意欲のない人(その4)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿

目安時間:約 7分

意欲のない人(その4)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿


 ケアマネの裕美さんは「ごめんね、『意欲を高めてくれ』なんて依頼で・・・・失禁とかもあって専門じゃないでしょう?でもこれまでもいつもなんとかしてくれたから、今回も期待してるわ!」と俺の肩をポンと叩いてくる。 「じゃあ、次の約束があるから、私行くわね。委三郎さんも忙しいんでしょう?また連絡するね」とくるりと背を向けて駐車場に向かう。弾むように歩いて行く後ろ姿を、俺はしばらく見送った。


 確かに「意欲を高めて欲しい」という依頼には参る。俺はまずこれを目指すことはしない。基本、他人の意欲を意図的に高めるなんてできないからだ。自分の意欲をコントロールするのだって難しい。まあ状況変化が起きて、結果的に「意欲が高まる」ことはよくあるが、まあ、まずい依頼を受けてしまったかな・・・・しかし、率直に言って裕美さんから頼られるのは悪い気分ではない。俺にとってはまあまあ良い感じの人だ。一緒に仕事をするのはむしろ楽しみでもある。裕美さんだって俺と仕事をするのは楽しいと言ってくれる、ふふふっ・・・


 でもお互いに結婚しているので、仕事以上に付き合おうとは思っていない・・・・が、もちろん裕美さんからどうしてもって言われるんなら付き合わなくもないというところだ、フフン・・・まあ、残念ながら今のところ裕美さんの方にはそういう雰囲気はない・・・おっと、妄想に走ってしまった・・・


 俺は次の仕事があると言ったが、実は今日は急ぎの仕事はない。先ほどの家を辞するための言い訳だ。ゆっくりと考えをまとめるつもりだ。なにかひらめきそうなのだ。


 俺は問題解決に当たってはできれば二通りの方法を用意する。一つはそれらしい原因を推測して、因果の関係を想定し、その原因にアプローチする。これは原因追及型の問題解決で学校でも習うものだ。だが現実には、有力な原因が見つからないことは多いし、逆に沢山ありすぎることもある。また見つかってもどうしようもできない原因も多い。


 たとえば脳卒中後に歩行不安定になる。その原因はマヒであり、マヒの原因は脳の細胞が壊れたことだ。でもリハビリでは脳の細胞を再生させたり、あるいは機能的に再生することは今のところできていない。つまり原因がわかってもどうしようもないわけだ。


 だから俺はいつももう一つの状況変化型の問題解決を主に進めることにしている。


 たとえば「現在の問題は現在の状況から生まれている」というふうに考えていく。つまり失禁の問題は、あの家のあの環境とおかあさんとで作られるシステムの中で生まれているのである。あの部屋とおかあさんが出会えば、いろいろな状況が生まれうるだろう。しかし水が低い方へ流れて一番低いところで溜まって落ち着くように、その状況の中で自然に「動かないで失禁」という状況に安定しているのである。やるべきことは、状況を変化させて落ち着く状態を変えることである。


 こうして原因追及と状況変化の二刀流で問題解決を図るのだ。


 そう言うわけで、まずは状況変化型のアプローチを考えてみる。


 状況変化型のアプローチを組み立てるにはいくつかのコツがある。


 まず・・・最初のコツは誰が一番問題解決に熱心かと言うことだ。この場合もちろん娘さんだ。今回の依頼人だ。この人が主たる問題解決者になる。


 よく若い人から、「なぜセラピストが主たる問題解決者ではいけないのか?」と聞かれる。これに簡単に答えると、「セラピストが主たる問題解決者として振る舞うと、セラピストがいるときにしか状況変化が起きない」からである。だから主たる問題解決者は患者本人か、その家族が好ましい。


 そうすると「患者や家族は消極的で何もしようとしない」と反論されるが、患者や家族は問題解決のための具体的な選択肢を持っていない場合が多いのだ。普通の患者や家族が持つ選択肢は、「病院に行って、専門家に任せる」である。自分が何か問題解決に役立つとは思いもよらないし、具体的に実生活で自分ができる有効な手段があるとは考えていないことが多い。


 よく病院でセラピストが「家ではこのような運動をしてください」と言うが、これも「専門家の判断に従う」という文脈の中で動いているだけのことが多い。自分から「問題解決しよう」という積極的な態度ではないので、長続きがしないことも多い。


 また専門家の意見に従った結果、「何がどうなるのか?」という具体的な目標があやふやだとやはりあまり熱心に取り組まれないことが多い。「こう頑張ったら、こうなった」という結果が見えないので、続けようという意欲が長続きしないのだ。


 だから状況変化アプローチを進めるときは、主たる問題解決者を決めてその人に何を目的に、具体的に何をして、その結果どうなるのかを良く知っていただく必要がある。


 さて、あともう一つ大事なことを考えなくてはならない。それは・・・(その5に続く)


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意欲のない人(その3)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿

目安時間:約 7分

意欲のない人(その3)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿


 さて、ご本人に家の中を歩いていただく。椅子に座った状態から体を前方に傾け、両手をテーブルや椅子の肘掛け辺り、さらには片手を座面に置いたりするがどうもしっくりとこないようだ。最終的に両手で両方の肘掛けを持って体を持ち上げる様にして立ち上がる。動きは重い。尿臭が漂う。


 「トイレまで行って座ってみましょう」と言う。すぐには歩き出さない。ほんの少しの間、起立状態で両脚の支持性を確かめているようだ。それから少しずつ動き始めるが、すぐに姿勢良く、すっと独歩でトイレに向かわれる。


 「まあ、どうしたの?」と娘が大きな声を上げる。「いつもはこうやって」と両手の平を下にして小さくひろげ小刻みによちよちと歩いて見せながら「よろよろと歩いているのよ。もう人が見てると良いところを見せようと頑張るんだから!やっぱりやればできるのよね」と声を上げる。1メートルも歩くと歩行はますます安定してくる。室内で杖を使う必要はないようだ。部屋の壁に手すりがあるがそれも使われない。トイレまで4メートルあまり。頑張って最高のパフォーマンスを見せようとされているのだろう。まあ、正直のところ俺は内心がっかりした。起立や歩行の改善は俺の得意分野だし、もう少し悪ければ運動面だけでもより劇的な変化を見せられる可能性があった・・・まあ、多少は運動改善は可能だろう。まあ、劇的な変化はないだろう。


 ドアを引いて開け、入ると左手にトイレの引き戸がある。そこは開けっぱなしでそこからトイレに入るが、トイレはかなり狭く、大きな体で動くのは難しそうだ。足下が狭いせいだろう。よちよちと方向転換する。手すりはないが、壁を持って便座に座られる。トイレが狭いので手すりをつけられないのだろう。


 トイレ内での起立も壁を頼りに立たれる。そしてまた少しの間立った後精一杯すました感じで椅子に戻られる。「脚がしびれて重くて上手く歩けないし、しんどいんです。どうか治してください」と言われる。口がもごもごと動いてしゃべりにくく、聞き取りにくい。


 娘さんが期待した顔を俺に向ける。「専門家としてどうなの?どう思ったの?解決案を言ってよ!」という感じである。弱った(^^; 俺は娘さんに微笑むと、おかあさんの方を向いた。「上手に歩かれますね」おかあさんの表情はあまり変化しない。「その棚にたくさんの本が入っていますね。それらの本は読んでおられるんですか?」彼女は無表情を俺に向けた。「読んだ本なのよ。私は毎日一つのお話を読むようにしてる・・・とても良いお話でね・・私たちがどのように生きたら幸せになるかを・・・・」俺が聞き取ったのはそんな内容だ。彼女はどうも思うように口が動かないらしく、苦労して話されるが突然会話が途切れる。話すのがしんどくなったらしい。


 次に娘さんが口を挟んだ。「ええ、とてもわかりやすくて、良い教えで・・・・」どうも二人とも同じ宗教のようだ。俺は話を聞き流しながら、テーブルのそばの飾り棚の上の神棚を見た。


 俺は娘さんの話の途切れた途端に口を挟んだ。「そうなんですね。毎日神様の教えを勉強しておられるのですね。だから神棚はとてもきれいです。素晴らしい!娘さんが?」と神棚を指さす。「いいえ、母が毎日きれいに掃除して、水を替えてるんですよ。これだけは今でもきちんとやってるんです」「なるほど、それは素晴らしい・・ところで今日はもう時間になりました。次の場所に行かなくてはなりません」娘さんは面食らったような顔をした。かまわず続ける「いろいろ教えていただきありがとうございました。私としては少し考える時間が欲しいんです。今日はたくさんの話を伺って、様子を見させていただきました。あまりにたくさんのことがあるので少し考える必要があります・・・娘さんはこんどは3日後の金曜日に来られるんでしたよね。私もその時間に合わせてここに来ますので、もし良かったらその時また話をさせていただけませんか?」


 俺はケアマネの方を向いた。彼女が頷いた。「そうですよね。いくら新畑先生でも、この場で話を聞いただけでいきなり問題解決とはいきませんよね。金曜日は私は忙しくて来れませんけど、良いですかね?」と俺に尋ねる。「ええ、かまいませんよ」結局、娘さんも渋々承知する。


 こうして俺とケアマネをその家を出た。


 今回の話はそのケアマネさんから依頼された。「どうだった?なんとかなりそう?」急に砕けた口調になる。ケアマネの裕美さんは以前からの知り合いで、時々家族から受けた相談で困ると俺に解決を依頼するようになった。今回も相談料などの交渉はすべて彼女がしてくれた。


 「いや、難しそう」とだけ答えた。(その4に続く)

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意欲のない人(その2)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿

目安時間:約 7分

意欲のない人(その2)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿


 俺の名前は新畑委三郎(しんはた いさぶろう)、理学療法士で、パートでいくつかの施設で働きながら、講師業や本を書いたりしている。また時にはリハビリの難件を依頼によって扱っている。世間ではリハビリ探偵などと呼ばれている。


 さて、今回の依頼人の続きだ。ケアマネがデイサービスのスタッフと担当PTに簡単な報告のメモを頼んだところ、丁寧な報告書を書いてくれている。以下の様な内容だ。


 デイサービスは週2日、午前中のみ利用。開始時歩行は室内は自立、屋外は杖で見守りで今も変わっていない。デイサービス利用当初は安定しているので「歩いて良いですよ」と勧めていたが、リハビリ以外はほとんど椅子に座ったまま。来てお茶を飲んで一息ついたところで運動に誘っている。運動は座ったまま行う下肢運動のマシントレーニング3種を行っている。指示には素直に従われる。


 屋外歩行については、本人は連続50メートル程度は歩かれると言われるが、ここでは屋外歩行はしていないのでよくわからない。


 ケアワーカーは、最近尿臭があること、洋服が汚れていても着替えていないなど、以前とは様子が違っていることに気がついていたが、短時間の利用でトイレにも行かれないのであまり介入する機会は無かったとのこと。話しかけるとよく話されることもあるが、あまり社交的ではないようだ。利用者さん同士で会話が弾むこともない。


 スタッフの意見をまとめると、あまり動こうとされず、文句も言われないがなにかしようとする意欲が低いのではないかと言うこと。


 理学療法学科の学生として実習に出た当時から思うのだが、1人の患者さんにはとてもたくさんの情報がまとわりついている。調べれば調べるほど、たくさんの問題とその原因が現れてくるものだ。昔ははやく原因を明らかにしようと躍起になって疲れたものだが、今はそんなことは考えない。粛々と調べを続ける。


 家は十二畳ほどの長方形のリビングダイニングを中心に、部屋の長辺片側に六畳ほどの寝室と四畳半ほどの広さの風呂・トイレ・洗面がついている。リビングダイニングの入り口側の1/3に対面式のキッチンがあり、反対の壁際にテレビとその前に大きな六人掛けのテーブル、テーブルと揃いの椅子六脚などがある。その長いテーブルの短辺はテレビに接して、その対面にご本人の椅子が置いてある。テーブルと椅子の下には少し厚めのカーペットが敷いてある。椅子はやや低めの藤の回転式の椅子だ。肘掛けが両方についている。辺りには少し尿集が漂う。


 日中1人でいるときにその回転椅子に座ったまま、テレビをみて動かないらしい。回転椅子のすぐそばにはユニット棚が二つ置いてあり、それらの中やテーブルの上には様々な身の回りのものが置いてある。また一つのユニット棚には宗教関係らしい本が入っている。ふと壁際の高さ120センチくらいの飾り棚の上に小さな神棚とお供えのお皿などが置いてあるのが目につく。他のところはややほこりっぽいが、そこだけはきれいにしてある。テーブルの下には蓋付きの青いバケツが二つ置いてある。


 依頼人のおかあさんは回転椅子に座っている。やや肥満で顔は無表情。挨拶をするがやや口は不自由そうだ。足下のユニット棚のせいで、足下が狭くなっている。椅子は大きく、重いが、回転式で向きが変わるようだ。しかしそばに置いてあるユニット棚に肘掛けがこすって動きにくそうだ。


 どうやら椅子に座ったまま身の回りの事が済む様になっている様だ。見た目にもいろいろなものが雑然と集められている。ひがな一日、テレビを見たり、本を読んだり、お茶を入れたりしながらその場所に座っているとのこと。汚れた尿取りパッドを入れる蓋付きのバケツまでテーブルの下に置かれている。


 六畳の寝室はカーテンが引かれ、回りにはタンスが置かれていて暗い。中央にベッドが置かれている。部屋に入ると、やはり尿臭がする。


 娘さんが説明する。「最近何度か泊まってわかったんですけど、夜寝る前に紙パンツの中に新しい尿パッドを自分で入れて寝るんで起きたときには敷き布団は濡れることは少ないです。それで朝6時に起きて神棚に参って、その後またベッドに座ってウトウトしてるんですよ。パッドも一杯でどうもその時に浸みだして濡れるみたいなんです。だからそんなとこに座らないで着替えてと言うと、このテーブルの椅子に戻って着替えるんです。でも太ってるから前にかがむのも難しいし、寝ぼけているから時間もかかって・・・しかももうパッドがパンパンで漏れるみたいで・・・だから敷き布団も掛け布団も濡れちゃうし、着替えで濡れたパッドなんかもこの椅子の回りに落として汚れちゃうんですよね。いったん起きてからも、パッドがパンパンになって漏れるくらいになってから、ようやくこの椅子で時間をかけて着替えるんですよ。その棚にパッドが山積みになってるでしょう?介護の方にそこに入れて貰って、着替えたらこの蓋付きバケツに汚れたパッドを入れるんです。トイレに行って着替えてって言うんですが、トイレは狭くて着替えるのが難しいって言うんです」


 なるほど。さて粛々と調べを続けよう。次は実際にご本人の動きを見てみよう。(その3に続く)


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意欲のない人(その1)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿

目安時間:約 6分

意欲のない人(その1)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿


 「ともかく母は、意欲がないんです!」とその女性は力強く締めくくった。


  彼女の長い話は以下の様にまとめられる。


  彼女の母親は4年前に脳卒中を発症。現在80代前半で肥満。若いときから主婦として二人の子供を育てた。また宗教団体の地域の世話役などをやっていたというが、「元々はそれ程社交的な性格ではなかった」そうだ。6年前に夫に先立たれ元気がなくなっていたが、病気になってから更に引っ込み思案になったらしい。見かけによらず頑固で、「母親の言うことを聞かないといつまでも大変・・・」とのこと。


 発症直後、マヒは軽く少し不自由そうくらい。認知症は全くなく、薬やお金の管理は一人でされる。リハビリをして杖で外も歩けるし、部屋の中は杖なしでトイレなどに行く様になった。料理も洗濯もなんとかできるし、風呂も一人で入れるので、それまでの一人暮らしを続けることになった。


 しかしどうも自分から動こうとしない。決して一人で外には出ない。要支援2で、ケアマネに相談して訪問介護で、買いものや掃除のサービスを利用し、他に週一回は外歩きに付き添いをして貰うことにした。また他に週2回は半日のデイサービスを利用して貰った。


 しばらくはそれで問題なかったのだが、相変わらず自分から積極的に動こうとされず、一人の時は椅子に座ってただテレビを見続けているとのこと。


 さらに娘さんが1年前に退職して、週に何度か訪れる様になってより依存的になってますます動かなくなったらしく、体重も増えた。最近は「脚がしびれる、脚が不自由、何もできない」と料理などもしなくなっているとのこと。娘さんが来ないときは宅配の弁当を頼むようになった。


 そして今は何よりもトイレの失敗が目立つ様になった。


 まず紙パンツを着けているが尿を漏らしてもそのまま座っている。椅子のクッションや床のカーペットも尿臭がある。「トイレに行け」と言っても「今はないから行かない」とか言って動こうとしない。「おしっこはわかる?」と聞くと「わかる」という。紙パンツでは吸いきれないのでパッドを入れることにしたが、パンパンになって漏れているのに動かない。娘さんが失敗を指摘しても「ええ、そうなの?」ととぼけるか誤魔化すかしている印象とのこと。


 本人も失敗は気にしていたらしい。最初の頃は濡れた服は自分で洗濯していた。しかし最近は慣れてしまったのか、娘さんに全部平気で出すようになった。 どうも動くのが面倒らしく、濡れた紙パンツの中にさらにティッシュを入れて少しでも吸い取らせようとするらしく、トイレに行ってそのぬれたティッシュの塊が便器に落ちて水洗トイレが詰まったここともある。


 トイレの失敗について本人に相談したり、説得したり、怒ったりしたが、本人は「わかっている、でも脚がしびれるの。体もしんどいの。脚もこんなに腫れて・・・入院して全部治して貰いたい」などと言う。時には「もう私なんか死んだ方が良いのよ!」と逆ギレする。


 「結局、意欲がないから動こうとしないし、それでだんだん筋力が衰えてきて動けなくなって、手足も腫れてくるし、弱って動けなくなっちゃったのよ。なんとか意欲が高まらないかと買いものや外食、小旅行に連れてったり、昔趣味だった手芸なども勧めると、その時は元気になるけど、その後は一人になると相変わらず家の中では動かない」


 「こんなに臭くなってデイサービスで嫌がられるでしょう」と言うと「デイサービスに行く前の日は風呂に入ってきれいにしている」と答える。「しびれる、痛い」とは言っても、どうもやろうと思えばできそうなのである。


 「私も今のところ週2回来るのが精一杯。ともかく問題はあまりに自分で何とかしようという意欲がないこと。なんとか母親の意欲を高めてほしいんです」というのが彼女の依頼内容だ。(その2に続く)

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