「歳のせい」と言う勿れ(その2)200週目

目安時間:約 8分

「歳のせい」と言う勿れ その2 200週目


 久能ワハハン整(ととのう)です。


 今夜は秋の虫たちの声が賑やかになってきました。「うん、○○○○日和だ」です。(何のことかわからない人にはごめんなさい。漫画の真似ですが、特に意味はないです(^^;))


 前回の膝痛のアプローチですが、今回はもう少し掘り下げて説明します。


 CAMRでは以下の五つの治療方略を用います。


 ①機械修理型治療方略


 ②多要素多部位同時治療方略


 ③クライエント-セラピスト協同治療方略


 ④課題達成治療方略


 ⑤偽解決解消治療方略


 今回はこれらについて説明します。


 ①機械修理型治療方略


 これは皆さんが学校で習う治療方略です。人の運動システムを構造で理解し、壊れた部品を直すように、人の体の構成要素の悪い部分を治そうとします。まあ、たとえば特定した部位の筋力とか柔軟性を改善するわけです。


 もちろんこれは整形疾患分野では非常に優れた治療方略ですし、他の疾患でも関係する運動リソースを特定して改善するときには非常に役立ちます。


 一方、システム論を基にしたアプローチは運動リソースや身体部位を特定する視点がありません。つまり「○○が原因だ」という因果の視点がないのです。


 代わりにシステム論で行うのが「どんな状況?」という視点です。


 「問題が生まれる状況があり、それはどんな状況か?」と考えます。そして「問題が生まれる状況を変化させて問題を解決する」わけです。


 ただ「状況を変化させる」というのはとてもあやふやです。


 「その1」の膝痛の場合、状況を変化させる方法は「その1」に挙げた以外に無数存在します。以下のように・・・・


 1. ○○社のサプリメントを飲んでみる


 2. 好きな音楽を聴きながらそのリズムに合わせて歩いてみる


 3. ダイエットを行うために食事時間や食事量を変化させる


 4. 靴を替えてみる


 5. マシントレーニングを行ってみる、エトセトラ、エトセトラ・・・・などとこれまでの運動・歩行・生活状況を変える方法は無限に存在します。それらは効果があるかも知れませんが、ないかもしれません。あるいは悪化させるかもしれません。ともかく無限のやり方があるので、試行錯誤もやたらとたくさん必要になります。


 一方で、機械修理型治療方略は痛みに関する構成要素をある程度絞り込むことができます。そして絞り込んだ構成要素(CAMRでは運動リソースと呼びます)、それらをできるだけ一度に変化させて全体の状況変化をより大きく効率的に起こすことができます。


 この方法が、多要素多部位同時治療方略という訳です。


②多要素多部位同時治療方略


 徒手的療法では膝痛の原因として軟部組織や関節内運動などに原因を特定してそれにアプローチします。結果、膝痛は改善します。しかししばらくすると痛みが再発することはよくあることです。


 つまり痛みを生じることに大きく関係する一要素あるいは少数の要素を改善させても、他の要素が変化しなければ、たくさんの要素間の相互作用によって改善した要素も元通りの痛みを生じる状態に引き戻されてしまいます。


 これはシステムの「自己組織化」という性質として知られています。多要素から構成されるシステムでは、それらの相互作用の結果、落ち着くべきところに落ち着くという性質を持っています。ちょうど水を山の上から流すと、流れやすいところに集まって大きな流れを作り、やがては落ち着くべきくぼみを見つけてそこに溜まります。


 運動システムにも落ち着くべき状態が幾つかあるのですが、その中から一番安定する状態に落ち着いてきます。膝痛の継続する患者さんでは、膝痛という状態に一番落ちつき易いのです。つまり膝痛の状態に自己組織化しているのです。


 たとえば膝痛を訴える患者さんの軟部組織の短縮や癒着がみられます。そこでその部位の筋膜リリースだけを行うとそれで痛みが軽減します。そして一時的に痛みのない状態に落ち着きました。しかし、しばらくするとまた元の膝痛の状態に自己組織化してしまうのです。痛みのない状態より、痛みのある状態が一番落ち着きやすくなっているからです。


 だから落ち着きやすい状態、つまり歩いても膝痛が起きない状態に自己組織化するように全体の状況を変化させる必要があります。


 そのためにまずやることはその場で変化させられる運動リソースを同時にたくさん変化させてみることです。それが多要素多部位同時治療方略です。


 まず柔軟性や筋力はセラピストがその場で操作可能です。筋膜リリースやストレッチ、関節のモビライゼーションなどのテクニックを多部位、つまり足趾や足関節から体幹、肩、頸部まで多部位に実施し、改善します。筋力も足趾から体幹・頸部まで含む全身運動で多様に使ってもらい、活性化します。


 こうして身体の多要素多部位をその場で同時に変化させて痛みを生み出す状況を大きく変化させます。しかしこの状況変化さえ、長い時間経過の中では一時的です。もっと継続的に変化させるためには、生活・職場環境や日常生活習慣も変えていく必要があります。


 そのためには以下の残りの三つの治療方略も必要になります。


③クライエント-セラピスト協同治療方略


④課題達成治療方略


⑤偽解決解消治療方略


 次回はこれらについて説明します。(その3に続く)


【CAMRの基本テキスト】

西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【あるある!シリーズの電子書籍】

西尾 幸敏 著「脳卒中あるある!: CAMRの流儀」


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】

西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


【CAMR入門シリーズの電子書籍】

西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①

西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②

西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③

西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④

西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤


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