スポーツから学ぶ運動システム(その12 最終回)

目安時間:約 4分

スポーツから学ぶ運動システム(その12 最終回)


 人の運動システムの「課題特定的」な性質とは、新奇な課題に対しても新たな運動機能を生み出して課題を達成するということだ。そしてこの性質を支えているのは「豊富なリソース、多彩なスキル」であると前回述べてきた。


 この視点から見ると、伝統的な医療的リハビリテーション(以後「伝統的リハビリ」と略す)は「リソースを豊富にする」という特徴を持っていることがわかる。柔軟性や筋力、体力などの身体リソースの改善、そして杖や装具、義肢などの環境リソースを豊富にすることが主であった。


 特に伝統的リハビリは整形外科を中心に発達してきた。


 たとえば四頭筋力が弱れば、足首に重りやゴムバンドを巻き、椅子に座って下腿を持ち上げると四頭筋は太り、四頭筋の筋力リソースを増やしてきた。


 しかし運動スキルの視点から見ると、これは「骨盤と大腿を固定された座位で、下腿を持ち上げる」というひどく単純な身体の使い方をしている課題に過ぎない。実際に立位姿勢をとると、四頭筋は「膝関節を伸ばしながら、他の多くの筋群と協力しながら重心を狭い基底面内に留まるように働く」という複雑な使い方をしているのである。身体というリソースの使い方から見るとまったく別の運動スキルであり、椅子に座って四頭筋を太らせたのではまったく立位に役立たない身体の使い方をしていることになる。


 とは言え整形疾患の多くは、部分的な障害であり、それまで身につけた運動スキルは有効な事が多く、リソースを増やす訓練をすると、患者はその増えたりソースを自分で試しながら、自律的に運動スキルを試していることが多い。だから実際には問題にならないのだ。


 しかし脳卒中のように半身が麻痺すると、身体の変化は大規模で健常時の運動スキルは役立たなくなることが多い。立った時に健常の時のように患側下肢を使おうとすると、支持性がなくて倒れてしまう。そこで健側下肢を中心にして立位保持をするという新しい運動スキルを探して、試行錯誤し、身につけなくてはならないわけだ。


 だから脳卒中のように全身の変化が大きく、健康時に使っていた運動スキルが役に立たなくなるので、「運動リソースを豊富にする」ことはもちろん重要だが、その増えた「運動リソース」を課題達成のためにどのように利用するかという運動スキル学習もまた重要になってくるのである・・・


 さて、様々なスポーツを通して人の運動システムを見ると、他にももっとたくさんの特徴が見えてくる。今回のオリンピックはそれを改めて教えてくれたように思うのだ。(終わり)


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西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③

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西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤


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CAMRの基礎知識 Part1「探索」その3

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今回は「CAMRの基礎知識 Part1「探索」その3」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



CAMRの基礎知識 Part1「探索」その3 2014/4/4
「探索に始まり、探索に終わる!」



 実習生のレポートを見ると、「股関節外転・外旋・屈曲」とか「足関節内反・尖足」とかよく書かれています。運動の評価に各部位や姿勢全体の形の記述が多いのです。



 確かに従来的アプローチは運動の形に焦点を当てています。佐々木正人さんがどこかに書いておられましたが、運動科学は映画の技術とともに発展したとのこと。運動はフィルムに記録され、一コマ一コマの姿勢の変化として捉えられたのです。運動科学は運動の形に焦点を当てて発達したのですね。



 また姿勢全体や各部位の形とかに焦点を当てると、自然に「健常者の運動の形」との比較になります。そうすると問題は「健常者の運動の形とのズレ」として捉えられ、また「健常者の運動の形に近づくことが良くなっていること」という流れを生み出しているように思います。



 時には麻痺があるのに健常者と同じ運動の形を目標にされたりします。でもそれは無理でしょう。健常者と同じ形を要求するなら「その前に麻痺を治して!」と患者さんが言いたくなるのも無理がないです。



 さらに姿勢や運動というのは、元々揺らぎを持っています。ある瞬間の場面の股関節の形を取りだしてどうこう言うのもどうなのでしょう?学生のレポートなどを見ると、その患者様はいつもその格好で歩いているかのような印象を受けます。たくさん見られる運動の形の中で、健常者の運動から一番かけ離れているものに注目して書いてあるような気がします。



 もちろん形に焦点を当てることは有効な場面も多々あります。形を見ることが悪いと言っているわけではありません。ただ一瞬の形だけを取りだして、それだけを基に色々言うのもどうかと思うわけです。(まあ、学生は形から入っていくことの方が簡単で取っつきやすい、というのはあるのでしょう)



 CAMRでは、基本的に形ではなく機能に焦点を当てます。たとえば「支持」し、「重心移動」し、「振り出す」機能があります。歩行は片脚で支持しながらその脚に重心を移動し、反対の脚を「振り出す」運動の繰り返しです。



 片脚支持という機能を実現するために身体だけで可能、あるいは杖や片手すりや平行棒が必要かどうかという状況を見ることによって、使われる運動リソースを理解できます。またその形を見ることで、どの運動リソースを利用したどのような運動スキルを生み出しているかがわかります。使われている運動リソースや運動スキルと機能の関係を見いだしていくわけです。
(文にするとややこしく感じられますが、実例で見ていくと簡単で、すぐにコツが掴めます)



 CAMRではセラピストが「機能と運動リソース・運動スキルの関係を探る」ことが探索の一部になります。その「探索」の過程を通して、「どの運動スキルを多彩にしていくか」と「どのような運動課題を選択するか」が見えてくるのです。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


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3分でわかるCAMR!改め、5分でわかるCAMR!後半

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今回は「3分でわかるCAMR!改め、5分でわかるCAMR!後半」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



5分でわかるCAMR!
後半2分30秒、いってみよー!



 秋山です。続きです。
 もう少し詳しくは、当facebookページのノート「CAの旅お休み処シーズン1」「同シーズン2」を、さらに詳しくはCAMRホームページをご覧ください。



CAMRの特徴その3
 「運動リソースと運動スキル」



 運動問題を上手く解決していくには、利用可能な資源や手段である豊富な運動リソースと、それを状況に応じて使っていく多彩な運動スキルが必要です。



 運動リソース単独では運動を行えません。使い方である「運動スキル」と一緒になることで、状況に応じた運動が発現します。分けない方が良いのかもしれませんが、やっぱり区別はあるし、考えやすいように「リソース」と「スキル」と一応分けます。ぱっと見、リソースが下位でスキルが上位の、階層型っぽく見え、impairmentとdisabilityに対応しているように思われますが、全く違う見方です。



 これだけで運動は大丈夫かというと、そうではなく、ベルンシュタインに出てくる「巧みさ」も必要になります。これは、OTで言うような、細かいことができる手先の「巧緻性」とは違います。どう違うかは、これからのお楽しみ(^_^)



特徴その4
「セラピストは課題を設定する」



 やり方はクライアントに任せる、というのがCAMRの肝心要です。私達は専門家としてクライアントそれぞれの、その時期に適した運動課題を設定します。今、何ならできるのか。まぁ、でもあまり懲りすぎず、基本的な、クライアントが実感できるものを試しながら、というとこですか。疾患別に決まるものではありませんが、疾患からくるクライアントの身体状況は配慮が必要ですね。



    駆け足のCAMR概観でした。またのリニューアルをお楽しみに?



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


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CAMR超入門 よく目にする光景(その4)

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今回は「CAMR超入門 よく目にする光景(その4)」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



CAMR超入門 よく目にする光景(その4)2014/1/25



 「根本原因にアプローチしている」という満足がある一方で、「本当にこれで良いのか?これしかないのか?」と思っていた頃にシステム論に出会いました。しかしシステム論に出会ったときの最初の印象は戸惑いでした。



 システム論で言っていることを、身の回りの身近な生活経験に置き換えてみるととても当たり前のことでした。たとえば「人の歩行の形は状況に応じて変化する」と言うことです。たとえば人混みの中を急いで進むとき、人の歩行の形は一瞬一瞬に変化します。横向きになってすり抜け、歩幅やリズムを急激に変化させます。当たり前のことすぎます。こんなことは既によく知っていて、言葉にすらする必要がなかったのかもしれません。だけど改めて言葉にしてみると、とても戸惑いました。



 というのも僕達は一方で「人の歩行には正しい形がある」と学校で習ってきているのです。これもまた至極普通のことと感じていました。健康な人は皆一様に似たような歩き方をします。また多少の状況変化があってもその人らしい歩き方を維持します。歩行に関して決まったの枠組みのようなものが見てとれます。だからなんとなく健常者には基準となる「正しい歩き方の姿形」があるのだと思っていました。



 だから障害を持った人を見ていると、健常者の正しい歩行の形から「ずれてしまっている」と考えてしまいます。だから健常者の正しい歩行の形にできるだけ近づけようとします。もちろん障害を持った人がそれを望むから、と言うのもあります。大抵皆さん「元気な時のように普通に歩きたい」と言われるのですから。



 実際片麻痺の方の分回し歩行を見ると「健常者とは違う異常な歩き方」と感じ、その方から「普通に歩きたい」と言われれば、できるだけ健常者の歩き方に近づけないか、と試みていました。たとえば「このタイミングでこの部分の筋肉が働いていない。なんとかこのタイミングでの筋の活動性をあげられないか」とかです。まあ、長い目で見ると形を治すのは上手くできませんでした。安定性や歩行速度を上げることはできるのですが。



 ただそのうち、システム論の見方の方が自然に僕の中で強まってきました。次第に麻痺のある方が、健常者とは違う歩き方をするのは当たり前と思うようになってきました。だって健常者だって腰痛があれば、できるだけ痛くないように歩行の形を変えます。なぜ麻痺のある方が健常者と同じ歩き方をしないといけないのか、と。



 そうすると今まで「異常」と思っていた歩行の形が実は数ある正常な歩行の中の1つに思えてきます。人というのは片麻痺になってしまうと、残った運動リソースを利用してそのような運動スキルを発達させるのだ、と。それは異常なことではなく、とても自然のことである、と思うようになってきました。(その5に続く) 文責:西尾幸敏



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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リハビリの第3の選択肢

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今回は「リハビリの第3の選択肢」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



リハビリの第3の選択肢(2013/12/19)



対症療法的アプローチ:出てきた症状のみに集中する。たとえば脳性運動障害後の過緊張を落とすことに集中して、落ちた途端に安心する。しかし時間が経てば元通りだ。


根本的アプローチ:根本原因を探して、それを解決しようとする。もちろんそれが可能なら結構なことだ。しかし不可能な例も多い。たとえば脳性運動障害に対して、脳細胞の再生や代償を信じる。そこで健常者の運動の形をモデルにひたすら繰り返す。つまり新たに健常者の運動を学習しなおす。脳の細胞が壊れたのだから脳を機能的に回復させ、麻痺を治そうとする。根本的解決、万歳!


 しかし実際には達成できない。「根本的治療は対症療法と違って、完全な解決を目指すので、遠大な目標である。すぐに達成できないのも無理がない」といささか現実逃避的。「いや、これからの科学の進歩はきっと夢を実現する」という人もいるが、私たちは将来の話をしていられない。今、目の前に問題を抱えたクライエントがいるのだから。こうしてともすれば達成不可能な夢を追って、目の前の現実から目をそらすという「ユートピアン・シンドローム」に陥りがち。


CAMR:運動余力をできるだけ改善し、システム内の作動を変化させることを考える。症状を消すことでも完全解決することでもなく、状況をできる範囲で変化させることを考える。たとえば過緊張を落として運動範囲を広げる。達成可能な課題を通して、広がった運動範囲を基に新しい運動スキルの発達を図る。たとえ小さなことでも成功経験を積み重ね、今この場で1歩でも進めること、一歩先でも維持できることを考える・・・


対症療法、根本的アプローチに続く第3の選択肢である。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その3)

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今回は「リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その3)」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?「その3」



 「その1」では、リハビリスタッフこそが「運動余力」を最も有効に改善できる専門家である、と述べました。また「その2」では「運動余力の改善」と「従来の運動機能改善」とは違っていることを説明しました。


 さて、では実際に運動余力の改善はどう行うか?一つにはクライエントの希望に沿った運動課題を工夫していくことです。人は適切な運動課題を通して、必要な運動リソースを豊富にし多様な運動スキルを発達させることができます。



 もう一つは柔軟性を徒手療法で変化させたり、環境調整や自助具、介助者のシステムなどを持ち込んだりと運動リソースを直接変化させることです。さらに痛みは運動リソースやスキルの出現を邪魔するので、可能なら痛みの軽減を図ります。こうして構成要素間の関係と運動リソースの両方に同時にアプローチします。



 この視点に立ってクライエントに接するうちに、以下のことに気がつくようになりました。


  1. クライエントは見た目以上に沢山の「隠れた運動余力」を持っている。が、クライエント自ら動くまではこれらに気がつかれないことが多い。
  2. 良循環と呼ぶべき状態がある。急性期や軽度のクライエントでは、ほんの少しの運動課題達成の経験によって、「隠れた運動余力の発見→活動の多様化→更なる運動余力の改善・・」といった良循環に入ることが多い。
  3. 逆に「袋小路」と呼ばれる状況に陥るクライエントも多い。「偽解決」や「貧弱な解決」をひたすら繰り返し、「隠れた運動余力」に気がつかれない。脳性運動障害や高齢者などのケースが多い。セラピストには、袋小路からクライエントを救い出す知恵と工夫が必要である。
  4. 急性期に、運動余力の改善を図らないでいきなり歩行のような動作訓練を行うと、貧弱な解決(たとえば患側下肢支持期の膝伸展ロック)のような安易な方法を取ってしまうため、袋小路に入りやすい。


 20分という時間は少ないものの、運動余力の探索と改善に焦点を絞り込むことで、リハビリ訓練の効果を生み出すことができます。(詳しくは講習会で・・・・)



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その2)

目安時間:約 3分

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今回は「リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その2)」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?「その2」



 「その1」の投稿へいくつか意見をいただきました。たとえば「運動余力の改善は当たり前としても、運動機能改善に偏りすぎているのではないか?」というものです。(なんだか厚労省の介護予防のご意見いただいたみたいです(^^))これについてはいろいろあるのですが、一つだけ紹介しておきます。



 このアイデアを理解するためにはCAMRにおける「運動リソース」という言葉の意味を理解しておく必要があります。運動リソースは運動に使われる資源のことですが、普通は「からだ」のことをイメージされると思います。しかしシステム論を基にしていますので、システムは目に見える構造ではなく働きで考えられます。たとえば水溜まりでは水溜まりなりの、氷の上では氷の上なりの歩行の形が現れますので、水溜まりや氷が運動システムの一部として歩行を生み出していると考えられます。身体は真空中で動いているのではなく「環境」の中で「環境を資源」として利用しながら働いているのです。それで環境内のものや人や動物もその時々で運動リソースとなっている訳です。



 たとえば家庭内にある手すりは、元気なおかあさんにとってはタオル掛けとして使用されますが、片麻痺のおじいちゃんにとってはからだのバランスをとるための大事な運動リソースとなります。手すりをからだのバランスをとるために使うには、それなりの運動スキルが必要です。(更に詳しくは講習会で)



 電動車椅子は指先の動きを移動に変えるための運動リソースです。こう考えるとテクノロジーの進歩で新しい介護機器などが生まれてくるに連れて、運動リソースは無限に増えていきます。介護保険制度化で訪問介護が始まると、「介助者」という運動リソースも一時的に運動システムに参加する訳です。「運動余力の改善」が、世間で言う「運動機能改善(筋力や持久力の改善など)」とイコールにならないのはこのためです。(その3に続く)



(なお秋山が「リハビリはADLに対して何ができるのか?(その1)」というこのシリーズのスピンオフを開始していますので、そちらの方でも何かしら説明があると期待しています(^^))



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その1)

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今回は「リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その1)」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?「その1」



 僕がPTとして介護保険施設で働き始めて5年が経ちました。働き始めた当初、クライエントのADL問題に関して介護スタッフから色々な質問や相談が寄せられました。どうも当施設の介護スタッフには「ADL問題の解決はリハビリの専門家の助言が絶対必要」といったイメージがあったようです。



 当然僕がそれぞれのADL問題の解決に適切に応えられる訳がありません。たとえば機能改善が余り起きない重度の方の排泄では、オムツの選択やあて方の工夫などが必ず必要になります。介護スタッフの方が元々知識もあり、生活のほとんどの場面で世話をして状態に精通し、問題解決の様々な方略を生み出しやすい立場にあります。どう考えてもADL問題の解決は、介護スタッフが専門にするべきなのです。(結果、当施設の介護スタッフは現在「ADL問題解決の専門家」として非常に頼りになる存在になっていますv(^^))



 となると実際1回20分、週数回の訓練しか行わないリハビリスタッフに何ができるでしょうか?



 僕がCAMRの普及が必要と考えている一つの理由はここにあります。1回20分をどう有効に使えるか、使うべきか?CAMRが人の運動システムの作動の性質を明らかにして、進むべき道を示してくれます。以下のようなことです。



1.人は生まれながらの運動問題解決者。セラピストがクライエントに正しい運動方法を教え、管理する必要はありません。
2.人が今よりも問題解決者として能力を発揮するために必要なのは何か?それはより十分な「運動余力」です。運動余力とは豊富な「運動リソース」を基に発展させた多様な「運動スキル」であり、それらの運動スキルを上手く組み合わせて問題を解決する「運動方略」です。そして「運動余力」の改善なら1回20分のリハビリでできるのです。いえ、リハビリこそが最も有効になしえるのです。(「その2」へ続く)



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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CAMRの旅お休み処 その7

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今回は「CAMRの旅お休み処 その7」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



CAMRの旅お休み処 その7
「クライアントが見つけ出した運動スキルが常に問題を解決するとは限らない」2013/2/13
 先週末から3連休いただき、旅に出てきました。数年ぶりにクロスカントリースキーなぞしに鳥取県大山へ。身体痛いです。運動問題を解決すべく振る舞ったのですが、なにしろ乏しいリソースに未熟なスキルなもので・・・。



 ここでもホームページでも言われていますが、生まれながらの運動問題解決者であることは、運動問題が必ず解決することを保証するものではありません。まぁ、当たり前と言えば当たり前ですね。リソースが乏しい、スキルが伴っていないなどのために上手くいかないことがありますが、これまでの経験が新しい運動の邪魔をする、ということもあります。



 80年代に青春時代を過ごした私は、一人でリフトに乗って降りられてボーゲンでずるずる滑るくらいにゲレンデスキーをやりました。「私をスキーに連れてって」世代ですな。ところがクロカンはスキーの仕組み自体が全然違うので、同じようにやろうとするとかえって上手くできません。理屈ではわかっていても、「板で雪の上を滑る」という似通った課題のためなかなか上手く切り替わりません。運動音痴なんです、私。結局前の経験を生かすよりも、「つっかけをひこずって歩く感じで」という例えが一番ぴったりでした。


クライアントの場合も、これまでのやり方や道具の使い方の固定観念などの影響で上手くいかないことがあるのでは。それは、「こだわってる」とか「固執」とかでなく(そういうこともあるかもしれませんが)、「一生懸命やってるのに何で上手くいかないんだろう?」とクライアントも困っているのでしょう。では、どうするか?どうしましょうね?



 さあ、みんなで考えよう!



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


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システム論の話をしましょう!(その7)

目安時間:約 7分

システム論の話をしましょう(その7)
 動的システム論も生態心理学も、非常にたくさんの面白いアイデアが詰まっています。そんな中から、臨床で使えそうなものとして僕が選んだのは「運動は課題を通して組織化される」と「運動をリソース(資源)とスキル(技能)の視点で見る」という二つのアイデアです。具体的に見てみましょう。



 臨床である課題を提案すると、患者さんはその課題を達成しようとして試行錯誤を行います。



 たとえばしばらく立っていない患者さんに「立って見ましょう」と言います。すると患者さんは両膝に手を置いたり、片手を前に出してさまよわせたりします。おそらく手すりのようなものを前方に探すのでしょう。あるいは座面に両手を置いて力を入れたりします。そして座面に体を持ち上げるための手応えを感じると両手に力を入れて立ち上がろうとします。お尻が浮き上がりますが、すぐに落ちてしまいます。そして試みを諦めてしまい、「できんよ」と言います。


 両足に加え、両手と座面をリソース(資源)として利用すれば立ち上がれそうですが、立ち上がった後の立位保持に不安があるのかもしれません。人によってはこれらの試行錯誤は10秒位の間にすべて終わってしまいます。始まりから諦めまで割と短時間で、人によっては見逃してしまいそうなくらい短い試行錯誤です。



 そこでセラビストがパイプ椅子をリソースとして、患者さんの前方に背もたれ側を向けて置いて「立ってみましょう!」と声をかけます。患者さんは再び両手を何通りかに置いてみます。左手をパイプ椅子の背もたれに、右手を座っている座面に置いたりして立ち上がろうとします。課題達成のためのリソースの使い方がスキルで、身体を含めたいくつかのリソースを様々なスキルでいろいろに試しているわけです。



 最終的に両手で座面を押し、お尻が浮き上がったところで片手をパイプ椅子の背もたれに伸ばし、それを支えにしてもう片手を伸ばして両手で背もたれを持ち、体を起こしながらようやく立ち上がることができました・・・



 「リソースとは課題達成に利用できそうな資源」であり「スキルとは課題達成のためのリソースの利用の仕方」です。このように課題達成の過程をリソースとスキルのアイデアで説明すると、患者さんが何をどうやって課題を達成しようとしているかが分かりますし、説明も比較的簡単で、患者さんの運動システムの作動がより身近に実感を持って観察できるようになります。



 たとえば上記の立ち上がりですが、下肢や体幹の筋力あるいは柔軟性という身体のリソースが低下していて、健康なときのように体幹を前傾して両脚で体を持ち上げるというスキルでは課題を達成できなくなっています。そこで上肢などの身体リソースに加え、座面や椅子の背もたれといった環境内のリソースを、支持や重心のコントロールのために利用します。また片手を背もたれ、片手を座面に置いたりしてそれらのリソース利用のスキルを試行錯誤し、最終的に課題達成しますよね。



 「患者さんは課題達成の過程を通して、利用可能なリソースを探し、スキルをいろいろに試行錯誤しながら課題達成の運動を生み出し、修正している」ことを実感することができます。まさしく「運動は課題を中心に組織化される」訳です。


 ここからは余談です。
 臨床で見ていると、試行錯誤があまりにシンプルで短い患者さんが多いですよね。「どうしてもっといろいろと試してみないのだろうか?」と思います。もっと探れば隠れた可能性に気がつくかもしれないのにと何度歯がゆく思ったことか。しかしそれこそが課題達成の調整を行うためのアフォーダンスという情報をリソースとして患者さんが利用しているのだろうと思い直したりもしました。



 たとえばそのような例としてダーウィンの「土とミミズ」の話がリードの本に紹介されています。



 ミミズは巣穴をいろいろな葉っぱで塞ぎます。巣穴の湿度と温度を保つためと考えられます。ミミズは穴に引き込みやすいように狭くなったところをくわえて引き込み、穴を塞ぎます。合理的ですよね。ダーウィンはいろいろな形の葉っぱやいろいろな形に切った紙を巣穴のそばに置き、どのように穴を塞ぐかを観察したのですが、やはり比較的簡単に細くなった引き込みやすいところをくわえて穴に引き込みます。最初に広いところをくわえた場合はくわえ直すのですが、それほど細かく何度も試行錯誤するわけではなく、すぐに引き込みやすいところを見つけてしまいます。実際試行錯誤はあるにしても非常にシンプルです。ミミズはどうやって引き込みやすい部分を知覚するのでしょうか?そこでミミズは課題達成のために利用可能なリソースの利用方法を特定する情報、すなわちアフォーダンスを利用しているのではないかといいます。



 アフォーダンスはミミズの引き込みやすい部位を「くわえる」という運動を選択させるような情報で、ミミズはそれをくわえて動かすという探索を通して知覚しているのだという訳です。



 そして人の運動システムでも同じことが行われているのだろうと思います。リソースにおける課題達成の可能性を少し試しただけで運動システムは結果が分かってしまうのだろう、と。試行錯誤をすぐにやめてしまう患者さんを見て、歯がゆく感じるセラピスト。そこにリソースを豊富に持っているセラピストとリソースの貧弱な患者さんの運動システムの違いがあるのだろうと感じたりしました。



 つまりセラピストの運動システムはリソースが豊富なのでいくらでも探索の可能性を見つけ出してしまうのです。逆に重度麻痺の方ほど探索が短く素っ気なくなるのも、リソースが貧弱なためすぐに探索が終わってしまうからではないか。



 患者さんが探索を続けるためには新しく達成可能性のあるリソースが加わるか、それを発見する必要があるのだ、と。時にセラピストの工夫したリソースやアドバイスが探索を再開させるのはこんな背景があるのだと思います。分かりにくい話だったらごめんなさい(^^;(その8に続く)

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