毎週火曜日の連続エッセイ、再開です!(^^)
体重変化などの指標を通して学ぶ動的システム論 その1
以前、「俺のウォーキング」というシリーズで、退職後にウォーキングを始めたことを書いた。建前は健康のためであり、股関節・膝関節の痛みを軽くするためだ。でも実際には出っ張ったお腹を引っ込めたいという密かな願いもあった。 というのも開始当時の僕の出っ張り(腹囲)は平均98㎝程度。体重は71-72㎏位、体脂肪率は25-26%位、血圧は上が150位だった。結構なメタボだったのである(^^;)その他に股関節痛と膝関節痛がその頃の悩みであった。
「俺のウォーキング」ではウォーキングを開始して2ヶ月くらいの間に起こった内容を書いている。このシリーズではその後の上の4つの指標(腹囲、体重、体脂肪率、血圧)の変化を追いながら「動的システム論」というアイデアを紹介してみたい。
動的システム論は、僕達リハビリの分野ではテーレンとスミスによって運動発達の研究領域で導入され、紹介された。
これまでの運動発達における僕達リハビリテーション分野の伝統的な考え方は、要素還元論の枠組みで説明されている。
要素還元論の考え方とは、ある現象を説明するために、まずその現象を構成する要素に分解していく。たとえば歩行不安定という現象(あるいは問題)が起きると、人の運動システムを構成する様々な要素・部位に分解していく。たとえば筋力、柔軟性、持久力、感覚、認知などの要素に分解する。そして部位にも分けてみる。その結果、下肢の筋力に低下がみられれば、「下肢筋力の低下」が原因で「歩行不安定が起こる」などと因果の関係を想定する。
運動発達もそうで、「運動発達という現象はどのように起きるか?」という問いに対して、「運動発達は脳の成熟という要素変化によって起きてくる。脳の成熟とは脳神経の髄鞘化のことである。髄鞘化に従って脳は成熟し、運動は協調・洗練され、新しい運動が発達してくるのである」と「脳の成熟という一要素が原因として運動発達が起こるのだ」と因果の関係を想定するわけだ。
まあ、脳の中に運動発達の設計図があり、成熟によってこの設計図通りに運動発達が起こると考えるのである。
あるいはこれには対立する環境説というのがあって、「環境からの影響を脳が学習することで、運動発達に繋がる」とするわけだ。
いずれにしても脳の中の設計図か環境の影響の学習かというある特定の要素(脳)の変化が原因で運動発達が起こると説明するわけだ。
テーレンらはこの説明にはどうも満足しなかったようだ。果たして、そんな単純なメカニズムで発達が起きているのだろうか?
たとえば生後直後から原始歩行という現象が見られる。これは生後数ヶ月以内に消失してしまう。この現象は要素還元論では以下のように説明される。
原始歩行は原始反射の一種である。つまり脳の状態が未熟なので抑制が利かなくて、原始歩行のような未熟な原始反射が優位に出現するのだ。しかし数ヶ月もすると脳の成熟が進み、この原始歩行は抑制されるようになるのである。だから消失する。再び現れる歩行はより成熟して協調された歩行であり、原始歩行とは別物である、などと説明される。
そこでテーレンらは、「この説明は間違ってるんでないの?」という挑戦を動的システム論の視点から始めるのである・・・・あ、ウォーキングの話からいきなり逸れてしまったけど、そのうちに戻りますから(^^;))(その2に続く)
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