大森荘蔵を読む!(その2)

目安時間:約 5分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「大森荘蔵を読む!(その2)」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



大森荘蔵を読む!(その2)



 哲学というと小難しく感じるかもしれませんが、秋山副代表の言う通り「ものの見方」と捉えれば、結構お気楽に楽しめます。「ああ、こういう考え方もあるのか!」「こういう考え方をしてもいいんだ!」といった新鮮な発見があった時は、とても嬉しくなります。



 CAMRにおいては、「理論は道具」と考えています。極端に言えば、ある理論が正しいかどうかは気にしません。ましてや真実かどうかなんて誰にもわからないことも意に介しません。臨床で役に立てば良しとします。


 前置きが長くなりましたが、また前置きが始まります・・・。



 リハビリの臨床現場では何らかの障害があった場合、その「原因を考える」ことが重要だとされています。例えば活動レベルに問題があった場合、Impairmentレベルにその原因を求めていくわけです。これは要素還元論と言う、とても有効で強力な方法論です。実際この方法論は、「我思う、ゆえに我あり」で有名な近代哲学の父、ルネ・デカルトによる心身二元論をベースに益々発展し、17世紀の科学革命や18世紀から19世紀の産業革命に多大な貢献をしたと言われています。



 しかし、そんな大成功をおさめた要素還元論ではありますが、必ずしもいつもうまくいくとは限りません。特にその作動の仕組みについてよくわかっていないシステムにおいて、要素還元論を用いて単純に因果関係を想定すると、間違った結論を導いてしまう可能性があります。丁度、CAMRホームページ「人の運動変化の特徴 その5 因果関係の罠(その1)」に紹介されている、ビアによる自動車の例のように。



 僕たちは結構気軽に「○○の原因は××だ」と言ったりしていますが、実はこのような原因結果の概念は混乱の元になる、と大森は言います。CAMRホームページ「人の運動変化の特徴 その6 因果関係の罠(その2)」に紹介されている、稲妻(ピカッ)と雷鳴(ゴロゴロ)の関係もその一例と言えるでしょう。



 これらはいずれも雲と雲、あるいは雲と地面の間の放電現象の一部で、一方は電磁波として、一方は空気振動として僕たちの五感に達します。本来どちらが原因でどちらが結果とは言えないものなのですが、通常僕たちは時間差を持って、稲妻(ピカッ)→雷鳴(ゴロゴロ)の順に体験するために、ついついそれらを原因と結果に結び付けて考えてしまうようです。



 大森は混乱を避けるために、原因結果の概念の代わりに「因果連関」という言葉を用いています。この言葉は、原因→結果といった明確で直線的な関係ではなく、もう少し緩やかなつながりを想定しているものと思われます。しかし厳密に見ていくならば、この因果連関が成り立つことでさえ、かなりのハードルをクリアしなければならないようです。



 ここではとりあえず、大森荘蔵著作集 第二巻「前期論文集Ⅱ」,岩波書店,1998.より「決定論と因果律」「記号と言語」あたりを参考に紹介してみようと思います。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
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システム論の話をしましょう!(その6)

目安時間:約 5分

システム論の話をしましょう(その6)
 さて、2番目の分類は「外部から作動を見るアプローチ」です。この代表的なものの一つが「課題主導型アプローチ(Task Oriented Approach 以下TOAと略す)です。このアプローチの基礎となっているのがテーレンらの動的システム論であり、ギブソンの生態心理学です。



 テーレンらによる動的システム論は外部から観察される姿勢や運動の基になっている運動システムの作動を物理学の枠組みから理解しようとします。動的システム論には、自己組織化、アトラクター、コントロール・パラメータ、多重安定性など多くの魅力的なアイデアがあります。これらのアイデアは僕たちが臨床経験を通じて漠然と感じていた運動システムの性質やいくつかの特徴的な運動状態を明確な言葉で表して理解を助けてくれると感じています。



  さて、前回システム論は作動に焦点を当てていると述べました。つまりテーレンらは研究を通して「運動がどのように生まれ、維持され、変化していくか?」といった運動システムの作動を明らかにしているわけです。



 テーレンらは心理学者ですが、正常運動発達を研究しました。それまでは一般に脳の中に正常発達の設計図があり、これに沿って運動発達が起こると考えられていたのですが、テーレンらは数々の研究から運動発達(運動の変化と安定)はあらかじめ決められた設計図はなく、様々な要素の相互作用から自己組織的に起きていると示したわけです。



 もう一つ、生態心理学はアフォーダンスで有名なJJギブソンによって始められ、エレノア・ギブソン(以下、EJギブソンと略す)やエドワード・リード、日本では佐々木正人といった魅力的な心理学者達がいます。テーレンもその著書でエレノア・ギブソンに大きな影響を受けたと書いています。



 生態心理学も脳が感覚を入力し、脳の中に世界像を作り、そしてそれを基に出力つまり運動をコントロールするというそれまでの脳が中心の常識的な考えを否定します。そうではなくて、脳は単なる調整役だというのです。たとえ神経系のない生物でも環境と出会い、うまく関係を築いています。元々そのような能力は生物が本来持っているものです。もちろん神経系はより高度に世界と関係作りをするために役立っているわけですが、それでも進化上は神経系は後から生物に乗っかってきたものです。



 それに知覚とは動くことと言います。動くことによって動物にとっての必要な情報が知覚できる訳です。・・・まあ、そんな感じです。



 テーレンらもギブソンらも心理学者ですが、運動を通して運動変化や知覚、認知のことを研究します。デカルト以来の西欧社会の思い込みの一つである心身二元論(機械の体とそれに乗っかっている心の二つが存在している)の伝統を否定しているのです。あるいは人の体を機械に、脳をコンピュータのように喩えることが間違いだと。生物は機械とはまるっきり違った存在だというあたりが基本になります。
(これらのアイデアについてはここでこれ以上説明することは控えます。正直、僕は未だにわからないことが多いのです(^^;特にアフォーダンスは苦手(^^;詳しく知りたい方はイラストのお薦めの文献に当たってください)



 さて、この両者を基にして生まれた課題主導型アプローチは、またまた僕流に間違いを恐れずに言ってしまえば、以下のようなアプローチです。「運動は適切な課題を繰り返すことによって徐々に課題達成に向けて調整される。つまり運動は課題によって生まれ、成熟する。従って患者にとって必要な課題と課題の実施環境条件を提供することがセラビストの仕事である。セラピストは課題と実施環境を調整し、工夫し、患者にとって相応しく進化させ、提案することで患者にとっての必要な運動適応能力を改善していくことができる」のです。 まあ、このような理論的な説明は往々にして僕たち臨床家には届きにくいものです。臨床家にとっては実際にやってみることでしか、有効かそうでないか実感できないものです。



 実際、僕自身は臨床でやってみて「素朴なシステム論的アプローチ」の有効さに気づきました。そしてこんどはこの「セラピストが患者に『課題』と『実施条件』を通して訓練する」ことを意識して実施して経験してみることにしました。理論というアイデアの「問題解決の道具」としての有効性を自分自身で試してみたのです。そうすると臨床で自分や周りからの経験だけでは学べないような様々な視点に自然に気がつくようになったのです。(その7に続く)

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