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プロのセラピストとは?(前編)

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プロのセラピストとは?(前編)


 「代償運動って悪い?」のシリーズは前回で終えたのだが、その後以下のような「分回し歩行」に関する質問をいただいた。


 このシリーズで「分回し歩行」は、「探索利用スキル」に分類され、偽解決の状態にはなりにくい優れた問題解決スキルであると結論した。


 するとある人からこんなことを言われた。「患者さん本人がみっともない歩き方だから嫌だと言われた。だから患者さんの希望に沿ってできるだけ修正するべきではないか」


 これは一見正しそうに思える。


 しかし人は誰もみんな違っているものではないか。障害があれば健常者と違っていて当たり前である。この「人と違って当たり前」ということを、むしろ社会全体として受け入れていくことが大事なのではないか。


 しかし患者さんの「この歩き方が嫌だ」という言い分を聞いて、一緒になって「そうだね、その歩き方は良くない。健常者の様に効率よく、美しく歩こう!」などと言って健常者の立場からの「同化主義」に陥っていないか?


 たとえば分回し歩行をしている患者さんは、必ず最大限効率的に動いているわけではない。全身、特に体幹と股関節の柔軟性を改善し、健側を中心に筋力が改善されると、分回し歩行はよりスムースにより速く、より安定して歩けるようになる。これは当然のことだ。柔軟性や筋力などの運動リソースが豊富になると、それを利用して歩く分回しという運動スキルによるパフォーマンスも改善してくるのが当たり前だ。


 しかしこの改善の場面でこんなことを言うセラピストがいる。


 「ずいぶん健常者の歩行に近づきましたよ!頑張りましたね!」


 これでは障害を拒否しているのではないか。障害者の動きから健常者の動きに近づいたから良いと評価しているわけだ。これぞまさしく健常者からの同化主義ではないか。


 患者さんは麻痺のある体で努力して分回し歩行という問題解決スキルを生み出したのだ。その分回し歩行を拒否、否定して健常者の動きに近づくことに価値ありと言っている。これではいつまで経っても違いを認め合う社会にはならないだろう。


 本来先頭に立って多様性を認め合う社会に向かう原動力となるはずのセラピスト自らが、障害を拒否・否定して健常者の動きだけに価値を認めているのだから。


 そうではなくて、麻痺のある体で努力して様々な可能性を探索して、何とか見つけ出された分回しという運動スキルを素直に認めるべきではないか。麻痺のある体は健常者とは異なったやり方が必要だと認めるべきではないか。


 患者さん自身が健常者と同じ動きをしたいと望まれるのは仕方ない。その気持ちを否定する必要はないだろう。それは患者さんの問題だ。


 しかし客観的に見て麻痺が治せないのにも関わらず、セラピストが「患者さんは健常者と同じ動きを目指すべきだ」と考えるのはどうしたっておかしい。職業として、プロとして患者さんの運動問題を解決するべきなのに、麻痺が治る見通しもないのに夢だけを語って、患者さんの問題を長引かせているのではないか。 いや、同化主義とかそんなことまでは言わなくても、麻痺を治してくれと言われて「ノーと言えない」セラピストもいるようだ。これについては次回で検討しよう。(後編へ続く)


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「代償運動」って本当に悪い?(最終回)

目安時間:約 6分

「代償運動」って本当に悪い?(最終回)


 さて、ここまでで「代償運動」という言葉は人の運動システムの作動を表すには相応しくないということを述べてきた。代わりに「問題解決スキル」という言葉を使えば、人の運動システムの作動の特徴をよく理解できる。


 しかし問題解決スキルとは言っても急場しのぎの問題解決となって、新たな問題が生じる偽解決に陥ることもある。


 いったん偽解決の状態に陥ると、患者さん一人でその状態から抜け出すことはできないので、セラピストはまず偽解決の状態を変化させる必要がある。常に偽解決の状態を評価しながら、それを修正しなければならない。


 同時にセラピストは他の運動リソースも改善し、その利用方法である運動スキルの多様化のための日常生活課題の目標と手段の計画を立てて、患者さんの生活課題達成力を改善しなくてはならない、というのがここまでのまとめである。


 さて、CAMRでは患者さんの問題解決スキルは以下の6種類に分類される。


①探索利用スキル


②外骨格系問題解決


③不使用の問題解決


④骨靱帯性問題解決


⑤健康時の問題解決


⑥安心確保の問題解決


 今シリーズでは、そのうち②外骨格系問題解決と③不使用の問題解決の二つを紹介したが、ここではもう一つ、探索利用スキルを紹介したい。臨床あるいは日常で一番多く出会うものだ。


 探索利用スキルは健常者・障害者にかかわらず誰もが一般的によく行っている問題解決スキルだ。人は運動課題達成に何か問題があると、利用可能な運動リソースを身体の内外に探索し、課題達成のためにその運動リソース利用のための運動スキルを生み出す。


 子どもが棚の上のお菓子に手が届かないときは、周りを見渡して漫画雑誌を見つけ、数冊積んで踏み台にして上がり、手を伸ばしてお菓子を取ったりするのはまさにこの「探索利用スキル」である。両手でごちそうの載ったお盆を抱えたまま「あ、電灯のスイッチを消し忘れた」と思うが、壁に近づき頭や顎でスイッチを押して消すのもそうである。


 壁のスイッチは通常指先で押すが、肘や頭でも押せる。指先や肘や頭などの運動リソースは様々なものに置き換えが可能である。この同じ課題達成に様々な運動リソースが置き換え可能であるということが、人の運動システムの状況適応性を生み出している。そしてこれを可能にしているのが、課題達成のために運動リソースを探索・利用するための運動スキルを無限に生み出す人の「課題達成能力」である。


 これまで説明しなかったが、「分回し歩行」もこの探索利用スキルである。麻痺側下肢が動かなくなったので、身体の内部に利用可能な運動リソース(健側下肢や体幹の筋力などの身体リソース)を探し、それを利用して患側下肢を生み出す分回しの運動スキルが生まれたのである。更に杖という環境リソースを利用して、健側への重心移動をより安定して大きくすると、麻痺は重くてもより大きく患側下肢を前方へ振り出すことが可能になる。


 どうでしょう?分回し歩行を「代償運動」と呼んでしまうと、「悪い運動、修正するべき運動」と思うものの麻痺は治せず、患者さんもセラピストも苦しんでしまう。でも「問題解決スキル」と呼ぶと、人の運動能力の素晴らしさに感謝したくなるのではあるまいか!(終わり)


(問題解決スキルの全貌は「リハビリのシステム論-生活課題達成力の改善(前・後編)」西尾幸敏を参考にしてほしい)


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「代償運動」って本当に悪い?(その6)

目安時間:約 6分

「代償運動」って本当に悪い?(その6)


 前回までで「代償運動」よりは「問題解決スキル」という言葉の方が相応しいこと。そして同じ外骨格系問題解決のスキルでも、ヘルニアでは適切な問題解決スキルであるが、逆に脳性運動障害では外骨格系問題解決のスキルが継続的に繰り返される中で、硬さを強めてやがて偽解決の状態になることを説明した。


 先に述べたように、セラピストの役割の一つは、偽解決に陥った状態を改善することである。本来運動システムが自律的に問題解決を図るのだが、それによってかえって新たな問題を生み出してより悪い状態となるのが偽解決である。この状態に陥るとなかなか患者さん一人でここから抜け出すのは難しい。


 脳性運動障害後の外骨格系問題解決は偽解決の状態になりやすい。身体が硬くなりすぎる、つまり柔軟性が低下して運動範囲や重心の移動範囲が小さくなる。動くために硬くしたのに、かえって動きにくくなるわけだ。更に硬くなりすぎて将来的に変形になって増悪したり、痛みになったりして患者さんを苦しめる。


 多くの脳性運動障害の患者さんでは、この偽解決の状態が全身的あるいは部分的に見られるのが普通だ。


 この外骨格系問題解決の偽解決状態に有効なのは、上田法というHands-on therapy(徒手的療法)である。


 上田法は脳性運動障害後の身体の硬さを緩和して柔軟性を改善し、運動や呼吸状態を改善する徒手的療法である。短期間の講習で誰でも実施できるため、家庭内での健康増進や生活状態改善を目的とするプライマリ・ケアの分野でも注目され始めている。


 もちろん上田法の効果は一時的なものである。しかし柔らかくなっている間に自発的で多様な運動を行うことで、この柔軟性は維持されることがわかっている。上田法を実施して動きやすい状態にして、広がった運動範囲の中でできる運動課題を多様に行うことで、硬さによる支持性と運動性のバランスを維持することができる。


 つまりセラピストの本来の役割は、患者さんの柔軟性を始め、様々な運動リソースを改善し、その改善した運動リソースを使った生活課題達成のための多様な運動リソースを患者さん自身で探索・試行錯誤して、日常生活課題の達成力を改善することを助けることである。


 この生活課題達成力改善のために具体的な目標や運動課題などのプログラムが必要だが、この過程は患者さんや家族だけでは障害の全貌が掴めず、具体的な目標や手段の計画を立てにくいので、セラピストが力を発揮するところである。


 具体的な目標と手段が明確になれば、患者さんは日々の訓練の中で自分の変化した身体の事を良く知るようになり、成功体験を繰り返していくことに集中できるようになる。結果、効率的に生活課題達成力を改善することができる訳だ。


 外骨格系問題解決の偽解決の状態がある場合は、まず上田法などで偽解決の状態を改善しては、様々で適切な運動課題を繰り返して頂いて、生活課題達成力を改善することが私たちセラピストの中心的な仕事と言って良いだろう。(最終回に続く)


【お詫びと修正】

『「代償運動」って本当に悪い?(その5)』(2023年3月21日投稿)に掲載した文章に誤りがありました。以下の部分です。


 「そして脊椎動物の横紋筋でも同様の蛋白群の存在やその現象が確認されている。(最後に資料紹介)」


 紹介された論文には「脊椎動物の横紋筋でも同様の蛋白群の存在」が言われています。しかし「その現象」、つまり脊椎動物での現象は全く説明されていません。現象についてはDietzやBergerらの論文に間接的な証拠と思われるものがあるだけです。


 この部分は修正いたしました。


 申し訳ないです。自分の思い込みから思わず筆が滑ったものです。以後このようなことのないように気をつけます。西尾幸敏2023年3月28日


※この文章のオリジナルは、CAMRのフェースブック・ページの2023年3月28日に投稿されたものです。



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「代償運動」って本当に悪い?(その5)

目安時間:約 6分

「代償運動」って本当に悪い?(その5)


 ここまでの流れ。


 障害や運動問題によって新たに生じる運動は「代償運動」ではなく、本来「問題解決スキル」と呼ぶ方が正しい、と説明してきた。しかし運動システムのとる自律的問題解決にも「偽解決」が混じってくる。セラピストの役割は有効な問題解決と偽解決を見分け、偽解決の修正を図ることが重要、というところまで進んだ。


 偽解決かどうかを見分けるためには、単純に見た目の運動の形に囚われるのではなく、総合的に様々な視点から患者さん自身にとってどのような新たな不利益があるかを考えていく必要がある。


 たとえば片麻痺患者さんの分回し歩行を見てみよう。半身に麻痺があり、患側下肢を振り出すことができない。だから歩くためには非麻痺側の半身を使って分回しをする必要がある。


 しかしそれに伴って新たな痛みや障害が発生することがあるだろうか?僕の経験ではあまりないように思う。つまり偽解決ではなく、半身麻痺のある体で上手く歩くための問題解決としてうまく成り立っているスキルである。


 一方で脳性運動障害後に見られる身体の硬さは、CAMRでは「外骨格系問題解決」と呼ばれる問題解決スキルだが、しばしば偽解決が見られる。


 たとえば片麻痺発症直後は、麻痺側の上下肢・体幹に弛緩性麻痺が見られる。弛緩性麻痺とは筋の収縮が得られないため、麻痺部の手脚は弛緩して水の入った袋のようになってしまう。重力に押しつけられて安定するまで広がろうとする。 このままでは動けないので運動システムは自律的な問題解決を図る。


 つまり弛緩部分をシステム内の様々なリソースを利用して硬くしようとする。 たとえば伸張反射を亢進する。またキャッチ収縮のメカニズムを繰り返し作動させて弛緩部分を硬くしていく。キャッチ収縮は二枚貝の平滑筋でよく研究されている。一連の蛋白群の働きによって、エネルギー消費や電気活動なく筋の収縮状態を維持できる。そして脊椎動物の横紋筋でも同様の蛋白群の存在が確認されている。(最後に資料紹介)


 硬くなれば荷重も可能になるし、1つの塊として引きずってでも動けるようになる。結果として身体を硬くすれば動くことが少しでも可能になるので、ドンドン硬くなる問題解決を繰り返すようになる。


 しかしこれらは元々状況に応じて調整可能なメカニズムではない。抑制のメカニズムがないので繰り返され、ドンドン硬くなって柔軟性を失う。全身の運動範囲や重心移動範囲は小さくなって、かえって動きにくくなる。更に硬くなると変形が進み、固定化され、血流が悪くなり痛みや苦しみを生み出すという偽解決の状態を生み出すわけだ。


 この外骨格系問題解決という問題解決スキルは、実は健常者の日常生活でもよく見られる。腰部ヘルニアで腰痛が出たときなどは、脊柱を側彎させてヘルニア部の圧迫を避けた状態で体幹を硬くする。


 この場合、痛みが軽くなると自然に硬さは取れて元の柔軟性を取り戻す。ヘルニアのような整形疾患では上手く問題解決スキルとして機能しているわけだ。


 だが脳性運動障害では麻痺は広範囲で継続する。従って外骨格系問題解決のスキルはずっと継続し、繰り返される。その結果として硬くなりすぎる。脳性運動障害では外骨格系問題解決スキルは偽解決の状態を生み出しやすい。


 更にこの外骨格系問題解決が強くなると分回し歩行の動きを制限する。こうなると「分回し歩行は努力性の歩行でこのために体が硬くなる」などと2つの異なった現象が1つにまとめられて誤解されたりもする。困ったものである。問題をより複雑にするわけだ。


 この硬くなりすぎるという偽解決の状態は、上田法などのHands-on therapy(徒手的療法)によって解決状態に導くことができるのだが、この詳しい内容はまた次回のココロなのだ!(その6に続く)


【キャッチ収縮に関する文献】盛田フミ: 貝はいかにして殻を閉じ続けるか?-省エネ筋収縮”キャッチ”の制御と分子機構. タンパク質 核酸 酵素 Vol33 No8, 1988.



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「代償運動」って本当に悪い?(その4)

目安時間:約 5分

「代償運動」って本当に悪い?(その4)


 これまでのまとめ。「代償運動」は「本来の正しい運動ではないので修正するべき」というイメージである。基本的に悪い運動であると考えてしまう。それでは運動システムの作動が目標としているものを表していない。


 そうではなく障害後に生じる運動は、「運動システムが課題達成のために自律的に問題解決をするための運動スキル」である。だから『問題解決スキル』」という言葉で置き換えて使ったらどうかと提案した。


 そうすると「人の運動システムって、機械と違って運動問題が起きて必要な課題達成が困難になると、自律的に問題解決を図って何とか課題達成しようとするんだな!機械とは違うんだな!」ということが自然に理解できるようになるはずだ。「ああ、やっぱり人の運動システムって素晴らしい!」と感じるのではないか。


 ただしこれだけでは上手く説明できないところもある。このシリーズで最初に挙げたような、「足部・足関節が硬くて膝がバランスをとるために過剰に働いて膝が痛む」場合だ。確かに「膝がバランスをとるために働く」部分は問題解決になっているのだが、それが「過剰に働く」によって「膝の痛み」という新たな問題を生み出している。


 CAMRでは、このような「新たな問題を生み出す」問題解決のことを「偽(にせ)解決」と呼ぶ。偽解決はもともと家族療法などの心理療法で使われる言葉で、私たちの身の回りにも溢れている現象である。


 たとえば圧迫骨折のおじいちゃんは「痛うて動けん。痛いのが治ったら動くわい」という問題解決を図って痛みが消えるまで寝て過ごそうとするが、いつのまにか廃用という問題が生じて動けなくなってしまう。


 学校でイジメの問題が起きると、先生がみんなに厳重に注意する、あるいはみんなを叱る。そうすると「イジメの潜在化」という新しい問題を生み出す。


 政治家は「内容についてはこれから様々の議論を尽くす」とその場しのぎに答えるが(特定の政治家のことではありません(^^;))、結局解決を先送りにし、手遅れになってより困難な問題を生み出す。


 つまり一見問題解決には見えるのだが、新たな問題を生み出して、より問題を複雑、あるいは悪化させ、解決をより困難にするようなものが「偽解決」と呼ばれるわけだ。


 人の運動システムが自律的に行う問題解決にももちろん「偽解決」が混じっている。というのも運動システムの自律的問題解決は、筋力などの運動リソースが失われた中で、あり合わせのものを使って何とか問題解決を試みている。必ずしも上手く行かないことも多いのである。


 そうするとセラピストの重要な役割の一つは、患者さんの運動システムが自律的に生み出した問題解決スキルが、適切な問題解決の状態を生み出しているかあるいは偽解決なのかをまず見分けることである。そしてそれが解決可能なものかを見分けることが重要である。


 通常は運動問題が生じたその後で、行為者の運動システムが自律的に選択した解決策なので修正可能なことも多い。そうすると上手く偽解決の状態を、問題解決の状態に近づけることができるわけだ。 詳しくは次回に。(その5に続く)


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