プロの運動問題解決者Professional motor-problem solverになろう!
-プロの運動問題解決者になるためには
僕たちセラピストはプロの運動問題解決者である。他人の運動問題を解決することを生業(なりわい)にしている。僕たちの仕事の場合、根本的な解決は無理であることが多いが、それでもその問題がより軽くなるよう、より良い状態になるような問題解決を目指すことが必要である。
そのために必要なのが問題解決の手段である。少なくとも二つが問題解決の手段としてよく知られているが、それらの長所・短所の理解は必要である。
学校では要素還元論を基にした問題解決方法を習う。これは問題が起こると、その問題の原因を探る方法だ。運動問題なら、運動の構成要素、つまり筋力・可動域・感覚・バランスなどと要素毎や部位毎に分けて どこに原因があるのか探る。次にその原因と問題との間に因果の関係を想定する。そしてその原因にアプローチするのだ。しかしこの方法は非常に有用ではあるが、万能ではない。
たとえば脳性運動障害では脳細胞が壊れることが原因だが、今のところリハビリで脳細胞やその機能を再生することはできない。つまり原因がわかったからといって解決できるわけではない。
また慢性痛のように様々な要素が関係し合って問題が形成されていると、一つの原因だけにアプローチしても大きな変化は起きない。問題はその一つの要素だけでなく他の要素も影響し合って生まれているからだ。
だからプロの運動問題解決者としては、他の問題解決方法も身に付けて、状況に応じて使い分けるのが良い。
CAMRで勧めているのは、システム論を基にした状況変化アプローチである。問題が起こる状況を変化させて少しでも良い状況を作り出すことを考えるのである。CAMRには状況を変化させるための理論と技術がある。視点を全く変えることで意外な解決方法を生み出したり、今、この場でできる事をできるだけ沢山見つけてそれを積み重ねていったりする。マヒや認知症は治せなくても、状況変化は必ず起こせるのである。
こうしてセラピストとして2種類の問題解決手段を持つことになる。学校で習った原因を探して原因にアプローチする方法と状況を理解して状況を変化させるアプローチである。どちらの方法にも長所と短所があるので、それを熟知して、状況に応じて適切に使い分けられるようになればプロの問題解決者としての力量はそれまでとは比べものにならないくらいアップするだろう。
CAMRでは、ようやく、ようやくネット上での情報提供の準備が整ってきました(^^;近・日・公・開!乞うご期待!!
≧(´▽`)≦
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今回は「CAMRの簡単紹介(その2)」です。
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その2 障害に焦点を当てない2013/9/21
従来型アプローチは、運動機能低下の原因を求めて障害に注意を向けていきます。脳性運動障害では思うように身体が動かず、過緊張や低緊張の状態が見られます。この原因は「脳細胞の傷害にあり」などと言って、「脳細胞の働き」にアプローチしようとします。
こうして日本では1970年代に「脳性麻痺は治る」という熱狂に包まれます。でも現時点でも、脳の機能的代償や構造的再生について明確に効果を示しているものはありません。今本的原因にアプローチすれば、根本的な解決になると思われがちですが、40年以上、解決の見えないアプローチになってしまっているのです。
また「その1」でも述べましたが、たとえば特定の筋力低下のある筋を探し出して、その筋を鍛えれば良い、と言うのは「障害に焦点」を当てているためにどう鍛えるかについては無関心になってしまいます。
CAMRでは、「障害に焦点を当てる」代わりに、最初から人の運動システムの「作動に焦点を当てて」います。例えどのような障害がどの程度あるにしろ、人の運動システムとしてどう作動し、どのような機能と結果を生み出すのかを見ていきます。
そうすると、その作動を理解する上でどうしても知っておくべきことがあります。それが「システムをどう捉えるか?」と言うことです。しばしばシステム論理解の邪魔になっているのは、このシステムが何か?ということです。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆
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私はまだ習っておりません! -問題解決を巡るいろいろの問題
ある新人セラピストが、「私はまだ習っておりません!」といって仕事を引き受けようとしなかったことがある。
「習ったことがない」というのはその通りだと思う。人生は習っていない問題に次々と直面するのが普通だ。絶対大丈夫と思って告白したのに失恋したり、ソフトクリームを他人のおろしたてのスーツに押しつけてしまったり、路上で美女の詐欺に遭ったり、人には言えない場所に痛みが出たり、これは絶対安いと思って勝負に出たら役満でロンされたり・・・などと未知の問題、想定外の問題はいつもいつも起こってくるものである。
だが、それが人生だ。「習っていない」と言って済ましている場合ではない。人生は常にその場その場で未知の問題にも柔軟に対応していかなければならないのだ。
自分で解決法を考えることはできなくても、誰かに助けて貰ったり、アドバイスを貰うことはできる。上記のようなのは「習っていない」とその問題から逃げ出しているのだろう。それはこの人なりの慣れ親しんだ問題解決方法なのだと思う。とりわけ困難な問題からはすぐに逃げ出してしまうのだろう。
しかしセラピストの仕事は基本、他人の運動問題を解決することだ。ブロの運動問題解決者だ。それなのに『習っていません』とか『この患者はやる気がないからしかたない』とか『認知症がひどくて・・・』とか、そんな言い訳ばかりで自分がその問題から逃げるという解決法ばかりを選んでいては仕事にならない。 まあ、無理はないとは思うのだ。解決困難の問題から逃げ出したくなるのは自然のことだし、問題解決というのは、策もなく無理して突っ込んでいくと新たな問題を生み出してややこしくなるものだ。最後は「こんな仕事、辞めてしまいたい」ということになってしまうかもしれない。だから逃げてしまうという選択肢も時には必要なのかもしれないが・・・
ともかく他の解決方法も試みてほしいものだし、先輩や回りの人たちも別の選択肢に目を向けるような援助が必要だろう。
また問題解決を巡る問題にはもっとシビアなのもある。たとえば「脳卒中の方に健常な運動を学習してもらい、マヒを治して貰おう」などというアプローチである。これは「理想主義者の解決方法(ユートピアン・ソリューション)」と呼ばれる。実現不可能な目標を持ってしまうからだ。実際、未だにマヒが治ったという例は聞いたことがないし、現時点でも実現不可能な目標である。
しかし「諦めたらそこでおしまいだ。ダメなんだ!諦めずに続けていくことが大事だ。続けていればいつか夢は叶うんだ」という思考方法はいつの時代も多くの人の心をつかんで離さない。だから何年も何十年も変化なく、同じことを繰り返している患者さんとセラピストのペアを見ることもある。また多くの若いセラピストがユートピアン・ソリューションに惹かれて、ユートピアンになっていく。まあ、それはそれで人生の問題解決の選択肢の一種なのだが、あまり良いことではないと思う。
結局、何が言いたいのかというと「セラピストは問題解決が生業(なりわい)であるし、もっと問題解決方法とそれらの分類、特徴についてよく知らないといけない」ということだ。自分が問題から逃げ出すタイプか、ユートピアン・ソリューションを持ちやすいタイプか、他人に頼ってしまいがちなタイプか、とりあえず「その場で自分にできる事をやってみる」タイプか、などである。
そして僕のようなずぼらで不器用な人間でもなんとかそれなりの問題解決をして、ずっと続けられる方法もある。いつもすべて上手くいくわけではないけどね。それでもこれまで試した中では良い方法だと思う。それがCAMRの「状況変化のアプローチ」で、これを知ってからは、仕事がなんとなく面白くなったので、今は人に勧めているわけです(^^)v(終わり)
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今回は「CAMRの簡単紹介(その1)」です。
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西尾です。CAMRの簡単紹介
その1 運動機能低下の原因を探らない2013/9/14
従来型のリハビリテーションアプローチでは、まず障害(失われたあるいは低下した運動機能)に焦点を当てて、障害の原因を探っていきます。簡単に言うと「できないこと」に焦点を当てて、その「原因」を見つけ、その原因にアプローチしようとします。
たとえば「最近歩きが不安定で転けやすい」の原因は「特に下肢の筋力低下」としたとします。そうすると下肢の筋力強化を行うわけです。この流れの中では、下肢の筋力を強化すれば良いので、下肢の筋力の強化の方法は特に規定されません。座ってゴムバンドを使ったり、重りを使ったり、マシントレーニングを用いたりします。
一方、CAMRではこのようなアプローチを取りません。まず健常者の運動システムの特徴を基に、ひたすら運動余力を豊富にすれば良い、と考えています。従って機能低下の原因を探るような評価はしません。現在の運動機能を評価し、その残った機能が改善していくようにアプローチします。
アプローチの方法も健常者の運動システムの特徴から、「運動余力は必要とされる運動課題を中心に改善する」と考えます。これまた簡単に言うと「最近歩きが不安定で転けやすい」クライエントが来られると、立位での挑戦的ではあるが達成可能な運動課題を繰り返し、あるいは少しずつ変化させながらやっていただきます。
人の運動システムの特徴から言って、歩行に必要な運動能力・余力は立位を中心とした様々な運動課題で作られるのであって、座位では作られないと考えています。
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今回は「オートポイエーシスを読む!(その6;最終回)」です。
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オートポイエーシスを読む!(その6;最終回)2013/3/16
さあ、オートポイエーシスの世界の散策に出かけましょう!
前回例に挙げたような神経システムの振る舞いを外部から観察した場合、ある刺激に続いて何らかの反応があれば、僕たちはそこに因果関係を想定してしまいがちです。ある刺激が原因となって、ある反応が結果として出現した、というふうに。
しかしオートポイエーシス理論では、そのような因果性を徹底的に排除しようと試みます。そこで、外部にあった観察者の視点を、システムそのものに移してみます。
そうすると、前回書いたように「神経システムの作動で行われることは、神経システムの構成素を産出・再産出するだけであり、システムはそれ自体の同一性を保持するように自己内作動を反復するだけだ」という捉え方が可能になります。
神経システムにとってみれば、その作動の要因については内部も外部も区別がありません。神経システムからみれば、環境との関係で区画されるような境界はなく、したがってその境界をもとに想定されている入力も出力もないことになります。
神経システムの状態変化において、内的原因と外的原因の区別が成り立つのは、有機体を単位体として捉え、境界を特定することによって内部と外部を定義する観察者にとってだけなのです。
このことを踏まえると、CAMRホームページで紹介されている、潜水艦の喩えが理解しやすくなると思います。
今回で、オートポイエーシスを読む!シリーズは最終回となります。これまで読んでくださった方々、どうもありがとうございました。
今回参考にした書籍を以下に挙げておきます。なかなか難しくてよくわからないことも多いのですが、興味がありましたら、是非読んでみてください。
1)ウンベルト・マトゥラーナ、フランシスコ・バレーラ;「知恵の樹」,管 啓次郎訳,朝日出版社,1987.(文庫本にもなっています。ちくま学芸文庫,1997.)
2)H.R.マトゥラーナ、F.J.ヴァレラ;「オートポイエーシス 生命システムとはなにか」,河本英夫訳,国文社,1991.
3)河本英夫;「オートポイエーシス 第三世代システム」,青土社,1995.
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リハビリのファースト・フード化について考える
世の中全体がスピードと効率に価値を求めているのだろう。無駄を避けるマニュアルと商品のメニュー化によってファースト・フード店はスピードと効率を達成するための代表的なシステムの1つに違いない。
それが良いとか悪いとか言うつもりは全くない。食事を摂るという行為の選択に多様性があるのである。手早く済ませたい状況もあれば、ゆっくりと味わいたい時もある。単に腹を満たしたい人もいれば、食事そのものを味わいたい人もいる。それぞれの立場、状況と必要に応じて各人が使い分ければ良いことである。ただ社会全体としては、スピードと効率は求められる傾向にある。
もちろんこのスピード化と効率化はリハビリ分野でも求められている。一番大きな理由は経済的なものだろう。1つは医療費の節約であり、もう一つはリハビリ期間を短くして早く社会復帰・家庭復帰を促す、つまり時間の節約の必要があるからだ。社会にとっても個人にとっても重要なところだ。つまりリハビリも効率を考えれば、ファースト・フード店のシステムを真似てマニュアル化・メニュー化して行くのは自然である。
ただリハビリの価値は多様化せずに、このスピード化・効率化だけに向かうだろう。「リハビリを楽しもう」とか「リハビリによって新しい人生の意味を生み出そう」などという価値観は社会には不要であり、これからもリハビリにはひたすらスピード化、効率化が求められるだろう。
こうして「このときはこれをする」、「この場合はこれをしてはいけない」などとマニュアルに従って仕事をする傾向が強まる。現在もそうだろう。誰かの作ったリハビリメニューに従って仕事を進めていく。こうなると目の前の患者さんを流れ作業的にこなしていくことになる。もちろんマニュアルとメニューの内容がある程度しっかりしていれば、そこそこのリハビリ成果を均一に生み出すことになる。
従ってセラピストがファーストフードの店員化していくのは避けられないだろう。つまりファーストフード店の店員は優れた接客の技術とそつのない振る舞いを発達させるが、使っているマニュアルやメニューの妥当性を判断し、よりすぐれた改善ができるようにするのは難しいだろう。セラピストもそのような現場での必要な技術のみを発達させるようになり、創造性は脇に置かれることになる。
人は様々な経験を積むことで生活や仕事、問題解決、状況判断のスキルが発達するのだと思う。マニュアル化やメニュー化された単調で均一な流れ作業的な仕事の経験を繰り返していては、セラピスト一人一人が問題解決のスキルや技術を発達させるのは難しい。
そうなるとスピード化と効率化を目指しつつも、患者一人一人の問題に耳を傾け、患者一人一人に適した解決方法を生み出すような仕組みを作って、その成果を広く現場にフィードバックしていくようなシステムも必要になってくるだろう。つまり企業の商品開発部のようなシステムである。企業の命運はその部署の成果にかかっている。リハビリもそんな時代になるのではないか。リハビリの場合は大学などの研究機関がそんな役割を果たすのだろうか?(僕は臨床に関わる人間がやった方が良いとは思う・・・)
というのも現在セラピストは大量に生まれるようになった。個人個人が総合的なリハビリ能力を備える時代は終わったのではないか。現場では接客と適切な治療技術、臨機応変の能力が求められる。一方、開発部ではより創造力を求められるようなメニュー開発が行われ、現場にフィードバックされる。そんな社会全体のシステムとしてリハビリを考える時代になったのだと思う。
それでもまあ、CAMRは未だに個人の問題解決能力の改善に焦点を当てているし、これからもそのつもり(^^;だって現場で個別のメニューを考える人間は絶対に必要だもの。いつだって想定されていない問題、未知の問題は起きてくるものだから(終わり)
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今回は「オートポイエーシスを読む!(その5)」です。
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オートポイエーシスを読む!(その5)2013/3/6
さあ、オートポイエーシスの世界の散策に出かけましょう!
「入力も出力もない」ということについて、神経システムを例に挙げてみましょう。神経システムは、感覚器表面において絶えず環境からの刺激を受けています。一般的には、この刺激に対処するように神経システムが作動すると考えやすいのですが、これは「入力も出力もある」システムにおいての捉え方になります。
一方、「入力も出力もない」システムでは、環境からの刺激に対処するように神経システムが作動しているのではない、と捉えます。神経システムの作動で行われることは、神経システムの構成素を産出・再産出するだけであり、システムはそれ自体の同一性を保持するように自己内作動を反復するだけだといいます。
ここで箴言に立ち戻ってみましょう。
「いわれたことのすべてには、それをいった誰かがいる」
人が何かについて語ったり記述した場合、そこには必ず観察者の視点というものがあるのでした。
…続く
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今回は「オートポイエーシスを読む!(その4)」です。
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オートポイエーシスを読む!(その4)2013/2/26
さあ、オートポイエーシスの世界の散策に出かけましょう!
これからしばらく、前回取り上げたオートポイエーシス・システムの特徴の4つめ、「入力も出力もない」ということについて考えてみたいと思います。
が、いきなりこう書かれても何だかよくわからないので、まず「入力も出力もある」場合を見てみます。
例えば動的平衡システムで考えると、有機体は環境からの影響をこうむりながら、その影響による変化をシステム自体で調整し自己維持します。物質代謝によって取り込んだ栄養物を自己の構成要素に変換し、老廃物を外部に排出しています。これはまさに環境からの入力と、環境への出力といえます。僕たちが一般的に「環境との相互作用」と言った場合に、イメージしやすいのはこのようなもの、すなわち「入力も出力もある」システムだと思います。
栄養物を外部から取り入れて老廃物を排出する。これは確かにその通りで、納得しやすいと思います。とてもわかりやすい例ですね。それでは、「入力も出力もない」とは一体どのような事態なのでしょうか?
…続く
★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆
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治療方略について考える(その10 最終回)
治療方略:治療の目標設定とその目標達成のための計画と方策
前回の続きです。前回は素朴なシステム論の視点から理解した運動システムの作動の性質をまとめました。今回はそれを元にした治療原理と治療方略を考えてみます。
【素朴なシステム論によって生まれるアプローチの体系】
2. 治療原理
①治療とは1つあるいは少数の要素を改善することではない。身体、精神、環境、仕事や生活習慣などの影響を受けて生まれる状況を変化させることである
②状況を変化させるためには変化させられる要素をできるだけ多く変化させよ。あるいは要素間の関係性を変化させよ。
③アプローチして良い状況変化が出れば繰り返せ。変化しなかったり、悪くなるようなら別のことをやって見よ(状況変化が良いか悪いかは予測が難しく、やってみないとわからないことも多い。経験を積むとおぼろながら予測がつくようにはなる)
④一時的な変化と持続的な変化を見分けること。毎回元の状態に戻っているようなら、それは揺らぎをおこしているだけ。変化しない、つまり停滞の状態なので別のことをやって見よ。
⑤問題解決の主導権は、その問題解決を一番望んでいる人(患者や家族)が持つべき。セラピストはサポートの役割であることを意識せよ
3. 治療方略
①部位や要素に拘ることなく、その時、その場で変化できそうなものはできるだけ多く思いついて実施してみよ。そして今やっていることを色々と組み合わせてみよ。やって良ければ繰り返せ。ダメなら他のことをやったり、違う組み合わせを考えよ(多要素多部位同時方略)
②問題解決には、継続したアプローチが必要なこともあり、無理なく継続できるよう問題解決に一番意欲的な人物を中心に治療を展開することを考えよ(クライエント-セラピスト協働方略)
こうして、学校で習った機械修理型治療方略とはまったく異なった治療方略の体系を手に入れましたね。
「多要素多部位同時方略」と「クライエント-セラピスト協働方略」です。それぞれには更に詳しい説明がありますが、ここでは省略します。また機械修理型方略も状況によっては有効なのでこれで3つの治療方略を持つことになります。
システム論には今回検討した「素朴なシステム論」の他に科学的研究や哲学的視点を基にしたものがあり(「システム論の話をしましょう!(その1)に出てくる分類の②と③)、それらからも非常に重要な、エキサイティングな治療方略が生まれますが、今回はこれで一応区切りをつけます(終わり)
≧(´▽`)≦
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「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「オートポイエーシスを読む!(その3)」です。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆
オートポイエーシスを読む!(その3)2013/2/22
さあ、オートポイエーシスの世界の散策に出かけましょう!
前回、オートポイエーシスって何?というあたりを取り上げました。今回は河本英夫氏による解題より、機械と対比した場合のオートポイエーシス・システムの特徴を見てみましょう。4つの点が挙げられています。
1.自律性:どのような変化もシステムそのものによって統制されているので、システムは自律的だと言えます。
2.個体性:システム自身で、みずからの構成素を産出することによって自己同一性を維持します。
3.境界の自己決定:それ自体でみずからの境界を決定します。
4.入力も出力もない
これらの特徴のうち、オートポイエーシス・システムを本当に特徴づけるのは4の「入力も出力もない」ということだそうです。これについては次回(?)で取り上げようと思います。このあたりは、「知恵の樹を読む!(その3)」で紹介した箴言の一つ、「いわれたことのすべてには、それをいった誰かがいる」、つまり「観察者の視点」にも関連してきます。
p.s.参考までに、オートポイエーシス・システムについて、前回のよりもう少し定義らしいものを、河本英夫著「オートポイエーシス 第三世代システム」青土社,1995.より引用しておきます。
/////////////引用////////////
オートポイエーシス・システムとは、構成素が構成素を産出するという産出(変形及び破壊)過程のネットワークとして、有機的に構成(単位体として規定)されたシステムである。このとき構成素は、次のような特徴を持つ。
(i)変換と相互作用をつうじて、自己を産出するプロセス(関係)のネットワークを、絶えず再生産し実現する。
(ii)ネットワーク(システム)を空間に具体的な単位体として構成し、また空間内において構成素は、ネットワークが実現する位相的領域を特定することによってみずからが存在する。
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