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意欲のない人(その3)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿

目安時間:約 7分

意欲のない人(その3)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿


 さて、ご本人に家の中を歩いていただく。椅子に座った状態から体を前方に傾け、両手をテーブルや椅子の肘掛け辺り、さらには片手を座面に置いたりするがどうもしっくりとこないようだ。最終的に両手で両方の肘掛けを持って体を持ち上げる様にして立ち上がる。動きは重い。尿臭が漂う。


 「トイレまで行って座ってみましょう」と言う。すぐには歩き出さない。ほんの少しの間、起立状態で両脚の支持性を確かめているようだ。それから少しずつ動き始めるが、すぐに姿勢良く、すっと独歩でトイレに向かわれる。


 「まあ、どうしたの?」と娘が大きな声を上げる。「いつもはこうやって」と両手の平を下にして小さくひろげ小刻みによちよちと歩いて見せながら「よろよろと歩いているのよ。もう人が見てると良いところを見せようと頑張るんだから!やっぱりやればできるのよね」と声を上げる。1メートルも歩くと歩行はますます安定してくる。室内で杖を使う必要はないようだ。部屋の壁に手すりがあるがそれも使われない。トイレまで4メートルあまり。頑張って最高のパフォーマンスを見せようとされているのだろう。まあ、正直のところ俺は内心がっかりした。起立や歩行の改善は俺の得意分野だし、もう少し悪ければ運動面だけでもより劇的な変化を見せられる可能性があった・・・まあ、多少は運動改善は可能だろう。まあ、劇的な変化はないだろう。


 ドアを引いて開け、入ると左手にトイレの引き戸がある。そこは開けっぱなしでそこからトイレに入るが、トイレはかなり狭く、大きな体で動くのは難しそうだ。足下が狭いせいだろう。よちよちと方向転換する。手すりはないが、壁を持って便座に座られる。トイレが狭いので手すりをつけられないのだろう。


 トイレ内での起立も壁を頼りに立たれる。そしてまた少しの間立った後精一杯すました感じで椅子に戻られる。「脚がしびれて重くて上手く歩けないし、しんどいんです。どうか治してください」と言われる。口がもごもごと動いてしゃべりにくく、聞き取りにくい。


 娘さんが期待した顔を俺に向ける。「専門家としてどうなの?どう思ったの?解決案を言ってよ!」という感じである。弱った(^^; 俺は娘さんに微笑むと、おかあさんの方を向いた。「上手に歩かれますね」おかあさんの表情はあまり変化しない。「その棚にたくさんの本が入っていますね。それらの本は読んでおられるんですか?」彼女は無表情を俺に向けた。「読んだ本なのよ。私は毎日一つのお話を読むようにしてる・・・とても良いお話でね・・私たちがどのように生きたら幸せになるかを・・・・」俺が聞き取ったのはそんな内容だ。彼女はどうも思うように口が動かないらしく、苦労して話されるが突然会話が途切れる。話すのがしんどくなったらしい。


 次に娘さんが口を挟んだ。「ええ、とてもわかりやすくて、良い教えで・・・・」どうも二人とも同じ宗教のようだ。俺は話を聞き流しながら、テーブルのそばの飾り棚の上の神棚を見た。


 俺は娘さんの話の途切れた途端に口を挟んだ。「そうなんですね。毎日神様の教えを勉強しておられるのですね。だから神棚はとてもきれいです。素晴らしい!娘さんが?」と神棚を指さす。「いいえ、母が毎日きれいに掃除して、水を替えてるんですよ。これだけは今でもきちんとやってるんです」「なるほど、それは素晴らしい・・ところで今日はもう時間になりました。次の場所に行かなくてはなりません」娘さんは面食らったような顔をした。かまわず続ける「いろいろ教えていただきありがとうございました。私としては少し考える時間が欲しいんです。今日はたくさんの話を伺って、様子を見させていただきました。あまりにたくさんのことがあるので少し考える必要があります・・・娘さんはこんどは3日後の金曜日に来られるんでしたよね。私もその時間に合わせてここに来ますので、もし良かったらその時また話をさせていただけませんか?」


 俺はケアマネの方を向いた。彼女が頷いた。「そうですよね。いくら新畑先生でも、この場で話を聞いただけでいきなり問題解決とはいきませんよね。金曜日は私は忙しくて来れませんけど、良いですかね?」と俺に尋ねる。「ええ、かまいませんよ」結局、娘さんも渋々承知する。


 こうして俺とケアマネをその家を出た。


 今回の話はそのケアマネさんから依頼された。「どうだった?なんとかなりそう?」急に砕けた口調になる。ケアマネの裕美さんは以前からの知り合いで、時々家族から受けた相談で困ると俺に解決を依頼するようになった。今回も相談料などの交渉はすべて彼女がしてくれた。


 「いや、難しそう」とだけ答えた。(その4に続く)

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西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



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西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①



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西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤



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CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編

目安時間:約 7分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!


「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実例紹介-症例を通して 解説編


CAMR研究会代表の西尾です。
 ここでは秋山さんの症例紹介を基に簡単にCAMRの解説を行います。


 一つ目はCAMRではセラピストが複数の視点を持ち、それを切り替えながら考えるということです。CAMRではセラピストの立場だけでなく、患者さんの立場、そして患者さんの運動システムの立場に立って考えることを勧めています。運動システム内部の視点に立つと,姿勢や運動の形は見えません。しかしシステム作動の目的や達成状況、作動の性質は良くわかってきます。たとえば運動システムは、常に人にとって必要な課題を達成しようとしますし、もし課題達成に問題が起きると必ず問題解決を図ります。


この方は麻痺肢を振り出すために使えるところを使う「分回し」という問題解決を図ります。また患側下肢の支持性に自信がないので、次第に患側下肢の使用を最小限に抑える「不使用」の問題解決を図ります。この状況を変化させるポイントはここにあります。


つまり基になっている麻痺は今のところセラピストにはどうしようもありませんが、問題解決は運動システムが麻痺後に選んだものですから、当然変化することが可能な場合が多いのです。


この方の場合、患側下肢の不使用のために健側下肢を十分に振り出すことができない状況が見えていて、これは患者さんにも不利となっています。一方セラピストの視点で見ると患側下肢の支持性は十分です。だから使わないのはもったいないとなるわけです。


このようにCAMRでは運動システムとセラピストの視点を行ったりきたりしながら評価を進めていきます。(CAMRには運動システムの視点から作動を理解するための6つの作動原理がまとめられています)


またもう一つ。運動システムは様々な要素の相互作用の結果、その作動は安定した状態になります。安定した作動とは自然に頑丈な状態へと変化するものです。だからこの頑丈さを崩して状況変化を起こすのはかなり難しくなります。


たとえば分回しのスキルは障害後最初に課題達成に成功したスキルなので、運動システムはそれを繰り返し続けます。不使用スキルにしても同じです。初期に患側下肢の使用を最小限にすることでうまく行くのでこれを繰り返します。そして頑丈な状態になっていきます。従って運動システムが「分回し」、「不使用」より安全面でもエネルギー効率からも優れているスキルが見つからない限り、「分回し」、「不使用」のスキルは繰り返し使われ続けてしまうのです。


そこで状況変化のための治療方略が必要になります。ここでは簡単に言うと「多要素・多部位同時アプローチ」という治療方略を用います。つまり私たちが起こせる状況変化を一つ一つ積み重ねていきます。たとえば柔軟性を広げることで運動範囲や重心移動範囲を大きくします。また患側下肢が「思っているより使えるよ」と経験を重ねていただきます。「実りある繰り返し課題」を継続して実施することで、運動の余力をできるだけ高めていきます。またここでは述べられていませんが、CAMRには「足場作り」という技術があり、それによって成功経験をより強めたり、患者さんの意欲を高めたりしていきます。結果、患者さんは成功体験に自信を持ち、更に作動を変化させていったわけです。(秋山さんにとって足場作りは当たり前に使っていることなので、今回は言及しなかったようです)


結果、患側下肢の支持時間が増え、健側下肢を大きく振り出して前方へのより大きな推進力を生み出しますので、その後に続く患側下肢の振出もより容易になってまっすぐに振り出せるようになったと考えられます。つまりより安全で効率的な身体の使い方、つまり新しいスキルを繰り返し、自然に新たな頑丈な状態へと変化したのです。


CAMRでは通常運動の形を変化させることは目標としませんが、支持、重心移動、振出などの働きを改善することを含めて様々な角度から作動を変化させ、ここでは結果的に運動の形も変化したわけです。


まずは患者さんの状況を理解するためには、患者さんの運動システムが障害に対してどのような問題解決を図っているかを知ることが重要です。それによって患者さんの運動システムが何を問題にしているかがよくわかるからです。たとえば分回しはこの状況では良い問題解決、しかし不使用は新たな問題を生み出していると考えることができます。そして問題を生み出す不使用の状況を変化させるように計画していきます。結果運動システムの分回しスキルへの依存は減少して、よりまっすぐに振り出せるようになったのです。


CAMRでは運動システムは通常6つ問題解決方略を使うと考えています。その問題解決毎に新たに起きる問題や状況変化の方法が少しずつ変わります。脳卒中では普通2-4種類の問題解決が同時に使われていることが多いのです。講習会では実際の患者さんのビデオを見ながらこれらを理解することができます。
講習会再開の時には是非ともご参加下さい。お待ちしております!(^^)


★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


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意欲のない人(その2)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿

目安時間:約 7分

意欲のない人(その2)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿


 俺の名前は新畑委三郎(しんはた いさぶろう)、理学療法士で、パートでいくつかの施設で働きながら、講師業や本を書いたりしている。また時にはリハビリの難件を依頼によって扱っている。世間ではリハビリ探偵などと呼ばれている。


 さて、今回の依頼人の続きだ。ケアマネがデイサービスのスタッフと担当PTに簡単な報告のメモを頼んだところ、丁寧な報告書を書いてくれている。以下の様な内容だ。


 デイサービスは週2日、午前中のみ利用。開始時歩行は室内は自立、屋外は杖で見守りで今も変わっていない。デイサービス利用当初は安定しているので「歩いて良いですよ」と勧めていたが、リハビリ以外はほとんど椅子に座ったまま。来てお茶を飲んで一息ついたところで運動に誘っている。運動は座ったまま行う下肢運動のマシントレーニング3種を行っている。指示には素直に従われる。


 屋外歩行については、本人は連続50メートル程度は歩かれると言われるが、ここでは屋外歩行はしていないのでよくわからない。


 ケアワーカーは、最近尿臭があること、洋服が汚れていても着替えていないなど、以前とは様子が違っていることに気がついていたが、短時間の利用でトイレにも行かれないのであまり介入する機会は無かったとのこと。話しかけるとよく話されることもあるが、あまり社交的ではないようだ。利用者さん同士で会話が弾むこともない。


 スタッフの意見をまとめると、あまり動こうとされず、文句も言われないがなにかしようとする意欲が低いのではないかと言うこと。


 理学療法学科の学生として実習に出た当時から思うのだが、1人の患者さんにはとてもたくさんの情報がまとわりついている。調べれば調べるほど、たくさんの問題とその原因が現れてくるものだ。昔ははやく原因を明らかにしようと躍起になって疲れたものだが、今はそんなことは考えない。粛々と調べを続ける。


 家は十二畳ほどの長方形のリビングダイニングを中心に、部屋の長辺片側に六畳ほどの寝室と四畳半ほどの広さの風呂・トイレ・洗面がついている。リビングダイニングの入り口側の1/3に対面式のキッチンがあり、反対の壁際にテレビとその前に大きな六人掛けのテーブル、テーブルと揃いの椅子六脚などがある。その長いテーブルの短辺はテレビに接して、その対面にご本人の椅子が置いてある。テーブルと椅子の下には少し厚めのカーペットが敷いてある。椅子はやや低めの藤の回転式の椅子だ。肘掛けが両方についている。辺りには少し尿集が漂う。


 日中1人でいるときにその回転椅子に座ったまま、テレビをみて動かないらしい。回転椅子のすぐそばにはユニット棚が二つ置いてあり、それらの中やテーブルの上には様々な身の回りのものが置いてある。また一つのユニット棚には宗教関係らしい本が入っている。ふと壁際の高さ120センチくらいの飾り棚の上に小さな神棚とお供えのお皿などが置いてあるのが目につく。他のところはややほこりっぽいが、そこだけはきれいにしてある。テーブルの下には蓋付きの青いバケツが二つ置いてある。


 依頼人のおかあさんは回転椅子に座っている。やや肥満で顔は無表情。挨拶をするがやや口は不自由そうだ。足下のユニット棚のせいで、足下が狭くなっている。椅子は大きく、重いが、回転式で向きが変わるようだ。しかしそばに置いてあるユニット棚に肘掛けがこすって動きにくそうだ。


 どうやら椅子に座ったまま身の回りの事が済む様になっている様だ。見た目にもいろいろなものが雑然と集められている。ひがな一日、テレビを見たり、本を読んだり、お茶を入れたりしながらその場所に座っているとのこと。汚れた尿取りパッドを入れる蓋付きのバケツまでテーブルの下に置かれている。


 六畳の寝室はカーテンが引かれ、回りにはタンスが置かれていて暗い。中央にベッドが置かれている。部屋に入ると、やはり尿臭がする。


 娘さんが説明する。「最近何度か泊まってわかったんですけど、夜寝る前に紙パンツの中に新しい尿パッドを自分で入れて寝るんで起きたときには敷き布団は濡れることは少ないです。それで朝6時に起きて神棚に参って、その後またベッドに座ってウトウトしてるんですよ。パッドも一杯でどうもその時に浸みだして濡れるみたいなんです。だからそんなとこに座らないで着替えてと言うと、このテーブルの椅子に戻って着替えるんです。でも太ってるから前にかがむのも難しいし、寝ぼけているから時間もかかって・・・しかももうパッドがパンパンで漏れるみたいで・・・だから敷き布団も掛け布団も濡れちゃうし、着替えで濡れたパッドなんかもこの椅子の回りに落として汚れちゃうんですよね。いったん起きてからも、パッドがパンパンになって漏れるくらいになってから、ようやくこの椅子で時間をかけて着替えるんですよ。その棚にパッドが山積みになってるでしょう?介護の方にそこに入れて貰って、着替えたらこの蓋付きバケツに汚れたパッドを入れるんです。トイレに行って着替えてって言うんですが、トイレは狭くて着替えるのが難しいって言うんです」


 なるほど。さて粛々と調べを続けよう。次は実際にご本人の動きを見てみよう。(その3に続く)


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CAMRの実践紹介-症例を通して その3

目安時間:約 6分

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「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して その3」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実例紹介-症例を通して その3 

※個人の感想です(^^;)



秋山です。右片麻痺の方の患側支持練習の結果編です。



立位課題に対しては回数を増やす等、適宜ご本人と相談しながら進めました。歩行訓練は、距離やコースは本人にお任せ、私は何も指示することも介助することもなく、いざという時の見守りでした。



立位課題の左右重心移動で右への動きが拡大してきたり、健側の前方踏み出しが広がったりと、患側下肢での支持がちょっと長くなりました。そのように患側下肢をより使うようになられたなと思う頃に、「今日は右足がよく出るから、もう少し歩く」と自分から言われることが増え、全体に距離が伸びてきました。



「足がまっすぐ出た」とは本人は感じないけど、「足がみやすく(簡単に)出て楽だった」という本人にとってプラスの変化を実感されていました。その方は、「ちゃんと歩くためには、足がまっすぐ出ていないといけない」から「歩きやすいと感じる時は足もよく出てる。いろいろ運動しておくと歩きやすい」と思われるようになっています。



しかしセラピストの視点からは、右半身が後ろに引けていたのが目立たなくなり、右足も側方からではなくより前方に振出す、つまりよりまっすぐに振り出すようになられました。形も変化しているのです。おそらく健側下肢が前方により大きく出るので推進力が増し、患側下肢は筋などの粘性で、前方により強く引っ張られ、ぶん回しスキルへの依存が少なくなったのでしょう。結果、図らずも脚は以前よりはまっすぐに振り出される形になったわけです。



CAMRの視点からみてみましょう。CAMRでは正しい運動、間違った運動という見方はしません。中枢神経障害により異常運動=正常から逸脱した運動が出現しているとみるのではなく、障害に加えてそれに対する運動システムの問題解決などの相互作用からその状態になっていると考えます。



今回のクライアントの患側下肢がまっすぐ出ないという現象は、麻痺して今までのやり方では振り出せなくなった下肢を何とか振り出そうとした結果とも言えます。麻痺した下肢を振り出すためには健側下肢と体幹で振り出すしかなかったのです。異常な運動が出たのではなく、使える機能で何とか「歩く」という運動問題を解決しようとした。目にしている運動の形はそのようにして選択されたものです。



だからアプローチとしてはこの方が脚をまっすぐに振り出すことを目標にしても失敗経験を繰り返すだけです。むしろ柔軟性を改善し、荷重経験を繰り返し、患者さん自身がより歩きやすいスキルを探索された結果、つまり運動システムの作動が変化した結果として形も変わってきたのです。



ただ、運動システムが選択した問題解決は、常に最適とは限りません。本当は他の解決方法があるかも知れない。そこは何とかしたい。この方の場合は、麻痺側下肢の支持機能があるのに動作では十分に使っていないことがわかり、本人も納得されて麻痺側での支持を行う課題を実施、システムの作動が変化して歩きやすくなりました。


健常者の運動の形を真似するという目標はあまり意味がありません。できれば自然にしていることですから。むしろ運動システムの問題解決を理解し、適切な要素を変化させたり、支持や振出し、重心移動という機能(働き)から運動を見て、変化できることから取り組む例として、みなさんに伝われば幸いです。(終わり)




★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


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意欲のない人(その1)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿

目安時間:約 6分

意欲のない人(その1)-リハビリ探偵 新畑委三郎の事件簿


 「ともかく母は、意欲がないんです!」とその女性は力強く締めくくった。


  彼女の長い話は以下の様にまとめられる。


  彼女の母親は4年前に脳卒中を発症。現在80代前半で肥満。若いときから主婦として二人の子供を育てた。また宗教団体の地域の世話役などをやっていたというが、「元々はそれ程社交的な性格ではなかった」そうだ。6年前に夫に先立たれ元気がなくなっていたが、病気になってから更に引っ込み思案になったらしい。見かけによらず頑固で、「母親の言うことを聞かないといつまでも大変・・・」とのこと。


 発症直後、マヒは軽く少し不自由そうくらい。認知症は全くなく、薬やお金の管理は一人でされる。リハビリをして杖で外も歩けるし、部屋の中は杖なしでトイレなどに行く様になった。料理も洗濯もなんとかできるし、風呂も一人で入れるので、それまでの一人暮らしを続けることになった。


 しかしどうも自分から動こうとしない。決して一人で外には出ない。要支援2で、ケアマネに相談して訪問介護で、買いものや掃除のサービスを利用し、他に週一回は外歩きに付き添いをして貰うことにした。また他に週2回は半日のデイサービスを利用して貰った。


 しばらくはそれで問題なかったのだが、相変わらず自分から積極的に動こうとされず、一人の時は椅子に座ってただテレビを見続けているとのこと。


 さらに娘さんが1年前に退職して、週に何度か訪れる様になってより依存的になってますます動かなくなったらしく、体重も増えた。最近は「脚がしびれる、脚が不自由、何もできない」と料理などもしなくなっているとのこと。娘さんが来ないときは宅配の弁当を頼むようになった。


 そして今は何よりもトイレの失敗が目立つ様になった。


 まず紙パンツを着けているが尿を漏らしてもそのまま座っている。椅子のクッションや床のカーペットも尿臭がある。「トイレに行け」と言っても「今はないから行かない」とか言って動こうとしない。「おしっこはわかる?」と聞くと「わかる」という。紙パンツでは吸いきれないのでパッドを入れることにしたが、パンパンになって漏れているのに動かない。娘さんが失敗を指摘しても「ええ、そうなの?」ととぼけるか誤魔化すかしている印象とのこと。


 本人も失敗は気にしていたらしい。最初の頃は濡れた服は自分で洗濯していた。しかし最近は慣れてしまったのか、娘さんに全部平気で出すようになった。 どうも動くのが面倒らしく、濡れた紙パンツの中にさらにティッシュを入れて少しでも吸い取らせようとするらしく、トイレに行ってそのぬれたティッシュの塊が便器に落ちて水洗トイレが詰まったここともある。


 トイレの失敗について本人に相談したり、説得したり、怒ったりしたが、本人は「わかっている、でも脚がしびれるの。体もしんどいの。脚もこんなに腫れて・・・入院して全部治して貰いたい」などと言う。時には「もう私なんか死んだ方が良いのよ!」と逆ギレする。


 「結局、意欲がないから動こうとしないし、それでだんだん筋力が衰えてきて動けなくなって、手足も腫れてくるし、弱って動けなくなっちゃったのよ。なんとか意欲が高まらないかと買いものや外食、小旅行に連れてったり、昔趣味だった手芸なども勧めると、その時は元気になるけど、その後は一人になると相変わらず家の中では動かない」


 「こんなに臭くなってデイサービスで嫌がられるでしょう」と言うと「デイサービスに行く前の日は風呂に入ってきれいにしている」と答える。「しびれる、痛い」とは言っても、どうもやろうと思えばできそうなのである。


 「私も今のところ週2回来るのが精一杯。ともかく問題はあまりに自分で何とかしようという意欲がないこと。なんとか母親の意欲を高めてほしいんです」というのが彼女の依頼内容だ。(その2に続く)

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