑にする2つの事情があるそうです。
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今回は「大森荘蔵を読む!(その4)」です。
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大森荘蔵を読む!(その4)
今回は因果連関が成り立つための3条件のうち、(2)恒常関係について見てみましょう。
ここでは、先行現象と後行現象の間の同一の関係の繰り返しが必要だと述べられています。現象自体、経過自体は異なっていてもいいのですが、その異なる経過における先行現象と後行現象の関係の同一性がなければなりません。
例えば、水面に無数の角度から光が入射すると、無数の方向へ屈折していきます。その一つ一つの光線は、入射角も違えば屈折角も違います。しかし、その無数の光の進み方すべてにおいて、入射角と屈折角のサインの比が一定だという関係は同一なのです(これをスネルの法則と言うそうです)。
この例では関係性が比較的明確ですが、適切な関係にさえ着目すればどんな場合でも関係の恒常性を提示できます。例えばもし入射光線がスネルの法則に従わずにてんでバラバラに屈折するとしても、入射角と屈折角を縦軸と横軸にとって方眼紙にプロットしていき、その点々を一筆書きで連続曲線で結んだならば、この連続曲線は一つの一変数連続関数で表されます。この場合も一応恒常関係が得られることになります。
そして長年の多種多様な恒常性のテストを受け、一度でも恒常性が破られたものは捨てられるという淘汰の結果生き残ったものが、今日僕たちが理解する恒常関係なのです。
しかし時空連続と恒常関係、この2つをもってしてもまだ因果連関が成り立つとは、言えないのだそうです。
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今回は「大森荘蔵を読む!(その3)」です。
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大森荘蔵を読む!(その3)
大森は因果連関が成り立つための条件として3つ挙げています。
(1)時空連続
(2)恒常関係
(3)それによる現象移行の必然性
まず(1)時空連続から見てみましょう。
ある現象が起こった事情を調べることは、その現象の歴史を調べることになります。例えば、重い肺炎が快方に向かったとして、その歴史を探索します。飲んだペニシリンが消化器を通りそこの壁から血液の中に移動し、血液と共に肺の炎症部に到達し、そこで病原菌と化学結合をしてその化学的性質を変え、こんどはそれが肺の細胞との化学作用をかえて、僕たちが炎症と呼ぶ状態を正常なものにしたとします。
このように、ペニシリンの投入から炎症の消失に到る隙間のない歴史が明らかになったとき、僕たちは回復という現象を理解したと一応言うでしょう。
これは一つの時間空間的に連続した記述です。ある現象が他の現象を引き起こす、あるいは他の現象に作用を及ぼすためには、この二つの現象の間に時間上および空間上連続したつながりがなくてはならないわけです。
夜と昼の間に因果連関があるもの、漸次回転していく地球上の一地点が太陽との位置関係を漸次かえてゆくという、時空的に連続した現象の中にあるからです。稲妻と雷鳴がいずれも、雲と雲あるいは雲と地面の間の放電現象の因果連関の一部と言えるのも、それらが時間的空間的に連続しているからです。
もし時空連続がなければ、両者の間につながりを想定することは普通はできません。例えば南北戦争時代にアメリカで見られた稲妻と、昨日の夜下関で聞いた雷鳴との間に関連があるとは、通常は考えられないでしょう。
このような時空的な連続は因果連関の必要条件だといえます。しかし、これだけでは十分条件とは言えないようです。
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大森荘蔵を読む!(その2)
哲学というと小難しく感じるかもしれませんが、秋山副代表の言う通り「ものの見方」と捉えれば、結構お気楽に楽しめます。「ああ、こういう考え方もあるのか!」「こういう考え方をしてもいいんだ!」といった新鮮な発見があった時は、とても嬉しくなります。
CAMRにおいては、「理論は道具」と考えています。極端に言えば、ある理論が正しいかどうかは気にしません。ましてや真実かどうかなんて誰にもわからないことも意に介しません。臨床で役に立てば良しとします。
前置きが長くなりましたが、また前置きが始まります・・・。
リハビリの臨床現場では何らかの障害があった場合、その「原因を考える」ことが重要だとされています。例えば活動レベルに問題があった場合、Impairmentレベルにその原因を求めていくわけです。これは要素還元論と言う、とても有効で強力な方法論です。実際この方法論は、「我思う、ゆえに我あり」で有名な近代哲学の父、ルネ・デカルトによる心身二元論をベースに益々発展し、17世紀の科学革命や18世紀から19世紀の産業革命に多大な貢献をしたと言われています。
しかし、そんな大成功をおさめた要素還元論ではありますが、必ずしもいつもうまくいくとは限りません。特にその作動の仕組みについてよくわかっていないシステムにおいて、要素還元論を用いて単純に因果関係を想定すると、間違った結論を導いてしまう可能性があります。丁度、CAMRホームページ「人の運動変化の特徴 その5 因果関係の罠(その1)」に紹介されている、ビアによる自動車の例のように。
僕たちは結構気軽に「○○の原因は××だ」と言ったりしていますが、実はこのような原因結果の概念は混乱の元になる、と大森は言います。CAMRホームページ「人の運動変化の特徴 その6 因果関係の罠(その2)」に紹介されている、稲妻(ピカッ)と雷鳴(ゴロゴロ)の関係もその一例と言えるでしょう。
これらはいずれも雲と雲、あるいは雲と地面の間の放電現象の一部で、一方は電磁波として、一方は空気振動として僕たちの五感に達します。本来どちらが原因でどちらが結果とは言えないものなのですが、通常僕たちは時間差を持って、稲妻(ピカッ)→雷鳴(ゴロゴロ)の順に体験するために、ついついそれらを原因と結果に結び付けて考えてしまうようです。
大森は混乱を避けるために、原因結果の概念の代わりに「因果連関」という言葉を用いています。この言葉は、原因→結果といった明確で直線的な関係ではなく、もう少し緩やかなつながりを想定しているものと思われます。しかし厳密に見ていくならば、この因果連関が成り立つことでさえ、かなりのハードルをクリアしなければならないようです。
ここではとりあえず、大森荘蔵著作集 第二巻「前期論文集Ⅱ」,岩波書店,1998.より「決定論と因果律」「記号と言語」あたりを参考に紹介してみようと思います。
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大森荘蔵を読む!(その1)
CAMRホームページのQ&A、3の冒頭に「哲学者の大森荘蔵氏によると~」とさりげなく名前が紹介されています。例によって簡単に紹介を試みようと思います。
難しいことはよくわからないのですが、大森哲学を貫いている「自分の頭で徹底的に考え抜く!」という姿勢と、その実践の凄まじさには度胆を抜かれます。極限まで考え抜かれた言葉の一つ一つが、圧倒的な凄味を帯びて迫ってきます。「人間はここまで考えることができるのか!」とただただ驚嘆するばかりです。
畑違いでご存じない方も多いと思いますので、まずは略歴をWikipediaから引用させていただきます。
岡山県生まれ。府立一中などを経て、1944年 東京帝国大学理学部物理学科を卒業。その後1949年 東京大学文学部哲学科を卒業する。
1945年、海軍技術研究所三鷹実験所勤務。当初は物理学を志すも、科学における哲学的問題を問うため、哲学に転向。はじめ現象学などを学ぶが、満足せずアメリカに留学。ウィトゲンシュタインの哲学や分析哲学をはじめとする現代英米圏の哲学から大きな影響を受ける。
帰国後、1953年、東京大学講師に就任。さらに留学後、助教授を経て、1966年、東京大学教養学部教授(科学史・科学哲学科)。これまでの日本の哲学研究が学説研究・哲学史研究などの文献学に偏りがちだったが、「哲学とは、額に汗して考え抜くこと」という言葉のもと、60年代以降に大学で学んだ人たちに直接・間接に大きな影響を与え、野家啓一、藤本隆志、野矢茂樹、中島義道ら現在第一線で活躍中の数多くの日本の哲学者たちを育てることとなった。1976年、東京大学教養学部長就任。翌年、辞任。1982年、放送大学学園教授。1983年、放送大学副学長就任。1985年辞任。
著作:
『言語・知覚・世界』
『物と心』
『流れとよどみ―哲学断章』
『新視覚新論』
『知の構築とその呪縛』
『時間と自我』
『時間と存在』
『時は流れず』
『大森荘蔵著作集』全10巻(岩波書店) など
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