CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編

目安時間:約 7分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!


「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実例紹介-症例を通して 解説編


CAMR研究会代表の西尾です。
 ここでは秋山さんの症例紹介を基に簡単にCAMRの解説を行います。


 一つ目はCAMRではセラピストが複数の視点を持ち、それを切り替えながら考えるということです。CAMRではセラピストの立場だけでなく、患者さんの立場、そして患者さんの運動システムの立場に立って考えることを勧めています。運動システム内部の視点に立つと,姿勢や運動の形は見えません。しかしシステム作動の目的や達成状況、作動の性質は良くわかってきます。たとえば運動システムは、常に人にとって必要な課題を達成しようとしますし、もし課題達成に問題が起きると必ず問題解決を図ります。


この方は麻痺肢を振り出すために使えるところを使う「分回し」という問題解決を図ります。また患側下肢の支持性に自信がないので、次第に患側下肢の使用を最小限に抑える「不使用」の問題解決を図ります。この状況を変化させるポイントはここにあります。


つまり基になっている麻痺は今のところセラピストにはどうしようもありませんが、問題解決は運動システムが麻痺後に選んだものですから、当然変化することが可能な場合が多いのです。


この方の場合、患側下肢の不使用のために健側下肢を十分に振り出すことができない状況が見えていて、これは患者さんにも不利となっています。一方セラピストの視点で見ると患側下肢の支持性は十分です。だから使わないのはもったいないとなるわけです。


このようにCAMRでは運動システムとセラピストの視点を行ったりきたりしながら評価を進めていきます。(CAMRには運動システムの視点から作動を理解するための6つの作動原理がまとめられています)


またもう一つ。運動システムは様々な要素の相互作用の結果、その作動は安定した状態になります。安定した作動とは自然に頑丈な状態へと変化するものです。だからこの頑丈さを崩して状況変化を起こすのはかなり難しくなります。


たとえば分回しのスキルは障害後最初に課題達成に成功したスキルなので、運動システムはそれを繰り返し続けます。不使用スキルにしても同じです。初期に患側下肢の使用を最小限にすることでうまく行くのでこれを繰り返します。そして頑丈な状態になっていきます。従って運動システムが「分回し」、「不使用」より安全面でもエネルギー効率からも優れているスキルが見つからない限り、「分回し」、「不使用」のスキルは繰り返し使われ続けてしまうのです。


そこで状況変化のための治療方略が必要になります。ここでは簡単に言うと「多要素・多部位同時アプローチ」という治療方略を用います。つまり私たちが起こせる状況変化を一つ一つ積み重ねていきます。たとえば柔軟性を広げることで運動範囲や重心移動範囲を大きくします。また患側下肢が「思っているより使えるよ」と経験を重ねていただきます。「実りある繰り返し課題」を継続して実施することで、運動の余力をできるだけ高めていきます。またここでは述べられていませんが、CAMRには「足場作り」という技術があり、それによって成功経験をより強めたり、患者さんの意欲を高めたりしていきます。結果、患者さんは成功体験に自信を持ち、更に作動を変化させていったわけです。(秋山さんにとって足場作りは当たり前に使っていることなので、今回は言及しなかったようです)


結果、患側下肢の支持時間が増え、健側下肢を大きく振り出して前方へのより大きな推進力を生み出しますので、その後に続く患側下肢の振出もより容易になってまっすぐに振り出せるようになったと考えられます。つまりより安全で効率的な身体の使い方、つまり新しいスキルを繰り返し、自然に新たな頑丈な状態へと変化したのです。


CAMRでは通常運動の形を変化させることは目標としませんが、支持、重心移動、振出などの働きを改善することを含めて様々な角度から作動を変化させ、ここでは結果的に運動の形も変化したわけです。


まずは患者さんの状況を理解するためには、患者さんの運動システムが障害に対してどのような問題解決を図っているかを知ることが重要です。それによって患者さんの運動システムが何を問題にしているかがよくわかるからです。たとえば分回しはこの状況では良い問題解決、しかし不使用は新たな問題を生み出していると考えることができます。そして問題を生み出す不使用の状況を変化させるように計画していきます。結果運動システムの分回しスキルへの依存は減少して、よりまっすぐに振り出せるようになったのです。


CAMRでは運動システムは通常6つ問題解決方略を使うと考えています。その問題解決毎に新たに起きる問題や状況変化の方法が少しずつ変わります。脳卒中では普通2-4種類の問題解決が同時に使われていることが多いのです。講習会では実際の患者さんのビデオを見ながらこれらを理解することができます。
講習会再開の時には是非ともご参加下さい。お待ちしております!(^^)


★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤


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