ADLは「介護問題」! その1

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今回は「ADLは「介護問題」! その1」です。



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ADLは「介護問題」! その1 2014/1/26
~"ありがち"ではすまない切実な問題~



秋山です。新シリーズです。



 「母は夜いつもおしっこの失敗があるんです。その度に起こされて私まで寝不足だし、いつも洗濯物の山・・・」



 入所中のAさんのご家族の嘆きです。Aさんは軽い介助で移動ができ、在宅復帰を検討中です。Aさんも家に帰りたい、ご家族もできれば連れて帰ってやりたいと思っておられますが、夜間の排泄が大きな「問題」となっています。



 Aさん「自分では何ともできないの。家族に迷惑かけてしまって申し訳ない」でも自分ではコントロールできないことなので、失禁してしまいます。その後始末のため、家族も起きて寝不足、朝は洗濯物の山です。ご家族も頑張られますが、疲れてきてついイライラ。Aさんは小さくなってしまいます。



 またこうなってしまうの?家族の切実な心配事です。



 当施設に限らず、よくある場面ですね。さて、あなたならどうしますか?



 「機能的にはポータブルトイレ自立のはずです。Aさんが夜間にも使えるようにしっかりリハビリしましょう!」



 一見とてもいいアイデアです。実際にこの方法で解決することもあります。でも、そうならないからみなさん困ってるんですよね。
Aさんは立ち上がりなど上手くなってこられたのですが、移乗は見守りから変化なし・・・。



 運動機能は改善が見られました。でもADLには変化がなく生活問題は変わりません。



 当施設のリハビリスタッフ「ポータブルトイレを使う練習をこのまま続けても・・・。それに夜間一人では心配・・・」困った、困った。



 でも、何ということでしょう、Aさんは笑顔で、ご家族も喜んで家に帰られました。切実な問題はどうなったのでしょうか?



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①



【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤



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CAMR超入門 よく目にする光景(その6:最終回)

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CAMR超入門 よく目にする光景(その6:最終回)2014/2/7



 人の運動は状況に応じて変化します。たとえば家の中を歩くときあなたはリラックスして歩きます。しかし急に停電になって部屋が真っ暗になるとあなたは身体を硬くし、足や手で回りを探りながら歩きます。氷の上ではおそるおそる足を進め、向かい風に向かって身体を前のめりにして歩きます。狭い場所では横向きになって通り過ぎます・・・



 つまり人は状況が変わってもなんとか「歩行」という機能を維持しようとします。



 一方オモチャのロボットは平らなテーブルの上では歩いているように見えますが、ちょっとしたこと、たとえば十円玉を踏んで倒れたりします。そして先ほどまで歩いていたと思われる運動を正確に繰り返します。



 結局人の運動システムは、状況に応じて形を変えてでも、必要な機能を自律的に維持するという性質を持っています。逆にオモチャのロボットは、機能を維持するのではなく特定の運動の形を維持するシステムです。同じように「歩いている」といってもシステムはまったくの別物です。



 だから歩行訓練のために「形を憶えてその形を再現する」などという訓練目標はもともと人の運動システムには向いていないのです。歩行の特定の形の再現を求めることは、人の運動システムをオモチャのロボットのように考えているからです。



 「状況変化に応じて形を変えてでも機能を維持できる」ことを訓練の目標にしなくてはいけません。そのために何をするべきか、何ができるかを考える必要があるのです。そしてCAMRはこの文脈から生まれたアプローチです。



 システム論を知るということで世界観が変わりました。システムを形や構造ではなく機能で見ることでCAMRは生まれてきました。(これらのアイデアについては上田法ジャーナルに掲載したエッセイをHPに載せています)



 唐突ですが、CAMR超入門はこれで最後です。最初の方から何が「超」でなにが「入門」なのか良く考えずに書いていたので、最後まで「超」でも「入門」でもなかったですね。申し訳ない。ここまで付き合ってくださった皆様、ありがとうございました。
文責:西尾幸敏



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



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CAMR超入門 よく目にする光景(その5)

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CAMR超入門 よく目にする光景(その5)2014/1/29



 システム論を知ってから、もう一つ新たに気がついたことがあります。それは根本的アプローチを追求する中で、いつのまにか自分が理想に囚われていたことです。健常者の歩行をモデルに繰り返し、「いつか健常者の歩行ができるように」という理想的な目標に囚われていたのです。



 その目標はその当時、僕自身にも達成可能が疑わしいものでした。でも「目標は根本的な解決を目指す。それは困難で簡単な道のりではない。日々の努力を何年にもわたって続ける必要がある」と考えたりしていました。友人から「そんなことできないだろう」と言われると「それがどうした?諦める奴はそこでお終いなんだよ。俺は諦めが悪いのさ(どう、俺ってタフだろう?)」などと内心思っていました。



 そしてクライエントに諦めないで努力を続けるよう励ましていました・・



 でもシステム論を知ってから、健常者の歩行に近付くことこそ良いことだという思い込みはおかしいと思うようになりました。それは熊谷さん(「リハビリの夜」の著者。当ページのノートでも紹介中)が言うように多数派から少数派への同化思想だったのかもしれません。「障害者が努力して健常者に近付いてくることが当たり前」という考えに囚われていたのかもしれません。



 この考えに囚われていると、自然に努力のほとんどをクライエント自身に求めてしまいます。身体機能の低下から起きたADL問題なら、できるだけ身体機能を改善して、クライエント自身にADL問題を解決して欲しいと考えます。



 また「高い理想を持ち続け、諦めないで努力する過程に価値がある」と考える傾向があります。だから達成できなくても、「俺は素晴らしい目標に向かっているのだ」というそれなりの満足感があるのです。また達成できない理想を実現可能な目標に引き下げようとすると、そのこと自体を「敗北」と感じてしまいます。



 しかし「理想は簡単に達成できないから・・」と解決を先延ばしにすることは、実はクライエントにいつまでも問題を抱えて我慢してください・・と言っているようなものです。



 本当はクライエントは「問題を早く解決してください」と言ってきているのだと思います。それなのにセラピストの理想をクライエントの理想と勘違いし、押しつけ、励まし、いつまでも問題解決を放っておいたのだと思います。とても反省しています。



 今では僕の仕事はまず問題解決だと思っています。問題解決は途中の努力や掲げた理想は無意味で、結果こそが求められます。努力を続けたところで、実際に問題が解決されなければ、クライエントはずっと問題を抱えたままだからです。



 問題を先延ばしにすることはできません。通常なら誰しも問題は早く解決したいものです。だからできるだけ早く解決できるよう手助けしたい。



 さらにクライエントの望むような問題解決は不可能なことも多い。この場合「それは無理ですよ」と答えて済ますわけにはいかない。クライエントが希望する問題解決が無理でも、なんとかその苦労を軽減できるような他の解決案を提案しなくてはいけない。他の実施可能な手段を考え出したり、目標を達成可能な形に修正もします。問題解決にとって重要なのは「問題を少しでも早く、少しでも軽くするという結果を出すこと」なのです。



 しかしその道は困難で、上手くいかないことが多いです。でも以前のように「理想の世界」へ逃げこむわけにはいかないのです。(その6に続く) 


文責:西尾幸敏



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



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CAMR超入門 よく目にする光景(その4)

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CAMR超入門 よく目にする光景(その4)2014/1/25



 「根本原因にアプローチしている」という満足がある一方で、「本当にこれで良いのか?これしかないのか?」と思っていた頃にシステム論に出会いました。しかしシステム論に出会ったときの最初の印象は戸惑いでした。



 システム論で言っていることを、身の回りの身近な生活経験に置き換えてみるととても当たり前のことでした。たとえば「人の歩行の形は状況に応じて変化する」と言うことです。たとえば人混みの中を急いで進むとき、人の歩行の形は一瞬一瞬に変化します。横向きになってすり抜け、歩幅やリズムを急激に変化させます。当たり前のことすぎます。こんなことは既によく知っていて、言葉にすらする必要がなかったのかもしれません。だけど改めて言葉にしてみると、とても戸惑いました。



 というのも僕達は一方で「人の歩行には正しい形がある」と学校で習ってきているのです。これもまた至極普通のことと感じていました。健康な人は皆一様に似たような歩き方をします。また多少の状況変化があってもその人らしい歩き方を維持します。歩行に関して決まったの枠組みのようなものが見てとれます。だからなんとなく健常者には基準となる「正しい歩き方の姿形」があるのだと思っていました。



 だから障害を持った人を見ていると、健常者の正しい歩行の形から「ずれてしまっている」と考えてしまいます。だから健常者の正しい歩行の形にできるだけ近づけようとします。もちろん障害を持った人がそれを望むから、と言うのもあります。大抵皆さん「元気な時のように普通に歩きたい」と言われるのですから。



 実際片麻痺の方の分回し歩行を見ると「健常者とは違う異常な歩き方」と感じ、その方から「普通に歩きたい」と言われれば、できるだけ健常者の歩き方に近づけないか、と試みていました。たとえば「このタイミングでこの部分の筋肉が働いていない。なんとかこのタイミングでの筋の活動性をあげられないか」とかです。まあ、長い目で見ると形を治すのは上手くできませんでした。安定性や歩行速度を上げることはできるのですが。



 ただそのうち、システム論の見方の方が自然に僕の中で強まってきました。次第に麻痺のある方が、健常者とは違う歩き方をするのは当たり前と思うようになってきました。だって健常者だって腰痛があれば、できるだけ痛くないように歩行の形を変えます。なぜ麻痺のある方が健常者と同じ歩き方をしないといけないのか、と。



 そうすると今まで「異常」と思っていた歩行の形が実は数ある正常な歩行の中の1つに思えてきます。人というのは片麻痺になってしまうと、残った運動リソースを利用してそのような運動スキルを発達させるのだ、と。それは異常なことではなく、とても自然のことである、と思うようになってきました。(その5に続く) 文責:西尾幸敏



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出



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CAMR超入門 よく目にする光景(その3)

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CAMR超入門 よく目にする光景(その3)2014/1/18



 若き日の僕は、「やはり根本的アプローチだよね!」と自然に思いました。だって小さな頃からテレビを見ていると、何か事件がある度に必ず専門家が出演し、「今回の事件の原因は・・」などと解説します。ドラマでもなにか事故が起きると「あわてるな!まず何が原因かを探ることが先決だ!」などと主人公が格好良く指示したりします。社会全体で何か起きる度にまず原因を探ることが先決だ、と考える流れが自然にできているのだと思います。



 「何か問題が起きた→まず原因を探る→その原因にアプローチする」という流れです。そして原因探求が根本原因に近付くほど根本的解決が導かれると考えます。これを「原因探求志向」と呼びましょう。原因をまず探せば解決法も見つかると考えます。僕達が馴染んでいる医学はこの傾向が強く、そして実際に効果的なアプローチです。



 しかし現実にはこのアプローチが有効でない場合も結構沢山あります。人の運動もそうです。ここでは人の運動は「様々な構成要素の相互作用から生まれるから」とよく言われる理由だけ述べておきます。このような多要素が影響し合って生じる現象というものは、たとえ原因を見つけても達成不可能な目標や解決不能の状況に陥ることも多いのです。



 たとえばイジメの原因は様々なレベルで原因が求められます。社会の構造から生じる歪みとかイジメ側の家族に問題があるとか虐められる側の子の性格に問題があるとか、いろいろです。でも性格や家族の有り様を変えるなんて誰ができるんでしょう。イジメのない社会を作るなんて絵に描いた餅じゃないでしょうか?



 結局イジメをなくすのではなく、イジメに対する学校の対応に問題があったとして教育現場の改善を行ったりします。そしてマスコミもそこに焦点を当てます。そう、誰もがイジメ自体をなくすことは不可能に近いと思っているのです。原因を探ったところで解決不能だと思っているのです。



 これはリハビリの現場でも同じで、原因を探ったからといって問題解決にはつながらない。たとえば僕が若い頃には以下のような考えが流行でした。「脳性運動障害は、脳細胞が壊れて脳の機能が失われたのが原因。だから使われていない脳の部分、あるいは脳細胞の再生などを利用して、健常者の運動をモデルとして繰り返し学習する。そして健常者の運動を患者自身で再現する」とする考え方が根本的アプローチと考えられていました。確かに健常者の運動が再現できると言うことは、「麻痺がなくなる」と言うことでもあります。



 しかしこれは結局達成不可能な目標でした。60年以上「麻痺が治った」という話は聞いたことがありません。



 それどころか新たな問題が生じました。あるセラピスト達は自分の能力が足りないからと自分を責めます。また他のセラピスト達は家族や他のスタッフが協力してくれないからと他人を責めます。患者様は「間違えた運動を憶える」という理由で歩くことを禁じられたことさえあります。



 皆「アプローチが間違っている」とか「達成不可能な目標である」とは考えていないようでした。まあ、他の選択肢がなかったと言うこともあるのでしょう。また正面から、これを「解決不可能な目標」と明言してしまうこと自体、敗北と感じてしまうのでしょう。だからこれは皆口に出さない。テレビのニュースで「イジメをなくすことは不可能です」と明言しないのと一緒です。



 でもこれは敗北ではありません。もともとどんな理論にも限界があるのです。科学が万能だとか社会は必ず幸福だけの世界に進化するとか、諦めなければ夢が叶うなどの考えが幻想に過ぎないのですから。夢を夢見て現実を否定するなんて馬鹿げた話です。(その4に続く) 文責:西尾幸敏



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西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



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CAMR超入門 よく目にする光景(番外編)

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今回は「CAMR超入門 よく目にする光景(番外編)」です。



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CAMR超入門 よく目にする光景(番外編)2014/1/12



シリーズの途中ではありますが、早くも番外編(^^ゞ



 これからシステム論の説明などに入のですが、その前に少し言っておきたいことがあります。



 以前の投稿で「CAMRは第3の選択肢」と述べています。この意味は、CAMRが「対症療法的アプローチや根本的アプローチに取って代わる唯一のもの」という意味ではありません。あくまでも3つのうちの一つの選択肢であるということです。



 対症療法的アプローチや根本的アプローチにたとえ問題があったとしても、それでダメだなどと言う気はありません。そんなのはむしろ当たり前なのです。どんな理論、アプローチ、考え方、技術にもそれぞれ良いところと悪いところがあります。限界があるのが当然です。もちろんCAMRもそうです。


 僕は臨床家だから、臨床家の目で理論や技術の良いところを見ています。理論や技術が問題解決のための道具と考えれば、道具の使い方を考えていくわけです。たとえば穴を掘るために、柔らかい地面ならスコップ、固い地面ならまずツルハシを選択します。固い地面が掘れないからスコップはダメだ、などという気はありません。それぞれ使いどころが違っているだけです。



 ただ自分がいつも臨床で選ぶ枠組みや技術が一つであれば、良いも悪いもないでしょう。一つしか知らなければ比較の対象がないからです。良いも悪いも、限界もできることも気づかないで仕事をしてしまうかもしれません。ひたすらどんな地面でもスコップを使うように・・・だから選択肢を持つことは重要なのです。(まあそれはそれでスコップ一つでいろいろな地面を掘ってしまう「スコップの達人」になるのかもしれませんが・・・(^^ゞ)



 ただしシステム論を読み進めるうちに不快を感じる方がいるかもしれません。それは無理のないことなのです。子ども時代からずっと「正しい世界の見方、考え方」と学び、同僚や後輩、子どもたちにもそう言い、説得してきた自分の考えや立場、生き方を非難されているように感じるからです。



 僕自身もそうでした。でもこれまでとは大きく異なる枠組みであるからこそ知る意味も大きい。



 ここから先へ進むには好奇心と同時に少しばかりの勇気が必要です。それは自分の知っている世界の外側に未知の世界があることを知る勇気であり、その世界へ踏み出すための勇気です。(その3へ続く)    文責:西尾



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆
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CAMR超入門 よく目にする光景(その2)

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CAMR超入門 よく目にする光景(その2)2014/1/4



 「その1」では、対症療法的アプローチが以下のような思考の流れから生まれてくることを説明しました。
①人はしばしば間違った姿勢や運動をするものである。
②そして間違った姿勢や運動は痛みや危険性、効率の悪さにつながる原因となる。
③だから専門家が、正しい姿勢や運動を指導・矯正しないといけない。



 対症療法的アプローチの特徴は、「どうして間違った姿勢になってしまうのか?」という原因追及のプロセスが抜けてしまっていることです。そこで以下のように流れを変えてみます。
①人はしばしば間違った姿勢や運動をするものである。
②間違った姿勢を取る原因を考えてみよう。たとえば背景には運動をしない生活習慣がある。結果体が硬くなり、特に下肢筋や腹筋が低下して悪い姿勢になってしまった。
③そして間違った姿勢や運動は痛みや危険性、効率の悪さにつながる原因となる。
④だから専門家が、根本原因にアプローチし、また正しい姿勢や運動を指導・矯正しないといけない。



 この流れの中では、ただ姿勢を直すように口頭指示してもダメだということが分かります。根本原因に筋力低下などが挙げられていますので、歩きながら指示するだけでなく、弱ったと思われる筋力や低下した柔軟性を改善する訓練が必要です。



 結果柔軟性が改善し、筋力もアップしてきて、良い姿勢の保持ができるようになります。



 さて、というわけで、若き日の僕もすぐに根本的アプローチの信奉者になりました。日々出会う多くのケースでは根本的アプローチは有効と感じられました。根本的アプローチ、万歳!めでたし、めでたし・・・



 しかしそのうち、幾つかの疑問、あるいは懸念を持つようになりました。(その3に続く)文責:西尾



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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CAMR超入門 よく目にする光景(その1) 2013/12/28
 最近見たテレビ番組にこんなのがありました。「肩凝りや頸部の痛み、手の痺れは、実は首を含めた全身の姿勢に問題があることが分かってきました。専門家の先生に良い姿勢を教えてもらいましょう・・・さあ、これが良い姿勢です!そしてこれが良い姿勢をとるコツです。こうすると良い姿勢になります!」



 他にもこんな光景があります。訓練室で歩行練習する患者さんとセラピスト。患者さんがずっと足下を見ながら歩いています。そうするとセラピストが「○○さん、また足下ばかり見てますよ。前も見ないと危ないですよ。顔を挙げて」と優しく注意します。○○さんは「はい」と顔を挙げて胸を張りますが、またしばらくすると顔を下げ、背が丸まってきます。するとセラピストがまた「顔を挙げて!胸張って!」と注意します・・・



 これらの光景は以下のような思考の背景を持っていると思います。
①人はしばしば間違った姿勢や運動をするものである。
②そして間違った姿勢や運動は痛みや危険性、効率の悪さにつながる原因となる。
③だから専門家が、正しい姿勢や運動を指導・矯正しないといけない。



 もうお気づきでしょうが、これが対症療法的なアプローチの流れです。目に見えた問題をそのまま口に出して、矯正しようとしたりします。「もっと足を高く上げて!」などと、継続的な口頭指示を続けるセラピストがいますが、その場その時に出ている症状に焦点を当てています。でも指導しながら心の中で呟くのです。「何度言ってもすぐ忘れるんだから・・」



 実は僕自身、若い頃はこんな訓練をしていました。ただ見守って歩いていても仕事してないみたいだし(^^ゞ、何かもっともらしい指示出した方が専門家っぽいし・・・(^^ゞみたいなところもありました。でも言っても言っても一時的な変化しか生まない、ということに気がついて「俺何やってんだろう・・」などと思いました。「問題を指摘することは無駄なのではないか・・・」という思いがある日、胸に兆したのです。(その2に続く) 西尾←これまで名前書いてなかったので(^^ゞ



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版



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CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編

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今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して 解説編」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実例紹介-症例を通して 解説編


CAMR研究会代表の西尾です。
 ここでは秋山さんの症例紹介を基に簡単にCAMRの解説を行います。


 一つ目はCAMRではセラピストが複数の視点を持ち、それを切り替えながら考えるということです。CAMRではセラピストの立場だけでなく、患者さんの立場、そして患者さんの運動システムの立場に立って考えることを勧めています。運動システム内部の視点に立つと,姿勢や運動の形は見えません。しかしシステム作動の目的や達成状況、作動の性質は良くわかってきます。たとえば運動システムは、常に人にとって必要な課題を達成しようとしますし、もし課題達成に問題が起きると必ず問題解決を図ります。


この方は麻痺肢を振り出すために使えるところを使う「分回し」という問題解決を図ります。また患側下肢の支持性に自信がないので、次第に患側下肢の使用を最小限に抑える「不使用」の問題解決を図ります。この状況を変化させるポイントはここにあります。


つまり基になっている麻痺は今のところセラピストにはどうしようもありませんが、問題解決は運動システムが麻痺後に選んだものですから、当然変化することが可能な場合が多いのです。


この方の場合、患側下肢の不使用のために健側下肢を十分に振り出すことができない状況が見えていて、これは患者さんにも不利となっています。一方セラピストの視点で見ると患側下肢の支持性は十分です。だから使わないのはもったいないとなるわけです。


このようにCAMRでは運動システムとセラピストの視点を行ったりきたりしながら評価を進めていきます。(CAMRには運動システムの視点から作動を理解するための6つの作動原理がまとめられています)


またもう一つ。運動システムは様々な要素の相互作用の結果、その作動は安定した状態になります。安定した作動とは自然に頑丈な状態へと変化するものです。だからこの頑丈さを崩して状況変化を起こすのはかなり難しくなります。


たとえば分回しのスキルは障害後最初に課題達成に成功したスキルなので、運動システムはそれを繰り返し続けます。不使用スキルにしても同じです。初期に患側下肢の使用を最小限にすることでうまく行くのでこれを繰り返します。そして頑丈な状態になっていきます。従って運動システムが「分回し」、「不使用」より安全面でもエネルギー効率からも優れているスキルが見つからない限り、「分回し」、「不使用」のスキルは繰り返し使われ続けてしまうのです。


そこで状況変化のための治療方略が必要になります。ここでは簡単に言うと「多要素・多部位同時アプローチ」という治療方略を用います。つまり私たちが起こせる状況変化を一つ一つ積み重ねていきます。たとえば柔軟性を広げることで運動範囲や重心移動範囲を大きくします。また患側下肢が「思っているより使えるよ」と経験を重ねていただきます。「実りある繰り返し課題」を継続して実施することで、運動の余力をできるだけ高めていきます。またここでは述べられていませんが、CAMRには「足場作り」という技術があり、それによって成功経験をより強めたり、患者さんの意欲を高めたりしていきます。結果、患者さんは成功体験に自信を持ち、更に作動を変化させていったわけです。(秋山さんにとって足場作りは当たり前に使っていることなので、今回は言及しなかったようです)


結果、患側下肢の支持時間が増え、健側下肢を大きく振り出して前方へのより大きな推進力を生み出しますので、その後に続く患側下肢の振出もより容易になってまっすぐに振り出せるようになったと考えられます。つまりより安全で効率的な身体の使い方、つまり新しいスキルを繰り返し、自然に新たな頑丈な状態へと変化したのです。


CAMRでは通常運動の形を変化させることは目標としませんが、支持、重心移動、振出などの働きを改善することを含めて様々な角度から作動を変化させ、ここでは結果的に運動の形も変化したわけです。


まずは患者さんの状況を理解するためには、患者さんの運動システムが障害に対してどのような問題解決を図っているかを知ることが重要です。それによって患者さんの運動システムが何を問題にしているかがよくわかるからです。たとえば分回しはこの状況では良い問題解決、しかし不使用は新たな問題を生み出していると考えることができます。そして問題を生み出す不使用の状況を変化させるように計画していきます。結果運動システムの分回しスキルへの依存は減少して、よりまっすぐに振り出せるようになったのです。


CAMRでは運動システムは通常6つ問題解決方略を使うと考えています。その問題解決毎に新たに起きる問題や状況変化の方法が少しずつ変わります。脳卒中では普通2-4種類の問題解決が同時に使われていることが多いのです。講習会では実際の患者さんのビデオを見ながらこれらを理解することができます。
講習会再開の時には是非ともご参加下さい。お待ちしております!(^^)


★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


【CAMR入門シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 著「システム論の話をしましょう!」CAMR入門シリーズ①
西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
西尾 幸敏 著「リハビリの限界?:セラピストは何をする人?」CAMR入門シリーズ⑤


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CAMRの実践紹介-症例を通して その3

目安時間:約 6分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!


「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの実践紹介-症例を通して その3」です。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆


CAMRの実例紹介-症例を通して その3 

※個人の感想です(^^;)



秋山です。右片麻痺の方の患側支持練習の結果編です。



立位課題に対しては回数を増やす等、適宜ご本人と相談しながら進めました。歩行訓練は、距離やコースは本人にお任せ、私は何も指示することも介助することもなく、いざという時の見守りでした。



立位課題の左右重心移動で右への動きが拡大してきたり、健側の前方踏み出しが広がったりと、患側下肢での支持がちょっと長くなりました。そのように患側下肢をより使うようになられたなと思う頃に、「今日は右足がよく出るから、もう少し歩く」と自分から言われることが増え、全体に距離が伸びてきました。



「足がまっすぐ出た」とは本人は感じないけど、「足がみやすく(簡単に)出て楽だった」という本人にとってプラスの変化を実感されていました。その方は、「ちゃんと歩くためには、足がまっすぐ出ていないといけない」から「歩きやすいと感じる時は足もよく出てる。いろいろ運動しておくと歩きやすい」と思われるようになっています。



しかしセラピストの視点からは、右半身が後ろに引けていたのが目立たなくなり、右足も側方からではなくより前方に振出す、つまりよりまっすぐに振り出すようになられました。形も変化しているのです。おそらく健側下肢が前方により大きく出るので推進力が増し、患側下肢は筋などの粘性で、前方により強く引っ張られ、ぶん回しスキルへの依存が少なくなったのでしょう。結果、図らずも脚は以前よりはまっすぐに振り出される形になったわけです。



CAMRの視点からみてみましょう。CAMRでは正しい運動、間違った運動という見方はしません。中枢神経障害により異常運動=正常から逸脱した運動が出現しているとみるのではなく、障害に加えてそれに対する運動システムの問題解決などの相互作用からその状態になっていると考えます。



今回のクライアントの患側下肢がまっすぐ出ないという現象は、麻痺して今までのやり方では振り出せなくなった下肢を何とか振り出そうとした結果とも言えます。麻痺した下肢を振り出すためには健側下肢と体幹で振り出すしかなかったのです。異常な運動が出たのではなく、使える機能で何とか「歩く」という運動問題を解決しようとした。目にしている運動の形はそのようにして選択されたものです。



だからアプローチとしてはこの方が脚をまっすぐに振り出すことを目標にしても失敗経験を繰り返すだけです。むしろ柔軟性を改善し、荷重経験を繰り返し、患者さん自身がより歩きやすいスキルを探索された結果、つまり運動システムの作動が変化した結果として形も変わってきたのです。



ただ、運動システムが選択した問題解決は、常に最適とは限りません。本当は他の解決方法があるかも知れない。そこは何とかしたい。この方の場合は、麻痺側下肢の支持機能があるのに動作では十分に使っていないことがわかり、本人も納得されて麻痺側での支持を行う課題を実施、システムの作動が変化して歩きやすくなりました。


健常者の運動の形を真似するという目標はあまり意味がありません。できれば自然にしていることですから。むしろ運動システムの問題解決を理解し、適切な要素を変化させたり、支持や振出し、重心移動という機能(働き)から運動を見て、変化できることから取り組む例として、みなさんに伝われば幸いです。(終わり)




★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆


【CAMRの基本テキスト】
西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版


【運動システムにダイブ!シリーズの電子書籍】
西尾 幸敏 他著「脳卒中片麻痺の運動システムにダイブせよ!: CAMR誕生の秘密」運動システムにダイブ!シリーズ①


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西尾 幸敏 著「治療方略について考える」CAMR入門シリーズ②
西尾 幸敏 著「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③
西尾 幸敏 著「正しい歩き方?:俺のウォーキング」CAMR入門シリーズ④
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