運動リソースとリハビリ(その1)第189週目

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運動リソースとリハビリ(その1)第189週目


 運動リソースとは、動物が運動をするための資源である。システム論では、運動リソースとこれを基にした運動スキルを中心に、動物の運動・活動を理解することが多い。(「運動リソースは運動の資源で、運動スキルは課題達成のための運動リソースの利用の仕方」とCAMRでは定義している)


 たとえば人が歩くためにはまず体という資源が必要だし、体に備わった筋力や柔軟性、持久力といった資源が必要だ。


 また大地と重力という資源も必要だ。歩行という運動は真空中では起きない。歩行は大地と重力の間で起きているからだ。


 もし目の前に溝があって渡る場合、渡れるかどうかわからないまま、一々実際に試していたのでは落ちて怪我をするかもしれない。効率も悪いし、危険だ。 だから渡る前に予期的にどう渡れるか、運動結果がわかった方が良いし、そして実際に私達はそれがわかるのである。つまり私達にとっては、溝の幅を見て「軽く跨げる」、「軸足で強く踏み切って跨げる」、「少し助走をつけて跳べば渡れる」、「渡るのは無理だからやめる」などという運動結果と課題達成の方法は自然に予期的にわかってしまう。


 このように実際に試すまでもなく、あるいは少し跨ぐ姿勢に入ってみることで運動結果はわかってしまう。これによって効率的、安全、適応的な運動ができているとも言える。これは過去の運動経験と現在得られる身体や環境の状態を知ることを基にした「情報という資源」によってできるわけだ。


 こうしてCAMRでは運動リソースは以下の3つに分類できる。


 ①身体リソース:身体と身体が持つ性質(筋力、柔軟性、痛みなど)。動物の動くための中心となる運動リソースである


 ②環境リソース:環境内に存在する大地や水、構造物、もの、動物。また環境内に存在する性質(重力、温度など) 


③情報リソース:動物が活動によって得られる自らの身体、環境、身体と環境との関係に関する情報。環境・身体のどちらかに存在するのではなく、両者の関わり合いの上に存在するリソース。


 今回は私達、医療的リハビリテーションのセラピストが知っておきたい運動リソースの話である。そして次回取り上げるのは「身体リソース」である。(その2に続く)


追記:これまでCAMRでは運動リソースは「身体リソース」と「環境リソース」の2種類であると説明してきました。今回は試験的に「情報リソース」を加えて3種類の分類にしています。


 以前は「情報リソース」は身体の持つ性質、つまり「情報を生み出す性質」としていたのですが、いろいろと検討してみると「身体と環境の間に存在する」と考えた方が良いと考えるようになっていますが、まだ検討中です(^^;)いずれ次回に発刊予定の「リハビリのシステム論」(仮題)で、「臨床でうまく使える」ように説明できればと思っています。


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