運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その1)-生活課題達成力の改善について

目安時間:約 4分

運動リソースを増やして、運動スキルを多彩に生み出す(その1)

-生活課題達成力の改善について

 健康な若い人の単純な骨折では、「怪我をする前の健康な運動状態に戻す」という治療方針を持つことになりますね。これは治療によって骨折が治り、ほぼ元の状態に戻すことが可能だからです。

 一方で脳性運動障害のように、麻痺を直すことができないと「元の健康状態に戻す」という目標は達成不可能となります。そうなるとリハビリの目標は、「現状達成可能な範囲で運動能力を改善し、患者さんが必要とする生活課題が達成できる」という目標を持つと思います。

 実際、脳性運動障害を見る多くのセラピストはこの方針でリハビリを進めていると思います。

 CAMRでも、単純な骨折の様な元に戻すことが可能な傷害では、元の状態に戻すような方針を持ちますし、脳性運動障害で元に戻れないときは、今可能なできるだけ良い状態に持っていくことを目標として考えます。

 ではCAMRが従来の学校で習うようなアプローチと違うのはどんな点かというと、CAMRでは「運動課題達成力は、運動リソースと運動スキルからなる」と考えていることです。

 従来学校で習うアプローチでは、筋力や柔軟性、持久力、感覚などは運動の基本的構成要素と考えられています。歩行不安定が見られると、これらの構成要素を調べて低下した要素を探して改善します。たとえば両下肢の筋力低下が見られると、「両下肢の筋力強化」を行います。

 CAMRで理解する運動システムは、皮膚を境界とするのではなく、「身体と環境からなる」と考えます。そして構成要素ではなく運動リソース(運動の資源)として考えます。

(どうしてこうなるかはシステム論の視点から生まれます。学校で習う視点は目に見える構造として運動システムを考えるため「皮膚に囲まれた身体」が運動システムであると理解しますが、システム論を元にしたCAMRでは、その時、その場でシステムの作動に参加するものが運動システムを構成すると考えますので)

 運動リソースは身体リソース(筋力、柔軟性、持久力、感覚など)と環境リソース(大地や構造物、家具、道具、他人や動物など)に分類されます。

 また身体リソースが環境リソースに関わるときに生まれる意味や価値は「運動認知」と呼ばれます。(以前はこれを「情報リソース」と呼んでいました(^^;))

 たとえばあなたが目の前の幅1メートルの溝を渡ろうとすると、「跨いで渡れる」や「渡れない」、「助走をつけると渡れる」などの課題遂行の結果や手段などの予期的な運動の認知が生まれますよね。これが「運動認知」です。これを元に課題達成の運動が導かれるわけです。

 そしてこの運動認知を用いて課題を達成するための運動方法が「運動スキル」です。運動スキルは、身体リソースや環境リソースの課題達成のための用い方です。

 学校で習う視点では、構成要素である筋力、柔軟性、持久力などを中心に改善することで運動能力が上がると考えます。だから歩行能力を改善するために、座位で下肢筋力を改善したりします。座位で筋力を改善すれば、自然に歩行能力は改善すると考えるわけです。運動スキルの概念がないのです。

 一方CAMRでは、歩行スキルの中で全身の筋力を改善する必要があると考えます。その理由は「筋の特異性」と言われる性質によります。(その2に続く)

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