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不自由な体で孫の仇討ち-新興犯罪組織首領殺人事件 その2 小説から学ぶCAMR

目安時間:約 8分

不自由な体で孫の仇討ち-新興犯罪組織首領殺人事件


 小説から学ぶCAMR その2


 刑事が帰った直後からマスコミの取材攻勢が始まった。デイケアから帰るまでは、職員がマスコミの取材を断ったが、マスコミ陣は家に帰った利用者さんを追って取材したようだ。利用者さんの何人かは取材に答えたらしい。翌日のテレビには、その利用者さん達が「藤田さんは正義のヒーロー、みんなのために悪い奴をやっつけてくれた」といった内容の話を誇らしげにしていた。僕はひたすら口をつぐんだ。特に担当理学療法士だった僕へのマスコミ陣の群がり方がひどかった。事務長もマスコミ陣の非常識さと厚かましさに目が丸くなった。「これでは仕事にならんし、何か事故が起きたら大変だな」と言ったので、「しばらく休みをいただけませんか?1週間もすれば収まると思います」と言った。


 事務長はいささか驚いたようだ。「まあ、何も休むことはないよ」という。それでも僕はこの状況から逃げ出したかった。「僕が担当した利用者さんがリハビリでよくなって、殺人を犯したのは少しショックだった」と伝えた。事務長は、「判らんでもないが、海、お前が悪いことをしたわけじゃないからな」と言った。


 僕は事務長と話した後、アパートには帰らず、施設から100キロ近く離れた街のこのビジネスホテルに泊まった。結局、事務長は休みに承知しなかったので、勝手に休むことにしたのだ。後輩にしばらく仕事を休むと伝えた。その後、携帯電話も切った。その夜から、この狭い一室で一日中テレビを見て過ごした。何もする気力が起きず、トイレ以外はずっとベッドの上で横になって過ごした。


 マスコミの熱意は、一向に下がる気配はなく、翌朝には「どうしてその犯罪が起きたのか?警察は孫の自殺後にどんな対処をしたのか?そして不自由な身体でその殺人はどうして可能になったのか?」という方へ興味が移っていった。また藤田さんや青木の人物像を細かく報道し続けた。連日、マスコミは施設職員や利用者さんの間を跳びまわっては何か新しい情報がないかとつきまとっているらしい。


 テレビには脳卒中を主にみている理学療法士が何人か登場して意見を言っていた。まとめると「脳卒中とは言っても麻痺の程度で運動能力は様々だ。麻痺が軽ければ可能だが、ある程度重いと杖なしで安定して歩くことは難しい。鉄の杭を持って力強く刺すくらいだからある程度麻痺は軽かったし、麻痺していない方の手脚の力も強く、体力もあったのだろう。普段から杖歩行をしていた?まあ、実際に麻痺の程度を見ないと何とも言えないが、時々麻痺は重くても、努力してびっくりするくらい良くなってくる患者さんはいますよ」といった話をしていた。なるほどと思った。


 実のところ、僕は刑事の前で、藤田さんが殺人をやってのけるだけの運動能力が改善していることに気がつかない振りをしようとしていたのだ。僕がその殺人の共犯者になるのではないかと恐れていたからだ。実際に僕は藤田さんと具体的に殺人の話などはしていないが、彼が復讐を企てていることに気がついていたし、それでも積極的にリハビリを続けていたからである。というのも、まさか本当にやるとは思わなかったし、実際にやっても成功するはずがないと思っていたからだ。でも自分の振る舞いのいくつかは、殺人に協力したと思うところもあった。


 だから最初は、刑事の前ではそのことに気づかない、間抜けな理学療法士としてとぼけようとしたのだ。


 しかし刑事の前では落ち着かず、我ながら挙動不審なところがあったように思う。実際に疑われたかもしれない。とてもあんな状態では冷静にマスコミの取材を受ける自信がなかった。自分でも昔から嫌になるくらい、気が小さいところがある。今さら言っても仕方ないのだが・・・おまけに昨日の夕方以降、僕は姿をくらましてしまったわけだから、却って怪しまれたと思う。電話が通じないので事務長達も不審に思っているだろう。刑事達には、「殺人の練習を指導したに違いない」、と思われているに違いない・・・・ああ、なんてことだ!色々なことで混乱して頭の中で何かがグルグルと回っている。「なんでこんなことに!迂闊にもなんと色々とやってしまったことか」と後悔した。


 さらにその日の午後のニュース・ショーで「新たな情報が明らかになった」という。「容疑者の通っていた施設の容疑者の担当の理学療法士が、不思議な練習を繰り返していたそうです。犯行のしばらく前から、坂道をダッシュして登る訓練を何度も繰り返していたことが目撃されていたそうです。しかも昨日の夕方から担当の理学療法士は、施設に居場所も伝えずに行方をくらませたそうです」


 ああ、なんてことだ!ニュースを聞いた出演者達が、好き勝手に想像していろんな意見を言い始めそうだ。僕はすぐにテレビを切ってしまった。


 事件直後からずっと言い訳を考えている。僕の仕事は利用者さんの日常生活課題の達成力を改善することだ。たとえば歩行するにしてもギリギリトイレまで歩ける程度では実用にならない。日常生活で余裕を持って動くためには、必要以上の十分な余力を持って歩けるようになって、たとえば何百メートルも続けて歩けて初めてトイレに安全に、安心していけるのだ。だからできるだけ運動能力を上げるだけ上げて行くのが僕の勤めだ。義務だ。


 そしてなにより、十分に改善した運動能力をどう使うかは僕の問題ではなく、その方自身の問題だ。僕が口を出すことではない・・・・・などという考えが頭の中をグルグル回る。


 テレビを消して、静かになった部屋の中でベッドに横になり、しばらく天井を見ているうちに少し落ち着いてきた。ふと何かを思いついた訳でもないが、なんとなく起き上がり、鞄からノートパソコンを取りだした。そうだ!なんで早くこれをしなかったのだろう、と思った。


 昔から混乱した気持ちや考えは、できるだけ文章にするようにしてきた。そうすると気持ちが落ち着いたり、考えがまとまったりすることを知っていて、ずっとそうしてきたのだ。急に気力が湧いてきたような気がした。僕はパソコンに向かった。(その3に続く)


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不自由な体で孫の仇討ち-新興犯罪組織首領殺人事件 その1 小説から学ぶCAMR

目安時間:約 8分

「不自由な体で孫の仇討ち」-新興犯罪組織首領殺人事件


小説から学ぶCAMR その1


 午後一番の利用者さんの訓練を開始した直後だった。受付にいた相談員の女性が何か伝えたいらしく、両手を振りながら小走りに近づいてきた。彼女が指さす方向を見ると、事務長とスーツ姿の男性が2人、玄関に立っていた。僕と目が合った事務長が手を挙げ、若いセラピストを指さした。


 その若いセラピストは急いで僕のそばに来ると、「事務長が急用だそうです。例の件で刑事さんが2人来ているそうです」と小声で僕に話しかけ、次いで利用者さんに向かって、「鈴木先生は急用で訓練ができなくなりました。申し訳ないですが、僕が先生の代わりに訓練しますのでよろしくお願いします」と話しかける。


 利用者さんも「あら、大変ね。藤田さんでしょ、藤田さんは良い人よ。よろしくお願いしますね」と僕に向かって頭を下げる。


 僕はデイケアの入り口に向かいながら、「やはりきたか!」と思った。


 実は、二日前に僕の担当していた利用者さんが殺人事件を起こしたのだ。名前は藤田三郎さんという。71歳で約1年前に脳梗塞を発症され、左片麻痺だ。普段は杖で歩かれている。明るくて前向きな人だ。


 僕は鈴木海(かい)。理学療法士として働いてもう10年になる。未だに独身だ。ここは老健とデイケアが一緒になった施設で、老健には100人が入所している。デイケアには1日平均70人あまりが通ってくる。朝の1時間と夕方の2時間の計3時間は併設の老健で働き、日中はデイケアで働いている。


 殺されたのは青木雄二という32歳の男性だ。身長が190㎝はある堂々たる体躯の大男らしい。青木は東京を中心に電話詐欺をするグループの一員だった。そのグループが摘発されたが、青木は逮捕されなかったらしい。その後、青木はその犯罪のノウハウを持って、生まれ故郷に近いこの地方の大きな都市で新たな電話詐欺グループを作った。


 藤田さんのお孫さんは昭といい、大学二年生の男性で二十歳。最初割の良いアルバイトを見つけて募集したらしい。しばらく荷物の配達などを手伝い、小さな運送業だと思っていたらしい。


 しかしある日いきなり青木が現れて、「良くやっているな。これでお前も一人前の組織員だ」と言ってきたという。そしてこれまでやってきたことが犯罪の一部で、「お前は立派な共犯者だ」と脅されたという。知らない間に罠にかけられて言う通りにせざるを得なかったのだろう。なにより青木はすぐに暴力的に振る舞うという。しかし言うことを聞いていれば、優しく接してくれるという。昭君はイヤイヤながら様々な犯罪に関わる仕事をせざるを得なくなったらしい。


 結局青木はたくさんの若者を彼の作った犯罪組織に誘い込み、色々な役割を振って大きな組織を作りあげた。若者の中には青木に惹かれて、積極的に悪事に参加してその能力を発揮するものもいたそうだ。少しはカリスマ性のある人間なのだろう。


 そして短期間に多くのお年寄りを詐欺にかけ、たくさんのお金をだまし盗っていたのだ。自殺した老人やショックで倒れて入院した方もいるらしい。


 そしてある日、昭君の関わった犯罪でおじいさんが騙されたことを苦に自殺してしまった。昭君はそれをきっかけに家に閉じこもるようになり一週間後に自殺。そしてその半年後に藤田さんは、青木を後ろから鉄の杭のような凶器で胸を突き刺して殺してしまったのだ。


 逮捕後、最初の警察発表では、「後ろから襲うのは卑怯だと思ったが、不自由な身体で目的を達するにはこれしかなかった」という藤田さんの弁が紹介された。それはそうだろう、藤田さんは身長165㎝そこそこで半身麻痺のご老人、相手は身長190センチで暴力的、そして新興犯罪組織のボスでもある。とてもかないそうにないのだが、それをやってのけてしまったのだ。


 また家族が「普段からあんな悪い奴は懲らしめねばならん」と再々口にしていたことを紹介した。


 結果、様々な新聞やワイドショーで、この事件はセンセーショナルに取り上げられた。大方の見出しが「不自由な体で孫の仇討ち」といったものが多い。また「正義のヒーロー」とか「勇気ある行動」と表だっては言わないものの、暗にそういうニュアンスの取り上げ方をされるようになっていた。もちろん番組の出演者は誰もが口を揃えて、「殺人はいけない」とは言っていたが・・・


 僕は刑事2人から別室で犯行の様子を簡単に説明され、質問された。主な点は、藤田さんの運動能力に関するもので、「大股で速く歩く被害者の後ろから、気づかれずに追いついて、半身不随で、先を尖らせた鉄の棒で人を深く、力強く突き刺せるものか?」と言うものだった。


 僕は、麻痺は一目ではっきりとわかるほどの状態であること。短距離なら杖なしで速く歩くことができるし、麻痺していない手脚の力は強いこと。しかし速く歩くと言っても健常者にはとてもかなわないこと。歩行のバランスは通常のあの年齢のあの程度の麻痺の片麻痺患者に比べて遙かに安定していると説明した。しかしそれでも健常者に比べると遙かに不安定であること。


 しかも鉄の棒を構えて杖なしでバランスを崩さずに早歩きして背中を刺すことはほとんど不可能に近いことだろうと答えた。普段と少し違う動作をしたり、普段と状況が変化すると簡単にバランスを崩す傾向があり、殺人のような非日常の行動ができるとはとても思えない、と答えた。


 眼鏡をかけた方の刑事は無表情に「そんなことをしたんですよ。まあ、可能なんでしょうね」と言った。


 また「藤田さんが今回の殺人を計画していたと知っていたか?」と問われたので、もちろん「全然知らなかった。事件を聞いてとても驚いた。そんな犯罪を犯すような人にはとても思えない」と答えた。じっとりと脇汗をかいている。喉がカラカラだ。


 実はこのことは前もって予想していたので、答えを予め用意して練習をしていたのだが、「どうもうまくいっていないな」と内心思った。(その2に続く)


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スポーツから学ぶ運動システム(その12 最終回)

目安時間:約 4分

スポーツから学ぶ運動システム(その12 最終回)


 人の運動システムの「課題特定的」な性質とは、新奇な課題に対しても新たな運動機能を生み出して課題を達成するということだ。そしてこの性質を支えているのは「豊富なリソース、多彩なスキル」であると前回述べてきた。


 この視点から見ると、伝統的な医療的リハビリテーション(以後「伝統的リハビリ」と略す)は「リソースを豊富にする」という特徴を持っていることがわかる。柔軟性や筋力、体力などの身体リソースの改善、そして杖や装具、義肢などの環境リソースを豊富にすることが主であった。


 特に伝統的リハビリは整形外科を中心に発達してきた。


 たとえば四頭筋力が弱れば、足首に重りやゴムバンドを巻き、椅子に座って下腿を持ち上げると四頭筋は太り、四頭筋の筋力リソースを増やしてきた。


 しかし運動スキルの視点から見ると、これは「骨盤と大腿を固定された座位で、下腿を持ち上げる」というひどく単純な身体の使い方をしている課題に過ぎない。実際に立位姿勢をとると、四頭筋は「膝関節を伸ばしながら、他の多くの筋群と協力しながら重心を狭い基底面内に留まるように働く」という複雑な使い方をしているのである。身体というリソースの使い方から見るとまったく別の運動スキルであり、椅子に座って四頭筋を太らせたのではまったく立位に役立たない身体の使い方をしていることになる。


 とは言え整形疾患の多くは、部分的な障害であり、それまで身につけた運動スキルは有効な事が多く、リソースを増やす訓練をすると、患者はその増えたりソースを自分で試しながら、自律的に運動スキルを試していることが多い。だから実際には問題にならないのだ。


 しかし脳卒中のように半身が麻痺すると、身体の変化は大規模で健常時の運動スキルは役立たなくなることが多い。立った時に健常の時のように患側下肢を使おうとすると、支持性がなくて倒れてしまう。そこで健側下肢を中心にして立位保持をするという新しい運動スキルを探して、試行錯誤し、身につけなくてはならないわけだ。


 だから脳卒中のように全身の変化が大きく、健康時に使っていた運動スキルが役に立たなくなるので、「運動リソースを豊富にする」ことはもちろん重要だが、その増えた「運動リソース」を課題達成のためにどのように利用するかという運動スキル学習もまた重要になってくるのである・・・


 さて、様々なスポーツを通して人の運動システムを見ると、他にももっとたくさんの特徴が見えてくる。今回のオリンピックはそれを改めて教えてくれたように思うのだ。(終わり)


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CAMRの基礎知識 Part1「探索」その3

目安時間:約 5分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの基礎知識 Part1「探索」その3」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



CAMRの基礎知識 Part1「探索」その3 2014/4/4
「探索に始まり、探索に終わる!」



 実習生のレポートを見ると、「股関節外転・外旋・屈曲」とか「足関節内反・尖足」とかよく書かれています。運動の評価に各部位や姿勢全体の形の記述が多いのです。



 確かに従来的アプローチは運動の形に焦点を当てています。佐々木正人さんがどこかに書いておられましたが、運動科学は映画の技術とともに発展したとのこと。運動はフィルムに記録され、一コマ一コマの姿勢の変化として捉えられたのです。運動科学は運動の形に焦点を当てて発達したのですね。



 また姿勢全体や各部位の形とかに焦点を当てると、自然に「健常者の運動の形」との比較になります。そうすると問題は「健常者の運動の形とのズレ」として捉えられ、また「健常者の運動の形に近づくことが良くなっていること」という流れを生み出しているように思います。



 時には麻痺があるのに健常者と同じ運動の形を目標にされたりします。でもそれは無理でしょう。健常者と同じ形を要求するなら「その前に麻痺を治して!」と患者さんが言いたくなるのも無理がないです。



 さらに姿勢や運動というのは、元々揺らぎを持っています。ある瞬間の場面の股関節の形を取りだしてどうこう言うのもどうなのでしょう?学生のレポートなどを見ると、その患者様はいつもその格好で歩いているかのような印象を受けます。たくさん見られる運動の形の中で、健常者の運動から一番かけ離れているものに注目して書いてあるような気がします。



 もちろん形に焦点を当てることは有効な場面も多々あります。形を見ることが悪いと言っているわけではありません。ただ一瞬の形だけを取りだして、それだけを基に色々言うのもどうかと思うわけです。(まあ、学生は形から入っていくことの方が簡単で取っつきやすい、というのはあるのでしょう)



 CAMRでは、基本的に形ではなく機能に焦点を当てます。たとえば「支持」し、「重心移動」し、「振り出す」機能があります。歩行は片脚で支持しながらその脚に重心を移動し、反対の脚を「振り出す」運動の繰り返しです。



 片脚支持という機能を実現するために身体だけで可能、あるいは杖や片手すりや平行棒が必要かどうかという状況を見ることによって、使われる運動リソースを理解できます。またその形を見ることで、どの運動リソースを利用したどのような運動スキルを生み出しているかがわかります。使われている運動リソースや運動スキルと機能の関係を見いだしていくわけです。
(文にするとややこしく感じられますが、実例で見ていくと簡単で、すぐにコツが掴めます)



 CAMRではセラピストが「機能と運動リソース・運動スキルの関係を探る」ことが探索の一部になります。その「探索」の過程を通して、「どの運動スキルを多彩にしていくか」と「どのような運動課題を選択するか」が見えてくるのです。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


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スポーツから学ぶ運動システム(その11)

目安時間:約 5分

スポーツから学ぶ運動システム(その11)


 「課題特定的」というのは、たとえば新奇の課題に対しても、達成のための新しい機能を自ら生み出していくということを意味している。


 何がそれを可能にしているのだろうか? 一つは柔軟で豊富な運動リソースである。運動リソースは身体リソース(身体そのものや身体の持っている筋力、柔軟性、持久力などの性質)と環境リソース(環境内の物理的存在、その性質、動物や他の人など)からなっている。


 人類は生まれて以来、ずっとこの環境の中で生きてきた。環境と人の体は一体になって様々な課題をこなし、生き抜いてきたのである。


 学校では人の運動システムは皮膚に囲まれた体だけに限定されるが、システム論では人の体は真空中で運動しているのではなく、この環境内で運動していて、環境と一体であると考える。つまり人の運動システムはその時、その場の環境と体が課題を達成するために一体化したものと捉える訳だ。


 そして人の身体は元々柔軟で様々な動きを行うことが可能である。更にこの地上を移動するための十分な筋力や体力を持っている。この豊富な身体リソースに加えて、環境内の様々なリソースを運動システムの一部として課題達成のための機能を生み出すためにつかうことができるのである。


 さらに人は自ら道具というそれまで存在しなかった環境リソースを創り出すことができる。石を割って刃物を作ったし、現在では皮膚の微弱電流で移動する装置もできてきている。つまり環境リソースを無限に増やし続けることができる。新奇な課題に対しても、必要な環境リソースを準備して達成するための新しい機能を備えることができる訳だ。


 もう一つは課題を達成するための運動リソースの利用方法である運動スキルを生み出す能力である。たとえば僕達はロープに様々な意味や価値を見いだすことができる。縛ったり、ぶら下げたり、固定したり、燃やしたり、染みさせたり、叩いたり、擦ったり、結んだりと様々な使い方を思いつける。


 生態心理学者のギブソンはこれをアフォーダンスと呼んだ。この環境内のものや自分の身体、身体の性質の意味や価値を見いだす能力が、それを利用し、自分に必要な課題を達成に導く能力にもなるわけだ。


 CAMRでは、運動リソースは「運動システムが課題達成のために利用できる資源」であり、運動スキルとは「必要な課題のために利用可能なリソースを見つけ、工夫し、達成する能力」と定義している。


 つまり人は豊富な運動リソースを持ち、この豊富な運動リソースを利用して、多彩な課題達成方法を生み出す運動スキルの能力を持っているために、新奇な課題でも新たな道具を作ったり、新しい機能を生み出して課題を達成することができるのである。


 だからCAMRでの基本となる訓練方針は「運動リソースを少しでも豊富にし、運動スキルを今より多彩にする」なのである。(その12に続く)


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