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運動リソースとリハビリ(その2)第190週目
3種の運動リソースのうち、最初に取り上げるのは「身体リソース」である。「身体リソースとは?」
身体リソースはまず身体そのものであり、身体が備える能力や性質である筋力、柔軟性、持久力、そして痛みなどである。
我々、医療的リハビリテーションのセラピストはこの「身体リソースの改善」を治療のための主な手段としている。
もともと医療的リハビリテーションは、整形疾患を中心に発達してきた。たとえば骨折は固定や手術で時間が経つと治ることも多い。また「右下腿骨折」のように傷害は部分的であることも多い。つまり部分的で、時間の経過とともに治る傷害である。
そうすると傷害されていない大半の体は特に大きな問題もなく、多くの運動スキルは無事に残っている。さらに傷害された部分が治癒するにつれて、患者さんは自然にその治癒された部分を使って、必要な運動スキルが再建され、元通りの健康時の運動スキルを使って生活課題達成力は改善する。
従って部分的で一時的な傷害の整形疾患などを相手にするセラピストは、現在でも運動スキルを問題にすることはあまりない。そして未だに「身体リソースを改善さえしておけばリハビリの目的は果たされる」と考える傾向は強い。まあ、対象疾患が部分的で一時的な整形疾患であればそれでも良いとは思う。
だから一般的に学校教育でも身体リソースを主に改善することが教えられる。それが医療的リハビリテーション教育の伝統である。(実際に学校教育の中で教えられる運動スキルに関する知識は未だに古い体系の教えばかりである)
さて、身体リソースの中でもっとも大事なのは筋力リソースだろう。動くために必要なのは力だ。この改善方法は徒手や機械・器具などを使った様々な方法がある。どれを選択するかは患者さんの状態と訓練環境に応じて工夫すれば良い。
しかし筋肉の活動は機械のエンジンのような単純なものではなく、状況によって働き方や収縮方法、結果が異なってくる。つまり筋力は常に使われる状況と目的によって運動スキルという文脈の中で働くものだ。
以前から言っているが、歩行のために大腿四頭筋を鍛えると言って、座って足首に重りを巻いて膝を伸展するのは、「骨盤を固定された状態から下腿を持ち上げる」という至極単純な運動スキルの文脈で行われている。
逆に立位では「他の全身の筋群と協調しながら重心線が基底面内に保持されるように膝を伸展させる」というとても複雑な運動スキルの文脈で働いている。同じ四頭筋の収縮とは言え、丸きり状況と目的が異なり、収縮の状態も結果も異なっているのである。 先に述べたように片側の下腿骨折のように傷害が部分的・一時的であれば、座って四頭筋を太らせてまず筋力改善すれば、その後自分で動いて適正な運動スキルを見つけ出すことができるので問題ない。
しかし脳性運動障害ではマヒが広範囲で継続する。体は障害によって未知のものとなり、自分だけでは改善された身体リソースを十分に使えなくなることも多い。
このような場合、座って筋トレして筋繊維を太らせても、いきなり歩行に役立つわけではない。セラピストの課題設定や介助を借りて、実際に歩きながら改善した筋力が必要な役割を果たすような運動スキル・トレーニングは別に必要になる。
またセラピストが最初から「立位・歩行を通じて四頭筋の働きを強めていく」というような運動課題設定を中心にして身体リソースと運動スキルを同時に改善していく方法もある。CAMRの「実りある繰り返し仮題」などがそれに当たる。
たとえば背中に荷物を背負った立位で、左右への重心移動から片足立ちをするなどの運動課題である。これによって重心移動や支持、下肢の振り出しなどのスキルの中で、筋力を改善していくわけだ。
筋力という身体リソースは、単に筋繊維を太らせることも可能だが、それを尊ぶのはボディビルディングに人生の価値を見いだす人々くらいだろう。
リハビリの世界で求められる生活課題達成力改善の文脈の中では、筋力は基本的に課題達成の状況の中で、運動スキルに組み込まれて初めて適切にその役目を果たす器官であることは知っておいた方が良い。つまり筋を太らせるだけではリハビリの目的には適さないということだ。
次回は「柔軟性と痛み」という身体リソースを説明する。(その3に続く)
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運動リソースとリハビリ(その1)第189週目
運動リソースとは、動物が運動をするための資源である。システム論では、運動リソースとこれを基にした運動スキルを中心に、動物の運動・活動を理解することが多い。(「運動リソースは運動の資源で、運動スキルは課題達成のための運動リソースの利用の仕方」とCAMRでは定義している)
たとえば人が歩くためにはまず体という資源が必要だし、体に備わった筋力や柔軟性、持久力といった資源が必要だ。
また大地と重力という資源も必要だ。歩行という運動は真空中では起きない。歩行は大地と重力の間で起きているからだ。
もし目の前に溝があって渡る場合、渡れるかどうかわからないまま、一々実際に試していたのでは落ちて怪我をするかもしれない。効率も悪いし、危険だ。 だから渡る前に予期的にどう渡れるか、運動結果がわかった方が良いし、そして実際に私達はそれがわかるのである。つまり私達にとっては、溝の幅を見て「軽く跨げる」、「軸足で強く踏み切って跨げる」、「少し助走をつけて跳べば渡れる」、「渡るのは無理だからやめる」などという運動結果と課題達成の方法は自然に予期的にわかってしまう。
このように実際に試すまでもなく、あるいは少し跨ぐ姿勢に入ってみることで運動結果はわかってしまう。これによって効率的、安全、適応的な運動ができているとも言える。これは過去の運動経験と現在得られる身体や環境の状態を知ることを基にした「情報という資源」によってできるわけだ。
こうしてCAMRでは運動リソースは以下の3つに分類できる。
①身体リソース:身体と身体が持つ性質(筋力、柔軟性、痛みなど)。動物の動くための中心となる運動リソースである
②環境リソース:環境内に存在する大地や水、構造物、もの、動物。また環境内に存在する性質(重力、温度など)
③情報リソース:動物が活動によって得られる自らの身体、環境、身体と環境との関係に関する情報。環境・身体のどちらかに存在するのではなく、両者の関わり合いの上に存在するリソース。
今回は私達、医療的リハビリテーションのセラピストが知っておきたい運動リソースの話である。そして次回取り上げるのは「身体リソース」である。(その2に続く)
追記:これまでCAMRでは運動リソースは「身体リソース」と「環境リソース」の2種類であると説明してきました。今回は試験的に「情報リソース」を加えて3種類の分類にしています。
以前は「情報リソース」は身体の持つ性質、つまり「情報を生み出す性質」としていたのですが、いろいろと検討してみると「身体と環境の間に存在する」と考えた方が良いと考えるようになっていますが、まだ検討中です(^^;)いずれ次回に発刊予定の「リハビリのシステム論」(仮題)で、「臨床でうまく使える」ように説明できればと思っています。
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感動の運動スキル!(最終回)(第188週目)
「協同探索」は、患者さんの運動問題を「患者さんは患者さんの立場から、セラピストはセラピストの立場から協力して探索的活動を行い、利用可能な運動リソースを増やし、柔軟な運動スキルをできるだけ多彩に生み出して、患者さんの生活課題達成力を改善する」ための活動である。
人は何か必要な運動課題が達成できない、つまり何らかの運動問題が発生すると自律的に利用可能な運動リソースを見つけ、課題達成のための利用方法である運動スキルを生み出そうとする。これが探索的活動である。
またセラピストが指示するまでもなく、誰もが日々自然に行っている活動である。
凍った路面を歩く時には転倒しないように、自然に歩隔を広げ、歩幅を小さく、すり足気味にして歩くスキルを見つけ出す。
水田を歩く時には、自然に膝を高く挙げ、爪先が抜けやすいように尖足にして持ち上げる歩行が自然に生まれる。(いわゆる鶏歩の形である)
首を寝違えて痛みが出ると、痛みが起きないように体幹と頭部を固定したまま硬くして問題解決を図る。
靴擦れが踵骨後部にできると、爪先に重心を移動してその傷が靴に触れないように歩くスキルが生まれる。
人は生まれながらの自律的な運動課題達成者であり、問題解決者であるということだ。
セラピストはまずこの根本的な性質を大事にするべきだろう。人の体を機械として、脳をコンピュータとして理解していたのではとても協同探索はできない。「脳のプログラムを書き換えれば良いのだ」などと暢気に考えて、一方的、支配的に患者さんの運動をコントロールしようという態度では、協同探索は無理なのだ。
しかしこの自律的な探索的活動にも問題が生まれることがある。運動システムは問題解決のつもりでも、時にはその問題解決のスキルを繰り返すことで新たな問題が生まれてくることがある。これは偽(にせ)解決と呼ばれる。
たとえば足部は柔軟に大地の起伏に合わせて傾きを吸収する働きをしているのだが、これが硬いままデコボコ道を歩くと、デコボコを膝や股関節で吸収しながら歩かねばならない。つまり股関節を外転し、膝を捻りながら上下動を吸収する運動スキルを繰り返してしまう。そうすると膝に負担がかかって膝痛を起こしてしまう。
「足関節が硬いままでもスムースに重心移動する」という問題解決の運動スキルが、今度は膝痛を起こすという偽解決に変わってしまうのだ。
この場合膝関節周囲筋の筋力や関節内運動を改善しても、膝痛の問題はあまり改善しないこともある。足関節の可動域低下をまず改善した方が手っ取り早い。 だからセラピストは、人の運動システムの作動や問題解決の過程を良く理解しておく必要がある。
「自律的に問題解決して課題達成を行う」という常に行われる作動は素晴らしいものだ。しかし一方でその問題解決は、その場その場の場当たり的なものが多く、時にはそれが長々と繰り返されることで新たな問題を生み出してしまうのだ。
協同探索においては、セラピストは運動リソースの知識とその改善のノウハウを持っているので、患者さんの様々な運動リソースの改善に役立つことができる訳だ。そして運動リソースを豊かにすれば、それを利用する患者さんの運動スキルは自然に多彩に柔軟になる可能性が高まる。
セラピストは、更に多くの経験を積むに従って、運動スキルに関する適切なアドバイスもできるようになるものだ。しかしここのさじ加減は難しい。このシリーズでも見たように運動スキルは患者さん本人が生み出すものだ。
しかしセラピストが患者さんに対してアドバイスをするときは支配的になりやすいところがある。つい「こうするべき」とか「健常者のような運動を行うべき」とか「これが正しい運動だ!」になりやすい。それは患者さん自身の探索的活動を妨げてしまう。
さらに患者さんの運動システムが自律的に採った問題解決の運動スキルがやむを得ないものか、あるいは偽解決かを判断していく必要がある。
セラピストは様々な身体リソースの変化を試し、その結果をモニターするような探索的活動を行って、生活課題達成力がより良い状態に働くように持っていくことが重要な役割になるだろう。
さて、「協同探索」については書くことが多く、詰め込み過ぎてしまった(^^;)これだけの説明ではとても物足りない、中途半端なものになってしまった。またシリーズを改めて書いてみたい。(終わり)
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感動の運動スキル!(その9)(第187週目)
感動の運動スキルは、患者さん自身が必要な課題達成のために自ら生み出すものだ、というのが今回のエッセイのメインのテーマだ。
たとえば筋ジスの子どもたちの歩行や片麻痺患者さんの分回し歩行や伸び上がり歩行もセラピストが教えたのではなく、患者さん自らが自分の身体を探り、利用可能な運動リソースを見つけ出し、それを利用して生み出した素晴らしい運動スキルだ。
それなのに分回し歩行は、やれ、「代償運動だ」のやれ、「異常歩行だ」などとセラピストから非難されてしまうこともある。セラピストの仕事は、「健常者との運動の違いを指摘することだ」と言わんばかりである。わざわざ指摘しなくても、違うことは誰でも見てわかることだ。
でも実際のところ、指摘はしても麻痺を基にした分回し歩行を健常者の歩行にすることはできない。麻痺は治せないからだ。つまり健常者の歩行とは違って当たり前だし、意味のない指摘はやめるべきだ。
伝統的にセラピストは「運動の専門家として正しい運動を教えるべき」という思い込みがある。そしてその背景には、健常者への同化思想がある。「健常者と同じように美しく歩くべき」といったところだ。「違う」ことを認めようとしない偏狭な心だ。
さらに人を自然が生んだ機械として、脳はコンピュータとして理解しているのではないか。脳の中のプログラムを書き換えれば運動も変わると思っているようだ。だから脳の中のプログラムの書き換えがセラピストの仕事だと思っている人もいる。
しかし元々脳はコンピュータの様にプログラムとして憶えて再現しているわけではない。運動スキルは状況変化に応じて柔軟に、創造的に生み出されているものだろう。
人は生まれながらに運動問題解決者であり、運動課題達成者なのだ。一人一人が異なった物理的性質を持った身体であり、みんながそれぞれに自分独自の運動スキルを発達させている。その人自身が困難な生活課題に出会えば自律的に運動問題を解決して、運動課題を達成してきたのである。
そして患者さんは障害に絶望し、立ちすくむ迷える小羊ではない。ただセラピストの助けを待っているだけのか弱い存在ではないということである。
歩く課題があれば、自ら麻痺のある体で利用できそうな運動リソースを探して試し、その利用方法である分回し歩行のような独創的で素晴らしい運動スキルを生み出すのだ。ご自身で創造的に運動問題を解決し、必要な運動課題を達成しようとされているのだ。 たとえ自覚はなくても一人一人が自らの運動システムの専門家なのである。
だからセラピストも人を機械のような受身の存在として誤解し、「私が間違った運動を指摘し、正しい運動を教えてあげよう」などと思うのはとんでもない勘違いだ。
ではセラピストは何をする人なのか? 患者さんは自律的な運動問題解決者で、運動課題達成者である。患者さんは運動問題に直面するとまず利用可能な運動リソースを身体の内外に探す。そして見つけると何とか運動問題解決や課題達成に利用できないかと試行錯誤を行い、その人だけの独創的な運動スキルを生み出してくる。
そして生態心理学のリードはこの過程を「探索的活動」と呼んでいる。 そう、人が基本的に問題解決や課題達成でいつもしているのはこの「探索的活動」なのである だからセラピストもこの患者さんの探索的活動にセラピストの立場から協力してみたらどうか?
CAMRでは、「患者さんは患者さんの立場から、セラピストはセラピストの立場から協力して探索的活動を通して運動問題の解決を図ったり課題達成力を改善する」ことを「協同探索」と呼んでいる。協同とは異なる立場から同じ目的のために働くことである。
これがCAMRを行うセラピスト、カムラー(Camrer)の基本的な視点なのである。
次回はこの「協同探索」について説明してこのエッセイを終わりにしたい。(最終回へ続く)
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感動の運動スキル!(その8)(第186週目)
ベルンシュタインや生態心理学、動的システム論のテーレンら、その他の研究を通じてわかってきた運動スキル学習のことを簡単にまとめておこう。
もちろんこれらのアイデアを真実と鵜呑みする必要はない。うまく道具として役立てたいし、有用な道具であるかどうかも臨床で見極めていただければと思う。
①運動スキル学習は、実際に達成するべき運動課題を通してしか学べない。
たとえば歩行スキルを身につけるためには歩いてみるしかない。現実に出会う様々に変化する環境内を安全に歩くための運動スキルは、様々な環境内を歩くことによってしか得られないのである。
②人の運動システムは物理的に非常に個性的である。
つまり個別性が高い。同じ運動課題を同じ条件で行っても個人ごとにやり方が全然違っていたり、学習過程が異なっていたりする。だからこそ一様な教え方は意味をなさないこともあり、基本的にその人自身が利用可能な運動リソースを見つけて、可能な運動スキルを試していかないといけないのである。
③運動スキル学習は知覚情報活動を通して行われる。
知覚情報活動は、動くことが基本である。視覚はカメラのように受身に光を得ているのではない。形をなぞるような眼球の動きがないと形や距離がわからない。聴覚も音がした方を動いて見る、つまりアクティブに聴くことによって方向や距離、音の性質などが情報として得られることが視覚障害者の研究で示唆されている。触覚もアクティブに触っていかないと形や表面の肌理、重さなどいろいろの性質もわからない。知覚情報を受け取るということは、まずアクティブに動いて探っていくということなのである。
従って他者が動かしたり感覚入力したりするということと実際の運動スキル学習ということはまったく別のことをやっているのであって、運動学習の目的に適っていないのである。
④学校では視覚、聴覚、触覚などと感覚毎のモデュールが独立しているように学ぶが、運動スキルの学習中は、常に動員できる知覚はできるだけ参加で探索の活動をしているのである。
たとえば初心者がピアノを弾くときは、視覚が主導的な役割を担っているようだが、同時に触覚によっても学習している。だからいつのまにか見なくても弾けるようになるわけだ。
⑤自ら動き、探索することによって次々に明らかになる知覚情報がある。
触ったり振ったりしてわかる性質、動いて見る角度を変えると見える形、叩いて聴いてみて初めてわかる性質など。課題達成の運動スキルを探ることもまたそうである。脚を踏み締めるときの大地の性質と自分の体の反応、握りしめた棒の安定性と自分の体の動揺などもまた動くことによってわかってくる自らの身体、関係している環境、そして身体と環境の関係である。
簡単に言えば知覚情報は与えられているのではない。自らピックアップしているのだ。
そしてこれによって次の運動が導かれ修正されるのである。生態心理学のギブソンはこの知覚情報をアフォーダンスと呼んでいる(ように思う)。
⑥運動スキルは転移する。
それは運動の形が似ているからではなく、作動が似ている場合に転移する。たとえば冬のオリンピアンである橋本聖子さんは夏には自転車競技で日本代表になっている。接地面の小さい道具に乗ってバランスをとりながら左右交互に脚を踏み締めて前進する」という作動が似ているからだ。
⑦生態心理学では動物の活動は遂行的活動と探索的活動の2種類に分けている。
リードによると探索的活動は知覚情報の探索と利用の活動である。つまりCAMR流に言えば、利用可能な運動リソースを探し、様々に試し、課題達成可能な運動スキルを創造する活動である。つまり動いて知覚情報を得て、課題達成の方法を導き出す活動である。
さて、どうだろうか?要は、運動スキル学習とは学習者本人が必要な課題を通して、動いて色々試すことでしか得られないと言うことである。決してセラピストが「エッヘン!私、運動の専門家ですから!」と威張って他人に教えられるものではない。
次回は臨床で運動リソースの豊富化と運動スキル学習を進める具体的な方法について検討してみたい。(その9に続く)
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