スポーツから学ぶ運動システム(その5)

目安時間:約 5分

スポーツから学ぶ運動システム(その5)


 ベルンシュタインがもう一つ提案しているのは、「課題達成時の知覚情報の予期的利用」である。ここでは射撃あるいはアーチェリーを例に説明してみよう。 選手は環境の状態を全身で感じながら、的に向かって銃をズドンと撃つ、あるいは弓で矢をビシュッと放つ。弾や矢は空中を、重力や温度、湿度、風などの影響を受けながら的に向かい当たったり外れたりする。


 選手はその結果を全身の知覚によって知り、修正を加えるわけだ。たとえばその時、その場の環境の状態を全身の知覚を用いて感じる。着弾点が思ったより低かったり、右にずれたりすると環境の中から拾い出した「湿気が高いな。今は空気抵抗が思ったより大きい」とか「今の右向きの風の影響でこの程度のズレが出た」などと考え、修正を予期的に行い、次を放つ。そしてまたその結果をフィードバックしては、次に予期的修正を加える。・・・これが「課題達成時の知覚情報の予期的利用」と言うことである。


 たとえば前に出た職人の腕の動きは一回一回微妙にずれるけれど、釘とハンマーの接触を視覚や全身の筋感覚によって毎回予期的に修正しながら課題達成しているから、異なった運動で同じ結果を生み出すことができるとしているわけだ。初心者の間は、失敗が多いが、その結果はフィードバックされ、全身の知覚情報と照らし合わせて予期的な修正の仕方を学んでいくのである。結果が上手く行けば「その調子で」繰り返すことになる。


 つまり協応構造で運動を毎回作りだし、ある程度安定して似た運動を繰り返せるようになる。繰り返し練習はこのために必要である。しかしその中でも微妙にずれてしまう毎回の運動の軌道をその課題達成時の知覚情報を予期的に用いることで毎回課題達成をやり遂げているのである。そしてこのためにも莫大な時間が必要となるわけだ。間違いをどのように修正するか、回りの環境や状況の影響を受けながら、予期的に修正するためには莫大で異なった状況を繰り返す経験が必要である。


 生態心理学のギブソンは、骨格とそれをつなぐ軟部組織や筋群、視覚、聴覚、嗅覚、味覚などが一体になって構成される人の身体をボーンスペースと呼んでいる。彼の言う触覚系(筋の固有覚を含む)は、全身常に一体となって対象物を動きながら知覚し、同時に自分の体の状態も知覚しているとしている。


 つまり学校で習ったように知覚とはそれぞれ視覚、聴覚、嗅覚などと独立したモデュールとして働いているのではなく、全ての知覚は同時に働いて課題達成に関わっているとしている。


 ジャグラーは初期には視覚を中心にコントロールを学ぶが、熟練してくると閉眼しても失敗なくできるようになる。視覚情報だけでなく、全身の緊張状態や体の安定、腕の動き、皮膚の感覚などの知覚情報を総動員してジャグリングができるようになるからだ。バスケやサッカーのノールックパスなどもそれと似た例だろう。


 知覚学習とは、単独の感覚モデュールではなく、ボーンスペースによって全身的・全ての感覚間で行われるのである。(その6に続く)

#運動システム#ベルンシュタイン#協応構造#知覚情報の予期的利用


【CAMRの基本テキスト】

西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】

西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


【CAMR入門シリーズの電子書籍】

西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①

西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②

西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③

西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④

西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤


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スポーツから学ぶ運動システム(その2)

目安時間:約 4分

スポーツから学ぶ運動システム(その2)


 前回はゴルフとテニスなどを例に、人の運動システムは「同じ運動を正確に繰り返すことができない」という特徴があると説明した。今回はどうして同じ運動を繰り返せないのかを考えてみよう。


 ベルンシュタインはまずその理由の一つを、「人の体が粘性や弾性の性質を持っているからだ」としている。たとえるならゴムのような性質を持っているわけだ。僕なりにこれを機械と比較しながら説明してみよう。


 機械はがっしりと安定した金属などでできた躯体が基礎となる。自動車なら非常に頑丈なシャーシが土台となる。車のシャーシは通常走行なら、つまり事故でも起こさない限りほとんど歪んだりはしない。つまりこの頑丈な躯体を全体の基礎として可動部分だけが安定して正確に動くという構造である。


 一方人の体にはそのような頑丈で全体の安定的な構造を形作るような基礎は存在しない。まず人の体はたくさんの骨が柔軟性のない靱帯によって結びつけられた骨格がある。骨同士はある部分はタイトに、ある部分は大きな可動性を持って結びつけられている。 これを筋肉という柔軟性のある器官で包み込んでいくわけだ。筋肉は張力、つまり引く力しか生み出さないので、引く力だけで骨格の形を保ち、支持と安定性、そして運動を生み出す仕組みである。


 そして状況や運動課題によって、作動する筋群はどんどん変化し、支持する部分と可動する部位もまたどんどん役割を交代し、変化していく。同じ部位が状況によって支持したり、可動したりするわけだ。機械と違って作動ははるかに複雑なのだ。


 また柔軟な筋肉で形を成す構造であるから、力の発生によっても外力によっても、その形は全体に常に歪んでしまう。歪んでしまうと言うと聞こえが悪いが、しなやかに柔軟に形を変えながら動いているのである。機械では歪むのは可動部分だけで、基礎となる躯体はまったく変化しないわけだが、人では全身が常に柔軟に変形しているわけだ。


 まあ、人の運動システムは機械と違って柔軟であるというのがまず第1のポイントである。たとえば長さ1メートルの柔らかいゴムの棒で、壁の電灯のスイッチから離れてを押すところを想像してみると容易に理解できるだろう。ゴムの棒では持っているだけで先端が常にユラユラ揺れて押そうとしても毎回開始位置は違うし、異なった運動軌道を描いてしまう。


 実際には人の柔らかい体は呼吸などによって常に揺れて振動しており、その目に見えない小さな振動はゴムの棒に伝わると、1メートル先では大きな揺れになってしまうのである。


 まあ、柔らかい構造は同一の運動を正確に繰り返すことはできないのである。(その3に続く)

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CAMR超入門 よく目にする光景(その6:最終回)

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今回は「CAMR超入門 よく目にする光景(その6:最終回)」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



CAMR超入門 よく目にする光景(その6:最終回)2014/2/7



 人の運動は状況に応じて変化します。たとえば家の中を歩くときあなたはリラックスして歩きます。しかし急に停電になって部屋が真っ暗になるとあなたは身体を硬くし、足や手で回りを探りながら歩きます。氷の上ではおそるおそる足を進め、向かい風に向かって身体を前のめりにして歩きます。狭い場所では横向きになって通り過ぎます・・・



 つまり人は状況が変わってもなんとか「歩行」という機能を維持しようとします。



 一方オモチャのロボットは平らなテーブルの上では歩いているように見えますが、ちょっとしたこと、たとえば十円玉を踏んで倒れたりします。そして先ほどまで歩いていたと思われる運動を正確に繰り返します。



 結局人の運動システムは、状況に応じて形を変えてでも、必要な機能を自律的に維持するという性質を持っています。逆にオモチャのロボットは、機能を維持するのではなく特定の運動の形を維持するシステムです。同じように「歩いている」といってもシステムはまったくの別物です。



 だから歩行訓練のために「形を憶えてその形を再現する」などという訓練目標はもともと人の運動システムには向いていないのです。歩行の特定の形の再現を求めることは、人の運動システムをオモチャのロボットのように考えているからです。



 「状況変化に応じて形を変えてでも機能を維持できる」ことを訓練の目標にしなくてはいけません。そのために何をするべきか、何ができるかを考える必要があるのです。そしてCAMRはこの文脈から生まれたアプローチです。



 システム論を知るということで世界観が変わりました。システムを形や構造ではなく機能で見ることでCAMRは生まれてきました。(これらのアイデアについては上田法ジャーナルに掲載したエッセイをHPに載せています)



 唐突ですが、CAMR超入門はこれで最後です。最初の方から何が「超」でなにが「入門」なのか良く考えずに書いていたので、最後まで「超」でも「入門」でもなかったですね。申し訳ない。ここまで付き合ってくださった皆様、ありがとうございました。
文責:西尾幸敏



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



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CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編

目安時間:約 7分

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今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実例紹介-症例を通して 解説編


CAMR研究会代表の西尾です。
 ここでは秋山さんの症例紹介を基に簡単にCAMRの解説を行います。


 一つ目はCAMRではセラピストが複数の視点を持ち、それを切り替えながら考えるということです。CAMRではセラピストの立場だけでなく、患者さんの立場、そして患者さんの運動システムの立場に立って考えることを勧めています。運動システム内部の視点に立つと,姿勢や運動の形は見えません。しかしシステム作動の目的や達成状況、作動の性質は良くわかってきます。たとえば運動システムは、常に人にとって必要な課題を達成しようとしますし、もし課題達成に問題が起きると必ず問題解決を図ります。


この方は麻痺肢を振り出すために使えるところを使う「分回し」という問題解決を図ります。また患側下肢の支持性に自信がないので、次第に患側下肢の使用を最小限に抑える「不使用」の問題解決を図ります。この状況を変化させるポイントはここにあります。


つまり基になっている麻痺は今のところセラピストにはどうしようもありませんが、問題解決は運動システムが麻痺後に選んだものですから、当然変化することが可能な場合が多いのです。


この方の場合、患側下肢の不使用のために健側下肢を十分に振り出すことができない状況が見えていて、これは患者さんにも不利となっています。一方セラピストの視点で見ると患側下肢の支持性は十分です。だから使わないのはもったいないとなるわけです。


このようにCAMRでは運動システムとセラピストの視点を行ったりきたりしながら評価を進めていきます。(CAMRには運動システムの視点から作動を理解するための6つの作動原理がまとめられています)


またもう一つ。運動システムは様々な要素の相互作用の結果、その作動は安定した状態になります。安定した作動とは自然に頑丈な状態へと変化するものです。だからこの頑丈さを崩して状況変化を起こすのはかなり難しくなります。


たとえば分回しのスキルは障害後最初に課題達成に成功したスキルなので、運動システムはそれを繰り返し続けます。不使用スキルにしても同じです。初期に患側下肢の使用を最小限にすることでうまく行くのでこれを繰り返します。そして頑丈な状態になっていきます。従って運動システムが「分回し」、「不使用」より安全面でもエネルギー効率からも優れているスキルが見つからない限り、「分回し」、「不使用」のスキルは繰り返し使われ続けてしまうのです。


そこで状況変化のための治療方略が必要になります。ここでは簡単に言うと「多要素・多部位同時アプローチ」という治療方略を用います。つまり私たちが起こせる状況変化を一つ一つ積み重ねていきます。たとえば柔軟性を広げることで運動範囲や重心移動範囲を大きくします。また患側下肢が「思っているより使えるよ」と経験を重ねていただきます。「実りある繰り返し課題」を継続して実施することで、運動の余力をできるだけ高めていきます。またここでは述べられていませんが、CAMRには「足場作り」という技術があり、それによって成功経験をより強めたり、患者さんの意欲を高めたりしていきます。結果、患者さんは成功体験に自信を持ち、更に作動を変化させていったわけです。(秋山さんにとって足場作りは当たり前に使っていることなので、今回は言及しなかったようです)


結果、患側下肢の支持時間が増え、健側下肢を大きく振り出して前方へのより大きな推進力を生み出しますので、その後に続く患側下肢の振出もより容易になってまっすぐに振り出せるようになったと考えられます。つまりより安全で効率的な身体の使い方、つまり新しいスキルを繰り返し、自然に新たな頑丈な状態へと変化したのです。


CAMRでは通常運動の形を変化させることは目標としませんが、支持、重心移動、振出などの働きを改善することを含めて様々な角度から作動を変化させ、ここでは結果的に運動の形も変化したわけです。


まずは患者さんの状況を理解するためには、患者さんの運動システムが障害に対してどのような問題解決を図っているかを知ることが重要です。それによって患者さんの運動システムが何を問題にしているかがよくわかるからです。たとえば分回しはこの状況では良い問題解決、しかし不使用は新たな問題を生み出していると考えることができます。そして問題を生み出す不使用の状況を変化させるように計画していきます。結果運動システムの分回しスキルへの依存は減少して、よりまっすぐに振り出せるようになったのです。


CAMRでは運動システムは通常6つ問題解決方略を使うと考えています。その問題解決毎に新たに起きる問題や状況変化の方法が少しずつ変わります。脳卒中では普通2-4種類の問題解決が同時に使われていることが多いのです。講習会では実際の患者さんのビデオを見ながらこれらを理解することができます。
講習会再開の時には是非ともご参加下さい。お待ちしております!(^^)


★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


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CAMRの実践紹介-症例を通して その3

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「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して その3」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実例紹介-症例を通して その3 

※個人の感想です(^^;)



秋山です。右片麻痺の方の患側支持練習の結果編です。



立位課題に対しては回数を増やす等、適宜ご本人と相談しながら進めました。歩行訓練は、距離やコースは本人にお任せ、私は何も指示することも介助することもなく、いざという時の見守りでした。



立位課題の左右重心移動で右への動きが拡大してきたり、健側の前方踏み出しが広がったりと、患側下肢での支持がちょっと長くなりました。そのように患側下肢をより使うようになられたなと思う頃に、「今日は右足がよく出るから、もう少し歩く」と自分から言われることが増え、全体に距離が伸びてきました。



「足がまっすぐ出た」とは本人は感じないけど、「足がみやすく(簡単に)出て楽だった」という本人にとってプラスの変化を実感されていました。その方は、「ちゃんと歩くためには、足がまっすぐ出ていないといけない」から「歩きやすいと感じる時は足もよく出てる。いろいろ運動しておくと歩きやすい」と思われるようになっています。



しかしセラピストの視点からは、右半身が後ろに引けていたのが目立たなくなり、右足も側方からではなくより前方に振出す、つまりよりまっすぐに振り出すようになられました。形も変化しているのです。おそらく健側下肢が前方により大きく出るので推進力が増し、患側下肢は筋などの粘性で、前方により強く引っ張られ、ぶん回しスキルへの依存が少なくなったのでしょう。結果、図らずも脚は以前よりはまっすぐに振り出される形になったわけです。



CAMRの視点からみてみましょう。CAMRでは正しい運動、間違った運動という見方はしません。中枢神経障害により異常運動=正常から逸脱した運動が出現しているとみるのではなく、障害に加えてそれに対する運動システムの問題解決などの相互作用からその状態になっていると考えます。



今回のクライアントの患側下肢がまっすぐ出ないという現象は、麻痺して今までのやり方では振り出せなくなった下肢を何とか振り出そうとした結果とも言えます。麻痺した下肢を振り出すためには健側下肢と体幹で振り出すしかなかったのです。異常な運動が出たのではなく、使える機能で何とか「歩く」という運動問題を解決しようとした。目にしている運動の形はそのようにして選択されたものです。



だからアプローチとしてはこの方が脚をまっすぐに振り出すことを目標にしても失敗経験を繰り返すだけです。むしろ柔軟性を改善し、荷重経験を繰り返し、患者さん自身がより歩きやすいスキルを探索された結果、つまり運動システムの作動が変化した結果として形も変わってきたのです。



ただ、運動システムが選択した問題解決は、常に最適とは限りません。本当は他の解決方法があるかも知れない。そこは何とかしたい。この方の場合は、麻痺側下肢の支持機能があるのに動作では十分に使っていないことがわかり、本人も納得されて麻痺側での支持を行う課題を実施、システムの作動が変化して歩きやすくなりました。


健常者の運動の形を真似するという目標はあまり意味がありません。できれば自然にしていることですから。むしろ運動システムの問題解決を理解し、適切な要素を変化させたり、支持や振出し、重心移動という機能(働き)から運動を見て、変化できることから取り組む例として、みなさんに伝われば幸いです。(終わり)




★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


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CAMRの実践紹介-症例を通して その2

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今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して その2」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実践紹介-症例を通して その2 
※個人の感想です(^^;)


歩行時に麻痺側をまっすぐ振り出せと言われ続けた右片麻痺の患者さん。運動システムの立場に立ってもう一度患者さんの歩行を観察してみます。そうすると・・・


患側下肢を振り出そうとしても麻痺のために振り出すことができません。「どうしよう?何とかしないと・・・」そこで健側へ大きく重心移動し、体幹を側後方へ反らせて患側下肢を持ちあげ振り出してみると何とか振り出せます。運動システムは、健側を使った分回しというやり方で問題解決をして何とか課題達成をしていることがわかります。


これを修正するためには「患側下肢の麻痺が治る、改善する」という条件が考えられますが、「麻痺を治すのは無理。運動システムがとった問題解決は現時点では最良なのだろう」と考え、ここにはアプローチしません。


一方健側下肢の振り出しは、ほんの少しです。患側下肢の支持の時間がとても短いので、少ししか出せないのです。発症直後のリハビリでは、患側支持の練習もしたそうですが、「難しかった」そうです。


長い在宅生活の中で、難しいからやらなくなったり、転倒の不安から麻痺側での体重支持を避けるようになってきたのかもしれません。つまり患側下肢をできるだけ使わないようにする「不使用」という問題解決を運動システムが選択したと考えられます。


しかしセラピストの目から見ると、患側下肢の支持性はかなりしっかりしているように思います。実は10年間も歩き続けているので、患側下肢の支持性は急性期に比べてかなり良くなっているのです。


運動システムの不使用の問題解決は無意識に起きているので、ご本人はまったく気づいていません。だから「良い足の方が出ない!!なんで?」と不思議がられているのです。運動システムはできるだけ患肢を使わないようにしているのでまったく気がついていない。もったいない話です。だから「患者さんと運動システムに患側下肢の支持性に気づいてもらって、それを積極的に使用する」方向へ持って行く必要があります。


具体的なプログラムは、柔軟性を高めて運動範囲を広げるために上田法体幹法、患側下肢の荷重経験を積むために装具なしの立位左右重心移動・ハーフスクワット・装具つけて下肢横上げ・踏み出し練習、本人希望の屋外歩行(雨の日は廊下の往復)を行いました。患側支持は「病気になってすぐの頃のリハビリ以来だから、ちょっと怖い」と言われましたが、自分なりに動きの幅の目標を立てるなど、意欲的に取り組まれました。


さてさて、その結果は・・・。(続く)



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して その1」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実践紹介-症例を通して その1
※個人の感想です(^^;)


 OTの秋山です。CAMRがどんなものか話を聞いていただいた後、「おもしろい」「新しい視点を得られた」といった感想をいただくことが(よく!)あります。嬉しいことです。ただ、「では、どう使うか」となると、もうひと山あるようです。CAMRが読み物として面白いに留まらず、臨床で役立つように、身近な例を挙げてみました。


 その前に、CAMR初心者が戸惑いやすい、誤解しやすい点を挙げてみました。


 まず、「原因を追究しない。システムの状況をみる」という点です。言葉ではわかっても、では実際の目の前の患者さんの何を見ればいいのか?目に見えないシステムを想像するのか?でも、それって正しいのか?構成要素をどんどん細かく見ていき、正常との違いを探していく方法に慣れた身にとっては、難しいところです。


 もちろんCAMRでも、動きをみます。歩行なら振出しはどうやっているか、重心移動はどうか、などなど。その見方が、「正常の形からどれだけずれているか?それは構造からどう説明できるか?」というのは、従来のセラピストの見方。CAMRでは「運動システムはどうしようとしているか」という運動システム目線で内部からの見方となります。「うーん、わかるような、わからないような」、かもしれません。まぁ、「運動システムの視点で見る」ということを頭の片隅に置いて、症例を見ていきましょう。


 訪問リハでの症例です。10年来の右片麻痺、自宅室内は短下肢装具+一本杖歩行で自立、屋外は見守りの方。普段は最小限の室内移動しかしないので、屋外歩行機会を持ってほしいということで訪問することになりました。


 実用的に歩かれていますが、これまでのリハビリで「右足をまっすぐ出すように」とずっと言われていたそうです。でもずっとできなくて、「それが悩みの種。ちゃんと足をまっすぐ出して歩きたいけど、難しい」と言われていました。


 この方に対し、実用的に歩けているのだからリハビリに固執するのは良くない。だから「十分に歩けていますよ。細かいところを気にするより、やりたいことの目標をもって、どんどん外出しましょう」というアプローチも1つの方法だと思います。ですが、これでは本人が望む動作の変化は無視して、価値観の変化だけを求めることになります。それで患者さんが納得されることもありますが、いつまでも不満足なままということもよくあります。


 また、正常な形で患側下肢が振り出せるように反復練習するという方法もあります。この方は今までそういう訓練をされてきたので、さらに私がやっても改善する気はしない。つまり「麻痺」が治るとは思えません。


 これらの両方の見方は「セラピスト視線」です。「できるから形はあまり気にしない」も、「正常歩行に近づける」も、セラピストが考えていることです。


 CAMRは、これらのアプローチとは違う視点を提案するものです。つまり「患者さんの運動を、運動システム内部の視点から見たらどうだろう?」(その2に続く)


★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


【CAMRの基本テキスト】
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運動システムにダイブ!シリーズ①脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密

目安時間:約 9分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!

運動システムにダイブ!シリーズの第一弾が出版されました!


西尾 幸敏 田上 幸生 著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


出版を記念して以下の詳細にて無料キャンペーンを実施します。ぜひこの機会にCAMRのアイデアに触れてみください。



☆★☆★☆★★☆出版記念 無料キャンペーン★☆★☆★☆★☆
著者  : 西尾 幸敏、田上 幸生
書名  : 脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密
無料キャンペーン期間: 6月30日(水)16:00~7月4日(日)15:59
☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆★☆★☆



【はじめに】
 この本はCAMRのFacebook pageに掲載された「5分でわかるシステム論」(2019年10月15日~2019年11月19日の計6回)を大幅に加筆・修正したものです。むしろ加筆・修正が大幅すぎて、まったくのオリジナルと言った方が良いでしょう。


 思えば昔、僕が脳卒中患者さんを見始めたときには、「どうしたら良いものか」と悩んだものです。


 たとえば患者さんが立った時に、麻痺側の下肢が全体に屈曲して持ち上がり、患者さんは良い方の手脚だけで立たれます。これは「屈曲共同運動という現象であり、抑制されなければならない」と講習会などで説明されます。そこで自分の手を使って、患者さんの脚を抑えてまっすぐにし、床につけようとするのですが、一向に改善した感じがないのです。「手を使って、脚をまっすぐにして体重を支えるようにする」ことが正しいのかどうかさえ、分からないまま実施していました。


 これはそもそも「屈曲共同運動」が何者で、どんな性質や意味があるか分からないので、形だけ真似て脚をまっすぐにしようとするからです。


 一方、システム論を基にしたCAMR(カムルと呼びます。Contextual Approach for Medical Rehabilitation: 医療的リハビリテーションのための状況的アプローチの短縮形です)では、この現象を次のように説明していきます。


 麻痺側下肢を発症後初期に使おうとすると、麻痺のため支持性がなくてこけそうになります。つまり麻痺側下肢を使おうとすると立つという課題達成に失敗するのです。そこで患者さんの運動システムは立位課題に失敗しないように患側下肢を使わずに、健側上下肢と手すりを使って立とうとします。つまりこれは運動システムが選んだ患側下肢の「不使用」という問題解決方法なのです。


 しかし障害後に運動システムが選んだ問題解決方法は、たくさんの筋力などのリソース(資源)が失われて、仕方なく応急的に使われる解決方法です。「使うと失敗するので使わない」という問題解決方法は、その時は良くても、「使っていれば将来的には使えるようになるはずの麻痺側下肢」の可能性を失わせてしまいます。


 このように理解すると、単に脚の形をまっすぐにしようというのではなく、形はどうあれ、まずはできるだけ使ってもらうことが大事であることがわかってきます。


 そして運動システムが障害後に立つために選んだ問題解決なのです。「屈曲共同運動」というと、中枢神経システムの中の正体不明のメカニズムが相手でどうしたら良いのか分からなくなりますが、運動システムが選んだ問題解決なら、もう一度運動システムに「使う」ように選び直してもらえば良いのです。


 単に脚の形を矯正するのではなく、患側下肢に重心を移動してもらい、ちゃんと荷重・支持する経験を繰り返し、運動システムに「この脚は繰り返し使っていると、支持性が増して使えるようになるよ」という知覚学習をしてもらえば良いのです。


 このようにシステム論のような従来と異なった解釈の立場に立って理解すると、リハビリテーションのアプローチを自分で考え出したりすることもできるようになります。そうすると自分が何をするべきかがよく分かって、リハビリという仕事もとても面白くなります。


 この本ではシステム論を基にしたCAMRの考え方を紹介しています。このCAMRは、「運動システムの視点に立つ」という独自の方法論を持っています。つまり運動システムにダイブ(飛び込む)して、運動システムの立場から人の運動システムの振る舞いを理解しようという視点です。難しそうに思われるかもしれませんが、実際にやってみるととても簡単です。


 今の仕事の内容ややり方、結果に満足していないなら、この本を通じてきっと新たな可能性を見つけられると確信しています。


2021年6月 最初の発刊に寄せて
                           西尾幸敏 田上幸生 


 【目次】
運動システムにダイブ!シリーズ① 脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ! ~CAMR誕生の秘密~
はじめに
目次
第一部 運動システムの立場に立ってみましょう!
第1章 異なる立場、異なる理解
1.自分の立場を知る
2.学校教育の立場
3.システム論の立場
4.システム論の立場で見る例
5.要素還元論とシステム論
6.異なる立場の視点を自由に行き来する
第2章 システム論の視点を身につける方法論
1.運動システムの作動の性質を理解する
2.運動システムにダイブし、内部から観察してみる
第3章 健康な若者の運動システムにダイブ!
1.お腹が空いた場面
2.内部からの観察
3.嫌いな父親と一緒にいる場面
4.内部からの観察
5.運動システムの作動の性質(①、②)
第4章 廃用症候群のご老人の運動システムにダイブ!
1.水を飲みたい場面
2.内部からの観察
3.運動システムの作動の性質(③、④、⑤)
4.行動範囲が広がっていく場面
5.運動システムの作動の性質(⑥、⑦、⑧)
第5章 あなた自身の運動システムにダイブ!
1.歩いている場面
2.運動システムの作動の性質(⑨)
3.運動システムの作動の性質のまとめ
第二部  脳卒中片麻痺の運動システムにダイブ!
第二部へ進むにあたって
第6章 救急外来に運び込まれた場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第7章 初回セッションの場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第8章 初めての座位訓練の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第9章 2回目の座位訓練の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第10章 初めての起立練習の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第11章 その後の立位練習の場面(その1)
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
第12章 その後の立位練習の場面(その2)
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
ちょっと一服・・・《CAMRにとっての理論とは?》
第13章 初めての歩行練習の場面
1.外部からの観察
2.運動システムの視点
3.Camrer's Note
参考までに・・・《スベラースの紹介》
最後に
CAMR研究会について
著者紹介
CAMRの本


【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④


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CAMR入門シリーズ④正しい歩き方?:俺のウォーキング

目安時間:約 5分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!
CAMR入門シリーズの第四弾が出版されました!


西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④



本書はCAMR入門シリーズの第四弾となります。


今回は歩行をテーマとした二部構成になっています。第一部は、シリーズ前作「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!~運動と状況性~」と似た流れで、運動の形から運動システムの作動の特徴へ、評価の視点の転換をオススメしています。


CAMRではお馴染みのアイデアですが、人の運動システムは運動の「形」を維持するシステムではありません。歩行などは良い例で、普通にアスファルトの上を歩いている時はいわゆる「正常歩行」に近い形で歩いていても、路面が凍結した場所では、少し腰を落として背中を丸めて小刻みに歩きます。あたかもパーキンソニズムでもあるかのように。


要するに運動システムは「形」などはいかように変えてでも、安全・快適な移動という課題を達成するための「働き」を維持しているわけです。このような運動システムの作動の特徴こそが、「形」の奥に横たわる本質だと考えられます。



第二部は著者の体験に基づく物語で、「課題を中心に運動が自己組織化される」というテーマが、スリリングなデュエルを通して展開していきます。膝や股関節の痛みが改善し歩行の形が変わっていく一連の過程は、僕たちの臨床にも多くの示唆を与えてくれるものと思います。



どちらも楽しく気軽に読める物語でありながら、しっかりとCAMRの考え方が盛り込まれています。


効果的な英語学習法の一つに「多読」というものがあるのですが、これはやさしい英文にたくさん触れることで英語の基本構造や仕組みの理解を促すというものです。そういった土台ができると、その後の学習がとても楽にスムーズになります。そしてこの方法論は、新しいアイデアを血肉化する際にも有効だと経験的に感じています。CAMR入門シリーズを、そんな多読用ツールとしても活用していただけると嬉しいです。



本書がCAMRの理解を深め、日々の臨床を豊かにする一助となることを願っております。引き続きCAMR入門シリーズをよろしくお願いいたします。



目次
CAMR入門シリーズ④ 正しい歩き方? 俺のウォーキング
目次
第一部 正しい歩き方?-そんなに形が大事か?
第1章 「正しい歩き方」に物申す
1.世間に広まっている「正しい歩き方」
2.個人的な事情もある
第2章 形の奥に横たわる本質を見る
1.同化思想に与していないか?
2.運動の形の評価から作動の特徴への評価へ
3.ある新人セラピストからのメッセージ
4.他人の運動を支配できる人などいない
5.とはいえ「きれいに歩きたい」という人は実際にいる
6.こんな風に伝えたい
第二部 俺のウォーキング:理学療法士らしく
第3章 俺の健康問題
1,俺の決意
2.俺の膝の物語
3.俺の膝痛対策の詳細
4.俺の股関節の物語
5.俺の狙いと方略
第4章 俺の戦い「デュエル・ロード戦記」
1.俺を襲う不測の事態
2.俺のリベンジプラン
3.俺のトレーニング
4.俺の挑戦
5.自己組織化された俺の歩き方
編集後記
CAMR研究会について
著者紹介
著書



【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④



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リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その1)

目安時間:約 3分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?(その1)」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



リハビリは、1回20分の訓練で何ができるのか?「その1」



 僕がPTとして介護保険施設で働き始めて5年が経ちました。働き始めた当初、クライエントのADL問題に関して介護スタッフから色々な質問や相談が寄せられました。どうも当施設の介護スタッフには「ADL問題の解決はリハビリの専門家の助言が絶対必要」といったイメージがあったようです。



 当然僕がそれぞれのADL問題の解決に適切に応えられる訳がありません。たとえば機能改善が余り起きない重度の方の排泄では、オムツの選択やあて方の工夫などが必ず必要になります。介護スタッフの方が元々知識もあり、生活のほとんどの場面で世話をして状態に精通し、問題解決の様々な方略を生み出しやすい立場にあります。どう考えてもADL問題の解決は、介護スタッフが専門にするべきなのです。(結果、当施設の介護スタッフは現在「ADL問題解決の専門家」として非常に頼りになる存在になっていますv(^^))



 となると実際1回20分、週数回の訓練しか行わないリハビリスタッフに何ができるでしょうか?



 僕がCAMRの普及が必要と考えている一つの理由はここにあります。1回20分をどう有効に使えるか、使うべきか?CAMRが人の運動システムの作動の性質を明らかにして、進むべき道を示してくれます。以下のようなことです。



1.人は生まれながらの運動問題解決者。セラピストがクライエントに正しい運動方法を教え、管理する必要はありません。
2.人が今よりも問題解決者として能力を発揮するために必要なのは何か?それはより十分な「運動余力」です。運動余力とは豊富な「運動リソース」を基に発展させた多様な「運動スキル」であり、それらの運動スキルを上手く組み合わせて問題を解決する「運動方略」です。そして「運動余力」の改善なら1回20分のリハビリでできるのです。いえ、リハビリこそが最も有効になしえるのです。(「その2」へ続く)



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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