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不思議なこと!(後編)
患側下肢の四頭筋の筋力検査をすると重力に逆らって全可動域を動かすことができないのに、その患側下肢を半伸展位で支えながら歩けるAさん。筋の収縮は弱いのにどうやって体重を支えるだけの収縮力を生み出すことができるのか?これが大きな疑問でした。
Aさんの訓練の後、また何人かで同じような経験をします。文献でクロス・ブリッジ説などを発見し、「これだろうか?」と思ったりもしました。でもなんかピンとこない。
そんな日々、溜まった文献を整理しようと取りだしたところ、偶然一番上に置いた論文を見るとKatz1)のものでした。この論文は、アメリカの理学療法士がシステム論に向かう一つのきっかけとなったということで、昔読んだものです。 でも見た瞬間に、何か引っかかるものがある。そこで久しぶりに読んでみると、「あ、これではないか!」と思いました。キャッチ収縮の説明があったのです。すっかり忘れていた、というより最初に読んだときにその価値に気がつかなかったのです。
キャッチ収縮はここでも再々紹介していますね。通常カルシウム濃度が上がるとミオシンとペクチンが滑り込み、筋の収縮が起こります。しかし、ある一連のタンパク群の影響で、カルシウム濃度が下がっても収縮が解けずにそのまま収縮状態を維持します。これがキャッチ収縮で、エネルギーを消費しない収縮形態ということで知られています。またこれには電気活動が伴わないので筋電図活動が見られないのです。
更にキャッチ収縮で検索してみると、日本にはこのキャッチ収縮の研究者が何人もいます。論文を探して何本か読んでみると、平滑筋でキャッチ収縮を起こす一連の蛋白群と同様のものが骨格動物の横紋筋でも見つかっている2)という内容です。
Katzの論文には更にDietz3)らの論文も紹介されています。足関節の背側可動域が保持されていても尖足歩行をしている脳性麻痺児と成人片麻痺患者で、筋電図活動が調べられました。尖足位で歩いている患者の立脚期には腓腹筋の筋電図活動が見られませんでした。尖足位で体重を支持しているのにです。Bergerら4)は片麻痺患者の歩行中の両側アキレス腱の張力発生を調べました。立脚相の間、患側腓腹筋は張力を発生していましたが、やはり筋電図活動は見られませんでした。これらの研究では筋電図活動が見られないにも関わらず、張力が発生していることを示しています。
でもこの説明は、まさしくキャッチ収縮の性質に当てはまります・・・・・と、ここで僕の知識は止まっています。もう20年も前のことになります。
その後CAMRの体系化に向かって取り組んでいたので、この手の基礎研究を学ぶことは自然にしなくなってしまいました。
実は色々なセラピストと話してみると、意外に多くの人が僕と同じ経験をしていました。臨床では当たり前の現象であり疑問なのです。それなのになぜ大きな話題にならないのでしょうか?様々な研究が出てこないのでしょうか?不思議なこと!
これらの筋収縮に関する新しい知識をお持ちの方、僕を含めて皆さんにも教えていただけると助かります。
さて、Aさんは反張膝歩行に納得されたままだろうか?
今思うと、反張膝歩行は省エネでとても効率的です。初期には下り坂などで膝折れを起こしやすいので危険ですが、次第に全身が反張膝を維持するような運動スキルを獲得するので安定して歩けるようになります。
以前は「反張膝」を続けると膝痛を起こす原因となるから修正するべき」みたいな意見もありましたが、僕の経験の中では10年以上反張膝歩行を続けても膝痛はないという人ばかりです。因果の関係はあまりないのではないか、と思います。本人が歩行の形を気にしなければ麻痺のある方にとっては一つの選択肢として良いのではないか、などと思います。
ちなみに僕の経験では、急性期で立ち始めたときから患側下肢の半伸展位での支持と重心移動の運動課題を繰り返すと、反張膝になった例は一つもありません。しかしいったんできた反張膝歩行はほぼ修正不可能だなと思います。(終わり)
【引用文献】
1) . Katz RT, Rymer WZ. Spastic hypertonia: mechanisms and measurement. Arch Phys Med Rehabil. 1989;70:144-155. 46.
2) 盛田フミ: 貝はいかにして殻を閉じ続けるか?-省エネ筋収縮”キャッチ”の制御と分子機構. タンパク質 核酸 酵素 Vol33 No8, 1988.
3) Dietz V, Quintern J, et al.: Electrophysiological Studies of Gait in Spasticity and Rigidity. Brain, 104:431-449, 1981.4) Berger W, et al.: Tension development and muscle activation in the leg during gait an dyspastic hemiparesis: in dependence of muscle hypertonia and exaggerated stretch reflex. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 47:1029-1033, 1984.
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不思議なこと!(前編)
片麻痺になって3年のAさん。
普段は杖歩行中に患側下肢に反張膝が見られます。
「患側下肢は麻痺のため十分に力が生み出せないから支持性が弱い。それで骨と靱帯で作られる制限を利用して膝関節を固定して体重支持をしているのだろう」と考えます。
Aさんは「娘が言うには、歩く時に膝がカクッ、カクッと止まって歩き方が変だから歩き方を治してもらいなさいというので治してほしい」と言います。
しかし「筋力がないので、反張膝で支えている。もし膝を半伸展位(半屈曲位)で支えようとすると膝折れが起きるのではないか?」と考えて、まずその姿勢が可能かどうか試して見ますと・・・できるのです。患側下肢の半伸展位で支えながら健側下肢を振り出すことが可能です!それなりに支持性があるようです。
「何だ!できるじゃないですか!その調子で歩いてみましょう!」
Aさんは最初の2ー3歩は慎重に患側下肢の半伸展位で支えるのですが、それを過ぎるとやはり反張膝で歩かれます・・・・それから色々試行錯誤してみます。両脚とも半伸展位で歩いてもらったり、杖ではなく手すりを持って歩いたりしてもらいます・・・
でも慎重にゆっくり歩く最初のうち膝は半伸展位で歩かれるのですが、すぐに反張膝に戻ります。それに手すりを持っていると良いのですが、杖になると元通り。悩ましい! 休憩時に椅子に座っているときに、ふと思いついて四頭筋の筋力検査をすると重力に逆らって全可動域動かせません。下腿に軽く触れるだけで、下腿は簡単に落ちてしまいます。
「これは、これは・・・」麻痺のため弛緩気味の脚は、間違いなく必要なだけの力を生み出せていないのです。でも立って膝関節を半伸展位で支えているのです!
「はてさて、どういうことか・・・・・?」
理学療法士になって小児施設や学校の教官で16年を過ごし、僕にとって初めて見た成人の片麻痺患者さんでした。「こんな不思議なことがあるのか!」と驚きました。歩行時の半伸展位での支持は確かにできています。でもその収縮力はどこから生まれているのか?たくさんのセラピストに聞いたり文献を探したりしましたが、明確な答えはありませんでした。
自分なりに仮説も立てました。「ある程度引き延ばされた筋が体重をかけながら収縮すると強く活性化されて狭い範囲で強い収縮力が出るのではないか?」とか「錘体外路系の収縮の利用か?」などです。座位や立位でいろいろと仮説を試して見ましたが思ったように上手く行かないし、Aさんも少し迷惑そうです。
ともかくAさんの依頼もあります。反張膝歩行の修正は続けます。「半伸展位での支持性は長く保たないのかもしれない」と考え、患側下肢を半伸展位のまま長い時間、健側下肢を様々な方向に踏み出す練習などもします。何週間もかけて患側下肢を半伸展位のまま歩く練習もかなり長くできるようになりました。
Aさんも患側下肢を半伸展位で支えることに自信を持たれるようになりましたが、それでも普段の歩行では反張膝歩行は治らず、「はあー、だめだねえ・・」とAさん自身が「仕方ないねえ、やるだけはやったわ!」と諦めてしまいました。
それはともかく不思議なのは麻痺の脚が歩いているときだけに強く収縮して体重を支えながら重心移動ができていることです。(後半へ続く)
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CAMR(カムル)は、システム論を基にした医療的リハビリテーションのアプローチです。
人の運動は、状況変化に応じて柔軟に変化し、創造的にその時その場で必要な課題を達成します。
人の運動システムのどんな構造や仕組みがこの柔軟で適応的で創造的な運動を可能にしているのでしょうか?
CAMRは人の運動システムの作動上の特徴を離解することで、その背後にある仕組みを理解できるようになります。そうすると、逆に障害を持つということの理解が深まりますし、リハビリのアプローチをどうするべきかもわかってきます。
そしてCAMRでは、人の運動システムの作動の特徴を中心にアプローチを組み立てますので、どんな障害でも基本的には同じ治療方針を持っています。
とは言え、障害毎に配慮するところは異なります。今回は脳卒中片麻痺を対象に、CAMRアプローチの考え方、評価、治療的介入の実際、障害の特徴について説明します。
学校で習ったアプローチに、CAMRアプローチの視点を加えると臨床での問題解決力が大幅にアップします!
またこの4年間で、CAMRは内容を大きく再編成しました!
以前受講された方にとっても、より実用的でわかりやすい内容になっています。
患者さんのビデオを見ながらの具体的な学習となります。詳細は以下の通りです。
開催日時:2023年9月24日(日曜日)午前10時~午後4時(昼休憩1時間)
受付:9時半~10時
開催場所:広島県立障害者リハビリテーションセンター スポーツ交流センターおりづる
(アクセスは施設ホームページをご覧ください。無料バスも利用できます)
※駐車場無料。駐車場はおりづるそばではなく、リハセンター側の駐車場 をご利用ください。
おりづるそばの駐車場は障害のある方が利用されますのでよろしくお願いします。
募集人員:30名
参加費:CAMR講習会・勉強会参加が初めての方 2500円
過去にCAMR講習会・勉強会に参加した経験のある方 1200円
当日会場でお支払いください
※事前に参加申込みが必要です。 申込み締切 2023年9月17日(日曜日)
申込み方法:oyazinzin※gmail.com(※を半角の@に置き変えてください)
記入内容 -件名に「CAMR勉強会参加希望」
-本文に
・氏名
・職種(PT、OT、STなど)
・過去のCAMR勉強会・講習会に参加経験の有無
・できれば大体で良いので現職の経験年数
・ライングループへの参加希望の有無
講義資料配付:講義資料(動画など)配付や事前の詳細説明などはライングループで行う予定です。参加希望者にはメールの返信でライン・グループのQRコードを送りますので、参加をお願いします。ライン・グループは勉強会後の質問や実際に訓練してみた意見・感想などその後の学習にも利用できます。
ライン・グループへの参加を希望されない方には、別途メールで講義資料の配付などを行います。
昼食準備のお願い:施設周辺には飲食店がないため、お弁当を用意されることを勧めます。
食事はお部屋で。お茶は当日、2ℓペットボトルと紙コップを用意しておきます。
質問など:上記申込先にお願いします。 以上です。
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「独りで考え、行動する訓練」
昔、実習にきていた作業療法科の学生さんが新しい訓練のアイデアを相談してくれたことがある。
彼のアイデアを簡単にまとめると、「トイレ付きでベッドと食卓、流し、食器棚、冷蔵庫、本棚、ゲームなどのアクティビティ類などの揃った部屋を用意して、その中で独り、数時間から一日過ごしてもらう。冷蔵庫の中にはお弁当やサンドイッチ、色々な飲み物を置いておく。お腹が空いたら冷蔵庫のなかのものを食べてね」と指示するのだそうだ。患者さんはもちろん室内自立している患者さん。そうすると「独りで時間を過ごすことから患者さんはいろいろ経験し、学ぶのではないか?」というのだ。
これは「独りで考え、行動する訓練」と名付けるという。
「どうしてそんなことを考えたのか?」と聞くと「僕のおじいちゃんは病院のリハビリで歩けるようになった。病院ではとても一生懸命歩いていたし、リハビリの先生も『意欲的な患者さんです。家でも歩けます』と説明していた。それなのに、家に帰ると歩かなくなってしまった。意欲がなくて、なにもかも家族任せである。結局病院では何をするにも指示に従って動くだけである。だからダメなのだ。アクティビティだって先生から与えられるだけだ。なにができるか、なにができないか、そして何をしたいのか、独りで考え、探し、試し、実行する経験が必要ではないか!」ということだ。
なかなかの熱弁だったので印象に残った。普段は礼儀正しく、もの静かで冷静な学生さんだった。
僕は「面白いね」と表面的には答えたが、あまり実現できそうにないし、第一あまりやる意味が感じられなかった。そこで主にはどうして実現が難しいかという理由を説明したと思う。
一方で、学生さんなのにすでに新しい訓練が必要であると考えているところがすごく頼もしく、感動した。人からいわゆる「正しい答え」を教えてもらうことが当たり前で、いつまで経っても自分で判断しようとしないセラピストが多い中で、少なくとも自分の頭で考えようとしているその姿勢に感動した。そこをもっと褒めるべきだったか・・・
まあ、その話はそれっきりになってしまったが、久しぶりに何かのきっかけで思い出した。なんとはなしに面白そうではあるが、色々考えてみたがやはりあの訓練はなにが期待できるのか、今ひとつピンとこない。僕の頭は硬いのだろうか?と思ったりする。それともなにか画期的な可能性を秘めているのだろうか? 皆さんはどう思います?(終わり)
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人の運動の特徴を問われたら・・・(その8最終回)
今回は人の運動や運動システムの特徴について検討してみた。それによって患者さんの運動障害をより深く理解したり、アプローチをより効果的に実施したりすることができるということを示してきたつもりである。
ただ、このシリーズの「その1」で挙げた学校で習う「構造と機能」から理解する視点は、今さらだが少し説明不足だったのでここで補っておく。
人の体を機械とみなして構造と各器官の機能などを理解しておくことは、西洋医学の基本である。そしてこれによって医学は大きく価値を認められ、進歩したのは間違いない。リハビリの分野でも、特に整形疾患などの分野では目覚ましい効果を上げてきたことによって、世間にその存在価値を認められたのである。 つまりこの視点での捉え方自体は、整形疾患などの領域では非常に効果的である。
しかし脳性運動障害などの領域では、これまでこの視点からのアプローチは「脳を構造的、あるいは機能的に治す」ことに集中したもののあまり効果を上げてこなかった。整形における義肢・装具のような効果的な環境リソースで脳の機能を補うこともできなかったからだ。
ただ最近ではリハビリではなく、電子工学の分野で脳波を拾って、筋の収縮をコントロールするような新しい技術が生まれてきており、この視点からのアプローチの発展は非常に楽しみではある。
一つ言えるのはどの見方にも長所があり、短所もあるということだ。つまり二つの見方を持つことで、お互いの短所を補える訳だ。
さて、システム論の「運動システムの作動の視点」からは、主に3つの特徴を理解することによってセラピストのやるべき内容が明確になった。
①状況性という特徴を支えているのは、豊富な運動リソースと多彩な運動スキルの創出である。まず私たちセラピストがやるべきことは、運動リソースをできるだけ豊富にし、運動スキルの創出能力を高めて多彩にすることである。
②課題特定的という特徴から、運動リソースの豊富化と運動スキルの創出能力や多彩化は、患者にとって必要で具体的な課題を通して行われるということがわかった。それ故課題設定と修正はセラピストの重要な仕事である。
アメリカの「課題主導型アプローチ」はこのアイデアが中心に展開されている。ただこれまでの学校で習う要素還元論の考え方を否定したりして、まるで過去に積み重ねてきた経験や知識を捨て去ってしまうような考え方にやや危うい感じを抱くのは僕だけだろうか?
③自律的問題解決という特徴から、システムの自律的問題解決とそれが偽解決という状態に移行しやすいことを理解することが重要である。常に自律的問題解決が偽解決に陥っていないかどうかを評価すること。そして陥っている場合は、偽解決の状態から救い出す方略を考えることが必要である。
さてどうだろうか?実はまだまだ考えるべきことは沢山あるのでだが、また別の機会に検討したい(終わり)
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