俺のウォーキング:理学療法士らしく(その5)
さて、俺、通称「灰色のオオカミ」は3週間の間、一人で牙を磨いた。意外に計画は順調に進んだ。ゆっくりと歩幅をひろげながら歩く練習をした。色々試すとやはり両手に軽く力を帯びて、大きく振ると歩幅も自然に広がった。俺は別に若者の颯爽とした歩行の形を目指したわけではないが、速く歩こうとすると自然にその形になるのだから仕方ない。
また競歩選手は、歩隔が狭いイメージがある。まるで直線上を歩いているようだ。だから俺も歩隔を狭くして歩くように努めた。重心移動が小さくなって速くなるかもと思ったので、まねをして肘を曲げて身体に付け、お尻を振りながら歩いてみたがすぐに疲れてしまった止めてしまった。しばらくは歩隔を狭くするよう努力だけしようと思った。
3週間の間に、頑張って歩いても息切れもしなくなってきている。始めた時は1キロ12分40秒台だったが、この段階で10分30秒まで上がっていた。やはり歩幅を広くしたのは正解だった。なんだか自分が速くなって無敵の感じもした。 しかも嬉しいことに速度は上がっているのに痛みは出ていない。むしろ膝がしっかりと大地を捉える感覚がはっきりしてきて以前よりは良い感じである。
デュエル・ロードは片道1.5キロの往復である。片側一車線対抗の道だが、両側には幅3メートル以上のきれいな歩道が整備してある。道はなだらかな丘陵を波打ちながら、ため池や丘の間を流れていく。美しい自然を愛でながら歩くには良いところである。
俺は再び決戦の地に臨んだ。久しぶりだが、3週間前とは大いに違っている。脚が軽い。
しかし残念ながら戦いは偶然に任せるしかないのである。まさか公然とデュエルを挑むわけにはいかない。「やあ、俺とデュエルしようぜ!」なんて、恥ずかしいではないか。たまたまデュエル・ロードでの出発時間が近いときだけに偶然、自然に始まるのがデュエルである。その日は白い狩人が俺より少し早くに歩いていたため、俺とは途中ですれ違っただけに終わる。
遠くから見たとき、白い狩人は胸を張って腕を大きく振って歩いていた。以外に颯爽と歩いている。あのときはたまたまのんびりしていたのだろう。近づきながら俺のことを意識しているのだろう、腕をより大きく速く振ってくる。俺も負けじと速く大きく振った。俺が意外に速く歩いているものだから、焦っているに違いない、と思った。
すれ違った後、大きく息をついた。力が入りすぎてそれだけで疲れてしまったのだ。白い狩人もきっと、今頃息を弾ませているに違いない、と思った。
そして実際にデュエルが始まったのはその翌日のことであった。果たして結果や如何に?(その6へ続く)♯持続可能な社会のために今、この場でできる事を考えてみよう!
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