CAMR(カムル)が他のリハビリ・アプローチと全く異なるところ(前編)

目安時間:約 6分

 CAMRの勉強会で話をしていると、「ああ、○○のアプローチとよく似ていますね」とか「□□の治療法と同じですね」などとよく言われる。○○とか□□のアプローチとは全く違った考えや目的を持っているのだが、確かに一見、「同じようにやっている」ように見られるところがあるので仕方ない。でも動作・行為は同じように見えても、スタート地点や方向性が異なっているので、それを言われる度に「あーーっ」と力が抜けてしまう。

 一般に学校で習う人の運動システムは、構造と各器官の働きから理解される。たとえば「筋肉は力を生み出し、骨・関節は力に支持と方向を与え、感覚は身体内外の刺激を受け、神経を通して脳に伝え、脳は感覚から身体の内外の状況を判断し、神経を通して命令し・・・・」などと理解する。これは「動く仕組み」を理解している訳だ。

 「動く仕組みを理解する」というのは、機械を理解する時と同じ理解の仕方である。 もちろんこれは大事な視点で、構造と各部の働きが分かれば何ができるかが理解できることも多い。人の運動システムの動く仕組みのメカニズムを理解することは、リハビリの基本でもある。だが、人を理解するのにこの機械を見るような見方だけで良いのだろうか、と思う。

 人の身体を単に機械の様に理解していると、いろいろ問題も出る。たとえば壊れた構造に焦点が当たるので、なんとか壊れた構造を治せば機能も回復すると考える。それで脳性運動障害でも脳を治そうとする。だがリハビリで脳が治って麻痺も治ったという科学的な報告はない。

 また機械には設計者の意図した「正しい運動」がある。それで人にも「人体のメカニズムに適合した『正しい運動・作動』がある」となんとなく考えてしまう。そしてセラピストは正しい運動とは、たとえば歩行では「健康な若い人の颯爽とした活き活きとした歩き方」をなんとなくイメージしてしまう。

 だから多くのセラピストは片麻痺患者さんが分回し歩行をするのを見ると、少し否定的な評価をすることが多いのは事実だろう。「それはあまり良い歩き方ではないです」とか「正しい歩き方を身につけた方が良いです」など。

 CAMRは「動く仕組み」といったメカニズムの視点だけではなく、「人の運動が、どうしてどのように生じて変化するか」といった「運動出現の目的」や「運動変化の様子」など、運動システムの作動の特徴からも人の運動システムを理解しようとしている。

 たとえば実際の人の歩行は、環境や状況によってどんどん変化する。水溜まりでは、靴が濡れないようにつま先立ちになり、片脚立ちで浅いところを探しながら歩く。これは尖足歩行だ。水田では足を抜く時、泥の抵抗を小さくするために下垂足の形で膝も高く挙げる。これは鶏歩の形だ。氷の上では、こけないようにすり足気味に小刻みにパーキンソン病の方のように歩いたりもする。暗闇では両手と片脚を前に出し、それらで探りながら少しずつ進む。

 他にもいろいろあるが、健常者の歩行は環境や状況変化に応じて適切に歩行の形ややり方を変えているわけだ。特定の正しい歩き方の形で歩いているわけではない。

 むしろ環境や状況の変化に応じて、「安全に・効率的」に歩行を維持できるように、運動の形ややり方を適応的に変化させることが健常者の「正しい歩き方」の特徴である。このような人の運動システムの作動の特徴を「状況性」とCAMRでは呼んでいる。

 その視点で、片麻痺患者さんの分回し歩行を見ると、マヒ側下肢が思うように動かない状況では、体幹や健側下肢を使って「分回し」という新たな歩行スキルを生み出して、歩行されているわけで、マヒに対応した「状況性」の作動が見られる。

 だから単に若い健常者の歩き方と形が違うから、「正しい歩き方ではない」と評価するのはおかしい。

そして運動スキルというのは適切な訓練によって「より安全に・より効率的」に洗練、熟練していくものだ。

 実際「健常者の歩行と違うので矯正する。健康な若者の歩行に近づける」という目標を達成するためには「マヒを治していく」より方法はない。この目標が日本に入って半世紀以上経つが、前述のようにこれがリハビリにより達成されたという科学的報告は、残念ながら、ない。

 だから「分回し歩行の運動スキルをできるだけ安全に効率的に洗練・熟練する」という目標を持ち、全身の柔軟性・筋力・持久力、杖、靴、装具などの運動リソース(資源)を改善すること。

 そして様々な環境・状況内で、変化に対してより安全に、効率的に運動スキルを修正しながら歩行を達成する経験を積み重ねることで、歩行の安全性や効率性、歩行速度や距離を改善することが可能だ。またその過程で歩行はより滑らかになり、極端な分回しスキルが次第に自然な歩様の歩行スキルに変化していくこともよく経験することだ。

 つまりCAMRでは人の運動システムの「メカニズムの視点」に加えて、運動システムの「作動の特徴」からも人の運動を理解しようと提案している。そうするとこれまでとは異なった視点、理解の評価やアプローチが生まれてくるのである。(中編に続く)

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