CAMR入門シリーズ⑤リハビリの限界?セラピストは何をする人?

目安時間:約 13分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!


CAMR入門シリーズの第五弾が出版されました!

出版を記念して以下の詳細にて無料キャンペーンを実施します。ぜひこの機会にCAMRのアイデアに触れてみください。


☆★☆★☆★★☆出版記念 無料キャンペーン★☆★☆★☆★☆
著者  : 西尾 幸敏
書名  : リハビリの限界?セラピストは何をする人?
無料キャンペーン期間: 7月21日(水)16:00~7月26日(月)15:59
☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆


【はじめに】
この本はCAMRのFacebook pageに掲載された「リハビリの限界?どうしても良くならない」(2020年1月7日~2020年2月4日の計5回)を大幅に加筆・修正したものと「セラピストは何をする人?」(2021年3月16日~2021年4月13日の計5回)を合わせたものです。


この二本を組み合わせた意図は、本書の編集責任者でありCAMR研究会副代表の田上氏が編集後記に述べています。


僕は若い頃から、リハビリの場面ではいろんな考えに惑わされてきました。
代表的な考え方は「セラピストが諦めたらダメだ!諦めずに頑張ったらいつか目標が達成できる。それが私たちの仕事で大事!」という信念めいた考え方でしょうか。いや、確かにその通りなので反論のしようがありません。でもこれが達成不可能な目標、たとえば「リハビリで麻痺を治す」とか「この患者さんが家で絶対に倒れないようにする」などに向けられると大変です。


患者さんとセラピストが一緒になって「麻痺を治す」という目標を持ってしまうと、延々と停滞の状態、つまり変化のない状態でのリハビリとなってしまいます。現状、麻痺はリハビリでは治らないからです。そして人生の目標はリハビリをやり続けることというリハビリ漬けみたいな人生になるかもしれません。


また、もしまったく転倒させないことを目標にするなら、筋力強化よりは立ったり歩いたりしないことかもしれません。歩く限り転倒の可能性はついてまわるからです。


この「何があっても理想を実現するまでは諦めない」という姿勢はユートピアン・シンドロームと呼ばれます。達成不可能な夢を追い続けるという行為で、むしろ「理想を諦めないで努力し続ける」ということ自体が目的となっています。そのために患者さんの運動問題を解決するのではなく、むしろ運動問題をずっと維持し続けるという結果を引き起こします。


もう一つの代表的な考え方は、「リハビリの業務は、運動能力を改善すること」というものです。「リハビリで扱う運動問題は、運動能力の低下による問題であり、これに対処するにはリハビリで運動能力を改善することである」とも言えます。もっと明確に表すと「リハビリの主目的は運動能力の改善」と信じることです。もちろんこの考えはここまで明確な形をとらないことが多いのです。「身体ばかりでなく、全人間的に見るのがリハビリ」と言われたりするからです。でもこれは私たちの考えの背景にずっしりと居座っています。


これは私たちが学校で習う、要素還元論を基にした「原因解決の方法論」に起源があるように思います。私たちは問題が起きると、その原因を探りその原因にアプローチして問題解決を図るように習ってきました。多くの場合身体に原因があるので、どうしても身体をどうにかしようとするのですね。


これは脳性運動障害では、「麻痺は脳細胞が壊れたことが原因であるから、壊れた脳細胞を再生させる、あるいは機能的に再生させる」として「麻痺を治そう」、あるいは「障害を治そう」というユートピアン・ドリームにも繋がっています。


また転倒しやすいのは、「筋力低下やバランス能力の低下にある」としてやはり身体能力の改善に徹底的にこだわったりする傾向を生み出します。転倒の原因は単純に筋力低下やバランス能力低下などの単純・素朴な因果関係で説明できるものばかりではありません。環境や性格や認知など様々な要素の相互作用と考えるべきでしょう。しかし運動能力だけに焦点を当ててそればかりをやってしまいがちな傾向を生み出すのです。



これらの「ユートピアン・シンドローム」や「運動問題の改善には運動能力の改善をすること」は私たちの思考の背景に居座っていて、表面的に正論ぽくて、すぐに否定が難しいのでやっかいです。ここではこれらの代わりの考え方を提案しています。ユートピアン・ドリームの代わりに「比較的短期間で達成可能な目標」です。私たちが対象とする問題は「運動問題」ではなく「生活問題」です。「障害を治して運動問題を解決する」のではなく「状況を変化させて生活問題の改善を目標とする」です。「原因を追及して原因にアプローチする」代わりに「状況を変化させるアプローチ」を提案してします。


実は僕自身がユートピアン・ドリームに囚われたり、身体能力の改善だけに焦点を当てたりしていた時期もあります。これらの考え方に囚われると、目の前の患者さんの全体像が把握できなくなって問題解決が遅れたり、できなくなったりすることがありました。


たとえば目の前の患者さんの抱える問題より、将来の麻痺の治った状態を夢見たりするわけです。結果、環境を少し調整すれば消えてしまうような生活問題も、ずっと身体能力の改善(麻痺を治す)を通して解決しようとして停滞の状態に陥ってしまうのです。「今、我慢して頑張れば将来はきっと素敵な人生が待っている」と患者さんや家族に過剰な努力を強いたりしてしまうのです。現実的に、そして持続的にも達成可能な目標ではないのですね。


まあ、これらの反省を基にこのCAMRというアプローチは発展してきたのです。
内容的にはまだ不十分ですが、現状に満足していないセラピストには一つの大きなヒントになるのではないだろうかと考えています。


2021年7月初旬 年々強くなる雨に恐れを抱きながら
西尾幸敏



【編集後記】
本書はCAMR入門シリーズの第五弾となります。いかがだったでしょうか?
今回はセラピストとしての在り方をテーマとした二部構成になっています。第一部は、困難事例だからといってすぐに諦めたりせず、なおかつ夢見るユートピアンにもならずにすむ現実的な方法論、状況変化アプローチが紹介されています。


通常養成校で習うのは、要素還元論に基づく原因解決アプローチです。これも優れた方法論の一つではありますが、原因を特定できない場合や、原因はわかっても対処不能な場合などには無力になってしまいます。そんな時に他の方法論を知らなければ、行き詰まって問題解決を諦めてしまうか、ユートピアンとなって効果のほどもわからないまま漫然と同じプログラムを繰り返すことにもなりかねません。


たった一つの方法論しか知らないセラピストと、二つの方法論を状況に応じて使い分けることが出来るセラピストがいるとしたら、あなたはプロのセラピストとしてどちらが好ましいと思いますか?あるいは、もしあなたがクライエントだったとしたら、どちらのセラピストに担当してもらいたいと思いますか?ぜひ考えてみてください。


そして、ここでは運動システムによる問題解決の一つである「安心確保方略」をとる症例が取り上げられ、臨床像やアプローチの例が紹介されています。訓練場面でのパフォーマンスが生活場面でのパフォーマンスに反映されにくいケースというのは、みなさんも経験されたことがあると思います。昔から「“できるADL”と“しているADL”の違い」といったテーマでも取り上げられています。“できるADL”と“しているADL”ではそもそも課題が異なっているので違っていて当然という面もあるのですが、それとは別に、こういったケースの中には「安心確保方略」をとっているものもいくつか含まれているのかもしれません。今ならそれを見抜き、ケースごとにもっと適切な対応が出来ると思うのですが・・・、自身の過去を振り返ると反省しきりです(;^_^A


第二部では、著者の経験を振り返りながらセラピストとしての在り方を考察しています。時代背景的にもちょっとしたリハビリの歴史を概観しているかのようです。ここではセラピストの役割に焦点を当てつつ、著者の現時点での結論が述べられています。クライエントへのリスペクトやプロのセラピストとしての矜持が感じられ、個人的にはとても共感できるものでした。みなさんはどう思われたでしょうか?


CAMR入門シリーズにしては少し重めの内容だったかもしれませんが、その分読み応えがあったのではないかと思います。本書をCAMR入門シリーズのラインナップに加えることができて嬉しく思います。本書が少しでもみなさんのお役に立てることを願っています。最後まで目を通していただき、ありがとうございます。


2021年7月 ビールが美味しくなってきた今日この頃
CAMR研究会副代表 田上 幸生


【目次】
CAMR入門シリーズ⑤ リハビリの限界? セラピストは何をする人?
はじめに
目次
第一部 リハビリの限界?どうしても良くならない!
第1章 安心確保方略をとる片麻痺患者
1.症例紹介
2.順調な改善、かと思いきや・・・
3.「安心確保方略」の正体
4.通常のアプローチは・・・
第2章 リハビリの限界?
1.リハビリの限界と個人の限界
2.リハビリの限界とは?
3.生活課題達成上の運動問題に着目する
第3章 状況変化アプローチ
1.問題解決を見てみよう
2.「安心確保方略」が見られる場合はどうするか?
3.結果は・・・
4.考察
第4章 失禁のある症例への状況変化アプローチ
1.症例紹介
2.現実的な問題解決のための目標と治療方略を考える
3.できることは何でもやる
4.結果
5.状況変化アプローチの手法とは
第二部 セラピストは何をする人?
第5章 従来的なパラダイムへの疑問
1.セラピストは運動のやり方を教える人?
2.おじいちゃんの一喝
3.ボバース全盛時代
4.湧き上がる疑問
5.人間機械論
第6章 システム論との出会い
1.上田先生との出会い
2.アメリカ留学中に見た課題主導型アプローチ
3.課題主導型アプローチへの疑問
4.自分の経験や考えをまとめてみる
5.現場復帰 ~CAMRの胎動
第7章 脇役としてのセラピスト像
1.セラピストは何をする人?
2.集え!Young CAMRer!
編集後記
CAMR研究会について
著者紹介
著書


【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤


p.s.ブログランキングに参加しています。クリックのご協力、ありがとうございます!

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

運動システムにダイブ!シリーズ①脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密

目安時間:約 9分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!

運動システムにダイブ!シリーズの第一弾が出版されました!


西尾 幸敏 田上 幸生 著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


出版を記念して以下の詳細にて無料キャンペーンを実施します。ぜひこの機会にCAMRのアイデアに触れてみください。



☆★☆★☆★★☆出版記念 無料キャンペーン★☆★☆★☆★☆
著者  : 西尾 幸敏、田上 幸生
書名  : 脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密
無料キャンペーン期間: 6月30日(水)16:00~7月4日(日)15:59
☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆



【はじめに】
 この本はCAMRのFacebook pageに掲載された「5分でわかるシステム論」(2019年10月15日~2019年11月19日の計6回)を大幅に加筆・修正したものです。むしろ加筆・修正が大幅すぎて、まったくのオリジナルと言った方が良いでしょう。


 思えば昔、僕が脳卒中患者さんを見始めたときには、「どうしたら良いものか」と悩んだものです。


 たとえば患者さんが立った時に、麻痺側の下肢が全体に屈曲して持ち上がり、患者さんは良い方の手脚だけで立たれます。これは「屈曲共同運動という現象であり、抑制されなければならない」と講習会などで説明されます。そこで自分の手を使って、患者さんの脚を抑えてまっすぐにし、床につけようとするのですが、一向に改善した感じがないのです。「手を使って、脚をまっすぐにして体重を支えるようにする」ことが正しいのかどうかさえ、分からないまま実施していました。


 これはそもそも「屈曲共同運動」が何者で、どんな性質や意味があるか分からないので、形だけ真似て脚をまっすぐにしようとするからです。


 一方、システム論を基にしたCAMR(カムルと呼びます。Contextual Approach for Medical Rehabilitation: 医療的リハビリテーションのための状況的アプローチの短縮形です)では、この現象を次のように説明していきます。


 麻痺側下肢を発症後初期に使おうとすると、麻痺のため支持性がなくてこけそうになります。つまり麻痺側下肢を使おうとすると立つという課題達成に失敗するのです。そこで患者さんの運動システムは立位課題に失敗しないように患側下肢を使わずに、健側上下肢と手すりを使って立とうとします。つまりこれは運動システムが選んだ患側下肢の「不使用」という問題解決方法なのです。


 しかし障害後に運動システムが選んだ問題解決方法は、たくさんの筋力などのリソース(資源)が失われて、仕方なく応急的に使われる解決方法です。「使うと失敗するので使わない」という問題解決方法は、その時は良くても、「使っていれば将来的には使えるようになるはずの麻痺側下肢」の可能性を失わせてしまいます。


 このように理解すると、単に脚の形をまっすぐにしようというのではなく、形はどうあれ、まずはできるだけ使ってもらうことが大事であることがわかってきます。


 そして運動システムが障害後に立つために選んだ問題解決なのです。「屈曲共同運動」というと、中枢神経システムの中の正体不明のメカニズムが相手でどうしたら良いのか分からなくなりますが、運動システムが選んだ問題解決なら、もう一度運動システムに「使う」ように選び直してもらえば良いのです。


 単に脚の形を矯正するのではなく、患側下肢に重心を移動してもらい、ちゃんと荷重・支持する経験を繰り返し、運動システムに「この脚は繰り返し使っていると、支持性が増して使えるようになるよ」という知覚学習をしてもらえば良いのです。


 このようにシステム論のような従来と異なった解釈の立場に立って理解すると、リハビリテーションのアプローチを自分で考え出したりすることもできるようになります。そうすると自分が何をするべきかがよく分かって、リハビリという仕事もとても面白くなります。


 この本ではシステム論を基にしたCAMRの考え方を紹介しています。このCAMRは、「運動システムの視点に立つ」という独自の方法論を持っています。つまり運動システムにダイブ(飛び込む)して、運動システムの立場から人の運動システムの振る舞いを理解しようという視点です。難しそうに思われるかもしれませんが、実際にやってみるととても簡単です。


 今の仕事の内容ややり方、結果に満足していないなら、この本を通じてきっと新たな可能性を見つけられると確信しています。


2021年6月 最初の発刊に寄せて
                           西尾幸敏 田上幸生 


 【目次】
運動システムにダイブ!シリーズ① 脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ! ~CAMR誕生の秘密~
はじめに
目次
第一部 運動システムの立場に立ってみましょう!
第1章 異なる立場、異なる理解
1.自分の立場を知る
2.学校教育の立場
3.システム論の立場
4.システム論の立場で見る例
5.要素還元論とシステム論
6.異なる立場の視点を自由に行き来する
第2章 システム論の視点を身につける方法論
1.運動システムの作動の性質を理解する
2.運動システムにダイブし、内部から観察してみる
第3章 健康な若者の運動システムにダイブ!
1.お腹が空いた場面
2.内部からの観察
3.嫌いな父親と一緒にいる場面
4.内部からの観察
5.運動システムの作動の性質(①、②)
第4章 廃用症候群のご老人の運動システムにダイブ!
1.水を飲みたい場面
2.内部からの観察
3.運動システムの作動の性質(③、④、⑤)
4.行動範囲が広がっていく場面
5.運動システムの作動の性質(⑥、⑦、⑧)
第5章 あなた自身の運動システムにダイブ!
1.歩いている場面
2.運動システムの作動の性質(⑨)
3.運動システムの作動の性質のまとめ
第二部  脳卒中片麻痺の運動システムにダイブ!
第二部へ進むにあたって
第6章 救急外来に運び込まれた場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第7章 初回セッションの場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第8章 初めての座位訓練の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第9章 2回目の座位訓練の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第10章 初めての起立練習の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第11章 その後の立位練習の場面(その1)
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第12章 その後の立位練習の場面(その2)
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
ちょっと一服・・・《CAMRにとっての理論とは?》
第13章 初めての歩行練習の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
参考までに・・・《スベラースの紹介》
最後に
CAMR研究会について
著者紹介
CAMRの本


【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④


p.s.ブログランキングに参加しています。クリックのご協力、ありがとうございます!

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

セラピストは何をする人?(その3)

目安時間:約 5分

セラピストは何をする人?(その3)


 システム論を教えてくれたのは、上田法の上田先生だ。直接会うとハチャメチャなことを言ったりされるが、一方で文章はどれを読んでも実にしっかりと考え込まれている。型破りで魅力的な人だった。


 それから時間はかかったが少しずつシステム論の勉強を進める。まず人の運動システムは、構造も作動も機械とはまるっきり異なっているということがわかる。人の体はプログラムの様なものではコントロールできない、しているはずがない。そして健常者相手でも運動の方法を他人が教えることはできないらしい。世間でセラピストが運動の方法と思って指導しているのは実は課題の提示である、なぜなら誰も運動の方法は教えられない。また同じように見えても運動方法は各人各様で同じではない。さらに一時的な変化と持続的な変化は違う。運動発達における脳の階層説や成熟説も間違いではないか、エトセトラ、エトセトラ・・・


 まるで今まで習ってきたことと概ね反対のことばかりではないか!


 ではどうすれば良いのか?アメリカではシステム論を基にした「課題主導型アプローチ」なるものが生まれていると上田先生から教えてもらう。その頃母校の教官になった僕は、幸い厚生省の海外留学の制度を使ってシカゴのイリノイ大学に1年間留学させて貰うことになった。


 だが実際留学はしてみたものの、英会話の理解力が乏しい僕は、現場でますます混乱してしまう。


 現場で見せて貰った課題主導型アプローチは「なーんだ、こんなものか」というくらいある意味、シンプルだった。セラピストは運動課題を指示して、座って見ているだけ。患者さんだけが一人で一生懸命運動している。特に要素的な改善(筋力や可動域の改善など)を目指す訓練はまるっきり行われていなかった。(1991年当時。この当時特にハンド・セラピーは科学的根拠がないと非難されていた。現在の様子は知らない)


 セラピストは患者の状態を調べ、必要な課題を考え、話し合い、それを指示する。そして運動の状況を見て次の適切な課題と実施条件を考え、指示する。他人が感覚入力するのではなく、自ら必要な運動課題を実践して必要な知覚学習を進めるという理屈だ。課題達成のために必要な知覚学習は、その課題を通してしか得られないからだ。(知覚学習は従来言ってきた運動の感覚学習とは全く異なる。ギブソンらの言う知覚システムではモダリティ毎に感覚を分けたりしないし、いや、そもそも従来の感覚の考え方とは根本的に異なる)


 「人の運動システムの作動の性質に精通し、それを基に提案する課題を通して、そこでしか得られない知覚学習をして課題達成の能力が改善する」ということだ。確かにその通りだと思う。が、何かしっくりとこない。理屈はそうなんだけどな・・・・ そのうちに気がついた。日本では「他人の体を他動的に動かして感覚入力をしているセラピスト」に人の体を機械のように扱う冷たさを感じた。しかしアメリカでは、セラピストが見ているのは運動システムとその性質であり、自ら能動的に動いて課題達成の知覚学習を進める患者の変化を客観的に観察・コントロールしようとする科学者のような姿だった。(その4に続く)



【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③



p.s.ブログランキングに参加しています。クリックのご協力、ありがとうございます!

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

CAMR入門シリーズ③ 正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性

目安時間:約 4分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



システム論の話をしましょう!」「治療方略について考える」に続いて、CAMR入門シリーズの第三弾が出版されました!



西尾 幸敏(著)「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③



本書はCAMR入門シリーズの第三弾となります。今回は「ピリッ」とスパイスのきいた内容です。



本書では「正しさ幻想」として、セラピストが比較的陥りやすい盲点を指摘しています。具体的には二つ挙げており、一つは「正常運動」とも呼ばれる、健康な若い人が実験室の中という普段の生活ではあり得ないような特殊な状況で行なった運動を「正しい運動」としてモデルにすることについて、そしてもう一つは、脳卒中治療ガイドラインなどに代表されるような、EBMを背景にしたプログラム選択の指針について言及しています。



どちらも適切に用いればとても有益なのですが、動作分析に際しては運動の形の奥にあるものへの眼差しの必要性を指摘し、プログラム選択にあたってはしっかりと状況を見て自ら考えることの大切さを訴え、いずれの場合にもただ頭から盲信してしまうことへの注意を呼び掛けています。



僕は人一倍思い込みが強く頑固な方なので、このあたりのことには本当に苦労した記憶があります。読者のみなさまにおかれましても、盲信の罠にはまっていないか、ぜひ一度自らの臨床を省みる時間を持っていただきたいと思います。



Camrer(カムラー:CAMRを実践する人)の一人として特に興味深かったのは、第3章から第4章にかけて、具体的な症例を挙げて説明している部分です。


なかでも、脳血管障害後の筋緊張の亢進を患者さんによる「問題解決」と捉えているところは、CAMRの真骨頂といっても過言ではないでしょう。なぜなら、脳血管障害後の筋緊張の亢進は通常「症状」と捉えられているからです。そのような常識を前にしながら「問題解決」と捉えることは、理論を道具と考え、システムを内部から観察するCAMRの視点をもって初めて可能になります。


(CAMRの視点をもう少し詳しく知りたい方は、CAMRの基本テキスト西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版をご参照ください)




目次
CAMR入門シリーズ③ 正しさ幻想をぶっ飛ばせ! ~運動と状況性~
この本について
目次
第1章  「たった一つの正しさ」を追い求める社会病理
1.巷にあふれ返る「正しさ幻想」
2.正しい歩き方? ~セラピストが出会う「正しさ幻想」
3.運動は真空中で起きているのではない
第2章  運動と状況性
1.患者さんからの怒号を浴びて
2.状況の中での運動
3.健常者の歩行の特徴は、形ではなくその作動にある
4.前節の補足説明 ~疑問の声にお応えして
第3章  「正しさ幻想」が招いた悲劇
1.正しいアプローチ?
2.症例紹介
3.ガイドラインに沿ったプログラムではあるが・・・
4.いろいろなところに潜んでいる盲信の罠
第4章  CAMRの視点
1.運動システムの作動原理
2.症状か?問題解決か?
3.問題解決方略を見抜け!
4.多要素多部位同時治療方略
5.理論は道具、状況に応じて使い分ければ良い
6.正しさ幻想をぶっ飛ばせ!
編集後記
CAMR研究会について
著者紹介
著書



p.s.ブログランキングに参加しています。クリックのご協力、ありがとうございます!

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

CAMR入門シリーズ① システム論の話をしましょう!

目安時間:約 4分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



ついに待ちに待ったCAMR入門シリーズの電子書籍が誕生しました!

西尾 幸敏(著)「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①



このシリーズは、CAMRのFacebookページに投稿された記事を中心に組み立てられていく予定です。特色はなんといっても、「わかりやすさ」と「楽しさ」だと思います。取り扱っているテーマやアイデアは決して簡単な内容ではありませんが、それゆえにこの二点を意識した工夫が随所にちりばめられています。内容の直感的な理解を助けるユーモラスなイラストなどはその代表的なものでしょう。



もっともこれらの工夫や試みが成功したかどうかは、読者の評価に委ねるしかありません。ぜひ本シリーズを手に取っていただき、評価者の一人としてもこの企画に参加していただけると幸いです。



さて、記念すべきシリーズ第一弾は「システム論の話をしましょう!」です。システム論のアイデアは抜群に面白いのですが、いざ臨床応用しようとすると何をどうすればいいのかわからず路頭に迷うという経験をしたことがあります。



そんなある意味捉えどころのないようなシステム論ですが、本書では明確に臨床応用に結びつけられた分類が提案されています。なかなか興味深い提案だと思うのですが、みなさんはどう思われるでしょうか?



アメリカでの徹底的な議論の末、Ⅱ step conference(1990年)においてリハビリの世界に産声をあげたシステム論は、早いものでもう31歳を迎えました。



「ようやく僕が活躍できる新しい舞台が出来てきたようだね。そろそろ出番かな?」



こんなシステム論の心の声が、さわやかな春の風にのって聴こえてくるようです。ぜひみなさんも耳を澄まして、この声を感じとっていただけたら嬉しいです。


【目次】
CAMR入門シリーズ① システム論の話をしましょう!
電子書籍発刊に寄せて
はじめに
第1章 システム論の分類
1.河本の分類
2.西尾の分類
第2章 素朴なシステム論的アプローチ
1.常識的な考え方の傾向
2.素朴なシステム論的アプローチ(第一段階)
3.素朴なシステム論的アプローチ(第二段階)
第3章 外部から作動を見るアプローチ
1.why?(なぜ?)の視点とhow?(どのように?)の視点
2.課題主導型アプローチ
3.運動をリソース(資源)とスキル(技能)の視点で見る
4.課題達成をリソースとスキルで説明する
5.アメリカの課題主導型アプローチの現場を見学して
6.課題主導型アプローチの問題点
第4章 内部の視点から運動システムの作動を見るアプローチ(CAMR)
1.内部の視点から運動システムを見てわかったこと
2.運動システムの作動の性質
3.問題解決が新たな問題を生み出す
第5章 システム論の視点のまとめ
1.リハビリに使えそうなその他のアイデア
2.人の運動システムの作動の性質を基にした治療方略へ
CAMR研究会について
著者紹介



p.s.ブログランキングに参加しています。クリックのご協力、ありがとうございます!

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

正しい歩き方?-そんなに形が大事か?(その4 最終回)

目安時間:約 4分

正しい歩き方?-そんなに形が大事か?(その4 最終回)


 さて、僕としては今回は、機能や運動システムの作動の性質を基に「正しい歩行」とは何かを提案し、その実践に当たった男の苦難の記録を述べることが目的でした。


 しかし!次回の投稿の後でまた新たに以下のような意見を頂いてしまったのだ。


 「あなたの言うこともわからないでもないが、患者さんの中には『私はきれいに歩きたい』という人も実際にいるのだ。そんな人の要望にも応えることは必要ではないか?」


 実は15年くらい前に上田法の講習会でシステム論の講義をするためにドイツを何度か訪れた。その時一人の高齢の女性PTから同じようなことを言われた。それは講習会の最後の講義の一つ前の休憩時間だった。「システム論では歩けば良いみたいなことを言うけれど、私はイヤだ。どうせ歩くなら健常者のようにきれいな形で歩きたいのだ。あなただって歩く姿は気になるはずだ。だから私にはシステム論は不要だ」のようなことを言われた。その時の僕にはまだはっきり答えるだけの準備はできていなかったし、あいにく通訳もそばにおらず、講習会の最後の方でバタバタしていて、僕の英語ではほとんど何も伝えられなかった。今でも大きな心残りの一つである。


 今ならこんな風に伝えるのではないか。「では健常者のように歩けないなら、あなたは歩くのを止めますか?僕なら、歩けるようならどんな形であれ歩きたい。 それに人前で歩くのが恥ずかしいと思っている患者さんのために『頑張れば健常者のように歩けるよ』と嘘も言えない。


 僕にできることと言えば次のように正直に説明することだ。『一緒に協力すれば今より早く、安定して歩くことは可能かもしれない。その結果、今とは異なった歩行の形になると思います。今より少しは颯爽としているし、今より力強い形になっているかもしれない。でも元通りの健康な頃の形で歩くことはできないと思います。


 でもあなたは最初寝たきりの状態から、座って立って、ものすごい努力と勇気でここまで歩かれるようになってきた。これはものすごいことだ。とても困難な状況にチャレンジしてなんとか歩けるようになったのです。あなたの歩行は努力の結晶です。あなたはもっとその歩き方を誇りに思って良いと思います』と。


 もしそれでも『健常者の歩行に近づきたい』と言われれば『もし僕で良ければ、僕のできる範囲で最大限努力する』と伝えます。それは患者さんからの希望だから。その時点でもう断られるかもしれないが(^^;


 ただ最初からセラピストが『患者は健常者のように歩くべき、美しく歩くべき』という単一の価値観を持って患者さんに当たるのは間違いではないか?『とりあえず歩いて、早く家に帰りたい』と思っている患者さんもいるだろう。たしかに僕たちとしては最大限患者さんの希望に添うべきだ。セラピストの価値観だけで、訓練の方針と内容を決めるのもおかしいと思う。セラピストとして自分のできる事を正直に伝えて、患者さんにどうするかを選んで貰うことが基本では?」


 さて、あなたはどう思うだろう?(終わり)(申し訳ない。今回のシリーズはこのタイトルをつけてしまったので、この流れになってしまいました。僕のウォーキング物語はまた別のシリーズで改めて書きます)

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

プロの運動問題解決者Professional motor-problem solverになろう!

目安時間:約 4分

プロの運動問題解決者Professional motor-problem solverになろう!


  -プロの運動問題解決者になるためには


 僕たちセラピストはプロの運動問題解決者である。他人の運動問題を解決することを生業(なりわい)にしている。僕たちの仕事の場合、根本的な解決は無理であることが多いが、それでもその問題がより軽くなるよう、より良い状態になるような問題解決を目指すことが必要である。


 そのために必要なのが問題解決の手段である。少なくとも二つが問題解決の手段としてよく知られているが、それらの長所・短所の理解は必要である。


 学校では要素還元論を基にした問題解決方法を習う。これは問題が起こると、その問題の原因を探る方法だ。運動問題なら、運動の構成要素、つまり筋力・可動域・感覚・バランスなどと要素毎や部位毎に分けて どこに原因があるのか探る。次にその原因と問題との間に因果の関係を想定する。そしてその原因にアプローチするのだ。しかしこの方法は非常に有用ではあるが、万能ではない。


 たとえば脳性運動障害では脳細胞が壊れることが原因だが、今のところリハビリで脳細胞やその機能を再生することはできない。つまり原因がわかったからといって解決できるわけではない。


 また慢性痛のように様々な要素が関係し合って問題が形成されていると、一つの原因だけにアプローチしても大きな変化は起きない。問題はその一つの要素だけでなく他の要素も影響し合って生まれているからだ。


 だからプロの運動問題解決者としては、他の問題解決方法も身に付けて、状況に応じて使い分けるのが良い。


 CAMRで勧めているのは、システム論を基にした状況変化アプローチである。問題が起こる状況を変化させて少しでも良い状況を作り出すことを考えるのである。CAMRには状況を変化させるための理論と技術がある。視点を全く変えることで意外な解決方法を生み出したり、今、この場でできる事をできるだけ沢山見つけてそれを積み重ねていったりする。マヒや認知症は治せなくても、状況変化は必ず起こせるのである。


 こうしてセラピストとして2種類の問題解決手段を持つことになる。学校で習った原因を探して原因にアプローチする方法と状況を理解して状況を変化させるアプローチである。どちらの方法にも長所と短所があるので、それを熟知して、状況に応じて適切に使い分けられるようになればプロの問題解決者としての力量はそれまでとは比べものにならないくらいアップするだろう。


 CAMRでは、ようやく、ようやくネット上での情報提供の準備が整ってきました(^^;近・日・公・開!乞うご期待!!

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

治療方略について考える(その10 最終回)

目安時間:約 4分

治療方略について考える(その10 最終回)


治療方略:治療の目標設定とその目標達成のための計画と方策


 前回の続きです。前回は素朴なシステム論の視点から理解した運動システムの作動の性質をまとめました。今回はそれを元にした治療原理と治療方略を考えてみます。


【素朴なシステム論によって生まれるアプローチの体系】


2. 治療原理


①治療とは1つあるいは少数の要素を改善することではない。身体、精神、環境、仕事や生活習慣などの影響を受けて生まれる状況を変化させることである


②状況を変化させるためには変化させられる要素をできるだけ多く変化させよ。あるいは要素間の関係性を変化させよ。


③アプローチして良い状況変化が出れば繰り返せ。変化しなかったり、悪くなるようなら別のことをやって見よ(状況変化が良いか悪いかは予測が難しく、やってみないとわからないことも多い。経験を積むとおぼろながら予測がつくようにはなる)


④一時的な変化と持続的な変化を見分けること。毎回元の状態に戻っているようなら、それは揺らぎをおこしているだけ。変化しない、つまり停滞の状態なので別のことをやって見よ。


⑤問題解決の主導権は、その問題解決を一番望んでいる人(患者や家族)が持つべき。セラピストはサポートの役割であることを意識せよ


3. 治療方略


①部位や要素に拘ることなく、その時、その場で変化できそうなものはできるだけ多く思いついて実施してみよ。そして今やっていることを色々と組み合わせてみよ。やって良ければ繰り返せ。ダメなら他のことをやったり、違う組み合わせを考えよ(多要素多部位同時方略)


②問題解決には、継続したアプローチが必要なこともあり、無理なく継続できるよう問題解決に一番意欲的な人物を中心に治療を展開することを考えよ(クライエント-セラピスト協働方略)


 こうして、学校で習った機械修理型治療方略とはまったく異なった治療方略の体系を手に入れましたね。


 「多要素多部位同時方略」と「クライエント-セラピスト協働方略」です。それぞれには更に詳しい説明がありますが、ここでは省略します。また機械修理型方略も状況によっては有効なのでこれで3つの治療方略を持つことになります。


 システム論には今回検討した「素朴なシステム論」の他に科学的研究や哲学的視点を基にしたものがあり(「システム論の話をしましょう!(その1)に出てくる分類の②と③)、それらからも非常に重要な、エキサイティングな治療方略が生まれますが、今回はこれで一応区切りをつけます(終わり)

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

治療方略について考える(その9)

目安時間:約 3分

治療方略について考える(その9)


治療方略:治療の目標設定とその目標達成のための計画と方策


 前回龍馬君が理解したような内容は、多くのセラピストも経験していて、直感的に漠然と自分だけの治療方略として身に付けていることを述べました。しかしそれは感覚的に理解したもので、決して明確に言語化されないし、体系化されることもありません。そのため必ずしもその治療方略は他の場面で応用されなかったり、他人に伝えることもできないのです。惜しいことです。


 だから今回は「素朴なシステム論」を基に、いつでも臨床で使えるように、簡単に「運動システムの作動の性質」と「治療原理」、「治療方略」としてまとめておこうと思います。


 ただし龍馬君の経験はまだまだ不十分なので、ここではCAMRの知識体系を追加してより臨床で使えるように修正しています。


【素朴なシステム論によって生まれるアプローチの体系】


① 人の運動システムの作動の性質①運動問題は、問題の見られる部位の周辺の要素だけでなく、全身の様々な要素が関係している。つまり運動問題は全身の様々な部位や要素などの相互作用として生まれている


②更に運動問題は、仕事内容や環境、生活習慣、性格なども影響している。身体を含めそれらの沢山の要素の相互作用から生まれる状況によって運動問題が生まれている


③また徒手療法で身体の一部位を変化させて治ったように見えても、上記の慢性痛を生み出す状況の中で変化は消耗され、痛みを生み出す状況は元に戻ってしまう。つまり一時的な変化を起こしているだけ。


④一時的な変化は元々持っている揺らぎの範囲に過ぎないかもしれない。いくら繰り返しても持続的な変化にはならないかもしれない。(一時的な変化と思われるものが持続的な変化に変わることも時々往々にしてありますが、それには条件があり、ここでは述べません)


⑤結局、繰り返す問題とは、その問題を維持するような頑固な状況の中にある


⑥セラピストが問題解決にしゃしゃり出て主人公になってしまうと、患者は依存的に振る舞うのではないか。


 そして上記のことから、次のような治療原理と治療方略が生まれてきます。(その10に続く)

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

治療方略について考える!(その8)

目安時間:約 3分

毎週火曜日の連続エッセイもいつの間にか連続100週を超えていました(^^)何か記念のイベントすれば良かった(^^;)


治療方略について考える(その8)


治療方略:治療の目標設定とその目標達成のための計画と方策


 また龍馬君は、沢山の要素の複雑な相互作用によって作られる状況下では、1つの要素を変化させたところで、その変化は相互作用の中ですぐに消耗されて元の状況に戻ってしまうということに気が付くのです。ちょうどビー玉の入っている金魚鉢を揺するところを想像してください。金魚鉢を揺するとビー玉は動き出しますが、重力と摩擦によってやがて止まってしまい、再び元の同じ場所に落ち着きます。


 つまり最初に行っていた痛み周辺の軟部組織の徒手療法は、一時的な痛みの改善という変化を起こしているだけで、その改善も日々の生活の中ですぐに消耗されてしまって元の痛みの状態に戻っていたのです。


 また一時的な変化を繰り返しても決して持続的な変化にはつながらないなら、それは運動システムが持っている揺らぎを起こしているに過ぎないと思いました。だからやり方を変えないとダメだということに気がついたのです。つまり金魚鉢を揺すっているようなもので、一時的な変化は起こしてもまた元の状態に落ち着いてしまうのです。


 さらに龍馬君は「自分が患者さんの運動問題を解決してあげるのだ!」と意気込んで、そのように努力し、振る舞ってきました。二郎さんに褒められたため、更にその傾向を強めたのです。しかし実はその振る舞いは二郎さんとの関係の中では、「どうするべきかを指示する龍馬君とそれに依存する二郎さん」という強い依存関係を作っていたことに気がつきます。


 龍馬君は一生懸命に考え、努力して、問題解決の主導権をいつの間にか強く握っていたし、二郎さんは「この先生について行けば、この問題は大丈夫、いつか解決する」と依存してしまったのです。


 そして龍馬君は、二郎さんが自分に依存していること、しかし問題解決の主役は自分ではなく、二郎さん自身だと気がついたのです。誰より二郎さんの腰痛が治ることを願っているのは二郎さん本人に違いないからです。それで問題解決の主導権を自分から二郎さんに返してあげることにしました。そのためには患者教育が大事であることに気がつき、痛みの原因と解決の丁寧な説明をしました。こうして治療の主体はセラピストから患者自身に移っていったのです。結果、二郎さんは運動によって自分の痛みが解決できることを知ったのです。痛みに支配されていたのに自ら痛みをコントロールされるようになったのです(その9に続く)

にほんブログ村 病気ブログ 理学療法士・作業療法士へ

ページの先頭へ