CAMR入門シリーズ③ 正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性

目安時間:約 4分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



システム論の話をしましょう!」「治療方略について考える」に続いて、CAMR入門シリーズの第三弾が出版されました!



西尾 幸敏(著)「正しさ幻想をぶっ飛ばせ!:運動と状況性」CAMR入門シリーズ③



本書はCAMR入門シリーズの第三弾となります。今回は「ピリッ」とスパイスのきいた内容です。



本書では「正しさ幻想」として、セラピストが比較的陥りやすい盲点を指摘しています。具体的には二つ挙げており、一つは「正常運動」とも呼ばれる、健康な若い人が実験室の中という普段の生活ではあり得ないような特殊な状況で行なった運動を「正しい運動」としてモデルにすることについて、そしてもう一つは、脳卒中治療ガイドラインなどに代表されるような、EBMを背景にしたプログラム選択の指針について言及しています。



どちらも適切に用いればとても有益なのですが、動作分析に際しては運動の形の奥にあるものへの眼差しの必要性を指摘し、プログラム選択にあたってはしっかりと状況を見て自ら考えることの大切さを訴え、いずれの場合にもただ頭から盲信してしまうことへの注意を呼び掛けています。



僕は人一倍思い込みが強く頑固な方なので、このあたりのことには本当に苦労した記憶があります。読者のみなさまにおかれましても、盲信の罠にはまっていないか、ぜひ一度自らの臨床を省みる時間を持っていただきたいと思います。



Camrer(カムラー:CAMRを実践する人)の一人として特に興味深かったのは、第3章から第4章にかけて、具体的な症例を挙げて説明している部分です。


なかでも、脳血管障害後の筋緊張の亢進を患者さんによる「問題解決」と捉えているところは、CAMRの真骨頂といっても過言ではないでしょう。なぜなら、脳血管障害後の筋緊張の亢進は通常「症状」と捉えられているからです。そのような常識を前にしながら「問題解決」と捉えることは、理論を道具と考え、システムを内部から観察するCAMRの視点をもって初めて可能になります。


(CAMRの視点をもう少し詳しく知りたい方は、CAMRの基本テキスト西尾 幸敏 著「PT・OTが現場ですぐに使える リハビリのコミュ力」金原出版をご参照ください)




目次
CAMR入門シリーズ③ 正しさ幻想をぶっ飛ばせ! ~運動と状況性~
この本について
目次
第1章  「たった一つの正しさ」を追い求める社会病理
1.巷にあふれ返る「正しさ幻想」
2.正しい歩き方? ~セラピストが出会う「正しさ幻想」
3.運動は真空中で起きているのではない
第2章  運動と状況性
1.患者さんからの怒号を浴びて
2.状況の中での運動
3.健常者の歩行の特徴は、形ではなくその作動にある
4.前節の補足説明 ~疑問の声にお応えして
第3章  「正しさ幻想」が招いた悲劇
1.正しいアプローチ?
2.症例紹介
3.ガイドラインに沿ったプログラムではあるが・・・
4.いろいろなところに潜んでいる盲信の罠
第4章  CAMRの視点
1.運動システムの作動原理
2.症状か?問題解決か?
3.問題解決方略を見抜け!
4.多要素多部位同時治療方略
5.理論は道具、状況に応じて使い分ければ良い
6.正しさ幻想をぶっ飛ばせ!
編集後記
CAMR研究会について
著者紹介
著書



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プロの運動問題解決者Professional motor-problem solverになろう!

目安時間:約 4分

プロの運動問題解決者Professional motor-problem solverになろう!


  -プロの運動問題解決者になるためには


 僕たちセラピストはプロの運動問題解決者である。他人の運動問題を解決することを生業(なりわい)にしている。僕たちの仕事の場合、根本的な解決は無理であることが多いが、それでもその問題がより軽くなるよう、より良い状態になるような問題解決を目指すことが必要である。


 そのために必要なのが問題解決の手段である。少なくとも二つが問題解決の手段としてよく知られているが、それらの長所・短所の理解は必要である。


 学校では要素還元論を基にした問題解決方法を習う。これは問題が起こると、その問題の原因を探る方法だ。運動問題なら、運動の構成要素、つまり筋力・可動域・感覚・バランスなどと要素毎や部位毎に分けて どこに原因があるのか探る。次にその原因と問題との間に因果の関係を想定する。そしてその原因にアプローチするのだ。しかしこの方法は非常に有用ではあるが、万能ではない。


 たとえば脳性運動障害では脳細胞が壊れることが原因だが、今のところリハビリで脳細胞やその機能を再生することはできない。つまり原因がわかったからといって解決できるわけではない。


 また慢性痛のように様々な要素が関係し合って問題が形成されていると、一つの原因だけにアプローチしても大きな変化は起きない。問題はその一つの要素だけでなく他の要素も影響し合って生まれているからだ。


 だからプロの運動問題解決者としては、他の問題解決方法も身に付けて、状況に応じて使い分けるのが良い。


 CAMRで勧めているのは、システム論を基にした状況変化アプローチである。問題が起こる状況を変化させて少しでも良い状況を作り出すことを考えるのである。CAMRには状況を変化させるための理論と技術がある。視点を全く変えることで意外な解決方法を生み出したり、今、この場でできる事をできるだけ沢山見つけてそれを積み重ねていったりする。マヒや認知症は治せなくても、状況変化は必ず起こせるのである。


 こうしてセラピストとして2種類の問題解決手段を持つことになる。学校で習った原因を探して原因にアプローチする方法と状況を理解して状況を変化させるアプローチである。どちらの方法にも長所と短所があるので、それを熟知して、状況に応じて適切に使い分けられるようになればプロの問題解決者としての力量はそれまでとは比べものにならないくらいアップするだろう。


 CAMRでは、ようやく、ようやくネット上での情報提供の準備が整ってきました(^^;近・日・公・開!乞うご期待!!

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私はまだ習っておりません!

目安時間:約 5分

私はまだ習っておりません! -問題解決を巡るいろいろの問題


 ある新人セラピストが、「私はまだ習っておりません!」といって仕事を引き受けようとしなかったことがある。


 「習ったことがない」というのはその通りだと思う。人生は習っていない問題に次々と直面するのが普通だ。絶対大丈夫と思って告白したのに失恋したり、ソフトクリームを他人のおろしたてのスーツに押しつけてしまったり、路上で美女の詐欺に遭ったり、人には言えない場所に痛みが出たり、これは絶対安いと思って勝負に出たら役満でロンされたり・・・などと未知の問題、想定外の問題はいつもいつも起こってくるものである。


 だが、それが人生だ。「習っていない」と言って済ましている場合ではない。人生は常にその場その場で未知の問題にも柔軟に対応していかなければならないのだ。


 自分で解決法を考えることはできなくても、誰かに助けて貰ったり、アドバイスを貰うことはできる。上記のようなのは「習っていない」とその問題から逃げ出しているのだろう。それはこの人なりの慣れ親しんだ問題解決方法なのだと思う。とりわけ困難な問題からはすぐに逃げ出してしまうのだろう。


 しかしセラピストの仕事は基本、他人の運動問題を解決することだ。ブロの運動問題解決者だ。それなのに『習っていません』とか『この患者はやる気がないからしかたない』とか『認知症がひどくて・・・』とか、そんな言い訳ばかりで自分がその問題から逃げるという解決法ばかりを選んでいては仕事にならない。 まあ、無理はないとは思うのだ。解決困難の問題から逃げ出したくなるのは自然のことだし、問題解決というのは、策もなく無理して突っ込んでいくと新たな問題を生み出してややこしくなるものだ。最後は「こんな仕事、辞めてしまいたい」ということになってしまうかもしれない。だから逃げてしまうという選択肢も時には必要なのかもしれないが・・・


 ともかく他の解決方法も試みてほしいものだし、先輩や回りの人たちも別の選択肢に目を向けるような援助が必要だろう。


 また問題解決を巡る問題にはもっとシビアなのもある。たとえば「脳卒中の方に健常な運動を学習してもらい、マヒを治して貰おう」などというアプローチである。これは「理想主義者の解決方法(ユートピアン・ソリューション)」と呼ばれる。実現不可能な目標を持ってしまうからだ。実際、未だにマヒが治ったという例は聞いたことがないし、現時点でも実現不可能な目標である。


 しかし「諦めたらそこでおしまいだ。ダメなんだ!諦めずに続けていくことが大事だ。続けていればいつか夢は叶うんだ」という思考方法はいつの時代も多くの人の心をつかんで離さない。だから何年も何十年も変化なく、同じことを繰り返している患者さんとセラピストのペアを見ることもある。また多くの若いセラピストがユートピアン・ソリューションに惹かれて、ユートピアンになっていく。まあ、それはそれで人生の問題解決の選択肢の一種なのだが、あまり良いことではないと思う。


 結局、何が言いたいのかというと「セラピストは問題解決が生業(なりわい)であるし、もっと問題解決方法とそれらの分類、特徴についてよく知らないといけない」ということだ。自分が問題から逃げ出すタイプか、ユートピアン・ソリューションを持ちやすいタイプか、他人に頼ってしまいがちなタイプか、とりあえず「その場で自分にできる事をやってみる」タイプか、などである。


 そして僕のようなずぼらで不器用な人間でもなんとかそれなりの問題解決をして、ずっと続けられる方法もある。いつもすべて上手くいくわけではないけどね。それでもこれまで試した中では良い方法だと思う。それがCAMRの「状況変化のアプローチ」で、これを知ってからは、仕事がなんとなく面白くなったので、今は人に勧めているわけです(^^)v(終わり)

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CAMRの旅お休み処 シーズン3 その4

目安時間:約 3分

≧(´▽`)≦
みなさん、ハローです!



「CAMR Facebookページ回顧録」のコーナーです。
今回は「CAMRの旅お休み処 シーズン3 その4」です。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆以下引用★☆★☆★☆★☆★☆★☆



CAMRの旅お休み処 シーズン3 その4
「発想を転換してポジティブシンキング、ではないのだ」



 秋山です。これまでになくハイペースなお休み処です。
ホームページの「CAMRの基礎にあるもの」で家族療法(短期療法)の話が展開中です。
https://rehacamr.sakura.ne.jp/



 その2「問題解決に原因の探求は必要か?」の中で、「前向き志向とは違う」とあります。「発想の転換」は何を変えるのか、に関して。



 ちょっと前に「ポジティブシンキング」というのが流行りました。物事を肯定的な方向に傾斜してみる、極端に言えば「良かった探し」です。あの人が私をいじめるのは、ちゃんと育てようと鍛えてくれている、というような。ポジティブシンキング自体は悪いものではなく、困難をやり過ごすのに時に有効です。行き過ぎると現実逃避になるのですが。



 家族療法の流れを受けたCAMRで言いたいことは、障害のマイナス面にとらわれて嘆くのではなくプラスの面を見ましょうというのではないのです。「片麻痺になって良かった」と当事者の方が言われることがあります。これはその方が苦労の果てにたどり着いた境地であり、周りから決して言うものではないです。そこを目指しているのでもありません。



 では、何か?むしろ、良い悪いの価値には関わらない。悪いを良いに転換するのではなく、障害はおいといて、別のものを見ませんか、という転換です。



 まぁ、ポジティブシンキングではないが、楽観的ではあるかも。あ、これはCAMRが、ではなく私だけかも?



★☆★☆★☆★☆★☆★☆引用終わり★☆★☆★☆★☆★☆★☆



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システム論の話をしましょう!(その13)

目安時間:約 5分

システム論の話をしましょう(その13)


 「運動システムは常に人にとって必要な課題を達成しようとするし、課題達成に問題が起きるとなんとか問題解決を図る」と前回述べました。


 

 しかし誤解してはいけないのは、問題解決を図るといっても、問題は必ず解決されるわけではないということです。問題解決とはいっても、障害後に多くのリソースが失われた後の応急的・場当たり的な対処なのです。健常の頃のように状況に応じて適切な対応を行うことは望むべくもありません。運動システムは問題解決を図っていても、むしろ状況を悪くしてしまうことも多いのです。


 たとえば外骨格系方略の問題解決を図っている人を沢山見ると、中にはどんどん硬くなって却って動きにくくなったり、あるいは過緊張のために不快や痛みに苦しんだりする人もいます。問題解決のはずがむしろ状況を悪くしているわけです。これは「偽解決」と呼ばれる状態です。(「偽解決」は短期療法などで使われるアイデアで、問題解決と思って実施したことが、逆に更に悪い状況を招いてしまうことです)


 なぜ偽解決になってしまうかというと、体を硬くし始めたときには実際弛緩と比べて動きやすくなります。そうすると運動システムは上手くいった方法を繰り返してしまいます。元々障害後に沢山のリソースが失われて残ったリソースを利用し、選択肢もごく少ないので、それを繰り返さざるを得ないのです。体を硬くする元々のやり方ではなく、調整も上手くいかず、ひたすらできる事を繰り返すのです。だから体は次第に硬くなり、動きにくくなって更にそれが次の硬さの呼び水になります。たとえば硬くなった体を動かすための過剰な努力が必要になります。また硬さが痛みを生み、その痛みや不快刺激が防御的に更に硬さを生み出すわけです。つまり身体を硬くする問題解決が悪循環を生み出し、暴走してしまうのです。


 また運動システムの問題解決が生み出すもう一つの問題は、「貧弱な解決」と呼ばれる状態です。これは最初に選ばれた問題解決が繰り返されて、なんとか課題は達成しているものの、その間に潜在的に筋力が回復したりしていてもそれに気がつかなくなってしまった状態です。最初の問題解決の方法が繰り返されるので、新たに回復した筋力などを使ってみる機会が失われてしまうのです。この潜在的に回復したリソースは「隠れた運動余力」と呼ばれます。もしこの「隠れた運動余力」を上手く使っていけば、運動課題達成のパフォーマンスはもっと改善するのですが、結局使われることなく、運動のパフォーマンスも改善することなく、停滞の状態になるのです。存在を気づかれなければ、ないのと一緒だからです。これは偽解決ほど悪い状態には見えませんが、長期的には患者さんにとって大きな不利となります。

 脳性運動障害の患者さんは、元々の障害による弛緩麻痺(筋力リソースの消失・低下)の障害像に加えて、運動システム自体の問題解決の欠点ないしは副作用によって悪化した状態が加わってより複雑になっていることになります。


 リハビリでは厳密には麻痺は治せないかもしれませんが、運動システムの作動の性質によって生み出された問題(偽解決・貧弱な解決)は障害自体ではなく、障害後の運動システムの作動の問題なのでリハビリで改善できます。そうすると「リハビリを受けて(状態)が良くなった」と喜ばれたりします。現場でも気づかずにこのアプローチをしている人がいて、「脳性運動障害に対する訓練効果」として説明しているのをよく見ます。基の障害にアプローチしているのか、障害に対する運動システムの問題解決(偽解決・貧弱な解決)にアプローチしているのか区別ができていないのです。


 自分のアプローチが障害に対するものか、運動システムの作動に対するものかがはっきりするだけでも、自分のやっていることの価値や意味がより分かって仕事が面白くなります。(CAMRの講習会では様々な問題解決や偽解決・貧弱な解決の例がビデオでわかりやすく見られます。興味のある方は参加をお薦めします)(その14に続く)


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システム論の話をしましょう!(その6)

目安時間:約 5分

システム論の話をしましょう(その6)
 さて、2番目の分類は「外部から作動を見るアプローチ」です。この代表的なものの一つが「課題主導型アプローチ(Task Oriented Approach 以下TOAと略す)です。このアプローチの基礎となっているのがテーレンらの動的システム論であり、ギブソンの生態心理学です。



 テーレンらによる動的システム論は外部から観察される姿勢や運動の基になっている運動システムの作動を物理学の枠組みから理解しようとします。動的システム論には、自己組織化、アトラクター、コントロール・パラメータ、多重安定性など多くの魅力的なアイデアがあります。これらのアイデアは僕たちが臨床経験を通じて漠然と感じていた運動システムの性質やいくつかの特徴的な運動状態を明確な言葉で表して理解を助けてくれると感じています。



  さて、前回システム論は作動に焦点を当てていると述べました。つまりテーレンらは研究を通して「運動がどのように生まれ、維持され、変化していくか?」といった運動システムの作動を明らかにしているわけです。



 テーレンらは心理学者ですが、正常運動発達を研究しました。それまでは一般に脳の中に正常発達の設計図があり、これに沿って運動発達が起こると考えられていたのですが、テーレンらは数々の研究から運動発達(運動の変化と安定)はあらかじめ決められた設計図はなく、様々な要素の相互作用から自己組織的に起きていると示したわけです。



 もう一つ、生態心理学はアフォーダンスで有名なJJギブソンによって始められ、エレノア・ギブソン(以下、EJギブソンと略す)やエドワード・リード、日本では佐々木正人といった魅力的な心理学者達がいます。テーレンもその著書でエレノア・ギブソンに大きな影響を受けたと書いています。



 生態心理学も脳が感覚を入力し、脳の中に世界像を作り、そしてそれを基に出力つまり運動をコントロールするというそれまでの脳が中心の常識的な考えを否定します。そうではなくて、脳は単なる調整役だというのです。たとえ神経系のない生物でも環境と出会い、うまく関係を築いています。元々そのような能力は生物が本来持っているものです。もちろん神経系はより高度に世界と関係作りをするために役立っているわけですが、それでも進化上は神経系は後から生物に乗っかってきたものです。



 それに知覚とは動くことと言います。動くことによって動物にとっての必要な情報が知覚できる訳です。・・・まあ、そんな感じです。



 テーレンらもギブソンらも心理学者ですが、運動を通して運動変化や知覚、認知のことを研究します。デカルト以来の西欧社会の思い込みの一つである心身二元論(機械の体とそれに乗っかっている心の二つが存在している)の伝統を否定しているのです。あるいは人の体を機械に、脳をコンピュータのように喩えることが間違いだと。生物は機械とはまるっきり違った存在だというあたりが基本になります。
(これらのアイデアについてはここでこれ以上説明することは控えます。正直、僕は未だにわからないことが多いのです(^^;特にアフォーダンスは苦手(^^;詳しく知りたい方はイラストのお薦めの文献に当たってください)



 さて、この両者を基にして生まれた課題主導型アプローチは、またまた僕流に間違いを恐れずに言ってしまえば、以下のようなアプローチです。「運動は適切な課題を繰り返すことによって徐々に課題達成に向けて調整される。つまり運動は課題によって生まれ、成熟する。従って患者にとって必要な課題と課題の実施環境条件を提供することがセラビストの仕事である。セラピストは課題と実施環境を調整し、工夫し、患者にとって相応しく進化させ、提案することで患者にとっての必要な運動適応能力を改善していくことができる」のです。 まあ、このような理論的な説明は往々にして僕たち臨床家には届きにくいものです。臨床家にとっては実際にやってみることでしか、有効かそうでないか実感できないものです。



 実際、僕自身は臨床でやってみて「素朴なシステム論的アプローチ」の有効さに気づきました。そしてこんどはこの「セラピストが患者に『課題』と『実施条件』を通して訓練する」ことを意識して実施して経験してみることにしました。理論というアイデアの「問題解決の道具」としての有効性を自分自身で試してみたのです。そうすると臨床で自分や周りからの経験だけでは学べないような様々な視点に自然に気がつくようになったのです。(その7に続く)

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システム論の話をしましょう!(その3)

目安時間:約 3分

システム論の話をしましょう(その3)
 社会一般では、問題解決のためには問題の原因を明らかにし、原因と問題の間に因果の関係を想定します。そして原因をなんとかするのが標準的な方法であると前回述べました。これは医療あるいはリハビリの世界でもおなじです。



 たとえば学校で習ったように、痛みがあればすぐに身体構造に原因を探し、ある部位の筋膜の癒着だとか関節内運動の低下だとかある筋の過緊張だとか、神経の圧迫だとかに原因を探します。つまり評価を通して原因となる部位と要素を明らかにすると、その特定された要素や部位のみに徒手療法などで働きかけます。



 そしてこれによって痛みを改善すると、患者さんは痛みが楽になったと喜ばれます。セラピストは「また痛くなったら来てくださいね」と送り出します。しかし1週間後には「先生、また痛くなったんです」と帰ってきます。調べてみるとまた前回と同じ原因なのですぐに治療、「また痛くなったら来てください」と送り出す・・・と慢性痛ではこれを繰り返すこともよくあります。



 でもこれでは一時的に痛みを軽くしているだけでちっとも根本的な問題解決になっていないと考える様になりますよね。(もちろん1回きりで良くなることもあります。これには特定の条件が必要ですけどね)



 そして経験を積んだり勘の良いセラピストは、一要素・一部位を原因にした単純素朴な因果関係だけではうまく解決しないと考える様になります。膝関節のモビライゼーションだけでは周辺の筋膜の萎縮や癒着によってまたすぐに動きの悪い状態に引き戻されてしまうのかもしれない。つまりある部位の筋膜の癒着は、周辺の他の関節内運動や他の部位の筋活動にも影響を与えあうのが当然ではないかと考えます。単純な一要素・一部位を原因とした因果関係ではなく、もっと広範囲な部位で様々な要素が関係していると考えるようになります。それで膝関節の痛みを治すために、下位では足部の関節モビライゼーションや足趾のストレッチやリリース、上方では股関節や腰部、更に頸部や上肢のリリースをしたり各部位の動きをよくしたりと多要素、多部位に同時に働きかけるようになります。



 これが素朴なシステム論的アプローチの第一段階です。これはCAMRでは「多要素多部位同時変化方略」と言いますが、このレベルに達すると痛みや脳性運動障害に対する治療効果もこれまでとは異なった手応えを感じる様になると思います。でもまだまだ第一段階に過ぎません。(その4に続く)

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システム論の話をしましょう(その2)

目安時間:約 3分

 最初は素朴なシステム論的アプローチを説明しましょう。
 これは「ある現象は様々な要素間の相互作用から起きてくる」というアイデアでまとめられるアプローチです。



 「なに?そんなの珍しい考えでもなんでもないじゃん。誰だってそう考えてるよ」と言われそうです。確かに世の中の出来事はたくさんの要素の相互作用と考えることが妥当ですし、常識的に思えます。でも意外に思われるかもしれませんが、問題解決という点から考えると世の中というのはそうでもないのです。



 たとえばテレビのニュース番組を見ていると事故や事件の報道をします。そうすると専門家の先生が出てきます。そしてアナウンサーが「先生、今回の事故の原因はなんでしょう?」と尋ねると先生が少し得意げに「今回の事件の原因はですね、・・・」などと喋ります。それを受けてアナウンサーは「ではその問題の原因を解決するためにはどうしたら良いでしょう?」と聞くと先生はますます胸を張って「エッヘン、それはですね・・・」と問題解決の方法をしたり顔で説明します。するとアナウンサーが納得顔で「では早急にそのような問題解決を図ることが必要ですね」と結論し、見ている視聴者も「フムフム」と納得したりするわけです。ごく普通のことでしょう?



 つまり世間一般では「問題を解決するためには、ある特定の要素なりできごとを原因として突き止め、問題と原因に因果の関係を想定し、その原因にアプローチすること」が当たり前に考えられているのです。そのように因果の関係を想定することが問題解決に関する代表的な方法と考えられ、常識になっているのです。



 逆にある問題が様々な原因の相互作用から起きていると考えると、問題解決の糸口が見えにくくなって、明確な問題解決が図れないと考えられているのです。



 これは僕達、医療あるいはリハビリテーション(以下単にリハビリと略す)の分野でも同じですよね。(その3に続く)

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